資料3
「児童・生徒に対するDVの発見・
支援プログラム」について
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プログラムの趣旨
⼦ども達の学校現場におけるいじめや不登校等何らかの不適応症状や問題⾏動の中には、
その原因として背景にDVの影響が考えられる。
このような児童・⽣徒を早期に発⾒し、⽀援を⾏うことは、その児童・⽣徒が学校⽣活を
安定して送るだけではなく、⼦どもたちに対し、将来の被害者、加害者を⽣まないことにも
つながる。
そのため、学校や関係機関における児童・⽣徒への関わりの充実と、DVの影響を受けた
児童・⽣徒への⽀援がより広がることを⽬的として作成した。
①
②
③
④
⑤
プログラムの⽅向性
DVが⼦どもに与える影響について、児童・⽣徒を取り巻く周囲の関係者に認識を深めて
もらう。
児童・⽣徒が発するサイン認知の感度を⾼める⽅法や、サインの具体例、対処法を提案
する。
教職員の負担軽減と、より良い問題解決のため、外部専⾨機関の活⽤策の提案する。
また、外部機関による問題⾏動の未然防⽌のための⽅法の提案する。
⼩中⼀貫校化の流れに沿って、9年間の取組等について提案する。
プログラムの活⽤へ向けて、学校関係者へ向けた研修を実施する。
2
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<第1章 DVに関する基礎的理解>
⼩中学校における問題⾏動の背景には、DVが⼦どもに与える影響が考えられます。
DV家庭で⼦どもが育つ場合、情緒⾯で混乱を抱えたり、⾃尊感情の低下などにより
学校での問題⾏動に繋がることが多いと⾔われます。
⼀旦、問題⾏動が⽣じれば、その対応に時間や⼈員を要するばかりではなく、周囲
への悪影響も懸念されます。
(1)DV(ドメスティック・バイオレンス)とは
⼀般的には「配偶者や恋⼈など親密な関係にある、⼜はあった者から振るわれる暴⼒」と
いう意味で使⽤される。
3
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<DVの種類>
DVの種類
内
容
精神的暴力
恐怖感、威圧感を感じさせるような行為を通じて過度に精神的負担を
負わせること。
身体的暴力
身体に対して危害等を加えること。
性的暴力
本人の意思とは関係なく、性に関することを強制させること。
経済的暴力
家庭生活を維持するためのお金について不要な制限をしたり、圧迫を加える
こと。
社会的暴力
妻の社会的活動を制限したり、他者との関わりを制限したりすること。
子どもを利用した暴力
子どもを巻き込み、子どもを利用して相手を服従させること。
4
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
(2)佐賀県⽴男⼥共同参画センターにおけるDV相談
⼥性総合相談の中でも特に多いのが、⼥性のDV被害に関する相談であり、平成21年以降、
全相談件数に占めるDVに関する相談割合は30%前後。
内閣府による「男⼥間における暴⼒に関する調査(平成23年度調査)」で、約4⼈に1⼈は
配偶者から被害を受けたことがあると回答。
(3)児童虐待としてのDV
児童虐待の防⽌等に関する法律では、DVは、⼦どもに著しい⼼理的外傷を与える⾔動を
⾏うこととして児童虐待(⼼理的虐待)に含まれるとされている。
⾝体的虐待・性的虐待
ネグレクト・⼼理的虐待
保護者から児童への
不適切な⼒の⾏使
保護者
児童
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<児童虐待の種類>
児童虐待
の種類
⾝体的虐待
性的虐待
内
容
児童の⾝体に外傷が⽣じ、⼜は⽣じる恐れのある暴⾏を加えること。
児童にわいせつな⾏為をすること⼜は児童をしてわいせつな⾏為をさせる
こと。
ネグレクト
児童の⼼⾝の正常な発達を妨げるような著しい減⾷⼜は⻑時間の放置、その他
の保護者としての監護を著しく怠ること。
⼼理的虐待
児童に対する著しい暴⾔⼜は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における
配偶者に対する暴⼒その他の児童に著しい⼼理的外傷を与える⾔動を⾏うこと。
6
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
(4)DVが⼦どもに与える影響
⼦どもは思考が及ぶ範囲で、家庭で起きていることを理解しようとする。
⾃分の責任と考えたり、家族間の誰かを悪者にしたりする発想で、⼼のバランスをとろう
と必死に努⼒した結果、バランスを⽋いた⾏動が表出し始め、それが⼤⼈の⽬には問題⾏動
として映ることがある。
<DVなどの家庭要因が⼦どもに与える影響>
家庭要因
・家庭環境
・保護者⾃⾝等の問題
⼦どもへの影響
・感情⾯への影響
・学習や認知への影響
・⽣活⾯への影響
問題⾏動の表出
・⾃尊感情の低下
・⼈間関係形成の困難さ
・学習の遅れ
・⽣活習慣の乱れ 等
⼦どもは
⼼を痛めています!
7
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<第2章 学校での取組>
問題⾏動を起こしている児童・⽣徒に対し、適切なタイミングで適切な対処がなさ
れなければ、⾃信の喪失や⼈間不信、暴⼒での解決という固定化した内的モデルを
形成することで、さらなる暴⼒を⽣みだすことにもなりかねません。
問題⾏動が現れる前に⽰すサインに気づき、早期の段階で関わりを持ち、問題⾏動
の芽を摘み取ることが、悪影響や悪循環を断つことに繋がります。
(1)学校に期待される役割
児童⽣徒が発するサインを認識したり、児童⽣徒・保護者等からの相談に応えたり、
健康観察や保健室での対応等から⼼⾝の健康問題の背景(問題の本質)にあるものを的確
に捉え、相談等を通して⽀援する。
(2)問題を察知するための感度やアセスメント能⼒を⾼める
「いつもと違う」、「なんか不⾃然だ」という感覚を持ち、⼦どもとその親の様⼦を
複眼でとらえるようにする。
(3)⾏動や体に現れるサイン
「⼩学⽣」、「中学⽣」といった発達段階に応じた特徴や、学校⽣活の場⾯ごとに
特徴的な傾向がある。
8
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<
学校⽣活場⾯ごとのサインの特徴
学校生活の場面
>
サインの特徴
学校生活全般
学校生活に適応しているように見えても、時々孤立していることがある。
授業中
やる気があるかと思えば、無気力であったり、居眠りするなど授業を受ける態
度が安定しないことがある。
また、特定の授業において特異な反応を示すことがある。
遊び時間
勉強と遊びの切り替えができないということがある。
外部講師による
講演会等
講演会の際に記載した感想等から担任も知らなかった意外な事実がわかるこ
とがある。
小学校入学の際の最初の段階で、保護者の養育態度や家庭状況が判断でき
る場合がある。
親の社会性の無さが家庭の状況に現れることがある。特に、DVが生じている
家庭の場合、DVであることを周りに知られたくないという心理が働き、他者が
家の中に入り込むことを嫌う傾向があると言われる。
入学式など
家庭訪問
着替え
家庭でDV等の虐待(身体的、性的、精神的等)が生じているために、着替えに
対する抵抗や身体や着衣に不自然な点が見られることがある。
長期の休み前
家庭での居場所の無さや劣悪な生活環境から、長期休みに対する不安や抵抗
を示すことがある。
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
(4)背景の把握
教職員⼀⼈ではなく学校⻑を始めとした教職員全体で取組むことで、早期発⾒、教職員の
不安軽減、問題の拡⼤を防ぐ効果が⾼まる。関係者との情報交換により、児童・⽣徒を多⾯
的・総合的に理解した上で、問題の本質(DV家庭等の環境要因、医学的要因等)を捉える。
(5)DVの影響を受けた⼦どもへの対応と発達障害
DVの影響を受けた⼦どもと、⼀部の発達障害を抱えた⼦どもの⽰す⾏動像が似ていると
⾔われる。
また、発達障害の疑われる児童⽣徒の家庭がDV家庭であるなど、背景と要因が複雑に絡み
合っていることもある。
それぞれの児童の特性に応じた配慮により、困難さを持つ児童も落ち着いた⽣活を送る
ことができる。
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<DVの影響を受けた児童・⽣徒への関わり⽅のポイント(例)>
問題の特徴
嘘を⾔う
(その場しのぎの⾔い逃れ)
⽀援・関わり⽅のポイント
すぐに責めない 否定しないで話を聴く
落ち着く場所でもう⼀度同じ質問をする
⽭盾が出てきた時に責めない
⾃⼰否定的な発⾔が多い
(⾃尊⼼が低い)
落ち着く場所でじっくり話を聞いてみる
継続して相談することを⽬的にしてみる
多⾯的によいところを伝える
注意しただけで反抗的な態度になる
注意しただけで極端に落ち込む
教職員は問題の背景を念頭に置き、なぜ
そうなるのか⼀緒に考える
⾃傷傾向があったら注意して⾒ておく
特定の友⼈に依存する
その友⼈がいないと不安な様⼦
その不安や困り感について⼀緒に考える
その友⼈から様⼦を聞き取り、教員と
して何ができるか考える
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<発達障害を抱えた児童・⽣徒への具体的な関わり⽅(例)>
特
性
理解⼒が乏しい
理解が遅い
必要な⾳だけを聞き分
けられない
コミュニケーション
がうまくできない
⾃分のきまりを
守りたがる
症状
何度⾔っても
分からない
よそ⾒をする
⽀援・関わり⽅のポイント
スモールステップで分かり易く伝える
視覚的に補って説明
(絵、写真、マーク、⽂字など)
注意を向けてから話す
座席の配慮をする
⼤事なことはメモを渡す
個別に伝える
図や吹き出しを利⽤し、⼈の気持ちや場
⾃分の話だけをする の状況を伝える
場の空気が読めない
こだわり
融通が利かない
同じ⾏動を繰り返す
してよい時間、場所などを決める
納得させ、良い⾏動に⾏こうしていく
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
(6)学校としての⽀援
校内組織で、⽀援⽅針・⽀援⽅法を検討し、関係者で⽀援チームを構成し共通理解を図り、
役割分担をして組織的に⽀援していく必要がある。
<⽀援の進め⽅>
⽀援計画の
策定
⽀援検討
会議
記
録
評
価
(7)SC(スクールカウンセラー、SSW(スクールソーシャルワーカー)について
学校の教育相談体制に⼤きな役割を果たす、SCとSSWの役割と活⽤策について、教職員
間で共通認識を持つ。
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<第3章 DV予防教育について>
これまでに中学校等において取組んできたDVの予防・啓発事業を通して、⾒えて
きた知⾒等を掲載し、効果的なDV・デートDVの予防策を提案します。
(1)DV予防教育の必要性について
暴⼒を連鎖させないための有効な⼿段として、
① 友⼈間のいじめや交際相⼿からの暴⼒を予防することを⽬的とした、⾃分と相⼿を
⼤切にする教育
② 性教育
③ 男⼥平等教育
④ 問題を抱える⽣徒の個別の⽀援
等が考えられる。
佐賀県DV総合対策センターでは、⼦どもが安全な⾏動を選択するようになるための取組み
として、中学⽣の発達段階に合わせた性教育プログラムと暴⼒予防教育プログラムを組み合
わせた「中学⽣向け予防教育事業」を展開している。
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<
中学⽣向け予防教育事業の内容
学
年
題材名
>
内
容
1年⽣
⼼⾝の機能の発達と
⼼の健康
講演「命の⼤切さ」
(受精から死までの⼈間のライフステージ)
グループ学習「中学⽣同⼠のつきあい」
2年⽣
健康と環境
講演「相⼿を思いやり⾃分を⼤切にする」
グループ学習「対等な関係とは」
3年⽣
健康な⽣活と疾病の予防
講演「エイズを通して命について考える」
グループ学習「年上の相⼿との交際の危険」
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
(2)DV予防教育の実践で得られた効果について
中学⽣向け予防教育では、教育の前後でアンケート調査を実施している。
アンケート調査結果からは、教育後は特に精神的暴⼒を暴⼒であると認識する⽣徒が増え
ていることがわかる。
DVやデートDV(交際相⼿からの暴⼒)は、精神的な暴⼒から始まるため、この意識変容
は将来のDV被害者、加害者になることを防⽌することに寄与すると考えられる。
(3)DV予防教育を通した⼈間関係づくり
DV予防教育を通して、⽣徒⾃らが⾃分と相⼿を⼤切にする意識を育てること、教職員等
まわりの⼤⼈が児童⽣徒の問題⾏動をいち早く把握し⽀援を⾏うこと、学校と家庭の両⾯
でまわりの⼤⼈が関わりを持ち続けること、このようなことができれば児童⽣徒の⾃⼰肯定
感を⾼め、ひいては将来の⼈間関係によい影響を与えることにもつながる。
16
<
児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
中学2年⽣の男⼥交際における暴⼒種類の認知項⽬の変化
>
<男 ⼦>
暴⼒として
認識している率
(%)
<⼥ ⼦>
暴⼒として認識
している率
事前
事後
事前
事後
たたいたりして、けがをさせる。
93.3
96.1
94.4
97.1
けがをしない程度に、たたいたり、けったりする。
79.9
86.5
72.6
81.9
突き⾶ばしたり、ものを投げつけたりする。
92.9
96.0
96.1
98.5
ものをこわしたり、なぐるふりをする。
63.1
74.2
59.0
74.1
⼤声でどなる。
39.5
58.1
49.4
73.1
ばかにしたり、⼼が傷つくようなことを⾔う。
76.9
87.4
73.8
86.0
何を⾔っても、相⼿にせず無視する。
52.2
69.8
51.4
69.5
監視したり、外出させなかったりして⾏動の⾃由を奪う。
77.4
84.8
82.3
89.7
性⾏為やキスを断れなくする。
74.1
84.5
73.5
88.4
他の異性と話をしたり、親しげにしたりすることを怒る。
53.4
72.7
42.7
66.5
質問項⽬
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<第4章 参考事例>
実際の⽀援の際に役⽴てていただけるよう、発⾒⽅法とその後の⽀援⽅法に分けて、
問題を抱えた児童・⽣徒に対する取組み事例を複数掲載しています。
(1)佐賀県における事例
佐賀県内における事例を、⼩学校、中学校に分けて掲載。
就学時引継ぎでの取り組み事例も掲載。
(2)全国における事例
全国における取組み事例を掲載。
特性に応じた⽀援により
落ち着いた⽣活へ
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム「マニュアル」の内容
<資料>
本編の内容について、更に深い知識を得てもらうための情報や、付随する資料を
掲載しています。
また、地域資源の活⽤のため、連携機関の連絡等も掲載しています。
(1)⼦どもがDVに巻き込まれるケースの図解
「⼦ども虐待としてのDV -⺟親と⼦どもへの⼼理臨床的援助のために- 春原由紀」
より、⼦どもがどのようにDVに巻き込まれているかの図解と、具体例を掲載。
(2)「がばいシート」について
児童・⽣徒の状態を把握し⽀援につなげる⽅法の⼀つとして、⼦ども同⼠の⼈間関係が
良好であるか、教師と⼦どもの関係はどうか、⼦ども⼀⼈⼀⼈が⾃⼰存在感を感じているか
を把握し、その状態に応じた⽀援を考えるために作られた「がばいシート」の⼀例を掲載。
(3)地域の主な関係機関について
地域資源の活⽤のため、学校外の連携機関の連絡等を掲載。
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児童・⽣徒に対するDVの発⾒・⽀援
プログラム教職員への研修状況(予定含む)
平成25年度は、計26回の研修会の実施を予定
(1)佐賀県⼩中学校校⻑会
(2)佐賀県公⽴学校教頭会
(3)佐賀県養護教諭研修会
(4)佐賀県教育センター職員向け研修会
(5)中学⽣向け予防教育等に付随して実施
等
20
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