資 料 2
養老川の河床変動と
高滝ダムの堆砂について
1、養老川の概要
2、養老川の現況
3、高滝ダムの堆砂
4、今後の方向性
1
1 養老川の概要 養老川流域がもたらす自然の恵み
養老川は千葉県夷隅郡大多喜
町の太平洋側に近い清澄山山
系に源を発し、東京湾に注ぐ、流
域面積は246km2、長さ73kmの
千葉県有数の河川です。
養老川流域には、養老渓谷、粟
又の滝、養老温泉、麻綿原高原
などの豊かな自然を有し、観光
資源も豊富な流域となっていま
す。
また、養老川の河口部は、養老
川の土砂の供給によって形成さ
れた三角州の沖積平野となって
います。
養老川流域図
2
1 養老川の概要 養老川の特徴
養老川は「ヨホロ(膝の屈側を意味する古語)川」が語源とも言われ、蛇行が多いの
が特徴です。
養老温泉街の付近には、台地を取り囲んだ川回し跡が水田となっている姿が残され
ており、蛇行を利用した土地利用もかつては行われていました。
※川回し跡の水田利用
3
1 養老川の概要 歴史的な水利用技術
養老川には、洪水があってもすぐに修復できる板羽目堰(市原市指定の文化財)も
あり、見学等も実施されています。
平 常 時
洪 水 時
洪水時(完全に倒れた様子)
4
1 養老川の概要 高度成長期における水需要の高まり
京葉工業地域の高度成長期における発展やそれに伴う市街化の進展により、水需
要が増加し、地下水の枯渇や地盤沈下等の問題が発生しました。そうした中で、水
道用水や農業用水の安定供給のため、水資源開発が急務となりました。
高滝ダム建設
5
1 養老川の概要 高滝ダム
高滝ダムは、洪水調節と水道用水等の利水容量
を備える多目的ダムです
上流から流れ込む洪水1,110m3/sの内、ダムで
最大280m3/sを調節して、下流の養老川の洪水
時の負担を軽減する役割を有しています。
高滝ダム貯水池容量配分図
東京湾
サーチャージ水位 標高 40.3m
洪水調節容量
常時満水位 標高 37.3m
565 万 m3
利水容量
川
養老
ダムの高
さ 24.5m
685 万 m3
総
貯
水
容
量
1
4
3
0
万
180 万 m3
m
最低水位 標高 32.2m
堆砂容量
3
市原市
大多喜町
清澄山
ダム流域
(養老川流域の44%)
高滝ダム全景(下流左岸より撮影)
6
1 養老川の概要 過去の水害
養老川では、昭和36年6月、昭和45年7月に大災害が発生しました。
その後、高滝ダムの完成間際の平成元年8月にも、中流部の馬立付近で氾濫が生
じ、1,000棟を越える浸水被害が発生し、被害の大きかった中流部では川幅の拡幅
や、護岸工事といった河川工事が行われました。
平成元年8月洪水(馬立地区減水後の様子)
平成元年8月洪水(牛久地区出水中)
7
1 養老川の概要 河川工事
養老川では、平成元年の大災害を契機に、大規模な河川工事が行われました。
市原市佐是地区では、大規模なショートカット工事も行われました。
この平成の大工事により、平成8年9月には、平成元年を上回る大雨となったが、災害に伴う河
川工事と高滝ダムの洪水調節の効果もあって、浸水被害は軽減しました。
改修前河道状況(養老川:市原市上原地先)
改修後河道状況(養老川:市原市上原地先)
8
1 養老川の概要 河川工事による河岸の変化
養老川の河川工事や、高滝ダムの洪水調節によって、養老川流域に住む人々の生命・財産は守られつつあります。
一方、この河川工事により、河岸からの土砂供給はほとんどなくなり、大きな蛇行の内側や河川の断面変化する箇
所を除き、養老川の下流部を除き、ほとんど寄洲や中洲が見られなくなりました。
河川工事前
河川工事後
上原地区
牛久地区
9
2 養老川の現況 高滝ダムによる流砂の遮断
0
20
40
60
12.48k 浅井橋
30
横断距離(m)
11.57k 大坪橋
-20
10.62k 権現堂橋
-40
9.48k 西広堰
H20
10.0
7.48k 廿五里堰
7.90k 柳原橋
12.0
6.05k 霞橋
14.0
4.20k 養老橋
1.25k 第一橋梁
1.86k 養老大橋
2.40k 潮見大橋
35
16.0
3.29k 五井大橋
ダム建設前
18.0
5.23k 中瀬橋
20.0
31.30k 高滝ダム
28.88k 新幸田橋
29.56k 音信橋
27.80k 平蔵川
40
22.0
高滝ダム
標高(EL.m)
24.0
14.45k 安須橋
26.0
25.25k 内田川
28.0
18.06k 二瀬橋
18.68k 上原橋
18.98k 妙香橋
15.76k 小湊鉄道橋
45
H20
楓橋上流の河道
30.0
23.93k 楓橋
河川改修や高滝ダムは、洪水時の安全性や安定した水利用を実現してきた反面、流況の平滑
化により、河川の健全な土砂移動を抑制し、自然環境に大きな影響が出始めています。
高滝ダム完成後の20年間で、高滝ダム下流部の河床の低下傾向がほぼ全域で確認されてい
ます。
過去の測量結果に基づき算出した結果、年平均5万m3が流出しています。
標高(A.P.m)
25
20
15
10
9.0
廿五里堰下流の河道
8.0
5
標高(EL.m)
7.0
6.0
HWL
左岸堤防高
5.0
右岸堤防高
目標流量流下時
S55
H5
H20
将来計画
0
4.0
3.0
ダム建設前
2.0
1.0
H20
0.0
-200
-150
-5
0
-100
-50
横断距離(m)
0
50
100
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
追加距離(km)
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
10
2 養老川の現況 護岸の被害
上原橋下流の右岸において、河床部の侵食により、コンクリート護岸が被災しました。
護岸の復旧とあわせ、河床侵食防止のため、護床コンクリートを設置しました。
被災時 平成19年
復旧後 平成21年
11
2 養老川の現況 河床材料調査
高滝ダムとその下流河川の河床材料について、材料を採取し、粒度分布試験を行いました。
採取時期は、平成18年度と20年度で、採取箇所は、概ね500m毎にサンプリングを行いまし
た。
H18サンプリング状況
H20サンプリング状況
調査範囲
高滝ダム
12
2 養老川の現況 河床材料の粒度分布
養老川の河床材料は、概ね粒径が0.1mm~2mmまでで構成されています。
また、0.1mm未満の粒径、すなわち粘土やシルトはあまり含まれていません。
加えて、粒径数cm程度の大きな礫分もほとんどないことがわかりました。
なお、河床材料の量的な調査は行っていませんが、ダムの直下流の河床に
おいては、露岩しており、砂の存在はあまり無いと考えられます。
100.0
90.0
80.0
70.0
含有率%
60.0
粘土・シルトと呼ばれる
0.1mm以下の細かい土粒
子はあまり存在しない。
砂(0.1mm~2mm)
が主に存在する。
No.0
河口干潟
養老大橋
No.6
養老橋上流
No.11+100
No.14
No.16+300
西広橋下流
No.21
No.24
No.26
No.29
No.32
No.34
二瀬橋上流
No.39
No.42
No.45
No.47
No.50
No.53
No.55
No.58
No.61
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
0.001
0.01
0.1
粒径(mm)
1
No.0+216
No.2
No.4
No.7
No.9
No.12+100
No.15+100
No.17
No.19+100
No.22
浅井橋下流
No.27
No.30
上養老橋下流
No.35
No.37
No.40
No.43
新手綱橋上流
No.48
No.51
No.54
No.56
No.59
No.62
10
No.1
No.3
No.5
No.8
No.10
No.13
柳原橋下流
No.18
No.20
No.23
No.25
No.28
No.31
No.33
No.36
No.38
No.41
No.44
No.46
No.49
No.52
鶴舞堰
No.57
No.60
100
13
2 養老川の現況 河床材料の粒度分布
養老川の河床材料の94%は砂分で構成されています。
粗砂, 5.6%
礫, 3.4% 粘土, 1.3%
シルト, 3.5%
中砂, 39.6%
粘土
シルト
細砂
中砂
粗砂
礫
0.005mm以下
0.075mm以下
0.25mm以下
0.85mm以下
2.0mm以下
2mm以上
細砂, 48.4%
14
2 養老川の現況 平常時の水の濁り
平常時における高滝ダム建設前(S46~60)と建設中(S61~H1)、そして建設後
(H2~21)の養老川下流域での河川水の平均的な濁りの状況(SS)は大きな変化は見
られませんでした。
30
本川:ダム建設前(S46~S60)
25
本川:ダム建設中(S61~H1)
支川:ダム建設前(S46~S60)
支川:ダム建設中(S61~H1)
支川:ダム建設後(H2~H21)
SS(mg/l)
本川:ダム建設後(H2~H21)
環境基準
ダム建設前後
ともに上昇
20
15
10
5
養 老 川 下 流 域 (養 老 大 橋 )
廿
西 五
広 里
堰 堰
養 老 川 下 流 域 (中 瀬 橋 )
養 老 川 中 流 域 (西 広 堰 )
高滝
ダム
養 老 川 中 流 域 (浅 井 橋 )
)
養 老 川 中 流 域 (土 宇 橋 )
下
川
橋
養 老 川 中 流 域 (手 綱 橋 )
新
雷
橋
等
(
内
田
川
)
)
中
の
橋
等
平
蔵
川
(
高 滝 ダ ム 直 下 (放 水 口 )
古
敷
谷
川
(
※SSとは
水中に浮遊する0.001mm~2mm
の粒状物質。主に土砂やその他
の有機物から成り、一般にSSが
高いほど濁りも大きくなる。
養 老 川 上 流 域 (持 田 崎 橋 等 )
0
養老川
古敷谷川
平蔵川
内田川
養老川SSの縦断変化(平均値)
15
2 養老川の現況 水生生物
高滝ダム建設前(S57)と建設後(H4、H6、H13)の水生生物の調査結果を比較したところ、調査の箇
所数等の差異はあるものの、底生魚のうち砂や泥の河床を生息環境として好むスナヤツメの生息が
確認できない箇所が見られました。
底生魚の確認状況
区間
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
目名
科名
種名
ヤツメウナギ目
ヤツメウナギ科
スナヤツメ
ウナギ目
ウナギ科
ウナギ
コイ目
コイ科
カマツカ
ドジョウ科
ドジョウ
河口・感潮域
下流域
中流域
(ダム下流)
高滝湖
(ダム)
○
○
◎
○
○
○
○
ホトケドジョウ
スズキ目
ギギ科
ギバチ
ナマズ科
ナマズ
イソギンポ科
トサカギンポ
ハゼ科
トビハゼ
合計種数
凡例 ◎:ダム建設前後で継続して確認
▲:ダム建設前のみ確認
○:ダム建設後のみ確認
ボウズハゼ
スミウキゴリ
ビリンゴ
ウロハゼ
マハゼ
アシシロハゼ
マサゴハゼ
ヒメハゼ
アベハゼ
シマヨシノボリ
ヨシノボリ
オオヨシノボリ
トウヨシノボリ
ヌマチチブ
チチブ
平蔵川
←スナヤツメ
▲
○
◎
○
シマドジョウ
ナマズ目
中~上流域
(ダム上流)
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
20
5
11
1
:ダム建設前後で継続して調査を実施している区間
(年度によって調査箇所や調査方法が一部変更)
▲
◎
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
12
○
○
○
(出典:改訂 日本の絶滅のおそれ
のある野生生物 4汽水・淡水魚類
(環境省、平成15年)
※底生魚とは
川底に接したり、
砂や泥の中に
潜って生活する
魚で、河床変化
等の影響を受け
やすい。
7
16
3 高滝ダムの堆砂 堆砂の状況
高滝ダムでは常時湖面が維
持されており、その結果、貯
水池に入る箇所で、急激に
流速が落ちることから、境橋
付近土砂の堆積が顕著と
なっています。
このような状況から、土砂が
貯水池に直接流入しないよう、
養老川本川の上流側と支川
の古敷谷川で貯砂ダムを設
置して、定期的に土砂撤去
を行っていますが、年間およ
そ10万m3の流入土砂に対
応することは困難な状況です。
平成22年3月
高滝ダム
加茂橋
古敷谷川
天端高 A.P.+42.50m
サーチャージ水位A.P.+40.30m
洪水調節容量 5,650,000m3
常時満水位 A.P.+37.30m
利水容量 6,850,000m3
24.50m
ダム堤体
堤高
境橋
最低水位 E.L.32.20m
堆砂容量
1,800,000m3
境橋下流の堆砂状況
養老川本川
17
3 高滝ダムの堆砂 現在の堆砂対策
18
3 高滝ダムの堆砂 堆砂の状況(縦断)
高滝ダムの完成後の堆砂傾向は、ダム本体付近には堆砂はあまり見られず、貯水池入り口付近の
境橋周辺に堆砂しているため、有効容量も侵されはじめており、洪水調節及び利水利用に支障をき
たす恐れがあります。このため、堆砂対策は急務となっています。
50
治水容量は約1%が堆砂で消失
45
境橋
サーチャージ水位(EL.40.3m)
40
標高(EL.m)
常時満水位(EL.37.3m)
35
最低水位(EL.32.2m)
30
利水容量は約16%が堆砂で消失
H2~H21年度までの堆砂量:228万m3
堆砂容量:180万m3
25
堆砂容量は約64%が堆砂で消失
20
ダム建設直後
高滝ダム貯水池縦断図(最深河床)
平成21年測量成果
15
0
2,500
5,000
7,500
縦断距離(m)
10,000
12,500
19
4 今後の方向性 基本的な考え方
■現状のまとめ
•河川改修による護岸整備や高滝ダムの建設により、養老川における土砂供給のバラン
スが崩れており、生物の生息条件にも変化が生じている可能性があります。
•養老川の高滝ダム下流側の河床は、毎年平均で5万m3の土砂が流失し、河川構造物の
洗掘・倒壊の危険性が顕在化しています。
•高滝ダムでは、年平均で約10万m3の土砂が堆積し、機能障害の恐れがあります。
■方向性
・高滝ダム下流部の護岸の安定及び高滝ダムの貯水容量の維持のため、高滝ダムから土砂
供給します。
•出水時における土砂供給は、河道内の健全な攪乱、河床材料を更新し、生態系にも必要な一
面を有し、健全な川の機能を取り戻すことにもなります。
■今後の対策
・高滝ダムに流入する土砂の一部を、出水時に下流河川へ供給する施設
(仮称:土砂供給システム)の計画を検討します。
20
4 今後の方向性 今後の対策
(仮称)土砂供給システムは、出水時に洪水時に流入する土砂の一部を、
貯水池と下流河川の水位差のエネルギーを利用して、下流河川へ供給す
る施設で、高滝ダムの貯水池内で著しく堆積しやすい境橋上流付近の設置
を検討しています。
土砂供給システムの計画にあたっては、土砂供給がどのように下流河道に
影響を与えるかをシミュレーションする必要があるため、ダム直下流にダム
に堆砂している土砂を置き、それがどの程度、下流に移動するかなどを
確認するための置土試験を、今後、実施することを考えています。
イメージ図
・計画排砂量
・排砂濃度
・排砂回数
・設置位置
:
:
:
:
30,000m3/年(計画検討中)
2.3% (計画検討中)
年平均 9回(計画検討中)
境橋上流地点(計画検討中)
ダム下流への影響を検討。
21
4 今後の方向性 置土試験
ダムの土砂を下流に放流する取り組みは、現在、全国でおおよそ20の
ダムで試験施工中です。
養老川における置土試験については、今後、その試験計画を作成し、
次回の当流域懇談会で提案したいと考えています。
下久保ダムにおける試験の事例
ダム直下の置土
ダム放流による置土の流出
22
4 今後の方向性 置き土試験のイメージ
下久保ダム直下から0.5km下流の状況
放流前
放流後
→砂洲の回復がみられた。
23
4 今後の方向性 土砂供給による河口部への影響
1000
移動限界粒径と河床材料調査結果
移動限界粒径
調査結果50%粒径
100
粒径(mm)
10
河口部の土砂堆積状況
養老川の現在の河道は、
高滝ダムから供給する土
砂を流水により移動させる
能力は十分に有していま
す。
供給した土砂は複数の
30
洪水を重ねることで、停滞
と移動を繰り返し最終的に
25
は、東京湾まで到達すると
20
考えられます。
標高(A.P.m)
0.1
貯水池内堆積土の主な粒度(2mm以下)
9.48k 西広堰
1.86k 養老大橋
15.00
追加距離(km)
20.00
25.00
30.00
15.76k 小湊鉄道橋
10.00
7.48k 廿五里堰
5.00
14.45k 安須橋
0.01
0.00
東京湾
15
1
10
5
0
S55ダム下流河道
H20ダム下流河道
目標流量流下時水位
-5
ダム下流河道縦断図(最深河床)
-10
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
追加距離(km)
24
4 今後の方向性 河口部の洪水による変化
平成21年8月(台風11号)および10月(台風18号)
の洪水前後の河川断面の変化
No2 断面(川幅約300m)
:洪水前 H18.11月測量
:洪水後 H21.11月測量
1.4m
25
4 今後の方向性 今後のスケジュール
養老川の河床低下と高滝ダムの堆砂の2つの課題に
対処するため、(仮称)土砂供給システムの計画策定に
向け、次回の第7回養老川流域懇談会で、現地置土実
験の計画提案を行う予定です。
26
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養老川の河床変動と 高滝ダムの堆砂について