情報モラルデザイン論
第4回 情報の所有と公私
2007年5月11日 吉田寛
情報の階層と特徴
Information 情報
世界の状態 知識
Know What
自分の状態 自己知
Common Sense
世界と自分の関係 Know How 常識・背景知識
Representation 表現
Code解釈コード
Symbol 記号
Data データ 定量化可能 コピー可
Object モノ、電波 定量化可能 コピー不可
情報の特性と所有
Know What
共有 文法や辞書的意味、法律、ニュース、常識
私有 秘密情報、企業秘密、自己知
? 個人情報、著作
Know How
共有 自転車の乗り方、公共サービスの受け方
私有 秘伝の技、個人的な工夫
? 専門技術、特許権
情報の所有と力
情報を所有することは力を所有すること
世界の状態の情報→世界の統治、合理的な判
断と行動(意識されることも多いが暗黙的なこと
も)
• スパイ、教育、新聞、出版、ネット、うわさ
自己と世界の関係→○○できる能力、適応力な
ど(往々にして暗黙知として働く)
• How To本、○○の仕方系番組、○○教室、リテラシー
自己知→適応力のベース、目的や理想、一貫性、
やる気、忍耐力、持久力、嫌悪
• 「自分探し」、性格判断、日記、階級意識、ブランド
個人情報の私有、共有
前々回のテーマ
個人情報の国家や企業による収集と利用の問題
と制限
『ホロコーストとIBM』
国家による個人情報の無制限の体系的収集とそ
の悲劇的結果
収集と利用において情報技術(企業)の果たした
役割
「個人情報保護法」
個人情報利用の利便性と制限のバランスをとる
ための法律
不正アクセス禁止法
「不正アクセス禁止法」2000年2月施行
システムへの許可のないアクセスを禁じる
許可のないアクセス=他人のID・パスワードで侵
入、セキュリティホールをついて侵入
施行前の状態
侵入したサーバ・コンピュータの内容を変更したり、
破壊したりしない限り、犯罪とはされなかった。
• 電子計算機損壊等妨害罪
情報を見ること、コピーして持ち出すことができた。
「不正アクセス禁止法」と情報の公私
ハッカー
クラッカー=悪意や名誉欲によってシステムに侵入、破壊、
盗みなどの被害を与える
ハッカー=技術に習熟し独自の倫理的信念に基づいて
活動する者
ハッカー倫理
情報はフリーであるべきであり害を与えない意義のある
侵入は許される。
意義のある侵入=不正利用の監視、セキュリティホール
の発見、資源の有効活用、技術の向上
法の未整備な西部劇的状況で一定の評価
個人情報の乱用、情報公開や透明性の不十分、他
現在は、ハッカー倫理も発展・変容しつつある。
著作権と情報の所有
著作権(著作者人格権と合わせて著作権とい
うこともある。「著作権法」では共に保護)
思想や感情の表現の利用について、著作者の独
占的な権利を認める
複製権、編集権、放送権、頒布権、上演権
著作者はこれを譲渡して収入を得ることができる
著作者人格権
公表権、氏名表示権、同一性保持権
著作者の基本的人権を保護するためのもの
譲渡不可能:人権は他人に譲渡できないから
財産権としての著作権の意味
著作者の所有財産
Copy right(複製権)や放送権、上演権などを、出
版社、劇場、放送メディア等に売り、著作者(&映
画会社や歌手、レコード制作会社等の製作者)は
収入を得ることができる
著作権の理由
インセンティブ理論 創作意欲→文化の向上
• 著作権があれば、著作者はよりよい作品を作るほどよ
い値で売ることができ、創作意欲が高まり、結果として、
社会によりよい文化的創作物があふれ、文化が向上
する
著作権の制限 公共的情報
民主主義のための情報共有
事実情報
• ニュース
• データ
• 公文書
選挙の結果。地震情報。訃報。
データベース。電話帳。
政策計画。報告書。
公共的規則
• 法律
• 標準
憲法。民法。著作権法。条例。
ISO。JIS。インターネットの規格。
文化発展のための情報共有
創作
• 民族文化
• 古典
唐草模様。十字架。文化財。
源氏物語。雪舟の水墨画。50年(70年)ルール
研究
• 科学的知識
論文、授業の公開
著作権への反対、批判
ハッカー倫理 情報はオープンであるべき
情報特性からの議論
情報はモノとは違って占有しないと使えないものではない
(いくらでもデータはコピーできる)から、モノのように所有
権、占有的使用権を認める理由はない
インセンティブ理論への反論
創作は他人の創作を利用して行われる。
人は、金銭的欲求だけで創作するわけではない
むしろ、公開→利用による創作→公開→創作によって文
は向上する。
著作権フリー運動
GNU ストールマン
GNUプログラム ソースコードの公開(オープン・ソース)
遺伝性 GNUプログラムを使用したプログラムはGNUプ
ログラムである
リナックス リーナス・トーバルズ
UNIXを個人PCで使いやすく工夫
ボランティアで開発→無料で配布
Windows、MacOSに対抗するフリーのOSとして発展
フリーカルチャー レッシグ
「クリエイティブ・コモンズ」著作者は、著作権法の枠内で
コンテンツ利用制限、開放を自由に設定できる。
Wikipedia、2ちゃんねる、ブログ、Web2.0的表現
ネットワークを利用してコンテンツを共同で作成する発想
著作権とどう整合性がつけられるか不明な段階
Know how の私有
秘伝のロジック
流派のステータス維持
技術の濫用や誤用を防止する
特許権
アイデアの保護→独創的なアイデア→企業やエンジニア、
研究者、発明家の競争力向上
アイデアの保護→独創的なアイデア→産業の向上
暗黙的技術、技術の技術→専門職
専門職(プロフェッショナル)=高度な専門技術を持ち、顧
客と公共に対して台頭の立場で、責任を持って判断
医師、弁護士、建築士、看護師、教授、コンサル、
資格認定、同業者組合などによる責任と特権維持→技術
と自律性の維持
専門的技術の公共性
専門家と素人の不均衡 決定と責任
パターナリズム 専門家が素人を配慮して一方的に決定
する→不透明性、搾取、詐欺、医療ミスの隠蔽
インフォームド・コンセント 専門家が素人に説明して合意、
希望を取ってから実行する→説明不可能性、責任逃れ
消費者保護
PL法 欠陥製品による被害を生産(輸入)企業が取る
個人情報保護法 個人情報取り扱い業者のルール
専門職倫理
倫理綱領 専門家集団は自律的なルールを宣言→守る
コンセンサス会議 専門家と市民の相互理解、政策決定
情報社会における公と私
情報所有から見る社会の対立的イメージ
できるだけ情報が公開、共有され、協力的な文化
創造を基本とする透明で協調的な社会
個人や企業の情報の所有が保護された、競争に
よる活気ある創造的多元的社会
参考文献
『ハッカーVS.不正アクセス禁止法』園田寿他、日本
評論社
「システム侵入の倫理的問題」江口聡、in 『情報倫
理学』越智貢他編、ナカニシヤ
『サイバースペースの著作権』名和小太郎、中公新
書
『クリエイティブ・コモンズ』レッシグ、NTT出版
『2ちゃんねるで学ぶ 著作権』牧野・西村、ASCII
『ソフトウェアの著作権、特許権』椙山敬士、日本評
論社
『はじめての工学倫理』斉藤了文編、昭和堂
レポート課題
以下のテーマの中から一つを選び、その中で論点
(論題)を設定して自分の考えを論じよ。
–
–
1.
2.
3.
4.
5.
1000字程度。テーマと論点を明記。主張と理由。引用。
提出場所は学務Box 期限は5月いっぱい
個人情報、プライバシーの私的利用、公的利用、保護
ガバナンスにおける公的領域の尊重、個人的領域、共
同と自由
著作権法をめぐる情報の共有と私有
ハッカー倫理と情報公開
専門技術の私有と公共的コントロール
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