国際経済学
(3) 市場の効率性と貿易の利益
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2010年11月8日
今日学ぶ事

市場と政府の役割
1. 市場経済と均衡
2. 市場経済の効率性
3. 政府の役割
4. 豊かさと生産力
5. 貿易の利益(初級編)
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2
市場と均衡
普通の財の価格は大幅な変動はない
 価格は市場でのバランスで決まる
 安定した価格は均衡にあると言う
 均衡はバランスの取れた状態
 ヤジロベエ(弥次郎兵衛)のような物
 ショックを受けて価格は変動する事はある
 バランスする力が働いている

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神の見えざる手
市場経済に組み込まれているインセンティブに
よって希少な資源は有効に活用される
 アダム・スミス『諸国民の富の性質と原因の研
究』 略して国富論
 神の見えざる手

生産物の価値が最も高くなるように労働を振り向けるのは,自分の利益を増
やすことを意図しているからにすぎない.だがそれによって,その他の多
くの場合と同じように,見えざる手に導かれて,自分がまったく意図して
いなかった目的を達成する動きを促進することになる.そして,この目的
を各人がまったく意図していないのは,社会にとって悪いことだとはかぎ
らない.自分の利益を追求する方が,実際にそう意図している場合よりも
効率的に,社会の利益をたかめられることが多いからだ.
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市場の効率性
様々な個人と企業は個々に経済的決定
 個別に意志決定=分権的
 利己心に導かれて他人の事は構わない
 市場において相互に影響し合う
 結果,市場では効率的な状態が生まれる
 競争によって経済全体の福祉が増進される

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自動販売機市場の効率性
のどが渇いた
 近くの自動販売機でジュースを飲む


その場所のオーナーは自動販売機を設置す
れば売れると判断

多くの売り手がいれば高い価格を付けると
買い手がいなくなる
低い価格で買い手は安い価格でジュースを
飲める
 売り手も買い手も幸福な状態

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市場の効率性と政府の役割
「市場は効率的」は大体正しい
 政府が行政サービスを行っている例
国防,警察,司法,上下水道,道路,灯台,
福祉
 政府の役割
1. 市場をうまく働かせる
2. 市場では上手くいかない分野で手助け

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利己主義,価格情報,所有権

市場経済では利己的な個人が価格情報に反
応して自発的に取引を行っている.
→価格が分かれば買える物が分かる
自分の得た所得や利潤は所有権によって自
分のものとすることができる.
 国防,警察,司法が保障する
 所有権
所有者が自分の好きなように財産を使う
権利とそれを売る権利

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所有権が確立されていないとき

アルバイト料をいつも取られたら働く気が
起きなくなる

所有権の重要性はそれが無いときにどのよ
うな事態に陥るかを知ることにより分る
1.
北海道のニシンの乱獲によるニシンの減少
(所有権がないケース)
共有地の悲劇(共同所有で所有権が限定)
2.
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問い なぜ駅前に便利なコンビニが
できたのか?

ビルオーナーのインセンティブ

ビルのオーナーは,もっとも高い利潤をも
たらす方法で土地を有効に活用する

そこで生まれた利潤が自分の物になるので
正しい選択をするインセンティブが発生
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市場の失敗

市場取引に任せると上手くいかない時もある
市場の失敗 → 政府介入の理由
 政府の意思決定も重要な経済を混合経済
 政府の失敗
 どんなときに市場がうまく働くか,どんなと
きに機能しないか.その時に適切な政府の施
策は何か

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豊かさと生産力
先進国と発展途上国の違い
 日本ほど豊かな国はない
 世界トップレベルの所得
 給与の格差最小
 平均寿命最高
 新生児死亡率最低
 失業率5%
働く意欲との力のある人が20人に19人が職
を得ている

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生産力を測るGDP
全員に医療保険
 高い学力レベル

安全な国=犯罪率・投獄率・殺人・精神病
・麻薬乱用率がすべて低い
 もっとも重要な経済指標は生産力
 生産された物は誰かが購入
 それは誰かの所得になる
 高い生産力は高い所得
 国内総生産 Gross Domestic Products, GDP

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交換の利益
国際間の交換を貿易という
 イチローと石川遼はボールを交換
 何と何を交換すればよいのか?
 単純な例で貿易は利益を生むことを示す
 生産力が低くても交換の利益は必ず存在

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重商主義




16世紀から18世紀半ばまで欧米先進国は重商
主義が支配的な考え方
一国が裕福になるには輸入より輸出を多く
することである
輸出入の差額は主に金によって決済される
一国に金が増えれば増えるほど豊かになる
他国の犠牲で国を富ます考え方
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絶対優位


アダム・スミスは重商主義に異を唱えた
貿易の制限は良くない.

絶対優位に基づいて貿易することにより両国は
豊かになれる

絶対優位とは他の国々に比べてほとんどの財
をより効率的に生産できることを意味
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絶対優位の例

日本とアメリカは小麦と衣料のみを作っている

下の表はそれぞれの国で労働時間一単位あた
りの各財の生産量を表す
小麦
衣料
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アメリカ
6
1
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日本
1
2
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絶対優位の例








日本は衣料に優位性をもっている
アメリカは小麦
日本は衣料を輸出して,アメリカから小麦を輸
入する
両国が利益を得る
6W(小麦)と6C(衣料)を交換
双方の利益を衣料の量で表すと
アメリカの利益:6C-1C=5C
日本の利益:12C(=6×2)-6C=6C
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絶対優位の問題点

この例より日本は衣料に特化し,米国は小麦に
特化し貿易すればお互いに利益を得る

各国に絶対優位にある財があるとは限らない

絶対優位にない劣位にある国はどのように貿
易をすればよいか
それを解き明かすのが比較優位
アダム・スミスの考えを受けてリカードが提唱


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比較優位

ある財が他国と比べ相対的な費用が低い場合
にその国はその財に比較優位があると言う

相対的な費用が低い財を輸出し,それが高い
財を輸入すればよい
貿易の利益は相対的な費用の大小で決まる

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比較優位の例

日本と中国は今川焼きと杏仁豆腐のみを作っ
ているとします.

その国でのその財の生産量一単位あたりの生
産費を表します.
今川焼き
杏仁豆腐
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中国
10
10
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日本
20
30
21
比較優位の例/2




今川焼きも杏仁豆腐も中国の方が安く生産でき
ます.
つまり中国は絶対優位にあります.
絶対優位を持っていない日本はどのように貿易
を行えば成功を収めることができるでしょうか?
その答えを提供する概念が比較優位です.
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比較優位の例/3





ここで杏仁豆腐の相対費用を比較してみましょ
う.
中国の杏仁豆腐の相対的な費用=10/10=1
日本の杏仁豆腐の相対的な費用=30/20=1.5
中国の杏仁豆腐の生産費は今川焼きの生産費
の1倍
日本の杏仁豆腐の生産費は今川焼きの1.5
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比較優位の例/4
 1<1.5

中国は杏仁豆腐の生産に比較優を持っている

ある国のある財が他国と比べて相対的に安く作
れる場合,その国はその財に比較優位を持っ
ていると言います.

各々の国が比較優位にある財に特化して貿易
することによって両国は利益を得る
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比較優位の例/5

特化とはその財のみを作ることをさします

生産に必要な費用を負担できる金額の存在量
は各国で次のようになっている
金額
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中国
600
国際経済学3
日本
1200
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比較優位の例/6

各国で半分ずつのお金で今川焼きと杏仁豆腐
を作ったとします
今川焼き
杏仁豆腐
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中国
30
30
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日本
30
20
世界全体
60
50
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比較優位の例/7

それぞれが比較優位にある財に特化したとしま
しょう
今川焼き
杏仁豆腐
2010/11/8
中国
0
60
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日本
60
0
世界全体
60
60
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比較優位の例/8






このとき今川焼きの量は同じです
しかし,杏仁豆腐の量は10単位分増加していま
す.
これが比較優位による特化の利益です.
ここで両国が貿易を行います
日本が今川焼きを輸出し中国から杏仁豆腐を
輸入することによって両国が利益を得ます.
日本は製品を輸出,石油・鉱物燃料を輸入
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復習/1
経済学とは個人や企業の
選択
に関する学問


経済の諸問題は,利用可能なモノやサービ
ス,機械設備,時間の
希少性
から発生しています
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復習/2
ある物を食べるには他の何かを犠牲にしな
ければならない.
 経済学とは英語で
economics

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復習/3
合理的な行動

消費者は賢く買い物する
企業が儲けようとする


皆さんがアルバイトで時給を含めた良い待遇を求
める


あることに資源を多く使えば他の物に使え
る資源は少なくなることはトレードオフが
あるから
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復習/4

あるものを増やしたときにかかる追加的な
費用を限界費用という

あるものを増やしたときに得られる追加的
な便益を限界便益という

限界費用と限界便益が等しい水準がもっと
も望ましい
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復習/5

機会費用は真の費用

ある選択の機会費用とはそれをすることに
よって諦めなければならないもの
モノのやり取りを交換
自発的な交換の場を市場



人々に特定の行動を引き起こす便益や費用
をインセンティブ(誘因)
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復習/6


絶対優位とは他の国々に比べてほとんどの
財をより効率的に生産できることを意味
各国に絶対優位にある財があるとは限らない

ある財が他国と比べ相対的な費用が低い場
合にその国はその財に比較優位があると言う

各々の国が比較優位にある財に特化して貿
易することによって両国は利益を得る
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ダウンロード

11/08のスライド