マイクロ・ビジネスおよび
新・内発的農村発展論:英国の事例から
ジェレミー・フィリップソン
Centre for Rural Economy
School of Agriculture, Food and Rural Development
Newcastle University, United Kingdom
目次
• はじめに:農村経済研究センター(CRE)と農村発展モデル
• 英国の農村経済の特徴
• 農村におけるマイクロ・ビジネスのダイナミクスと貢献
農村経済研究センター
(The Centre for Rural Economy) (1992設立)
• 持続可能な農村経済
を達成するための研
究および活動
• 発展のための障害お
よび可能性は何か?
• 地域の経済活動に一
貫性や定着性をもた
らす要因は何か?
農村発展モデル
外発的発展モデル(戦後)
原則
規模と集中の経済
原動力
都市の発展
(開発の原動力は農村地域外から)
農村地域の機能
都市経済の拡大を支える食料政策
その他の資源生産
主たる農村開発問題 低い生産性、周縁性
農村開発の焦点
農業の近代化:
労働人口および資本の流動化
農村発展モデル
外発的発展モデルに対する批判
• 依存的開発:
– 継続的な補助金への依存、遠隔地での政策決定
• 歪んだ開発:
– 単一セクター、選ばれた地区のみ、一部のビジネス(拡大指向
の農業者)への恩恵がある一方で、それ以外への発展が期待
できない、また農村生活の非経済的側面の無視
• 破壊的開発:
– 農村地域の文化的、生態環境的な差異を帳消しにする
• 高圧的開発:
– 外部の専門家やプランナーによって計画される
農村発展モデル
原則
内発的発展モデル(1980年代以降)
地域独自の資源(自然、人間、文化
)を持続可能な発展の鍵とする
原動力
地元主導、地元企業
農村地域の機能
多様なサービス経済
主たる農村開発問題 限られた地域資源、経済開発の活
動に関わる地域組織の少なさ
農村開発の焦点
能力育成(技術、組織、地域ネット
ワーク、インフラ)
社会的な疎外問題の克服
農村発展モデル
 地域資源(物理的要素
や社会文化的要素も含
め)を基礎とする
 この地域資源を戦略的
に外部環境と連携させ
、より大きなプロセスや
活動を誘導し、自らの
利益としていく
新・内発的農村発展モデル
新・内発的発展モデルにおける大学の役割
– 地域に根ざした研究活動
– 国内・海外など広い学術ネットワーク(研究資金、スタッフ)
– 地域の知識や情報に付加価値を与える
CRE’s Northern Rural Network
北東イングランドを中心に1000人のメンバーが参加
研究スタッフ、地方行政、民間企業者、市民グループ、開発コンサルタントなど
年間数回のセミナーシリーズ、実践家育成コースを開催
現代イギリスの農村経済
第一次産業の衰退
- 農業セクターの雇用
者数(イングランド)は
35万人以下、減少が
続く
- 非農業セクターの事
業者数は100万、520
万人の雇用を創出
農村経済の主要セクター
• イギリス農村地
域における雇用
の80%は以下4
セクター
– 流通・小売
– 銀行・金融
– 行政・教育・
保健
– 工業
農村経済の主要セクター
農村発展の鍵:
主要な業種に着目しその動きを的確に判断すること
農村地域への移住者が果たす役割
• 都市部からの人口流入や
経済活動参入に大きく影
響を受ける
• 都市部からの移住世帯が
新規ビジネス、労働力、資
金、ボランティア活動、消
費活動の大きな原動力
高齢化と農村地域
• 都市部からの農村移住
– 40代50代が多い
• 高齢化は都市部以上に
加速
– 年齢の中位数:農村部42
歳、都市部36歳
• アクティブシニア
– ボランティアセクター
– 起業、フルタイム/パート
タイムでの雇用
– 商業/行政サービス需要
マイクロ・ビジネスのダイナミクスと農村経済への貢献
• 農村地域の事業者の90%はマイクロ・ビジネス
(従業者数が10人以下)
高齢者福祉サービス事業者
古い農業用倉庫をオフィスとして再生-IT関連企業
マイクロ・ビジネスのダイナミクスと農村経済への貢献
• 把握が困難なセクター
としてこれまでの関心は
低い
• 公式な統計からは除外
• ビジネス・アドバイスや
支援サービスなど、都
市部あるいは大企業を
対象に展開
• 農村開発の方針は常に
農業事業者に対して
農村地域における
マイクロ・ビジネスの価値
• マイクロ・ビジネスが果たす役割
やその価値に対する関心が近年
高まる
• 農業者も経営の多角化を迫られ
ており、非農業事業への新規参
入が広がる
• 農業構造の改革時にも非農業セ
クター、マイクロ・ビジネスが積極
的に導入され新たな経済活動を
生み出す
マイクロ企業の特徴
• 個人事業者あるいは
家族経営がほとんど
• 限られた内部資源の
活用
– 資金、時間、労働力
• 事業運営はオーナー
に集中
マイクロ企業の特徴
• 企業活動の目標や動機
付けは多様
– 個人あるいは家族生活
の質を求めて
– 柔軟性と独立性を保つビ
ジネス形態
– 事業規模の拡大や雇用
者数の増加を望む企業
は1/3
– 従業員育成への投資は
少ない
マイクロ企業が抱える問題点
~弾力性が必要
• 地域のマーケットや労働力の限界
• 互いに隣接した立地が困難
• サービス拠点から隔てられている
• インフラの未整備
• 経済や環境への打撃に対する抵抗
力が弱い
マイクロ・ビジネスと世帯の関係:2001年口蹄疫問題を事例に
– 14000農場で家畜が感染
– 420万頭の家畜が感染
– 感染を防ぐため、家畜の
移動や感染エリアへの
人々の移動が厳重に制
限されたため、数ヶ月間
に及ぶ経済活動の休止
北部イングランドにおける感染農場
Photos from website of the BBC
Photos from website of the BBC
「フットパス(農場に隣接する歩道)がある地域の自治体は
今すぐ進入禁止の措置をとるべきです。また、全国に包括
的な移動禁止措置を敷くべきです。国民一人一人に懇願し
ます。お願いですから、農村地域に近づかないで下さい。」
ベン・ジル(全国農家連合National Farmers Union)
「口蹄疫は直接私たち人間に感染するものではありません
が、知らぬ間にその感染を広げることに手を貸すことはあり
ます。口蹄疫は非常に感染力の強いウイルスで、人間の靴
や服、車に付着してかなりの距離を移動します。疫病を根絶
するために、農場に決して近づかないこと、また、フットパス
や家畜のいる外部空間には近づかないで下さい。本日、政
府は地方自治体に対してフットパスなどの一時的な閉鎖の
権限を与えましたが、国民の皆さんにも農村地域にはしばら
く近づかないようにお願いします。」
トニー・ブレア(当時の首相)
セクターごとにみる影響の程度
Sector
影響大
一部に影響
少ない影響



宿泊業
農林業
余暇・文化事業
小売
交通
ビジネスサービス
工業
個人サービス
建設業
教育
保健・社会福祉
% firms
impacted in
sector
96
92
70
59
50
47
44
29
18
14
10
影響は幅広いセクターに広がる
ツーリズムと農業関連事業者には大打撃
影響をまともに受けたセクターと連携する業種にも影響が波及
マイクロ・ビジネスと世帯の関係:2001年口蹄疫問題を事例に
Coping responses
• 民間企業全体で推定
80億円の損害
• 損害は膨大であった
が、廃業に追いやら
れた事業体は若干
141(公式な記録上)
• 企業活動が停止して
いる間に「世帯の経
済活動」が緩衝帯と
なった
Household members working longer hours
Take smaller wage
Cancel or postpone investment
Reduce staff working hours
Increase marketing/advertising
Cut back household spending
Spend business reserves
Cancel or postpone plans to expand
Decrease marketing/advertising
Renegotiate existing loans
Spend personal savings
Take out new loan
Layoffs/redundancies
Not taking on seasonal/casual staff
Change strategy
Household member looking for job
Temporary closure
Ask staff to take holidays
Increase staff working hours
Attempt to sell business
% impacted
firms
n=72
40
39
36
35
32
30
30
29
27
27
26
21
21
17
16
14
9
7
6
3
マイクロ・ビジネスと世帯の関係:2001年口蹄疫問題を事例に
• 危機への対応
– 各世帯や地域コミュニティ
が有する人的、社会的、物
理的、金銭的資源を活用
• 世帯単位での収入ポートフォ
リオが事業収入の減収を補
填し、事業継続のためのキ
ャッシュフローとなった
• 世帯レベルでの消費、投資
や支出が控えられた
• 世帯単位で保有する資源の
利用は、社会的価値感や力
関係によっても異なる
まとめ
• 経済活動の可能性を生み出すためには、マイクロ・ビジ
ネスの特徴や能力、また農村経済全体の動きを十分把
握することが必要
• 農村地域ならではのマイクロ・ビジネスの特徴に合わせ
た地域独自の開発アプローチが必要
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外発的発展モデルに対する批判