ヒューマンエラーをどう防ぐ
産業技術総合研究所
中田 亨
1
ヒューマンエラーを防ぐ3つの力
力
意味
効果
間違い
検知力
間違いが潜在してい
ることを事故が起こ
る前に発見できる度
合い。
間違い源
逆探知力
どこからが間違いを 事故復旧コストを
含み、どこからやり直 抑える。2番目に
せばよいか判定でき 重要。
る度合い。
作業成功
力
個人が間違いをしな
い度合い。個人的技
能。
2
強めるには
事故件数を減らす。 発見を助ける手立
最も重要。
て。(目印、ポップ
アウト効果、検算
など)
トレーサビリティの
手立て(記録、検
査の頻繁化)
ランニングコストを 手順の適切化。
作業者の補助。
抑える。(普段は
目に付くが、相対 訓練と教育。
的重要度は最も
低い)
正直な告白が事故を防ぐ
 空母カールビンソンはなぜ事故が少ない?
 甲板で、整備係が工具を紛失したら、
 すぐに艦長まで報告を上げる。
 「なくしたかも」程度でも報告。報告を奨励している。
 メガネを忘れた新幹線運転手
 運転途中で気付く。裸眼でも一応見えた。
 運行指令に報告
 列車停止。対向列車で交代乗員を送り込む
 自分のミスを即時に言ってもらえる組織は強い
 恥ではない。表彰してもいい。
3
間違い検知力!!
こんちには みさなん おんげき です
か?
わしたは げんき です。
にんんげ は もじ を にしんき する と
き その さしいょ と さいご の もさじえ
あいてっれば じばんゅん は めくち
ちゃゃ でも ちんゃと よめる。
4
人間を補助して
ヒューマンエラーを防ぐ方法
5
人間を用心深くする方法:意識レベル
 ①強制覚醒
 起きていないと止まるしくみ
 ②小事故誘導
 大事故の前に、異変や小被害が出るしくみ
握ってないと電車停止
6
道路の盛り上げ
仕事の出来への関心
 関心を持たせる
 作業に楽しさ、やりがいを
 田植え歌
 セル生産方式
 関心を減らさない
 イライラの原因をなくす
 気温・湿度を快適に
 「タイムアウト」 リフレッシュしてから大
事な段取りに取りかかる。
 ベッタリつきっきりのまま大事な段取り
に流れこまない
7
流れ作業は漫然化
やりがいのある仕事の塊に
チェックは公平客観に
 五感と体を同時に使う
 声を出し、手足を動かそう
 指差し呼称
 意識覚醒し、思い出しやすい
 二人でチェックする
 ボケとツッコミ 役割分担
ツッコミ式チェック
(反論させる)
報告式チェック
(状況を答えさせる)
 「半々にやる」ではない
 「2度確かめる」でもない
 自己客観視することがねらい
8
○×式チェック
(はい・いいえだけ。
手抜きしやすい)
こんなチェックはミス多発
仕事1 仕事
手順1
仕事2
仕事
発生
発生
仕事3
仕事
発生
手順2
手順1
手順1
検査
検査
手順2
終
了
手順3
検査
終
了
終
了
時間
 手順の中に検査を混ぜ込む  検査が甘くなる
 自分がついさっきやった仕事の結果を間違いだと思
9
う人などいないから
節目(コントロールポイント)を置け
仕事1
仕事2
仕事3
仕事
発生
手順1
仕事
発生
仕事
発生
手順2
手順1
手順3
検
査
手順1
手順2
終了
検
査
終了
時間
 ここぞというタイミングで、一斉検査
 例:遠足の前日寝る前に見るチェックリスト
 Control Point : 胴切りに検査をかける時点
10
 「タイムアウト」と同じ考え
終了
勝って兜の緒を締めよ:達成感
達成感の保留



途中で気を抜かせない
ATMで、現金出しは手順の最後に置かれている
総員整列。最後に儀式。途中で気を抜かない
11
仕事をわかりやすく、やりやすくする
仕事の構造と道具で事故を防ぐ
12
ミスを防ぐ作業ツールの工夫
1. ゾーニングを整える
 仕事の交通整理
2. “なぞらえ”で分かりやすく
 作業状況をモノでたとえる
 鉄道のタブレット
3. 書類を読みやすく
 ポップアウト効果を使う
13
ゾーニング
場所の意味と、流れの向きを統制
正しい分解・組み戻し
14
これではダメ
(時間かかる。紛失する)
「やり忘れ」が
起こるわけ
坂道に
停車した
下記の両方をやりなさい
ハンド
ブレーキ
をかける
それは、
揃い待ち合流
が含まれてい
るから
15
(手分け)
キーを
抜く
両方揃いましたか?
駐車
完了
(揃い待ち)
「やり忘れ」を
無くすには
坂道に
停車した
ハンド
ブレーキ
をかける
キーを
抜く
揃い待ち合流
を無くそう。
手順を固定する
駐車
完了
16
一本道とゾーニングの調和
机
1
17
机
2
机
3
机
4
手順飛ばし防止
汚染逆流防止
汚染源特定容易化
なぞらえ:モノで状況をたとえる
飛行機のドアの動作モード管理(鍵ス
トラップ)
列車の通行許可証
Starbucks の
豆乳入り商品
引き替え札
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見える化し、勘違い防止
食品アレルギー
 食品会社は非常に警戒
 死亡事故が起こるとしたら、これだ
 汚染防止への努力
 アレルギー物質無しの専用工場(日ハム):経済的にはいまいち
 ヒューマンエラー対策も、アレルギー事故防止が大きな理由
 そもそもアレルギーとは?
 特定のタンパク質に対する過剰反応
 例: 小麦は、含まれるグルテンに体が反応
 人による
 マツタケなどでも起こる人もいる
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 体調にもよる
 運動の後の食事:消化が普段より進まない→タンパク質残存→反応
 「体内」とは?:「茶のしずく石鹸」事故は、いつも食べている小麦が肌に。
 消化管の中はむしろ「体外」
目立ち効果 「ポップアウト」
どれが逆?
20
どれが逆?
誰かいる?
ポップアウトを考えた書式にする
こんなチェックリストはダメ
読み手の視力より
書き手の思いやり
21
作戦の組み立て方
22
Event Tree Analysis (ETA)
きっかけ演繹法, (KY 危険予知)
重要ファイル
が迷子に
マウス操作
が不正確
<書き始め>
気になること
今日の変化点
電子メールの
アドレスを
取り違える
その他
文書紛失
文書漏洩
機密文書が
第三者へ
その他
 ワンミスがどこまで広がるか?
 どの矢印を切るか?
23
 どこで復帰対策を打つか?
Fault Tree Analysis (FTA)
結果帰納法, (なぜなぜ分析)
座礁
カーフェリーの
ハッチ閉め忘れ
防水失敗
定員超過
繁忙期
浮力喪失
救命ボート
不足
保守不良
救助なし
遠洋航海
 災害発生の必要条件は何か?
 箱はいくつあるか?
 矢印を切るにはどうすべきか?
24
沈没・大惨事
<書き始め>
あってはならぬ事故
再発防止事項
縦割りの弊害
同じ問題存在を
ばらばらに見ている
こまかなトラブルが散発
社員教育上の解決は?
人事
採算は?
設備投資は?
リスクは?
経営
安全投資額は?
問題の存在
現場
安全設計で
の解決は?
25
設計
現場改善
での解決は?
(生産性改良)
問題の捉え方はいろいろありえる
問題定義
問題の存在
ソフトウエア改良
ハードウエア改良
26
例:「スピロペント」と「スピロピタン」を取り違え
問題定義
薬が違う
27
薬品棚を大きく
ミスを見抜く
賢い電子カルテ する
タスクフォース (横串集団)
問題をとらえる
(誰にとっての
解決を選ぶか?)
問題の存在
易
難
問題のとらえ方の候補
人事
•
•
28
経営
設計
現場
相互連絡して最良解決を選ぶ
最良の解は自分の見ている解ではないかも
ヒューマンエラーの根本はマネジメント
職場の明るさ・風通しのよさが最重要
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安全文化
 チェルノブイリ原発事故の後、言われはじめた言葉
 現在では、安全力の中心部分として、とても重要視される
 事故の教訓を覚えていられるか?
 2012年は、三河島事故50周年(死者160人)
 2013年は、鶴見事故50周年(死者161人)
 同日、三井三池炭砿事故(死者450人超)
 高度成長期の事故多発  忘れる  最近大事故多い
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エッフェル塔建設 死者ゼロ
 強い組織をどう作る?
 リジリエンス(Resilience) 頑強さ
 エッフェルのマネジメント
 高所作業は少数精鋭
 地上でプレハブを徹底
 落下防止設備を設置
 危険な現場は自分が入る
 合理的・基本的なことの積み重ね
31
着工1887年
完成1889年
事故の天気予報
地図型デルファイ法
 事故は起こらないとは思うが、あえて起こると考えた
ら、それはどこだろう?
 マニュアルや地図の上で、一番怪しいところを、磁石
を置きなさい。
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方
面
北米
都
市
ニューヨーク
欧州
シカ
ゴ
ロンドン
パリ
条
件
三つ星
ホテル
五つ星
ホテル
-
ビジネ
ス
観光
観光
料
金
12万
20万
10万
12万
20万
17万
デルファイ法による意見の集約
 みんな恥ずかしがり屋で、意見を出さないが・・・
まずは、各自で問題点を考える。
1.

短時間でやる。互いに相談しない。
皆の考えを比べる。似ている意見はまとめる。
2.


カードや地図で類似意見を寄せる。
わいわいガヤガヤしてよい。(5人班が最適)
もう一度、各自で問題点を考える。
4. 皆の考えを比べる。意見が集約される。
5. 問題への解決策を皆で考える。
3.

33
「廃止」 「道具改良」「手順改良」「被害制御」「有効活用」そ
れぞれの案
ホーソン効果:注目されれば頑張る
 作業員のパフォーマンスはモチベーション次第であ
る。
 ホーソン実験 (Hawthorne Experiment)
 Western Electric社の Hawthorne 工場 (1928-1932)にて
 ホーソン効果
1. 仕事ぶりを注目されると、いつもよりがんばる
2. 仕事の設計に、作業者自身も関与すると、パ
フォーマンスが良くなる
3. 規則を守るかどうかは、仲間内の雰囲気しだい
34
コイル巻作業の速度比較実験
 暗い照明(選抜チーム) vs. 通常の明るさ(大部屋)
 暗いけど、注目されて頑張った
 「評価懸念」がいい方向に働いた
通常の生産ライン
(100人以上で働く)
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暗い部屋
(被験者チーム)
実験日
照明強さ
生産速度
照明強さ
生産速度
9月13日
100
107
100
112
10月25日
100
108
75
113
12月6日
100
111
60
115
12月27日
100
111
50
116
1月17日
100
112
40
117
2月28日
100
109
25
114
3月1日
100
114
100
116
仲間の人間関係が仕事の質を決める
A
B
A
C
B
C
D
E
建前上は
「上長がまとめる」
ピラミッド型
36
F
D
E
F
実際は、同僚内でいろいろ調整する
段取り
作業スピード(速すぎず、遅すぎず)
モラル、規則の順守
安全度はグループ依存
考えるべきポイント:
「要」の人物は誰か? どうか?
人を入れ替えてみてはどうか?
イベントを催して、人脈の壁を破ってはどうか?
達人への道
慎重で目の付け所も良い
達人
後輩を教える経験
他部署での経験
慎重な中級者
慣れた中級者
ミスの
経験
ミスに遭遇せず
初心者
37
ミスの
経験
目の付け所はやや良いが
慣れていて、慎重さには欠ける
目の付け所は不適切だが
怖がっていて慎重
規則を守るやる気を起こす
38
4ない
原因
改善
4ある
その規則は
自分には
関係ない
堅苦しく、とっつきにく
い説明
守っても
効果がない
効果が漠然としている。 論より証拠。証拠か
ら、説明を始める。
効果の証拠を省略し
て説明。
なるほど、役
に立つな。
守れる
自信がない
説明が多いわりに、実 やってみせ、させて
技指導がない。
みる。
自分でもでき
るぞ。
守っても
うれしくない
規則を守って当たり前 ほめる。
なのでほめない。怒る 普段の様子を見て
だけ。
あげる。
守ってよかっ
た。
絵やビデオなどで興 その話は面白
味を持たせる。話に そうさだ。自分
巻き込む。
も気になるぞ。
Safety by walking around
 航空業界の標語
 「歩き回って安全をつくる」という意味
 他部署を通りかかり、「どないや?」
 「結果表彰」より「行動表彰」
 結果は運が作用し不公平。
 いつもちゃんとやっているかを見るべき
 その場の人々に、優しく、聞き出す
 白黒を迫らない3択
仕事を優しく見られると
「このままでよい」
手を抜かない
2. 「対策すべし」
 顧客
3. 「対策したいがコストがかかる」(←グ
 他部署の人
レーな回答を集める)
 自分の家族
1.
39
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