「人間中心のソフトウェア開発」
オートポイエーシス・システム論
・
ルーマンの「社会システム理論」
から見えてくること
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1
オートポイエーシス・システムの定義
『オートポイエーシスの世界』
(新しい世界の見方)
近代文芸新書
近代文芸社
■ 個体性
■ 単位体としての境界の自己決定
■ 自律性
■ 入力・出力の不在
***
■ オートポイエーシス・システムの譬え
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潜水艦の話
家づくりの大工の話
蜂の巣づくりの話
サッカー/ラグビーの話
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2
オートポイエーシス・システム(1)
■ 作動/動き/はたらき(=行為)
■ 構成素
■ 構造
■ 環境
■ 位相
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3
オートポイエーシス・システム(2)
■ 攪乱
■ 構造的カップリング
■ システムのコード/意味
■ 構造的ドリフト/メタモルフォーゼ/構造変動
■ 言及/観察
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4
ルーマンの「社会システム理論」
『ルーマン 社会システム理論』
ゲオルグ・クニール、アルミン・アセナ著
舘野受男、池田貞夫、野崎和義訳、新泉社
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社会
コミュニケーション
情報/伝達/理解
人格
コード
メディア
心的システム(=意識システム)
山下和也氏の分類:意識システム/認識システム
■ 相互行為システム
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「オートポイエーシス・システム」論
あるいは
ルーマン「社会システム理論」の視点から
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アジャイル開発
自己組織化
活動理論
ポリフォニー
非物質的労働(Immaterial Labour)
プロダクトとプロセス
「弱い紐帯がもつ強さ」
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6
アジャイル開発
メディア
A
B
(2)
(1)
(4)
(3)
A*
B*
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7
自己組織化
「自己組織化を促すには、従来の組織運営では限界があるでしょう。
より創発が生まれやすい仕組みに変える必要があります。大きくは、
次の四つの条件が必要となります。
(1)創造的な『個』の営みを優先する。
(2)ゆらぎを秩序の源泉と見なす。
(3)不均衡ないし混沌を排除しない。
(4)コントロールセンターを認めない。」
『ハーバード・ビジネス・レビュー』2003年3月号
特集:「学習する組織」のマネジメント
「自己組織化の条件」
(今田高俊氏へのインタビューから)
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「活動理論」
・・・新しい世代(第三世代)・・・
「分散認知」(Hutchins、1991)
「状況的学習」 - 正当的周辺参加 - (レイヴ&ウェンガー 1993)
「文化心理学」(コール 2002)
「実践コミュニティ」(ウェンガー、マクダーモット&スナイダー 2002)
「学びの共同体」(Sato、2005)
「知識構築コミュニティ」(Ohshima,2005;大島、野島、波多野 2005)
「拡張的学習」(ユーリア・エンゲストローム 2008)
「ノットワーキング」(山住勝広&ユーリア・エンゲストローム2008)
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「活動理論」から・・・
■ 状況的学習
『状況に埋め込まれた学習』 (正統的周辺参加)
(ジーン・レイヴ&エティエンヌ・ウェンガー著、佐伯胖訳、産業図書)
■ 拡張的学習
「拡張的学習は、仕事や組織の実践の中で、人々が現状の矛盾に出会いながら、対象との継続的
な対話を進め、活動の新たなツールやモデル、コンセプトやヴィジョンを恊働で生み出すことによっ
て、制度的な境界を越えた自らの生活世界や未来を創造していくことをいう」
■ ノットワーキング(Knotworking)
『 ノットワーキング』(結び合う人間活動の創造へ)
(山住勝広&ユーリア・エンゲストローム編、新曜社)
「・・・『ノットワーキング』は、あたかも『ノット』=『結び目』を編み出していくかのような、人々の束の間
の短期的な結びつきである。そこに、固定されたコントロールの権限を独占するひとりの人物が存
在しているわけではない。だから、そこに『中心はない』。くりかえせば、それは、安定的に固定化さ
れたチームやネットワークではない。むしろ、それは複雑・多様なクライアントやユーザーのニーズ
にそのつど応答し、流動的な状況の中で即興的に恊働する、仕事や実践の柔軟な形態のことであ
る。つまり『ノットワーキング』は、固定され中心化された活動領域を超え、人やリソースをつねに変
化させながら結び合わせていく、脱中心化、脱領域化された仕事や実践の水平的で恊働的な生成
を指し示しているのである。」(72〜73ページ)
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「ポリフォニー」
「それぞれの独立して互いに解け合うことのないあまたの声と意識、それぞれがれっきと
した価値を持つ声たちによる真のポリフォニーこそが、ドストエフスキーの小説の本質的
な特徴なのである。彼の作品の中で起こっていることは、複数の個性や運命が単一の作
者の意識の光に照らされた単一の客観的な世界の中で展開されてゆくということではな
い。そうではなくて、ここではまさに、それぞれの世界を持った複数の対等な意識が、各
自の独立性を保ったまま、何らかの事件というまとまりの中に織り込まれてゆくのであ
る。」(『ドストエフスキーの詩学』、ミハイル・バフチン著、望月哲男、鈴木淳一訳、ちくま
学芸文庫、15ページ)
「・・・ドストエフスキーの長編を締めくくるカタルシスを表現するとしたら、---ぴたりとは一
致しない、いく分合理的な表現になってしまうのはもちろんだが、---恐らく次のようにな
るだろう。すなわち、世界ではまだ何一つ最終的なことは起こっておらず、世界の、ある
いは世界についての最終的な言葉はいまだ語られておらず、世界は開かれていて自由
であり、いっさいは未来に控えており、かつまた永遠に未来に控え続けるであろう、と。」
(同上、333ページ)
(注)「ポリフォニー」については、アントニオ・ネグリ&マイケル・ハートが『マルチチュード』で、ユーリ
ア・エンゲストロームが『拡張的学習』でバフチンを参照している。
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非物質的労働
(Immaterial Labour)
「・・・非物質的労働とは、知識や、情報、コミュニケーション、関係性、情動的反応と
いった非物質的な生産物を造り出す労働である。・・・非物質的な労働には二つの基
本的な形態がある点を押さえておこう。
第一の形態は、問題解決や象徴的・分析的な作業、そして言語的表現といった、主と
して知的ないしは言語的な労働を示す。この種の非物質的労働はアイデンティやシ
ンボル、コード、テクスト、言語的形象、イメージその他の生産物を生み出す。
非物資的労働のもうひとつの主要な形態は、『情動労働』と呼ぶものである。心的現
象である勘定とは異なり、情動とは精神と身体の両方に等しく関連する。・・・情動労
働とは、安心感や幸福感、満足、興奮、情熱といった情動を生み出したり操作したり
する労働を指す。具体的には、弁護士補助員やフライトアテンダント、ファーストフー
ド店の店員(笑顔でのサービス)といった仕事に情動労働を見出すことができる。」
(マルチチュード(上)<帝国>時代の戦争と民主主義>アントニオ・ネグリ、マイケ
ル・ハート著、幾島幸子訳、184〜185ページ)
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非物質的労働
(Immaterial Labour)
異論?
「・・・産業の高度化が進んだ昨今では、知識産業、情報産業、サービス産業などの
言葉が一般化するようになった。このため、知識や情報やサービスまでもが産業と
いう言葉の連想語になりつつある。けれども納得のいかないことだ。そもそも知識
や情報の本質は産業的な生産概念になじまない。
知識や情報を生産するというのは、産業社会の論理に汚染された発想である。知識
は既存の差異からの差異化によって《創造》されるものであり、素材を機械によって
加工・変形するといった意味での生産過程にはしたがわない。差異化によって付加
価値を《創造》することが決定的に重要なのである。知識にかぎらず、情報とかアイ
ディアはこうした性質をもっている。だから既存の付加価値をもった差異体系を破
壊して、さらに新たな付加価値をもつ差異を創造することがクリティカルである。」
(『モダンの脱構築』、(産業社会のゆくえ)、今田高俊著、中公新書、中央公論社、
214ページ)
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「プロダクト」と「プロセス」
オートポイエーシス・システム論からは
■ プロダクト
=構成素の集まりの体系
=構造
■ プロセス
=連続する作動(行為)の閉じた系
=オートポイエーシス・システム
・・・のように見える・・・
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14
「弱い紐帯がもつ強さ」
「・・・一般に政治的な絆や領域的、血縁的な絆は、言うなれば『強い絆』であって、
個人を助ける面もあるが抑圧的、閉鎖的になる側面もあった。これに対して、これ
ら趣味仲間の組織はマーク・グラノヴェターの用語法での比較的『弱い紐帯』の一
つだった。」(『美と礼節の絆』、池上英子著、NTT出版,18ページ)
「・・・前近代の日本社会はえてして権威主義的社会として描かれることが多いが、
『弱い紐帯がもつ強さ』という視点から見直してみると、その市民的伝統は『シヴィ
リティー』という形では実はかなりの実力をもっていたのではないか、ということだ。
それは確かに、欧米のブルジョワジー中心の組織と論理に支えられた市民社会で
はない。・・・略・・・」(同上、475〜476ページ)
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ソフトウェア開発のプロセス
■ 単一のシステムとしてのプロセス
システムのコードを変えながら、構造変動、メタモルフォーゼ、構造
的ドリフトなどを繰り返しつつ存続していくオートポイエーシス・シス
テムとしてのプロセス。
■ 複数のシステムからなる開発プロセス
いくつかのオートポイエーシス・システムが動くことによって、ソフト
ウェアの開発をおこなうようなプロセス。
例:ウォーターフォール型の開発、複数の人間による開発
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「管理」とは
(オートポイエーシス・システムの視点)
M*
M*
・・・
・・・
A1s
A1
As
As
A*
A*
・・・
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・・・
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チームあるいは組織とは・・・
■ 他人がなにを考えているかはわからない(知る術がない)。
どういうコードで作動(=行為)しているかわからない。
■ 分からないが推量することはできる。材料は構造である。
たとえば、「ドキュメント」とか「プログラム」である。
■ 現に作動しているシステムの構造と観察システム(自己言及
システム)の構造とはべつものである。
たとえば、「成果物」と「報告書」の違いである。
■ 他人(の行為)をコントロールすることはできない。
■ 構造(構成素)を介して影響を与えることはできる(構造的
カップリング)。ただしどういう影響になるかはわからない。
■ プロジェクトが成功した、というのは「偶然」である。
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・・・では、どうしようか。
■ 相手の作動(コード)をその構造(ないしは構成素)から推察する。頻繁に注
意深く・・・。
■ 観察システム(自己言及システム)の構造だけでなく、元のシステムの構造も
よくみる。
■ それに基づいて、依頼なり指示なりを出す(つまり構造(構成素)として産出
する)。
■ 組織がうまく機能するとかプロジェクトが成功する、とかいうことは幻想であ
る。それが基本である。
■ セイフティネットを張ることに全力を注ぐ。
***
■ 「状況」に応じて、「都度」、「適切な」手だてを講じることのできるスキル
「だけ」が有効である。
*
■ マネジメントのコツは、「雪だるま」をつくるのではなく、「雪だまり」をつ
くるようなものである。(・・・だれだったか・・・)
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最後に・・・
■ 『資本主義後の世界のために』
(新しいアナーキズムの視座)
(デヴィッド・グレーバー著、高祖岩三郎訳、以文社)
■ 『権力を取らずに世界を変える』
(ジョン・ホロウェイ著、大窪一志、四茂野修訳、同時代社)
***
「プロフェッショナルとは、全面的な五里霧中のなかにあってなお適切な判
断をするもののことである。」(経営評論家、故伊藤肇氏)
***
コラボレーションのできるアナーキストがいい。
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:おまけ:
・・・経営の立場から・・・
(1)
■ 開発のための道具
(方法論、技法、開発ツールなど)
■ 営業折衝、目標設定、動機づけ、技術管理、配員管理、
スケジュール管理、品質管理、コスト管理などの
プロジェクトを巡るなにやかやのすべて(プロジェクトの環境)
<道具>と<環境>はセットで考えてもらわねば困る。
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・・・経営の立場から・・・
(2)
■ とはいえ・・・
これらのすべてを「ひとり」で構想し、「ひとりで」実行
するのは不可能にちがいない。
■ したがって・・・
PM/PLあるいはメンバー間で、互いに「意を汲み合いな
がら」自律的に恊働してもらわねばならない。
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・・・経営の立場から・・・
(3)
■ そして、さらに・・・
たとえば、職人は自分の工具は自分でつくり、自
分用の工具のセットを持っている。
営業折衝やなにやかやの管理のしかたについての
考えかたもそれぞれ異なる。
つまり、<道具>と<環境>のセットはひとりひとり違う。
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・・・経営の立場から・・・
(4)
■ ということは・・・
プロジェクトの遂行方式を一律に標準化することはできない。
プロジェクト当事者の「状況対応的」能力を養う以外に方策はない。
結局は、「人間力」そのもの。
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ダウンロード

人間中心のソフトウェア開発