VSTL REVの活用例
発電所の低電圧回路を保護する接地構造物の設計
建物内の電子機器を保護する対策の検討
発電所や変電所などでは、電気の流れを常時監視・制
御するための低電圧回路が運用されており、その回路で
建物に直接あるいはその近傍に落雷したときには、建
物の内部にも電磁界が発生します。その影響によって機
障害が起こると、電力の安定供給に支障が生じる恐れが
器に接続された通信線などにサージが発生する、
あるい
あります。低電圧回路の主な障害要因には、落雷によって
はその電磁界に直接曝されることによって、建物内の電子
す。
その影響を低減させるには、接地線を適切な場所に布
を守るためには、落雷による電磁界を予測し、適切な対策
地中に布設された接地構造物に進入するサージがありま
設することが有効です。
図4-aは、発電所内にある送電中の電圧や電流を計測
機器で障害が起こることがあります。雷から建物内の機器
落雷によって接地構造物(接地網)
にサージが進入した条
子機器の設置場所の検討、電磁界の影響を防ぐための電
のです。
図4-bは制御線を模擬した電線に発生する電圧を
表しており、適切な場所に接地線を追加(赤)
することで
サージの進入によって生じる電圧を抑制できることが分
電中研ニュース
No.479
2015 Apr
分布に基づいて、障害が発生しにくい通信線のルートや電
磁シールドの性能評価(図5-2)
などが可能です。
このよう
に、建物の構造に応じた効果的な雷害対策を検討するこ
とができます。
弱
かります。
(北陸電力からの受託研究)
改修前の接地網
追加した接地線
本プログラム上で
制御線を模擬した電線
̶落雷による電気現象を高精度に予測し
効果的な雷害対策を支援̶
図5-1は、鉄筋コンクリート構造の建物に直接落雷した
ときに内部に発生する電磁界を予測した結果です。その
件で解析を行い、接地線の適切な追加場所を検討したも
雷から電子機器を守るための
電磁界解析プログラム「VSTL REV」を開発
を施す必要があります。
する機器や電流を入切する機器などに接続される制御線
を模擬した電線(緑)
と、改修前の接地網(青)
を対象に、
電中研
NEWS
3
電磁界の強さ
電力流通
強
電磁シールド設置前
構内鉄構
サージ
電流を注入
計算箇所
制御建屋の接地極
開閉所の接地網
接地構造物に追加した接地線に
よって、制御線を模擬した電線に
誘導される電圧が抑制されている
電圧 [ V/A ]※3
図4-a
電磁シールド設置後
鉄筋
0
-2
接地線追加前
接地線追加後
-4
-6
0
図4-b
10
時間 [μs ]
図4 接地線の追加による誘導電圧抑制効果の評価例
3階部分
20
電磁シールドの設置によりシール
ド内の電磁界が低減されている
鉄筋コンクリート構造の建物
図5-1 建物に落雷した際の電磁界発生状況 図5-2 電磁シールドの性能評価例
※3 単位電流に対して発生する電圧
ひとこと
電力技術研究所 主任研究員 立松
明芳
社会で多用されている電子機器
本プログラムの開発に携わった当初は、既存の数値電磁界解析手法を落雷によるサージや電磁界現象の解
析に適用するために、解決しなければならない課題が数多くありました。
しかし、解析技術の進展や外部機関との
交流などを通じて課題を1つ1つ克服し、実設計に役立つプログラムとして電気事業、大学、建設業界などで活
用いただけるようになりました。現在は、
さらなる機能向上を目指して、
「VSTL REV」
と
「回路解析」
それぞれの利
点を融合した新しい解析プログラムの開発を進めています。
¦ 関連する研究報告書 ¦
T00004「FDTD法に基づくサージ解析コードの開発」
H06006「FDTD法における極細線導体・非線形要素の模擬手法の開発」
H09002「FDTD法における避雷器模擬手法の開発とその配電線誘導雷電圧計算への適用」
(VSTL REV)
の高速化とその鉄筋コンクリート造建築物の雷サージ解析への適用」
H13009「FDTD法に基づくサージ解析プログラム
報告書は当所ホームページよりダウンロードできます
一般財団法人 電力中央研究所 広報グループ http://criepi.denken.or.jp/
〒100-8126 東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル7階 TEL:03-3201-6601
2015年4月発行
提供:音羽電機工業 雷写真コンテスト
近年、電力設備のみならず、通信、鉄道、航空などの社会インフラには大量の電子機器が導入され、社会インフラの安定
稼働を支えています。
これらの社会インフラに雷が落ちると、過渡的に電圧・電流(サージ)
や電磁界が変化する電気現象
が発生し、電子機器の故障や誤動作を引き起こすことがあります。
このような被害を防ぐには、落雷によって設備にどのよ
うな電気現象が起こるかを事前に予測し、適切な対策を講じることが重要です。
これまで、落雷による電気現象の予測には、
その現象を電気回路に置き換えて近似的に解析する
「回路解析手法」
が用
いられてきました。
しかしこの手法では、鉄塔や建物などの構造物や、発電所や変電所などで人体や機器の保護のために
地中に布設されている接地構造物などに発生する三次元的な電気現象を正確に模擬できませんでした。
このため、電力
中央研究所では三次元的な電気現象を直接模擬できる
「数値電磁界解析手法」
に着目し、落雷に伴う電気現象を精度よ
※1
「VSTL REV」 を開発しました。本プログラムは、発電所や変電所などの
く予測できるサージ・電磁界解析プログラム
効率的な接地設計や合理的な建物設計の検討など、雷から社会インフラを守るために活用できます。
※1 Virtual Surge Test Laboratory Restructured and Extended Version
1
2
VSTL REVの開発
VSTL REVの実用化
数値電磁界解析の必要性 落雷による電気現象の解析を可能に 操作性と実用性を向上 発電所や変電所などの電力設備や情報通信設備など
に導入されている電子機器は、従来のアナログ機器に比べ
当研究所で開発した
「VSTL REV」
では、落雷によって
発生する電気現象を電気回路に置き換えるのではなく
「VSTL REV」
では、計算モデルの作成に必要な入力作
業や解析結果の確認を容易にするGUI を備えています。
組み合わせることで設備の構造を直接模擬し、
構造の影響
板等のさまざまな形状の導体や、
コンクリート等を模擬す
落雷によって発生する電気現象(サージや電磁界)
に対し
て脆弱になっており、
故障や誤動作を引き起こす可能性が
高くなっています。落雷による被害を防ぐには、
あらかじめ
これらの電気現象を高精度に予測することが重要です。
以前より、落雷による電気現象の予測には「回路解析
手法」
が主に用いられてきました。
しかし、
電気現象を電気
回路に置き換えて近似的に解析する回路解析では、建物
や接地構造物で生じる三次元の電気現象を正確に模擬
することができず、合理的な雷害対策を講じるためには
精度の高い解析技術が求められていました。
一方、
アンテナ技術の分野において開発された
「数値電
磁界解析手法」は、三次元の電磁界現象を精度よく解析
できます。
そのため、数値電磁界解析手法を建物や接地構
造物の電気現象の解析に応用した研究が国内外で行われ、
さまざまな構成パーツ(細長い導体や避雷器など)を
を考慮した空間中の電磁界の伝搬として解析します。
※2
GUIでは、前章で述べた構成パーツに加えて、直方体・平
るための誘電体などの構成パーツを組み合わせることで
さらに、以下の
(a)∼(c)
の落雷によって発生する電気現
(図3-a)、設備の構造を直接模擬した計算モデルを効率的
設備で生じる電気現象を正確に予測できる実用的な解析
また、落雷による電気現象の解析では、大地の有無や
象を模擬するための新たな解析技術を組み込むことで、
を可能にしています。
(a)送電線や配電線など、空間中に存在する細長い形状
の導体を伝搬するサージ現象(図2-a)
(b)落雷したときの大電流によって発生する電磁界現象
(回路素子で電流の伝搬を制御)
(図2-b)
(c)避雷器が過電圧を抑制する現象やアークホーンの
絶縁破壊現象(図2-c)
に作成することができます。
大地内の電気パラメータの分布が重要になるときがあり
ます。
このため、平らな大地面や大地内の層構造の電気パ
ラメータを非常に簡単に設定でき、山や川などの複雑な
作業効率を大幅に向上させています。
電圧、
電流、
電界、
磁界の波形出力
(図3-b)
や
解析結果は、
電界、
磁界分布の時間変化に伴うアニメーション
(図3-c)
などで確認することができます。解析結果を可視化する
ことで、電気現象が捉えやすくなり、効果的な雷害対策に
つなげることができます。
また
「VSTL REV」
は、設備を含む空間全体の電気現象
を取り扱うため、以前は回路解析に比べて計算処理に
時間がかかり、大規模な解析が困難でした。
しかし、近年
の高 度 なコンピューティング 技 術を適 用することで
地形に対応した電気パラメータも設定できるようにして
「VSTL REV」
の大幅な高速化を実現しました。
これによ
さらに、多数のパーツで構成されている鉄塔や建物など
規模な解析を可能にするとともに、各種パラメータによる
います。
を1つのパーツとして取り扱うこともでき、多くの建物や接
地構造物で構成される発電所などでは、
そのパーツを組み
当研究所でも落雷による三次元的な電気現象の解析を可
合わせることで、
より複雑な計算モデルを作成するときの
り、複雑な形状の構造物にも適用できるなど、実用的で大
影響も詳細に評価できるようにするなど、実用性を大幅に
向上させました。
「VSTL REV」を開発しました
(図1)。
能とするプログラム
落雷
雷雲
サージ
雷電流が大地から
雷雲に向って進展
回路解析
数値電磁界解析
電線
大地と平行に配置
自由な配置が可能
三次元
構造物
高精度な模擬は不可能
構造材間の電気的結合を考慮した
高精度な模擬が可能
接地構造物
高精度な模擬は不可能
接地構造物の過渡特性や
電気的結合を考慮した
高精度な模擬が可能
落雷時の
誘導現象
大地に平行な電線に限れば
高精度な模擬が可能
落雷時の誘導サージ現象の
高精度な模擬が可能
落雷
入力パーツの例
電磁界
が発生
・直方体、円柱、平板などの各種形状導体
図2-b 落雷によって発生する電磁界
直撃または近傍への落雷によって発生したサージ
が電線を伝搬する
落雷時に流れる大電流によって電磁界が発生する
各パーツの諸元値を入力する
・大地やコンクリートなどの導電性媒質を模擬するための誘電体
大地
図2-a 雷サージの伝搬
入力例
・電圧や電流を発生させるための電圧源、電流源
・空間中の電圧、電流、電界、磁界の情報を得るためのプローブ
落雷を模擬
落雷を模擬
入力パーツ
塔頂
図3-b 結果
(電圧の波形出力)
上相
アーム位置
中相
アーム位置
下相
アーム位置
変電所に設置されている避雷器
(提供:中部電力)
鉄塔への落雷
電気回路に置き換える
図1 回路解析と数値電磁界解析の比較
鉄塔の形状を直接模擬
図2-c 避雷器とアークホーン
鉄塔に設置されているアークホーン
避雷器では機器を保護するために過電圧を抑制する現象が、アークホーンではがいしを保護するために
アークホーン間で絶縁破壊させる現象が起こる
図2 VSTL REVで解析可能になった電気現象
図3-a パーツ入力例と入力画面
図3 VSTL REV の解析例
図3-c 結果
(磁界の時間変化)
※2 Graphical User Interface:グラフィックスを利用することで、
パーツのデータ入力などの操作性や、
パーツの配置や解析結果などの視認性を向上させる
1
2
VSTL REVの開発
VSTL REVの実用化
数値電磁界解析の必要性 落雷による電気現象の解析を可能に 操作性と実用性を向上 発電所や変電所などの電力設備や情報通信設備など
に導入されている電子機器は、従来のアナログ機器に比べ
当研究所で開発した
「VSTL REV」
では、落雷によって
発生する電気現象を電気回路に置き換えるのではなく
「VSTL REV」
では、計算モデルの作成に必要な入力作
業や解析結果の確認を容易にするGUI を備えています。
組み合わせることで設備の構造を直接模擬し、
構造の影響
板等のさまざまな形状の導体や、
コンクリート等を模擬す
落雷によって発生する電気現象(サージや電磁界)
に対し
て脆弱になっており、
故障や誤動作を引き起こす可能性が
高くなっています。落雷による被害を防ぐには、
あらかじめ
これらの電気現象を高精度に予測することが重要です。
以前より、落雷による電気現象の予測には「回路解析
手法」
が主に用いられてきました。
しかし、
電気現象を電気
回路に置き換えて近似的に解析する回路解析では、建物
や接地構造物で生じる三次元の電気現象を正確に模擬
することができず、合理的な雷害対策を講じるためには
精度の高い解析技術が求められていました。
一方、
アンテナ技術の分野において開発された
「数値電
磁界解析手法」は、三次元の電磁界現象を精度よく解析
できます。
そのため、数値電磁界解析手法を建物や接地構
造物の電気現象の解析に応用した研究が国内外で行われ、
さまざまな構成パーツ(細長い導体や避雷器など)を
を考慮した空間中の電磁界の伝搬として解析します。
※2
GUIでは、前章で述べた構成パーツに加えて、直方体・平
るための誘電体などの構成パーツを組み合わせることで
さらに、以下の
(a)∼(c)
の落雷によって発生する電気現
(図3-a)、設備の構造を直接模擬した計算モデルを効率的
設備で生じる電気現象を正確に予測できる実用的な解析
また、落雷による電気現象の解析では、大地の有無や
象を模擬するための新たな解析技術を組み込むことで、
を可能にしています。
(a)送電線や配電線など、空間中に存在する細長い形状
の導体を伝搬するサージ現象(図2-a)
(b)落雷したときの大電流によって発生する電磁界現象
(回路素子で電流の伝搬を制御)
(図2-b)
(c)避雷器が過電圧を抑制する現象やアークホーンの
絶縁破壊現象(図2-c)
に作成することができます。
大地内の電気パラメータの分布が重要になるときがあり
ます。
このため、平らな大地面や大地内の層構造の電気パ
ラメータを非常に簡単に設定でき、山や川などの複雑な
作業効率を大幅に向上させています。
電圧、
電流、
電界、
磁界の波形出力
(図3-b)
や
解析結果は、
電界、
磁界分布の時間変化に伴うアニメーション
(図3-c)
などで確認することができます。解析結果を可視化する
ことで、電気現象が捉えやすくなり、効果的な雷害対策に
つなげることができます。
また
「VSTL REV」
は、設備を含む空間全体の電気現象
を取り扱うため、以前は回路解析に比べて計算処理に
時間がかかり、大規模な解析が困難でした。
しかし、近年
の高 度 なコンピューティング 技 術を適 用することで
地形に対応した電気パラメータも設定できるようにして
「VSTL REV」
の大幅な高速化を実現しました。
これによ
さらに、多数のパーツで構成されている鉄塔や建物など
規模な解析を可能にするとともに、各種パラメータによる
います。
を1つのパーツとして取り扱うこともでき、多くの建物や接
地構造物で構成される発電所などでは、
そのパーツを組み
当研究所でも落雷による三次元的な電気現象の解析を可
合わせることで、
より複雑な計算モデルを作成するときの
り、複雑な形状の構造物にも適用できるなど、実用的で大
影響も詳細に評価できるようにするなど、実用性を大幅に
向上させました。
「VSTL REV」を開発しました
(図1)。
能とするプログラム
落雷
雷雲
サージ
雷電流が大地から
雷雲に向って進展
回路解析
数値電磁界解析
電線
大地と平行に配置
自由な配置が可能
三次元
構造物
高精度な模擬は不可能
構造材間の電気的結合を考慮した
高精度な模擬が可能
接地構造物
高精度な模擬は不可能
接地構造物の過渡特性や
電気的結合を考慮した
高精度な模擬が可能
落雷時の
誘導現象
大地に平行な電線に限れば
高精度な模擬が可能
落雷時の誘導サージ現象の
高精度な模擬が可能
落雷
入力パーツの例
電磁界
が発生
・直方体、円柱、平板などの各種形状導体
図2-b 落雷によって発生する電磁界
直撃または近傍への落雷によって発生したサージ
が電線を伝搬する
落雷時に流れる大電流によって電磁界が発生する
各パーツの諸元値を入力する
・大地やコンクリートなどの導電性媒質を模擬するための誘電体
大地
図2-a 雷サージの伝搬
入力例
・電圧や電流を発生させるための電圧源、電流源
・空間中の電圧、電流、電界、磁界の情報を得るためのプローブ
落雷を模擬
落雷を模擬
入力パーツ
塔頂
図3-b 結果
(電圧の波形出力)
上相
アーム位置
中相
アーム位置
下相
アーム位置
変電所に設置されている避雷器
(提供:中部電力)
鉄塔への落雷
電気回路に置き換える
図1 回路解析と数値電磁界解析の比較
鉄塔の形状を直接模擬
図2-c 避雷器とアークホーン
鉄塔に設置されているアークホーン
避雷器では機器を保護するために過電圧を抑制する現象が、アークホーンではがいしを保護するために
アークホーン間で絶縁破壊させる現象が起こる
図2 VSTL REVで解析可能になった電気現象
図3-a パーツ入力例と入力画面
図3 VSTL REV の解析例
図3-c 結果
(磁界の時間変化)
※2 Graphical User Interface:グラフィックスを利用することで、
パーツのデータ入力などの操作性や、
パーツの配置や解析結果などの視認性を向上させる
VSTL REVの活用例
発電所の低電圧回路を保護する接地構造物の設計
建物内の電子機器を保護する対策の検討
発電所や変電所などでは、電気の流れを常時監視・制
御するための低電圧回路が運用されており、その回路で
建物に直接あるいはその近傍に落雷したときには、建
物の内部にも電磁界が発生します。その影響によって機
障害が起こると、電力の安定供給に支障が生じる恐れが
器に接続された通信線などにサージが発生する、
あるい
あります。低電圧回路の主な障害要因には、落雷によって
はその電磁界に直接曝されることによって、建物内の電子
す。
その影響を低減させるには、接地線を適切な場所に布
を守るためには、落雷による電磁界を予測し、適切な対策
地中に布設された接地構造物に進入するサージがありま
設することが有効です。
図4-aは、発電所内にある送電中の電圧や電流を計測
機器で障害が起こることがあります。雷から建物内の機器
落雷によって接地構造物(接地網)
にサージが進入した条
子機器の設置場所の検討、電磁界の影響を防ぐための電
のです。
図4-bは制御線を模擬した電線に発生する電圧を
表しており、適切な場所に接地線を追加(赤)
することで
サージの進入によって生じる電圧を抑制できることが分
電中研ニュース
No.479
2015 Apr
分布に基づいて、障害が発生しにくい通信線のルートや電
磁シールドの性能評価(図5-2)
などが可能です。
このよう
に、建物の構造に応じた効果的な雷害対策を検討するこ
とができます。
弱
かります。
(北陸電力からの受託研究)
改修前の接地網
追加した接地線
本プログラム上で
制御線を模擬した電線
̶落雷による電気現象を高精度に予測し
効果的な耐雷対策を支援̶
図5-1は、鉄筋コンクリート構造の建物に直接落雷した
ときに内部に発生する電磁界を予測した結果です。その
件で解析を行い、接地線の適切な追加場所を検討したも
雷から電子機器を守るための
電磁界解析プログラム「VSTL REV」を開発
を施す必要があります。
する機器や電流を入切する機器などに接続される制御線
を模擬した電線(緑)
と、改修前の接地網(青)
を対象に、
電中研
NEWS
3
電磁界の強さ
電力流通
強
電磁シールド設置前
構内鉄構
サージ
電流を注入
計算箇所
制御建屋の接地極
開閉所の接地網
接地構造物に追加した接地線に
よって、制御線を模擬した電線に
誘導される電圧が抑制されている
電圧 [ V/A ]※3
図4-a
電磁シールド設置後
鉄筋
0
-2
接地線追加前
接地線追加後
-4
-6
0
図4-b
10
時間 [μs ]
図4 接地線の追加による誘導電圧抑制効果の評価例
3階部分
20
電磁シールドの設置によりシール
ド内の電磁界が低減されている
鉄筋コンクリート構造の建物
図5-1 建物に落雷した際の電磁界発生状況 図5-2 電磁シールドの性能評価例
※3 単位電流に対して発生する電圧
ひとこと
電力技術研究所 主任研究員 立松
明芳
社会で多用されている電子機器
本プログラムの開発に携わった当初は、既存の数値電磁界解析手法を落雷によるサージや電磁界現象の解
析に適用するために、解決しなければならない課題が数多くありました。
しかし、解析技術の進展や外部機関との
交流などを通じて課題を1つ1つ克服し、実設計に役立つプログラムとして電気事業、大学、建設業界などで活
用いただけるようになりました。現在は、
さらなる機能向上を目指して、
「VSTL REV」
と
「回路解析」
それぞれの利
点を融合した新しい解析プログラムの開発を進めています。
¦ 関連する研究報告書 ¦
T00004「FDTD法に基づくサージ解析コードの開発」
H06006「FDTD法における極細線導体・非線形要素の模擬手法の開発」
H09002「FDTD法における避雷器模擬手法の開発とその配電線誘導雷電圧計算への適用」
(VSTL REV)
の高速化とその鉄筋コンクリート造建築物の雷サージ解析への適用」
H13009「FDTD法に基づくサージ解析プログラム
報告書は当所ホームページよりダウンロードできます
一般財団法人 電力中央研究所 広報グループ http://criepi.denken.or.jp/
〒100-8126 東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル7階 TEL:03-3201-6601
2015年4月発行
提供:音羽電機工業 雷写真コンテスト
近年、電力設備のみならず、通信、鉄道、航空などの社会インフラには大量の電子機器が導入され、社会インフラの安定
稼働を支えています。
これらの社会インフラに雷が落ちると、過渡的に電圧・電流(サージ)
や電磁界が変化する電気現象
が発生し、電子機器の故障や誤動作を引き起こすことがあります。
このような被害を防ぐには、落雷によって設備にどのよ
うな電気現象が起こるかを事前に予測し、適切な対策を講じることが重要です。
これまで、落雷による電気現象の予測には、
その現象を電気回路に置き換えて近似的に解析する
「回路解析手法」
が用
いられてきました。
しかしこの手法では、鉄塔や建物などの構造物や、発電所や変電所などで人体や機器の保護のために
地中に布設されている接地構造物などに発生する三次元的な電気現象を正確に模擬できませんでした。
このため、電力
中央研究所では三次元的な電気現象を直接模擬できる
「数値電磁界解析手法」
に着目し、落雷に伴う電気現象を精度よ
※1
「VSTL REV」 を開発しました。本プログラムは、発電所や変電所などの
く予測できるサージ・電磁界解析プログラム
効率的な接地設計や合理的な建物設計の検討など、雷から社会インフラを守るために活用できます。
※1 Virtual Surge Test Laboratory Restructured and Extended Version
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電中研ニュース 雷から電子機器を守るための電磁界