復帰後42年間の沖縄における水事情について
1.水資源開発と水の安定供給のための整備
沖縄本島(正式には沖縄島)は、およそ北緯26度、東経127度に位置する、沖縄県の中
では最大の面積を持つ島である。
南北に細長い形をしており、最南端から最北端までの距離は約100kmであり、その地形
は島の南部は比較的平地が多く、一方、島の北部は山がちとなっている。島の周囲には、
大小の離島が点在している。
沖縄本島の主要な水の供給源である北部地域は、低い山岳地形のため、河川の流路
延長が短く、降った雨はすぐに海へ到達する特性がある。
沖縄本島の人口分布
沖縄本島の地質図
沖縄本島の地形図
国頭累帯
与
那
覇
岳
本部累帯
「高島」
「低島」
恩
納
岳
仲
泊石
川
島尻累帯
名
護久
志
岳
金
武
湾
那
覇
人口:沖縄県統計課
面積:国土地理院「全国都道府県市区別面積調(H22)」より
沖縄本島の人口は主に中南部
に集中している。
(人口密度:北部<中南部)
沖縄本島中南部は透水性
の大きい琉球石灰岩が広く
分布している。
沖縄本島は主に北部地域が山
岳部、中南部地域は丘陵地と
なっている。
戦前までの沖縄では、ほとんどの家庭で天水と屋敷内の私有井戸を飲料水として利
用していた。
水道施設は那覇市等の一部で整備されていたが、1944(昭和19年)年10月10日
の空襲や、翌1945(昭和20)年4月に始まった沖縄戦によって、壊滅的な打撃を受け
た。
戦後、米軍の施政下において水道施設の復旧と同時に、米軍によって(旧)金武ダ
ムや天願ダム、瑞慶山ダムなどが施工されたが、沖縄本島においては、戦後の都市
用水使用量の増大に対し安定的に供給できる水源が少なく、構造的な水不足が慢性
化していたため、本土復帰以降、安定した水資源の確保は最重要課題のひとつであ
った。
多目的ダムが現在の水準まで整備される以前は、生活用水といえば河川からの取
水や各家庭に貯めた雨水を頼るほかはなく、降雨量が少ない時は毎年のように制限
給水(断水)が行われていた。
本土復帰以降、沖縄総合事務局では沖縄本島の水事情を改善するため琉球列島
米国民政府によって施工途上にあった福地ダムの建設承継を皮切りに、本島北部を
中心に多目的ダムを建設してきた。
その間も、制限給水はたびたび発生し、特に昭和56年7月10日から翌昭和57年
6月6日まで実施された制限給水は連続326日にも及び、県民生活に大きな影響を
与えた。
給水制限時の自衛手段として設置されている屋上タンク
渇水の深刻さを伝える記事
タイホ
大保ダム
ベノキ
辺野喜ダム
フンガワ
普久川ダム
アハ
安波ダム
アラカワ
新川ダム
キン
フクジ
金武ダム
小規模河川が多く、大規模なダムが多くは望め
ない沖縄本島においては、本土並みの大規模ダ
ムの整備が困難であり、国が管理する北部5ダム
(福地、新川、安波、普久川、辺野喜)について
は、調整水路と呼ばれるトンネルで連結し、ダム
の統合運用を行っている。
福地ダム
ハネジ
羽地ダム
カンナ
漢那ダム
これら5ダムを調整水路で結ぶことにより、貯水容
量 の小さいダム(新川、普久川、辺野喜)の無効
放流となる水を貯水容量の大きい福地、安波ダム
へ導水することにより効率的水資源開発を行って
いる。
クラシキ
倉敷ダム
建設された多目的ダム
取水ダム
辺野喜ダム
新川ダム
普久川
ダム
安波ダム
福地ダム
浄水場へ
貯留ダム
効率的な水資源開発(5ダムによる利水統合運用図)
この運用により、1日あたり43,000㎥の水を新たに開発することと同じ効果をもたらしており、
漢那ダムの約4個分に相当する。
ちなみに、この5ダム全体では1日あたり約27万㎥の水を供給しており、これは沖縄本島で
一日に使用される水の約6割に相当する量である。
沖縄では、復帰後もたびたび制限給水を経験しながらも42年間の間に、10個のダムを建設
した。
○福地ダム
昭和49年12月供用
(再開発完了)平成3年10月
ロックフィルダム
利水容量:44,700,000㎥
堤高:91.7m 堤頂長:260m
集水面積:32.0㎞2
・沖縄で最大容量を誇るダム
・沖縄で最大のロックフィルダム
福地ダム(福上湖)
○新川ダム
昭和52年4月供用
重力式コンクリートダム
利水容量:600,000㎥
堤高:44.5m 堤頂長:177m 集水面積:7.4km2
・沖縄で初めて建設された重力式コンクリートダム
・昭和50年に開催された沖縄国際海洋博覧会の
水需要の増加対策に寄与
新川ダム(新川湖)
○安波ダム
昭和58年4月供用
安波ダム(クイナ湖)
【本ダム】重力式コンクリートダム
【脇ダム】ロックフィルダム
利水容量:12,600,000㎥
【本ダム】
堤高:86.0m 堤頂長:245m
【脇ダム】
堤高:32.0m 堤頂長:80m
集水面積:22.5km2
・沖縄の重力式コンクリートダムで最大の高さを誇る
○普久川ダム
昭和58年4月供用
重力式コンクリートダム
利水容量:950,000㎥
堤高:41.5m 堤頂長:210m 集水面積:8.9km2
・やんばるの東と西を結ぶ「なかゆくい」ダム
(※「なかゆくい」とは「ひと休み」の意味)
普久川ダム(フンガー湖)
○辺野喜ダム
昭和63年4月供用
辺野喜ダム(伊集の湖)
コンバイン(複合式)ダム
利水容量:1,600,000㎥
(重力式)
堤高:42.0m 堤頂長:230.1m
(ロックフィル)
堤高:35.0m 堤頂長:330m
集水面積:8.1km2
・全国でも数少ないコンクリートとロックフィルの
複合型式ダム
○漢那ダム
平成5年4月供用
ロックフィルダム
利水容量:6,650,000m3
堤高:45.0m 堤頂長:185m 集水面積:7.6km2
・全国的にもダムの景観、生態系保全に本格的に
取り組んだ初めてのダム
漢那ダム(カンナ湖)
○倉敷ダム
平成8年4月供用
倉敷ダム(沖縄県管理ダム)
ロックフィルダム
利水容量:5,900,000m3
【本ダム】
堤高:33.5m 堤頂長:441m
【脇ダム】
堤高:15m 堤頂長:200m
集水面積:4.7km2
・ダム空間が周辺の人々の憩いの場となるよう景観
及び周辺環境整備を実施
○羽地ダム
平成17年4月供用
ロックフィルダム
利水容量:15,600,000㎥
堤高:66.5m 堤頂長:198m 集水面積:10.9km2
・世界で初めてダムの落差を利用した圧縮空気を
製造し曝気設備、取水設備等への利用を
図るシステムを導入
羽地ダム(あけみお湖)
○大保ダム
平成23年4月供用
【本ダム】重力式コンクリートダム
【脇ダム】ロックフィルダム
大保ダム(ぶながや湖)
【本ダム】
堤高:77.5m 堤頂長:363.3m
【脇ダム】
堤高:66.0m 堤頂長:445m
利水容量:17,200,000㎥
集水面積:13.3km2
・ノグチゲラの人工営巣木等、自然に与える影響を
出来るだけ和らげる対策を実施したダム
○金武ダム
平成26年4月供用
金武ダム(金武湖)
台形CSGダム
利水容量:5,360,000㎥
堤高:39.0m 堤頂長:461.5m
集水面積:14.6km2
・日本で初めて台形CSGダム型を採用したダム
※CSGとは、砂礫にセメントと水を混ぜたもの。
使用する材料は現場周辺で容易に得られるため
施工も速く、大幅な工期短縮が可能。
2.水資源開発の効果
昭和47年の本土復帰以降、ダムの整備が進められるなか都市用水の日平均取水量(県企業局水
源取水量)は、本土復帰当時の約22.0万㎥から約43.4万㎥(平成23年度)へと約2倍になるなど、
水需要が増大してきた中で、福地ダム完成以降も北部5ダムをはじめ、急ピッチでダムを建設し安定
的な水源を確保することにより、平成6年3月1日以降は制限給水は実施されていない(平成26年3月
1日で連続給水満20年を記録)。
多目的ダムによる水資源開発は、河川・地下水等を含めた水資源の連携運用で沖縄本島におけ
る安定的な給水を実現し、沖縄県の経済発展、生活水準の向上に寄与している。
ム
ム
ダムの整備と給水制限実績及び安定供給可能量の推移
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