日本と東アジア貿易専題研究(一)
日本對東亞貿易專題研究(一)
担当 小山直則
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講義の概要(1)
●教科書(講義で使います)
三橋規宏他(2008)『ゼミナール日本経済入門』日本経済新聞社。
●参考文献
浦田秀次郎(2009)『国際経済学入門』日経文庫。
内閣府『経済財政白書/経済白書 』
http://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html
経済産業省『通商白書』
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/index_tuhaku.ht
ml
宮崎勇他(1997)『世界経済図説』岩波書店。
宮崎勇他(2008)『日本経済図説』岩波書店。
2
講義の概要(2)
• 水曜日 日本對東亞貿易專題研究(一)
教科書第7章以降。「国際経済と日本の貿易」、
「グローバリゼーション下の円」、「変わる産
業構造」、「経営革新と雇用問題」、「地球環
境問題を考える」、「環境立国への道」を学ぶ。
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講義内容(1)
• 7章 国際経済と日本の貿易 9/16 9/23 9/30 10/7
財、サービス貿易の拡大。貿易依存度の拡大。
• 8章 グローバリゼーション下の円
10/14 10/21 10/28
国際間の投資と金融的取引の拡大。
• 9章 変わる産業構造
11/4 11/11
グローバル化と日本の産業構造の変化。
●11/18 休み
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講義内容(2)
• 10章 経営革新と雇用問題
11/25 12/2 12/9
日本型経営システムの変化。労働市場。
• 11章 地球環境問題を考える 12/16 12/23 12/30
環境と経済の関わり。日本と国際社会の取り組み。
• 終章 環境立国への道 1/6
新しい国家目標への模索。
• 最終レポート締め切り(1/17)
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講義内容(3)
●成績評価と課題
• 報告テーマを決める。途中で多少変更してもよい。
• 中間報告
7章から9章までの内容を用いて報告(30%)。
• 期末報告
同じテーマを7章から終章までの内容
を用いて報告(30%)。
• 最終レポート
中間報告と期末報告の内容をまとめて提出(40%)。
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論文、レポートの三つのポイント
●三段論法
(1) 主張(結論、提言)
↓Why?主張の裏づけ
(2) 根拠(経済的事実、データ、具体例)
数字や図表を提示することが重要!
(3) 論拠(理由(…(だ)から))
主張と根拠を結びつける因果関係の説
明。
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報告の流れ
•
•
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
•
•
テーマ(論題)
序論
研究背景=テーマに関する情報提供
問題意識=先行研究への疑問とか批判。
研究目的=主張を明らかにすること
研究方法=主張を裏付ける方法。
構成、研究の方向性
本論(主張、根拠、論拠)
結論
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第7章 国際経済と日本の貿易
●7章の内容
Ⅰ. 日本経済TODAY
1. 変わる世界経済のダイナミズム
2. アジアの成長、挫折、回復
3. 急増する地域貿易協定
4. 自由貿易と経済摩擦の相克
5. 中国の加盟とWTO体制
Ⅱ. 貿易理論
Ⅲ. 統計を読む
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1. 変わる世界経済のダイナミズム
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貿易依存度
●貿易依存度とは、GDPに占める貿易額の大
きさのこと。
貿易依存度=(輸出額+輸入額)/GDP
●日本の貿易依存度は、戦後ほぼ20%前後で
推移。2003年以降、急速に拡大。2006年に
は、30%を上回った。
●2002年以降の「小泉景気」の要因は、設備
投資と輸出の拡大。
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貿易依存度の拡大は、世界的傾向
●アメリカの貿易依存度
(1) 1960年代、10%に満たなかった。
(2) 1970年代以降、貿易依存度拡大。貿易赤
字拡大。
(3) 2006年には、日本と同程度の28%まで上
昇。
●NIESやASEAN諸国の多くは、輸出だけで
GDPの半分以上を占めている。
●中国の貿易依存度は40%を超えている。
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なぜ、貿易依存度の考察が必要なのか?
(1) 貿易摩擦問題
(2) 地域貿易協定の進展
(3) 国際貿易と経済成長の関係
(4) アジア通貨危機、金融危機の影響
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金融危機後の輸出の落ち込みが
日本経済に大きな打撃を与えた。
貿易依存度との関連か?
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日本の経済成長と貿易
●実質GDP成長率
• 2008年の第4四半期はマイナス14.4、2009年の第1四半期が
マイナス15.2(年率)
• 2009年の第1四半期は、外需の落ち込みによって始まったマ
イナス成長の影響が内需にもはっきりと現れてきた。
• 日本の貿易依存度はアジアの他の地域より低いのに、なぜ
金融危機後の落ち込みが大きかったのか?
参考文献
吉川(2009)「特別講演「日本経済:内需主導の回復、持続的成
長の可能性」」
http://www.rieti.go.jp/jp/events/09070301/yoshikawa.html
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日本の高度成長は内需主導
90年以降輸出主導型に変化
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戦後日本の景気拡張期、縮小期
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日本の高度成長は内需主導
90年以降輸出主導型に変化
(1) 高度成長期の実質年率10%成長は基本的
に内需主導。
(2) 高度成長期(岩戸景気、オリンピック景気、
いざなぎ景気)の輸出の寄与率は5%程度。
消費の貢献は60%程度
(3) 「小泉景気」の輸出の寄与率が約60%。消
費はGDPシェアの60%を占めるにもかかわ
らず、経済成長への寄与率は30%くらいし
かない。
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中国の成長と貿易
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中国の成長と貿易
●特徴
(1) 2007年の実質GDP成長率は11.9%(年率)と、1994
年の13.1%(年率)以来の高い成長率。
(2) 2005年以降、純輸出のGDP成長率への寄与が高
まっている。
(3) 貿易依存度((輸出額+輸入額)/名目GDP)も
WTOに加盟した2001年の38.5%から2006年に
は66.6%に大幅に上昇。
(4) 2001年以降、最終消費支出の寄与度が投資を上
回る。
→消費主導型経済成長に向かうか?
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日本空洞化論
●日本企業が中国に生産拠点を移せば、日本
の国内製造業は空洞化し、雇用機会が失わ
れるのではという考え方。
→本当なのか?
●アメリカとの事例で検討
●中国との事例で検討
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日本空洞化論
アメリカの事例から検討
• アメリカは日本の最大の海外直接投資の仕
向け先。
• 自動車の貿易摩擦などを回避するために、
米国に工場を移した。
=相手市場開拓型直接投資
• 日本の自動車産業はアメリカで市場を開拓で
きたため、国内でも存続している。
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日本空洞化論
中国の事例から検討
●日本企業の中国進出動機
(1) 相手市場開拓型直接投資
(2) 生産コストの削減
●日本の対中国貿易黒字
中国で最終財(完成品)組立て、日本へ輸出。
日本から中国に部品を輸出。
→空洞化の問題は小さいか?
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アジアの貿易構造
単位 億ドル
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アジアの貿易構造の特徴
●東アジアの域内貿易拡大 電気機械の部品の工程分業
(1) 1981年~1991年:輸出合計は、東アジア3.2倍(1,043億ドル→3,331億ド
ル)、
世界では1.8倍に拡大。
(2) 1991年~2001年: 輸出合計は、世界1.8倍、東アジア2.1倍。
●NIESの貿易拡大
(1) NIEsから日本への輸出は3.5倍(91億ドル→320億ドル)、日本からNIEs
への輸出は3.1倍(213億ドル→669億ドル)、
(2) NIEs諸国・地域間では5.0倍(83億ドル→417億ドル)。
●日本と東アジア貿易の拡大
(1) 日本-中国間の貿易は4.0倍(189億ドル→759億ドル)
(2) 日本-ASEAN4間は1.6倍(485億ドル→778億ドル)
(3) 日本-NIEs間は1.4倍(989億ドル→1,374億ドル)
●NIEs、ASEAN4、中国の3極間の貿易の拡大
(1) NIEs-ASEAN4間は2.3倍(511億ドル→1,174億ドル)
(2) NIEs-中国は7.8倍(66億ドル→516億ドル)
(3) ASEAN4-中国間は4.8倍(44億ドル→210億ドル)とも拡大した。
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アメリカの「ニューエコノミー」論
米国大統領報告書
(1) 高い生産性上昇率
73年-95年平均年率1.4%。
95年-2000年平均年率3.1%。
情報技術革新投資の効果(Jorgenson(2000))
(2) 低インフレと低失業率の共存
97年-2000年の消費者物価上昇率2%台。
この間、失業率低下、 2000年には年平均4%
(3) 財政赤字の解消
(4) 他の先進国に比べて際立つ経済パフォーマンスのよさ
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アメリカの景気は世界経済に影響?
●アメリカの貿易
(1) 2005年のアメリカの輸入は世界総額の
16%。
(2) 2000年までの好景気時、アジア各国からIT
関連製品を輸入し、情報設備投資を拡大。
(3) 2001年以降、景気が減速。アジア諸国が輸
出減に直面。
(4) その後の金融危機における波及効果。
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テーマ
「アジアの中で貿易依存度が比較的低い日本が金融
危機後の落ち込みが大きかったのはなぜか」
●序論
(1) 研究背景
(2) 問題意識
(3) 研究目的
(4) 研究方法
(5) 構成、研究の方向性
●本論(主張、根拠、論拠)
●結論
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序論
(1) 研究背景
• 何を書くのか?
⇒読者に予備知識、情報を提供する。
⇒論文の手っ取り早く理解させる。
• 貿易依存度とは何か?経済成長の要因は?
• 貿易依存度と経済成長の関わりを書く。
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序論
(1) 研究背景
●金融危機→輸出の減少→国内消費と投資の減少
この流れは、貿易依存度とどういう関係があるのか
という疑問を読者と共有してもらう。
●先行研究
• 貿易依存度の低い国は、外国貿易乗数が大きい。
• 吉川(2009) 90年台以降、輸出主導型の成長。
• 経済企画庁(2000) アジアの経済成長は輸出が重要
な役割。
●労働人口の減少は、日本の経済成長にマイナスの
影響があるのでは?
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貿易依存度と外国貿易乗数
• 外国貿易乗数は、輸出が一億円増えた(減少
した)ときのGDPへの波及効果を表す。
• 外国貿易乗数=1/(1-消費性向+輸入性向)
• 消費性向とは、国民所得のうち、消費支出が
に回される割合。
• 輸入性向とは、国民所得が一億円増えたの
輸入額の増加分。
• 貿易依存度が低い国ほど、輸入性向は低い。
• したがって、外国貿易乗数は大きくなる。
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序論
(2) 問題提起
日本がアジアの中で金融危機の影響が大き
かったのは、日本の貿易依存度がアジアの
他の国に比べて低かったからではないだろ
うか?
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序論
(3) 研究目的
•
最終的に明らかにしたい内容(=主張)を具
体的に表現する。
主張1. 日本の貿易依存度が低く、アジアの中
で外国貿易乗数が高かったため、金融危機
の影響が大きかった。
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序論
(4) 研究方法
• 研究目的は、主張を裏付けることである。
• 主張とは、言いたいことである。
• 研究方法とは、言いたいことをデータや
先行研究によって裏づけ、読者を説得す
る方法である。
• すなわち、根拠と論拠を示す方法である。
• 論文執筆とは、言いたいことを裏付ける
作業である。
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本論
• 論文でもっとも重要な箇所。
• 主張を裏付ける根拠と論拠を示す。
• 必要なデータ、先行研究の引用を行い、主張の
根拠を提示する。
• 根拠と主張の因果関係を論拠で示す。
• 根拠を覆す反例が存在すると、主張は成り立た
なくなる。
• 根拠のデータが正しくても因果関係に問題があ
り、論拠が否定されても主張は成り立たない。
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主張の裏づけ
●主張の根拠
• 日本の貿易依存度はアジアの中で低い(先ほ
どデータを提示)。
●主張の論拠
• 日本の外国貿易乗数は高い(先ほど説明)。
• GDPの減少額=外国貿易乗数×輸出の減
少額
• 日本はアジアの他の国の中で金融危機の影
響が大きかった。
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結論
●本論で明らかになったことをもう一度ま
とめる。
●論文の評価
(1) 分析の優れている点、新しい点
(something new)をアピールする。
(2) 分析方法の問題点、限界を示す。
●今後の課題
紙面の都合で分析しなかった点や今後発
展させるべき内容について言及する。 37
結論
●まとめ
(1) 日本の貿易依存度が中国、NIES、ASEAN
諸国に比べて低い。
(2) 貿易依存度が低いことは、外国の景気の影
響を受けにくいということを意味しない。
(3) むしろ、外国貿易乗数を大きくし、外国の景
気変動を大きく受けるのである。
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結論
●評価
(1) 貿易依存度の低くすれば、外国の景気変動の影
響を低くできるので内需拡大を訴える提言が間違
いであることが示された。
(2) 具体的にアジア各国の外国貿易乗数を推計し、
金融危機の波及効果を推計する必要がある。
(3) アジア以外の国の例を考慮していなかった。
●今後の課題
以上の点は、紙面の都合により分析できなかった。
これらについては今後の課題としたい。
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