2007年度
破産法講義
5
関西大学法学部教授
栗田 隆
破産法講義 第5回
1. 民事執行・保全処分
2. 係属中の訴訟等
T. Kurita
2
破産債権・財団債権に基づく民事執行



破産債権に基づく新たな強制執行は許されず、
すでになされているものは、その効力を失う
(42条1項・2項)。根拠:100条参照。
一般の先取特権や企業担保権の新たな権利実行
手続は許されず、すでになされているものは、
その効力を失う(42条1項・2項)。根拠:98条参
照
財団債権に基づく上記の執行も許されず、すで
になされているものは、その効力を失う(42条
1項・2項)。政策的決断である。
T. Kurita
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続


民事保全法による仮差押え・仮処分も上記に準
ずる。
民事執行法196条の財産開示手続も、効力を失
う(42条6項)。
T. Kurita
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その他の権利に基づく民事執行


取戻権となるもの(所有権など)は、62条によ
り破産手続外で行使可能であり、
別除権となるもの(抵当権など)は、65条によ
り破産手続外で行使可能である。
T. Kurita
5
破産債権に基づく執行の効力喪失の意味


破産債権に基づく執行は、それが破産手続の追
行や破産的清算の障害となるので、破産財団と
の関係で効力を失う。
執行による処分禁止効(民執59条2項)が破産財
団にとって有益である場合には、その効力は破
産財団のために存続する。
T. Kurita
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設 例
X
42条2項に
より効力
を失う
破産
管財人 Z
Y 破産
債権
強制執行とし
ての差押え
所有権移転登記
抹消登記請求
譲渡・
登記済み
A
破産手続
開始前に
取得した
から私の
ものだ
破産管財人は、不動産が破産財団に属すること
をどのように根拠付けたらよいか?
T. Kurita
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破産手続の開始前に開始された滞納処分


破産手続の開始前に開始された滞納処分は、続
行できる(43条2項)。
行政庁が滞納処分を追行しない場合には、管財
人は184条1項により換価できると解すべきであ
る。この場合に、滞調法9条・17条の(類推)
適用により続行決定をする。
T. Kurita
8
破産手続の開始後における新たな滞納処分


新たな滞納処分を許すと、破産手続の円滑な進
行が妨げられることになりやすいので、破産手
続開始後の新たな滞納処分は許されないとされ
ている(43条1項)。
留意点 滞納処分による換価より、管財人によ
る換価の方が迅速で有利(高価額)なことが多
い。
T. Kurita
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破産財団に関する訴訟手続の中断・受継(44
条)
次のものに関する訴訟手続は、44条1項により中断
する。
1.破産債権 - 破産手続により行使すべきであ
るから(100条)
2.その他(訴訟手続は破産管財人が受継する)
a.財団財産 - 管理処分権が管財人に移るか
ら(2条14項)
b.財団債権 – 破産手続によらずに破産管財
人が随時弁済すべきものであるから(2条7
項)
T. Kurita
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受継(じゅけい)
意義


新追行者による手続の続行(手続の受け継ぎ)
これは、中断された訴訟手続を新追行者(当事
者または法定代理人)が旧追行者に代わって追
行ないし続行することである。44条6項の受継
が、この意味の代表例である。
但し、手続続行申立て(受継申立て)の意味で
用いられることもある(旧破産法69条参照)。
T. Kurita
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中断と受継
破産
X
手続の中断
代金支払請求訴訟
手続の受継
Z
破産管財人
(手続を受継
すべき者)
Y
受継申立て
通知
裁判所
Zとの関係
で中断解消
T. Kurita
Yとの関係
で中断解消
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財団財産に関する訴訟の中断・受継
訴え提起
当事者について破産手続開始
=訴訟手続の中断(44条1項)
管財人による受継(44条2項)
判決
T. Kurita
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訴訟係属中に破産手続が終了すると、訴訟手
続は再び中断し、破産者が受継する
訴え提起
破産手続開始=訴訟手続の中断(44条1項)
管財人による受継(44条2項)
破産手続の終了=中断(44条4項)
破産者による受継(44条5項)
判決
T. Kurita
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破産管財人による受継前に破産手続きが終了すると、
元の破産者によって当然に受継される
訴え提起
破産手続開始
=訴訟手続の中断(44条1項)
破産手続の終了
=元破産者による当然受継(44条6項)
判決
T. Kurita
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無益と判断される訴訟の取扱い
訴訟手続を受継した破産管財人が勝訴の見込みがな
い(あるいは、訴訟費用等を考慮して、訴訟の続行
が無益である)と判断される場合。
 破産者が破産により消滅する法人の場合
破
産管財人は、請求の放棄・認諾、訴えの取下げ
あるいは和解により訴訟を終了させてよい。
 個人の場合
破産管財人は、破産者のために
目的物を財団から放棄する。
T. Kurita
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訴訟手続を受継した破産管財人の地位


破産管財人は従前の訴訟状態を引き継ぐが、固
有の攻撃防御方法(対抗要件の欠缺・否認権
等)の提出は妨げられない。
相手方の訴訟費用償還請求権は財団債権となる
(44条3項)
T. Kurita
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設例
買主
X
売主
所有権移転登記請求
代金支払
いずみ
破産
Y
手続の受継
Xは所有権取得の対抗要
件を具備していないので、
Xの権利は破産債権にし
かならない。
T. Kurita
Z
破産管
財人
私は、民法177条の
第三者にあたる
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財団債権に関する訴訟の受継の例
代金は減額さ
れて1億円だ
買主 X
減額の合意は無効で、
代金は2億円だ
破産
Y 売主
所有権移転登記請求
代金未払い
手続の受継
履行を選択する
破産
Z 管財人
Xの所有権移転登記請求権は財団債権に
なり(148条1項6号)、破産管財人はこ
の訴訟を44条2項により受継できる。
T. Kurita
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破産者が当事者になっていない訴訟の受継


破産者の債権者が債権者代位権(民423条)に
基づき、取立訴訟をしている場合。
破産者の債権者が債権者取消権(民424条)に
基づいて訴訟をしている場合。
T. Kurita
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債権者代位権(民423条)
債権者
X
受継
α債権
β債権取立訴訟
Y
破産
債務者
β債権
中断
Z
A
第三債務者
破産管財人
T. Kurita
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債権者取消訴訟(民424条)
債権者
受継
A
破産管財人
X
破産
債権
Y
中断
債権者取消訴訟
無償譲渡
否認訴訟または否認
決定に対する異議訴
訟(45条、173条・
175条)
T. Kurita
Z
債務者
受益者
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取立訴訟⇒債権確定訴訟
破産債権者(無名義債権者)
取立訴訟
債権確定訴訟(127条)
(破産債権者
による受継申立て)
破産者
異議者等(他の債権者、管財人)
(当事者変更)
T. Kurita
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最判昭和59.5.17判例時報1119-72
一時使用の賃貸借が終了した
X
地主
 建物収去土地明渡請求
 月13万の賃料相当額の
控訴審係属
中に破産
Y 借地人
損害賠償
受継
控訴審は、Yの破産管財人からの受継
申立てを受けて、訴訟手続全体の受継
を許容し、訴訟を進行させ、Xの請求
を全部認容した。これは正当か
T. Kurita
Z
破産
管財人
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最判昭和59.5.17判例時報1119-72(続)
上告審は、原判決のうち、
1. 建物収去・土地明渡請求認容部分および破産
宣告後の時期に係る損害賠償請求の認容部分
を正当としつつも、
2. 破産宣告前の時期に係る損害賠償請求の認容
部分を破棄し、差し戻した。
Q 破産法44条2項・127条1項・244条2項・128条
を参照しながら、その理由を説明しなさい。
注:「破産宣告」は、現行法では「破産手続の開始」である。
T. Kurita
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2006破産法講義5