平成22年度地球環境科学専攻大気水圏科学系修士論文発表会
はじめに
雲内の0℃高度上方
様々な大きさと形状をした氷晶(単結晶、
多結晶)が存在。
形状・大きさ・数濃度・粒径分布
雲内での降水の形成・発達過程を知る上
で重要である。
鉛直方向の形状・大きさ・数濃度・粒径分
布を得るためには雲内の鉛直方向の直
接観測が必要である。
Lawson et al.(2006)より
はじめに
雲内の氷晶の直接観測方法
飛行機観測 …100μm以下の氷晶の大きさや形状を捉えきれない。
ビデオゾンデ観測 …氷晶を搭載した小型カメラで撮影。雲内の様子を観測
中常に映像で確認できる。
● Takahashi(1990)のビデオゾンデ
霰、雹、雪片の観測に適している。500μm以下の
氷晶は観測不可能。
山口大学 HP(http://web.cc.yamaguchiu.ac.jp/~kenjis/res.html)より
● 雲粒子ゾンデ(HYVIS;Murakami and Matsuo,1990)
7μm~2cmまでの氷晶とその形状とあわせて観測可能。氷晶(500μm未
満)観測が可能。
雲粒子ゾンデ(HYVIS)
Takahashi(1990)のビデオゾンデ
Murakami and Matsuo (1990)より
氷晶の大きさ
はじめに
過去のHYVIS観測
Murakami and Matsuo(1990):梅雨前線に伴う層状性降水雲の観測
Murakami et al.(1992):温暖前線に伴った昇滑雲の観測
Orikasa and Murakami(1997):巻層雲の観測
大きさ
● 500μmより小さな氷晶に着目した観測はあまりない。
● 梅雨期のメソ対流系に対する観測事例は今までにない。
500μm未満の小さな氷晶の形成過程は降水形成に必要不可欠。
本研究の目的
HYVISを用いて観測したメソ対流系層状性降水域の、500μm未満の
氷晶における、
● 形状
● 混合比
● 数濃度
● 粒径分布
の鉛直分布を明らかにする。
雲粒子ゾンデ(HYVIS)
氷晶
● 顕微鏡カメラと接写カメラを搭載。7μm
から3.7mmの氷晶をフィルム上に受けて両
カメラで撮影。
● 映像はマイクロ波で送信し地上で受信。
顕
微
鏡
カ
メ
ラ
接
写
カ
メ
ラ
● 映像は1秒間に最大30フレームの画像
データに分割可能。
1.4mm
顕微鏡カメラ画面
3.7mm
0.9mm
氷晶の形状と数
5.5mm
接写カメラ画面
HYVISの飛揚形態
● HYVIS本体約50cm上方に高層気
象観測用測器(GPSゾンデ)を取り付
けて放球。
● GPSゾンデ・・・位置、高度、気圧、
気温、相対湿度を測定。
氷晶の画像データの解析方法
200μmまで、10μmごとに最大径が測定可能なメ
ジャー
解析中の様子
● 1秒間に10フレームごと(鉛直方向約0.5m)の画像データを出力。
● 形状によってタイプごとに分ける。タイプごとの数をカウント。
● 10μm区切りで最大径を求める。200μm以上はノギスで測定。
● 合計8388個の氷晶をカウント。
氷晶のタイプ分け
画像データの目視により、その形状から6つのタイプに分類。
1.Needle 2.Column 3.Plate 4.Column and Plate 5.Aggregate 6.Undefined
1. Needle
● 針状の氷晶。
● 長軸 対 短軸の比が7:1以上。
2. Column
● 角柱状の氷晶。
● 長軸 対 短軸の比が7:1未満。
氷晶のタイプ分け
画像データの目視により、その形状から6つのタイプに分類。
1.Needle 2.Column 3.Plate 4.Column and Plate 5.Aggregate 6.Undefined
3. Plate
● 板状である氷晶。
● 板状で六角形のような形状をもつ。
氷晶のタイプ分け
画像データの目視により、その形状から6つのタイプに分類。
1.Needle 2.Column 3.Plate 4.Column and Plate 5.Aggregate 6.Undefined
4. Column and Plate
● Column と Plateの両タイプの氷晶
が確認できるもの。
氷晶のタイプ分け
画像データの目視により、その形状から6つのタイプに分類。
1.Needle 2.Column 3.Plate 4.Column and Plate 5.Aggregate 6.Undefined
5. Aggregate
● 最大径が100μm以上である。
● Needle、Column、Plate、 Column
and Plateのどれかの氷晶が複数
確認できるもの。
氷晶のタイプ分け
画像データの目視により、その形状から6つのタイプに分類。
1.Needle 2.Column 3.Plate 4.Column and Plate 5.Aggregate 6.Undefined
6. Undefined
● 形状がNeedle、Column、Plate、
Column and Plate、Aggregateに当
てはまらない。
● 形状が目視で判断できない。
HYVIS観測
● 期間:2008年5月29日~6月21日
● 2008年6月12日に放球した
HYVISの観測データを使用。
● 放球地点:情報通信研究機構
(NICT)沖縄亜熱帯計測技術セン
ター(沖縄県恩納村)。
● NICT所有のCバンド偏波レー
ダー(COBRA)と同時観測。
×:情報通信研究機構(NICT)沖縄亜熱帯計測
センター
○:COBRA(観測範囲120km)
赤外雲画像と気象庁レーダーで観測されたメソ対流系
2008年6月12日15JST
気象庁地上天気図
2008年6月12日15JST
×:放球地点
● 梅雨前線に沿ってメソ対流系が
発生。
赤外雲画像と気象庁レーダー
気象庁レーダーとCOBRAで観測されたメソ対流系
気象庁レーダー 2008年6月12日15JST
×:放球地点
1459JST
COBRA RHI観測 Zhh[dBZ]1459JST
AZ = 117°
HYVIS
★
● HYVISはメソ対流系の層状性
降水域を飛揚していた。
氷晶の形状の鉛直分布
過冷却水滴、ライミングした氷晶は観測されなかった。
氷晶のタイプ別数濃度の鉛直分布
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● ほとんどがPlate
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● 氷過飽和度は最大でも0.1 g m-3 と低い。
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⇒ Baily and Hallett(2009)より、本研究の氷過飽和度で
はPlateが出来やすい。
氷晶のタイプ別混合比の鉛直分布
形状…各々の氷晶の質量が分かり(例えば、Rasmussen et al., 1999)、そ
の数から混合比が求まる。
平均値
・
・
・
・
Needle: 0.001 g kg-1
Column: 0.003 g kg-1
Plate : 0.05 g kg-1
Column and Plate : 0.03 g kg-1
Column and Plateは質量が大
きいため混合比は大きくなっ
ていた。
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
N(D):粒径分布
D:粒径
氷晶数372個
N0:y軸切片
Λ:分布曲線の傾き
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
N(D)
N(D)
N(D):粒径分布
D
D
Λ
N0:y軸切片
Λ:分布曲線の傾き
N0、Λの鉛直プロファイルより、氷晶
の成長要因を考えることができる
(例えばLo and Passarelli,1982)。
N(D)
N(D)
N0
D
D:粒径
D
● N0とΛの減少・・・凝集。
● N0のみの増加、またはN0 の増加と
Λの減少・・・昇華凝結。
● N0のみの減少、またはN0 の減少とΛの増加・・・昇華蒸発
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
Λ:分布曲線の傾き
Λ μm-1
N(D)
N0
N0:y軸切片
N(D)
D
D
● 高度12-10kmでN0とΛの減少・・・凝集による氷晶の成長。
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
Λ:分布曲線の傾き
Λ μm-1
N(D)
N0
N0:y軸切片
N(D)
D
D
● 高度10-8kmでN0のみの増加・・・昇華凝結による氷晶の成長。
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
Λ:分布曲線の傾き
Λ μm-1
N(D)
N0
N0:y軸切片
N(D)
D
D
● 高度8-7kmでN0のみの減少・・・氷晶の昇華蒸発 。
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
Λ:分布曲線の傾き
Λ μm-1
N(D)
N0
N0:y軸切片
N(D)
D
D
● 高度7-6kmでN0のみの増加・・・氷晶の昇華凝結による成長 。
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar, 1948)によるフィッティング
N ( D)  N0 exp(ΛD)
Λ:分布曲線の傾き
Λ μm-1
N(D)
N0
N0:y軸切片
N(D)
D
D
● 高度6km以下ではN0とΛの減少・・・氷晶の凝集による成長 。
100μmで区切る場合の氷晶のタイプ別鉛直数濃度分布
100μm未満の氷晶
100μm以上氷晶
● 数濃度のオーダー
100μm未満:10万個 m-3
100μm以上:1万個 m-3
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先行研究と同じ(例えば、
Orikasa and Murakami, 1997)
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100μmで区切る場合の氷晶のタイプ別鉛直数濃度分布
100μm未満の氷晶
100μm以上氷晶
● 高度12-10km:氷晶の凝集による成長
・~20μmのUndefinedの数濃度が大きい。
これらが氷過飽和度がある領域でPlateに成長。氷晶間の距離がな
いため、一つの氷晶として成長したと考えられる。
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100μmで区切る場合の氷晶のタイプ別鉛直数濃度分布
100μm未満の氷晶
100μm以上氷晶
● 高度6km以下:氷晶の凝集による成長
・Aggregateが観測されている。
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100μmで区切る場合の氷晶のタイプ別鉛直数濃度分布
100μm未満の氷晶
100μm以上氷晶
● 高度10-8kmと7-6km:氷晶の昇華凝結による成長
・高度10-8km:氷過飽和度ほぼ0。
・高度7-6km:Plateの形成。
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100μmで区切る場合の氷晶のタイプ別鉛直数濃度分布
100μm未満の氷晶
100μm以上氷晶
● 高度8-7km:氷晶の昇華蒸発。
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● Plate、Column
and Plateの混合比の減少。
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まとめ
● 梅雨期に発生したメソ対流系層状性降水域の氷晶をHYVISで観測した。
● 500μm未満の氷晶に対して、鉛直方向の形状、数濃度、混合比、粒径分
布を示した。
○ 過冷却水滴、ライミングした氷晶は観測されなかった。
○全層を通してPlateが多いのは、氷過飽和度が多くても0.1g m-3と低い
ためであった。
○粒径分布の鉛直分布から得られたy切片N0、傾きΛの鉛直プロファイ
ルから氷晶は、
・
・
・
・
・
高度12-10km :小さな複数のUndefinedによる凝集。
高度10-8km :昇華凝結。
高度8-7km :昇華蒸発。
高度7-6km :昇華凝結。
高度6km以下 :凝集。
赤外雲画像
COBRA、ZDRのRHI観測
HYVIS放球リスト
平均上昇速度
[m/s]
放球域のエコー
タイプ
2008年5月30日23時24分 7669(※上下動)
2.0
線状対流システム
の対流域
2008年6月6日12時41分
5082(※上下動)
3.6
対流近くの層状域
2008年6月12日14時26分
15936
5.5
対流近くの層状域
放球日時(JST)
到達高度[m]
初め2機は、バルーンの浮力が不十分で上昇途中で上下動を繰り返したの
で、観測データとして使わなかった。
HYVIS観測時のメソ対流系における環境場
2008年6月12日15JST
LFC = 870.0 hPa
CAPE = 4.7 J/Kg
▲ 気象庁地上天気図
● 梅雨前線は沖縄本
島付近の北側にあった。
▲ 気温(黒線)、露点(青線)の鉛直
プロファイル。
▲ 温位(太実線)、相当温位(実線)、飽
和相当温位(点線)の鉛直プロファイル。
● 600hPa 高度以下は未飽和。それより上方では飽和状態。
● 700hPa 高度以下は対流不安定で、なおかつ自由対流高度(LFC) が存在
して対流有効位置エネルギー(CAPE) が正の値であるので、条件付き不安定
であったが、それより上方では、中立な環境場。
共同観測
● 名古屋大学はHYVIS受信機を持
たないため京都大学防災研究所中北
英一教授の科研費にもとづく観測(京
大・山口大・山梨大・NICT・つくば大・
電中研・名大などの参加)と共同観測
を実施
● 期間:2008年5月29日~6月21日
● 放球地点:情報通信研究機構
(NICT)沖縄亜熱帯計測技術センター
(沖縄県恩納村、東経127度50分48
秒・北緯26度29分40秒)
● NICT所有のCバンド偏波レーダー
(COBRA)と同時観測。
▲ HYVIS放球地点(NICT)とCバンド偏波レーダー
COBRAの位置。
HYVISのサンプリング体積Sv
Sv [m ]  7.39A  0.8375Vz  0.0218(Tcel 15)E
3
A:画像ファイルから換算したカメラ画面の実面積[m2]
Vz: HYVIS の上昇速度[m/s]
Tcel : 気温[◦C]
E : フィルムの露出時間[s](映像でフィルムが完全に
停止している時間)
混合比
氷晶の粒径分布における鉛直分布
Marshall-Palmar分布(Marshall and Palmar,
1948)を仮定したとき
N ( D)  N 0 exp(ΛD)
高度[km]
N0
Λ
決定係数
4.6
1000.0
0.0069
0.57
5.0
7999.0
0.010
0.67
6.0
10235
0.014
0.60
7.0
8000.0
0.014
0.67
8.0
13177
0.018
0.72
9.0
9500.0
0.017
0.73
10.0
6900.0
0.017
0.77
11.0
10035
0.023
0.75
12.0
16123
0.025
0.47
13.0
671.06
0.0078
0.37
14.0
440.34
0.0043
0.071
ダウンロード

梅雨期のメソ対流系層状性降水域における氷晶の粒径