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APECを迎えるロシア極東から
の考査
環日本海経済研究所
元理事長、名誉研究員 吉田 進
公益財団法人
2012年8月25日
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APECを迎えるロシア極東からの考査
1.最近のロシア情勢
2.中国・長春‐吉林‐図們地域の発展計画
3.中ロ関係の発展
4.注目されるモンゴル
5.北朝鮮の変化-最近2年間の動き
6.再びロシアと日本の関係
7.ロシアと国際組織
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1.最近のロシア情勢
(1)プーチン大統領・メドベージェフ首相体制の
確立
・2012年5月7日にプーチン氏が大統領に就任。
・5月8日にメドジーエフ氏が首相に就任(下院で
統一ロシア238票、自由民主党56票、計294票が賛成、
反対は156票)
・5月21日に新内閣が成立。その特長の一つとし
て極東発展省が設立された。極東連邦管区大統
領全権代表のイシャエフ氏が大臣を兼務する。
・極東シベリア発展基金の設立。
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(2)メドベージェフ元大統領の近代化政策
2009年9月10日 メドベージエフ元大統領は「ロシアよ
前進せよ!」と題する論文を発表。
この論文は、メドベージェフ大統領の年次教書
(2009年11月12日)の基礎をなし、ロシアの近代化に関
する5つの戦略的方向を示した。この戦略は資源、原材
料の輸出が大半を占めるロシア経済の構造改革を意味す
る。
1)エネルギー生産、輸送とエネルギー利用効率の向上、
新しい種類の燃料開発
2)核技術の維持と質的向上
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(2)メドベージェフ元大統領の近代化政策(2)
3)情報技術の向上とスーパーコンピューターの利用
4)宇宙技術の活用
5)医療設備とウィルス性疾患、心臓血管疾患、腫瘍性疾
患、神経疾患の治療薬の開発
◎スコルコボ・イノベーシヨンセンターの設立(メドベ
ージエフ大統領が2010年5月31日議会に提出)
◎宇宙基地「ボストーク」(アムール州スウォボドネイ
市)の建設。
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(3)ロシア極東地域の発展
①ロシア極東地域の発展計画
1)2013年までの極東ザバイカル地方社会経済発
展特別プログラム
2012年ウラジオストックにてAPECが開催。
2)2007‐2015年のクリル諸島の社会経済発展特
別プログラム
3)2018年までの極東ザバイカル地方社会経済発
展特別プログラム
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①ロシア極東地域の発展計画(2)
4)2025年までの極東バイカル地方社会経済発展
戦略(2009年12月29日採択)
5)2050年までの極東地域の長期発展コンセプト
(3月17日メドベージエフ大統領・シャーエフ全権代表との会談で決
定、科学アカデミ-と地域発展省が立案に参加)
6)2020年までのロシア連邦の長期社会経済発展コ
ンセプト(2008年11月17日ロシア政府承認)の一環
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②ウラジオストクにおける具体的なプロ
ジェクト
・APEC施設の建設:2つの橋梁、道路、空港、会議場、水族館
・造船所建設:ボリショイ・カメニ造船所・大宇造船海洋エンジ
ニアリング、チャジマ造船所・煙台ラッフルズ船業有限公司(中国
とシンガポールの合弁)
・自動車工場建設:Sollers社がウラジオストック自動車
組立工場を建設。
2009年3月沿海州政府と合意、連邦政府は6月に融資を目的とした社
債発行に際し50億ルーブルの国家保証を承認。
三井物産・トヨタ、日産、マツダが自動車生産を決定。
・港湾建設:石炭、食糧積み出し港の建設(ワニノ、ウラジ
オストック、ザルビノ・・・)
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金角湾横断橋(2012年春)
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ウラジオストクとルースキー島をつなぐボスフオー
ラス橋(2012年7月2日に開通式典が行われた)
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D.メドベージエフ 首相は極東を訪問、ウラジオストクにて東ボスフォ
ール海峡を横断する橋の運行開始式典に参加した(2012.7.2.)
トロイツァ港のマツダ車、専用貨車ブロックトレイン、自
動車専用船
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③極東におけるエネルギー開発プロジェクト
1)サハリン大陸棚の天然ガスと石油開発
・サハリン1の石油は2005年10月から、サハリン2の石油
は2008年12月から、天然ガスは2009年の4月から日本に
供給されている。
・サハリン3、サハリン5の開発は継続。
2)東シベリア・太平洋石油パイプライン
第1段階の完成(2010.12)→鉄道輸送。
第2段階(スコボロジノ-コジミノ港)の建設が2012年
11月に完了。
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東シベリア・太平洋石油パイプライン
(出所)ロシア・エネルギー戦略研究所、
「日露エネルギー・環境対話 in 新潟」
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コジミノ石油積み出し港
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③極東におけるエネルギー開発プロジェクト(2)
3)スコボロジノから中国大慶までの原油パイプラ
インが完成(1,500万トン/年の輸送)
4)東方ガスプログラムに基づきハバロフスク-ウ
ラジオストクガスパイプラインが2011年9月に
完成。ウラジオストク天然ガスLNG設備の建設
。
5)シベリアからの天然ガスパイプライン建設が
立案中。完成後サハリンからの天然ガスパイプ
ラインに連結。
6)コビクター(2兆m3)、チャヤンダ(1.3兆m3
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④東日本大震災とロシアの対応
プーチン首相主催のサハリン・エネルギ-会議(2011年
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月19日)は日本への緊急支援を下記の通り決定。
・100万トン/月のLNGの対日追加供給。
・石炭300万トンの供給。
・ワニノ石炭積み出し港建設への日本の参加。
・サハリン-1のガス開発問題の解決。サハリン-3の開発を急ぐ。
・東シベリア-太平洋石油パイプライン第2段階(スコボロジノ-コジ
ミノ港)の建設を2012年12月に完成。
・ウラジオストクにおけるLPG基地建設の確認。
・新しいガス田の共同開発の提案。
・サハリンから日本への直接送電。
・7月にモスクワにて日ロエネルギー会議を開催。
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⑤ロシア経済と日ロ貿易
・ 2009年のGDP:‐7.9%. 2010年:4.0%.2011年:4.3%
その原動力は資源輸出。2010年の輸出総額は4,000億ド
ル(前年同期比31.9%増) 燃料エネルギーの輸出は2,574
億ドル(35.5%増)輸出における構成比は69%。 2011年の
輸出総額は5,220億ドル(前年比30.4%増)
・2011年の日ロ貿易は307.4億ドル、対前年比127.4%増。
輸出118億ドル。70億ドルが自動車(59.8%)。中古車
が6.9億ドルを占める。
輸入189億ドル。石油が61.9億ドル(32.8%)、天然ガ
スが46.9億ドル(24.9%)、非鉄が19.9億ドル(10.6%)
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⑥最近の日本の動き
・サハリン・北海道海底ガスパイプラインの建設
2012年5月3日、前原誠司民主党政調会長がガスプロム社メドベー
ジェフ副社長と会談。M副社長は日本向けガスパイプラインの敷設を
提案、両者は可能性について協議することに合意した。
・東シベリアの石油共同開発
6月22日、石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、ガスプロムネフチ
と東シベリアのイグニャリンスキー油田の共同開発に合意した。
・エネルギー開発で共同歩調
6月24日、枝野経済産業相はロシアのノワク・エネルギー相とエネ
ルギー分野で日ロ協力を強化する方針で一致した。ウラジオストクの
液化天然ガス基地、石油化学工場の建設などが含まれる。
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2.中国・長春-吉林-図們の発展計画
計画は2009年8月に国家レベルの事業に格上げ
吉林省の2011年のGDPは前年比13.7%増(全国
9.2%)
(1)長吉図開発開放先導区⇒吉林省長春市、吉
林市および図們江地域を含む。
総面積:2.36万Km2、人口:約770万人、GNP:吉林省
全体の70%を占める。
当開発開放先導区では「図們江地区国際自由
貿易区」、「長春・吉林国際陸港区」、「科学技
術創新区」等8大プロジェクトが計画・実施中。
図們江地区(琿春)国際協力モデル区の決定。
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長吉図開発開放先導区の位置図
ERINA 2010.1.19.
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(2)北東アジア輸送回廊の発展
中国政府は、琿春と羅津を結ぶ自動車道路建設を請負
い、羅津港第一埠頭の独占使用権を50年間北朝鮮から確保
した。2010年に吉林省政府は中国外運長航集団有限公司と
協定を結ぶ。琿春‐羅津‐釜山、琿春‐羅津‐中国南部港
の航路を開設。また日本の新潟、敦賀との航路開設に取
り組んでいる。
韓国・釜山港湾公社は中国牡丹江とロシア・ナホトカに
貨物の集積地を開設し、ナホトカ‐釜山航路の定期化を目
指している。
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3.中ロ関係の発展
(1)プーチン大統領の訪中
2012年6月5日大統領就任後はじめてのアジア
太
平洋地域の訪問先として中国を訪問。
胡錦涛国家主席、温家宝総理と会談。
共同宣言を採択。
エネルギー、工業、航空機製造等に関する17の
協定を締結。
ロ中投資基金(40億ドル)の設置。
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(2)中ロ間で実施されている計画とプロジェク
ト
①東シベリア・極東と中国東北地域の協力プログ
ラムを2009年9月に締結。
②シベリア石油の中国大慶へのパイプラインによ
る供給。 2010年9月27日にメドベージェフ大統
領が、北京にて原油パイプラインの開通式に参
加。2011年1月供給開始。中国が150億ドルの融
資を行う。
③国境問題が最終的に解決し、大ウスリー島の共
同開発が始動。
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(2)中ロ間で実施されている計画とプロジェ
クト(2)
④同江・ニジネレーニンスコエ間のアムール鉄橋
の建設が決定
⑤サハリン-3開発への中国の参加
⑥二つのパイプラインによる中国への天然ガスの
供給
⑦2010年9月8日にロシア中央銀行がルーブルと
人民元の交換解禁を決定。
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4.注目されるモンゴル
モンゴル政府は、南ゴビの銅と石炭の開発に力を入れ
ている。その輸出のための鉄道建設を計画。
第一順位として、タバン・トルゴイ-オユ・トルゴイ-ズ
ンバヤーン-サインシャンド-バルーン・ウルト-チョイバ
ルサン-シベリア鉄道(全長1,100Km.FS未実施)
第2順位として、タバン・トルゴイ-ガンチモダオ(中
国国境)(FS済み)の鉄道建設が計画されている。
ロシアとは鉄道建設、石炭、ウランの開発。日本とは石
炭、ウラン開発、空港、発電所、精油所の建設。中国とは
石炭、鉄鉱石、亜鉛、希土類の開發を実施している。
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モンゴルの鉄道拡張計画
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5.北朝鮮の変化-最近2年間の動き
(1)羅先市の特別市化。羅津・先鋒市が2010年1月4日に特
別市に位置づけられた。面積は746Km2,人口は19.6万人。
(2)金正日総書記の中国訪問。金正日総書記は10年5月、
8月、11年5月、6月と4回訪中した。10年8月には胡錦濤
総書記と非公式会談、5月に温家宝総理と会談した。
中国との黄金坪団地の共同開発は、経済開発区を作る実
験台となる。
2010年の貿易取引総額は60億8,500万ドル。中国が占め
る割合は56.9%。
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(3)ロシアとの関係改善‐金正日総書記のロ
シア訪問
2011年8月24日ウランウデにてメドベ-ジェフ
大統領・金正日総書記の会談が実現。
会談内容は、
①ロシア極東から北朝鮮経由韓国への天然ガスパイプラ
インの敷設。
全長1,100kmの中700kmが北朝鮮を経由する。2017年
から
30年間にわたり、年間750万トン(100億m3)のガスが
供
給され、通過料として年間1億ドルが支払われる。
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(3)ロシアとの関係改善‐金正日総書記
のロシア訪問(2)
②鉄道建設。沿海州ハサン駅から羅津港までの老
朽化した鉄道(52Km)の改修プロジェクト。
2012年の完成を目指す。
③5万トンの食糧援助。
④ロシアに対する債務110億ドルの削減問題。
⑤金正日総書記は6カ国協議への前提条件なしの
復帰と核兵器・ミサイル実験・製造を凍結する
用意があると表明した(日経8月25日)。
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(3)ロシアとの関係改善‐金正日総書
記のロシア訪問(3)
ガスパイプラインのその後について
・9月15日、ガスプロム・ミレル社長はKOGAS朱剛秀主席執
行取締役と「北朝鮮経由のガスパイプライン敷設に向け
たロードマップ」に署名した。
・またミレル社長は北朝鮮の金熈栄石油工業相とも会談し
パイプライン敷設事業のための作業部会を設置すること
に合意した(9月15日ガスプロム社プレスリリース)
・11月2日にメドベジ-エフ大統領と韓国李明博大統領の会
談がサンクトペテルブルグで行われ、北朝鮮を経由する
韓国とロシア間のガスパイプライン建設事業の実現に向
け、緊密に協力することで合意した。
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(4)軍の指導部の改変
1.7月15日の政治局会議は李英鎬軍総参謀長の
政治局員、中央軍事委員会副委員長など労働党
の全役職を解任した。理由は病気。
2.中央軍事委員会と国防委員会は16日、玄永哲
大将に次帥の称号をあたえ、中央軍事委員会副
委員長と総参謀長を兼任。
その背景は、軍が力を持ちすぎないように統制
し、党を中心とする。経済改革・開放に反対す
るのは軍。
(5)今後の展開
①新しい中朝関係の模索
8月14日張成沢党政治局員をはじめとする代表団
は、陳徳銘商務相と会談、経済区の共同管理委員
会の設置、経済技術協力協定などを調印。17日に
は胡錦濤主席、温家宝総理と会談した。
②8月29日に北京で日本人の遺骨返還や墓参に対
する予備会議を北京にて開くことを合意。政府代
表が参加する。
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6.再びロシアと日本の関係
(1)北東アジア諸国と日本の経済関係を考えると、まずロ
シアの天然ガス、石油、石炭、モンゴルの石炭、ウラン、
希土類などの日本への供給がある。
そして中国における日本の企業の大規模な展開と広大な
市場がある。
(2)70年代に日本の業界は極東の木材、サハリン石油・
ガス、ヤクート炭などの開発、ボストチヌイ港の建設に取
り組み、日本政府は輸出入銀行を通じて多額な資金を投入
した。これらプロジェクトの実現が、今日の日ロ経済関係
の基礎を作り上げた。
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6.再びロシアと日本の関係(続)
この歴史的な経験から学び、新たなプロジェクト開発に
積極的に取り組む必要がある。
大型プロジェクトとして、サハリンから北海道えの海底
パイプラインによる天然ガス、海底ケーブルによる電力の
供給、日本へ石炭や食糧を供給するための港湾整備等、国
境をまたがるプロジェクトが数多くある。
(3)東日本復興計画、新しいエネルギー計画を立案する際
にこれらのプロジェクトを取り入れることが、対岸の経済
発展と活気を日本の経済回復に生かす近道である。
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(4)平和条約をめぐるいくつかの論点
①ロシア案:日ソ平和宣言の案。すなわち歯舞・
色丹の返却を条件に平和条約を結ぶ。
②日本案:四島一括返還論。ウルップ島と択捉島
の間に国境線を引く。ロシア側が4島の主権を認
めれば、返還は段階的解決でもよい。
③妥協案:二島返還後の二島の共同開発論
・二島返還、二島継続交渉論
・三島返還論
・面積の折半論(3.5島論とも呼ばれている)
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(5)平和条約をめぐるいくつかの動き
①2012年3月1日朝日新聞主筆若宮啓文氏とのインタービ
ュ
[プーチン]われわれは、柔道家として、勝つために、
そして負けないために、大胆に歩まなくてはならない。
この状況で、われわれは何らかの勝利を達成する必要が
ないとしても、不思議ではない。この状況で、われわれ
は受け入れ可能な妥協を達成しなければならない。
それは引き分け[日本語を用いた]のようなものだ。
私が大統領になったら、われわれは一方にわが外務省
を召集し、他方に日本外務省を位置につかせ、そして彼
らに「はじめ!」[日本語]と号令をかけようではないか
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(5)平和条約をめぐるいくつかの動き(2)
②メドベージェフ首相の極東訪問
・極東重視政策 極東発展省の設立 そのバックアップ
・極東、ブリヤ-チア共和国、ザバイカル州、イルクーツ
ク州の社会経済発展問題に関する政府小委員会の開催
(7月2日)
・国後島訪問(7月3日、前回は2010年11月)「一寸たり
とも領土は渡さない」と述べるなど日本を意識した発
言をした。
・サハリン州社会経済発展問題に関するユジノサハリン
会議(7月4日)
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極東、ブリヤ-チア共和国、ザバイカル州、イルクーツク
州の社会経済発展問題に関する政府小委員会の開催 (7月2
日)
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サハリン州社会経済発展問題に関する南部サハリン会議
の開催(7月4日)
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メドベージェフ首相が極東の地震・津波の監視・予測情報
の作成・伝達地域センターを訪問(7月4日)
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メドベージェフ首相がペトロパウロフスク・カムチャスキ
ーにて新しい住宅地区を訪問(7月4日)
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7.ロシアと国際組織
1991年
1995年
1998年
2000年
2001年
海
独立国家共同体 10カ国
集団安全保障条約 6カ国
APECへ参加
ユーラシア経済共同体 6カ国
上海協力機構6カ国共同宣言(上
フアイブの設立は1996年4月)
2010年 ベロルーシ、カザフスタン、ロシ
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7.ロシアと国際組織(2)
2011年 ユーラシア連合 ベロルーシ、カ
ザフスタン、ロシアが中心。2015
年1月1日までにユーラシア連合包
括条約を締結。
ASEAN+8に参加
2012年 WTOへ参加
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ppt資料 - 北東アジア研究交流ネットワーク(NEASE-Net)