調査
ソーシャルメディアを活用したまちづくりの可能性
∼自治体、地域住民の取り組み
情報技術の進歩により、インフラ面では光ファイバーやADSLなどのブロードバンドサービスの利用
環境が全国的に整備されると同時に、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、タブレット等、ネットワー
ク接続端末の多様化・多機能化が進んでいる。
こうしたなか、個人や組織など誰もが参加できるソーシャルメディア(ブログ、ツイッター、フェイ
スブック等)が、震災時の災害・生活関連情報を配信したことで注目を集めた。最近では自治体が災害・
観光情報の発信などでソーシャルメディアを導入する例や、住民によるまちづくり・地域活性化のツー
ルとして活用する動きが広がりつつある。
本号ではツイッターやフェイスブックを中心に、行政や地域住民がソーシャルメディアをまちづくり
にどのように活用しているか、現状や課題などを整理し、地域におけるソーシャルメディア活用の可能
性について探る。
第1章 ソーシャルメディアの概要
まず、情報インフラの整備状況と、近年利用者が
は78.2%に達している。
拡大しているソーシャルメディアの概要について
ブロードバンド化(高速化)の進展
みていく。
インターネットが普及するなかで、回線の高速
インターネット利用者の増加
化・大容量化も進んだ。自宅のパソコンからイン
国内のインターネットの利用者数(過去1年間に
ターネットを利用している世帯の接続回線の種類
インターネットを利用した人の推計値)の推移をみ
は、02年ではナローバンド(低速)が70%を占め、
ると、1997年の1,155万人から03年の7,730万人と、
ブロードバンド(高速・大容量)は3割程度であっ
6年間で6千万人以上増加した(図表1-1)。その後
た(図表1-2)。しかし、03年にブロードバンドとナ
も緩やかに増加が続いており、10年の利用者数は
ローバンドがほぼ拮抗し、04年にはブロードバンド
9,462万人と、人口に対するインターネット普及率
が上回り、10年時点では約8割の世帯が高速回線を
図表 1-1 インターネットの利用者数と人口普及率
図表 1-2 自宅のパソコンからインターネットを利用する
世帯の接続回線
(%)
(万人)
10,000
インターネットの利用者数(左軸)
9,000
人口普及率(右軸)
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
97年 98 99 00 01 02 03 04 05 06
07 08 09 10
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
出所:総務省「ICT インフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境に
及ぼした影響と相互関係に関する調査研究」
90
80
70
60
50
40
30
20
ナローバンド回線
10
0
02年
04
05
06
07
08
09
10
出所:総務省
「通信利用動向調査」
’
12.5
16
03
ブロードバンド回線
シャルメディアは生まれた。ソーシャルメディアと
使用してインターネットを利用している。
は、少数の発信者から大量の情報を一方向で発信す
モバイル化の進展
る「マスメディア」に対して、インターネットなど
高速回線化の一方で、携帯電話によるWebの閲覧
の情報伝達技術を使用して、誰もが相互に情報を発
やeメールの送受信などの新しいサービス開始を背
信することが可能なメディアである。具体的には、
景として、モバイル端末からインターネットを利用
SNS、ブログ、Twitter(以下ツイッター)等がある
する人が増加した(図表1-3)。
(図表1-4)。
特に02年から05年にかけて利用率が上昇した背
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は
景には、携帯電話キャリアによるパケット定額サー
インターネットを利用して人と人とのコミュニ
ビスの提供がある。接続料金を気にすることなく、
ケーションをサポートするサービスである。利用者
携帯電話からインターネットにアクセスできる環
は自分のプロフィールや日記、友人関係などを公開
境が整ったことが、インターネットのモバイル化が
できる。また、知人・友人などの日記を見たり、コ
進展した要因の一つと考えられる。
メントやメッセージを送ることもできる。
図表 1-3 モバイル端末からのインターネット利用者割合
広く共有することができ、閲覧者がコメントした
(%)
90
り、リンクを張ることで第三者の目に留まりやすい
80
70
仕組みが導入されている。特にツイッターは投稿内
60
50
容がリアルタイムで反映され、情報を見た人が同じ
40
内容を投稿(リツイート)することにより、爆発的
30
20
ブログやツイッターも、個人が発信した情報を幅
00年
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
※利用者割合には、携帯電話、PHS 及び携帯情報端末
(PDA)を指すモバイル
端末と重複して、パソコン、ゲーム機等によりインターネットを利用して
いる利用者も含まれる
出所:総務省
「情報通信白書」
に伝播するという特徴を持つ。
このように、ソーシャルメディアはインターネッ
トを通じたリアルタイム型・双方向型のコミュニ
ケーションツールとして、人と人とを結び付ける機
ソーシャルメディアとは
能を有している。
こうした情報インフラの整備を土台として、ソー
図表1-4 主なソーシャルメディアの種類と特徴
SNS
Social Networking Service(Site)の略。インターネット上で友人を紹介しあって、個人間の交流を支援するサービス(サイト)。
誰でも参加できるものと、友人からの紹介がないと参加できないものがある。会員は自身のプロフィール、日記、知人・友人関
係などを、ネット全体、会員全体、特定のグループ、コミュニティ等を選択のうえ公開できるほか、SNS上での知人・友人等の
日記、投稿等を閲覧したり、コメントしたり、メッセージを送ったりすることができる。
<例>mixi(ミクシィ)、Facebook(フェイスブック)等
地域SNS
地域のコミュニティ活動に特化したSNS。対象とする地域の範囲や性質・運営主体は多種多様となっている。主に市民活動の活
性化・市民交流の促進や地域内での情報流通・蓄積・発信などに利用されている。
<例>ごろっとやっちろ(熊本県八代市)、あみっぴぃ(千葉県西千葉地区)
ブログ
Weblog(ウェブログ)の略。ホームページよりも簡単に個人のページを作成し、公開できる。個人的な日記や個人のニュースサ
イトなどが作成・公開されている。
<例>Amebaブログ、Yahooブログ等
Twitter
個々のユーザーが「ツイート」
(Tweet)と呼ばれる140文字以内の「つぶやき」を投稿し、そのユーザーをフォローしているユー
ザーが閲覧できるサービス。タイムラインと呼ばれる自分のページには自分の投稿と自分がフォローしているユーザーの投稿が
時系列順に表示される。RT(Retweet)による他人のツイートの引用、ハッシュタグによる特定のテーマでのやり取り等の仕組
みも取り入れられ、活発なコミュニケーションが可能となっている。
ミニブログ
パソコンや携帯電話等で200文字程度の短い文章を書いて公開するブログの一種でマイクロブログとも呼ばれる。Twitterをミニ
ブログに含めることも多い。また、ブログやSNSでミニブログ的な機能を提供するものもある。
<例>Amebaなう等
上記は、ソーシャルメディアのうち、文字によるコミュニケーションを主としたもの。このほか、
「You Tube」などの動画共有サービスもソーシャル
メディアに含まれる。
’
12.5
17
2人にひとりがソーシャルメディア利用経験あり
国内におけるソーシャルメディアの利用状況は
どうだろうか。総務省が11年3月に実施したアン
ケート調査(サンプル数3,171件)によると、ソー
ログ(54.8%)、ツイッター(50.0%)、ネット上の
掲示板(33.1%)などとなっている。
図表 1-7 現在利用しているソーシャルメディアの種類
(複数回答)
(%)
0
シャルメディアを現在利用している人の割合は
SNS(mixi、Facebook 等)
42.9 % で あ り、 過 去 に 利 用 し た こ と が あ る 人
ブログ(Ameba ブログ、Yahoo ブログ等)
50.0
33.1
ネット上の掲示板
17.6
地域 SNS(地域のコミュニティに特化した SNS)
16.1
ミニブログ(Ameba なう、前略プロフィール等)
図表 1-5 ソーシャルメディアの現在の利用数と
利用経験
75.2
54.8
Twitter
(10.0%)を加えると、2人にひとりが利用経験あ
りと回答している(図表1-5)。
10 20 30 40 50 60 70 80
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
現在 1 つだけ利用している
17.5%
SNSのうち、国内では最も早い04年にサービスを
現在複数利用している
47.1%
25.4%
過去に利用したことがある
が現在は利用していない
開始したmixi(ミクシィ)のユーザー数は、08年か
利用したことがない
ら3年余りで約400万人増加している(図表1-8)
。ま
10.0%
た、ツイッターやフェイスブックも、10年からの2
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
年でそれぞれ1,300万人超に急増している。なかでも
ツイッターは、震災時に不通となった電話の代わり
利用率は若年層ほど高い
に安否確認や各種情報の入手手段として役割を果た
ソーシャルメディアの利用者を年代別にみると、
現在利用している人の割合は10代が71.7%と高い一
方、60代以上は22.3%であり、年代によって大きな開
きがある(図表1-6)
。また、30代以下では複数の利用
割合が高く、特に10代では全体の約半数が2つ以上
のソーシャルメディアを利用している。一方、60代
以上の複数利用者は全体の1割にとどまっている。
図表 1-6 ソーシャルメディアの現在の利用数と
利用経験(年代別)
0%
10代
20%
40代
50代
60代以上
22.0
13.3
80%
6.7
39.3
26.3
14.1
11.3
10.6
8.9
9.3
図表 1-8 国内主要ソーシャルメディアのユーザー数推移
(万人)
1,800
震災で訪問者が急増
1,600
1,400
1,200
1,000
800
mixi
(月間ログインユーザー)
600
Facebook(訪問者)
400
Twitter(訪問者)
200
0
08年4月
09
10
11
出所:各種資料により作成
100%
21.6
26.9
38.2
13.5
11.6
18.5
15.2
11.0
60%
49.7
24.6
20代
30代
40%
22.0
し、11年3月の利用者数は大幅な伸びを示している。
54.8
62.0
一方、特定の地域コミュニティに特化して、情報
発信・交流を目的に運営されている地域SNS(図表
1-4参照)は、10年をピークに減少に転じている(図
68.9
現在 1 つだけ利用している
現在複数利用している
過去に利用したことがあるが
利用したことがない
現在は利用していない
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
図表 1-9 地域 SNS の推移
(事例)
600
519
500
400
336
469
404
354
300
利用しているメディアはSNSが最も高い割合
各ソーシャルメディアの利用種類をみると、mixi
(ミクシィ)
、Facebook(以下フェイスブック)な
100
0
21
06年
07
08
09
10
11
12
出所:GLOCOM 地域 SNS 研究会
どのSNSが75.2%で最も高い(図表1-7)。以下、ブ
’
12.5
18
252
200
表1-9)。その要因としては、利用者数の伸び悩みに
ち、約6割が複数のメディアを使用している状況を
よる閉鎖や、フェイスブック、ツイッター等へ運営
踏まえれば、利用者は目的に応じて複数のメディア
を移行したことなどが考えられる。
を使い分けているとみられる。
図表 1-11 ソーシャルメディアの利用目的
(メディアの種類別、複数回答)
利用目的は情報入手がトップ
0
ソーシャルメディアの利用目的をみると、「知り
もともとの知人とのコミュニケーションのため
たいことについて情報を探すため」が44.7%と、約
知りたいことについて情報を探すため
半数が情報入手を目的としている(図表1-10)。次
同じ趣味・嗜好を持つ人を探すため
(%)
10 20 30 40 50 60 70
43.9
58.5
自分の交友関係を広げたいと思ったから
い で、「 同 じ 趣 味・ 嗜 好 を 持 つ 人 を 探 す た め 」
同じ悩みごとや相談ごとを持つ人を探すため
(35.9%)
、「もともとの知人とのコミュニケーショ
ンのため」(31.6%)、
「暇つぶしのため」(29.3%)、
「自分の知識、経験や趣味に関する情報を共有する
13.1
ボランティア活動や社会貢献を一緒に
してくれる人を探すため
SNS(mixi、Facebook 等)
ブログ(Ameba ブログ、Yahoo ブログ等)
Twitter
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
ため」(28.3%)などとなっている。
図表 1-10 ソーシャルメディアの利用目的
(複数回答)
0
10
20
もともとの知人とのコミュニケーションのため
遠方の人
(国内)とのコミュニケーションのため
家族・親戚とのコミュニケーションのため
海外の人とのコミュニケーションのため
(%)
30
40
50
31.6
9.8
5.5
ソーシャルメディアを利用して実現したことにつ
いてみると、
「知りたいことについて情報を得られ
た」が84.1%で最も高く、
「同じ趣味・嗜好を持つ人
3.5
知りたいことについて情報を探すため
44.7
自分の知識、経験や趣味に関する情報を共有するため
と交流できた」
(73.7%)
「
、不特定多数とコミュニケー
28.3
自分の入手した情報を広く知ってもらいたいから
ションをとることができた」
(59.9%)
、
「自分の周囲
12.9
自分の創作した作品(小説、映像等)を鑑賞してもらいたいから
7.4
同じ趣味・嗜好を持つ人を探すため
35.9
インターネット上で知り合った人とのコミュニケーションのため
19.3
不特定多数の人とのコミュニケーションのため
11.9
自分の周囲にいないタイプの人を探すため
いる(図表1-12)
。
7.1
4.5
一緒に仕事をする人を探すため
1.4
ボランティア活動や社会貢献を一緒にしてくれる人を探すため
1.3
同じ悩みごとや相談ごとを持つ人を探すため
にいないタイプの人と知り合えた」
(58.3%)
、
「自分
の情報や作品を発表できた」
(54.3%)などとなって
14.2
自分の交友関係を広げたいと思ったから
複数の人とゲームで遊びたいから
ソーシャルメディアを利用して実現したこと
図表 1-12 ソーシャルメディアを利用して実現したこと
(複数回答)
(%)
0
10.9
専門家や経験者に相談・質問するため
ボランティア活動や社会貢献をするため
1.6
知りたいことについて情報を得られた
近隣の住民と情報を共有し、地域活動に役立てるため
0.7
自分の情報や作品を発表できた
暇つぶしのため
特に目的はない
その他
20
疎遠になっていた人と再び交流するようになった
6.2
29.3
5.4
1.4
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
にメディアの種類別で比較をすると、
「もともとの
知人とのコミュニケーションのため」はSNS、
「知り
同じ趣味・嗜好を持つ人と交流できた
73.7
59.9
自分の周囲にいないタイプの人と知り合えた
58.3
36.3
たいことについて情報を探すため」はツイッター、
「同じ悩みごとや相談ごとを持つ人を探すため」は
19.0
自分や家族・親戚の健康上の不安・問題が解消した
17.7
家族・親戚間の人間関係がより良好となった
14.1
勤務先・学校での人間関係や業績・成績が良好となった
14.0
10.1
9.8
近隣・地域に関わる不安・問題が解消した
11.7
社会の仕組みを変えることができた
10.3
政治や政策に影響を与えることができた
あてはまるものはない
ブログが、それぞれ相対的に高い(図表1-11)
。
ソーシャルメディアを現在利用している人のう
34.5
自分や家族の進学・就職・結婚・育児などの問題が解消した
老後のくらしに希望が持てるようになった
100
84.1
不特定多数とコミュニケーションをとることができた
収入や資産に関する不安・問題が解決した
80
54.3
新たな絆(ビジネスパートナーや趣味友達など)が生まれた
上記の各項目のうち、回答が多かったものを中心
60
39.4
ソーシャルメディアで知り合った人と実際に会うことができた
目的に応じたメディアの使い分け
40
8.6
3.5
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
’
12.5
19
上位回答をみると、情報の受発信や新たなコミュ
ニケーション組成に関する項目が多く、ソーシャル
1-14)。このほか、
「自分の個人情報を他人に不正に
利用される」
(71.3%)、
「自分の個人情報が消せない」
メディアが情報伝達や人々のつながり形成に一定
(56.4%)、「自分の個人情報や使用履歴を使ってお
の役割を果たしていることがわかる。また、必ずし
すすめ情報が届く」
(53.7%)など、個人情報に関
も実現の割合は高くないものの、身近な不安や問題
連した項目が多い。
や社会・コミュニティの問題が解消につながったと
する回答もみられた。このことは、ソーシャルメ
図表 1-14 ソーシャルメディア利用者が感じる不安
(複数回答)
0
ディアを通じた人と人との結び付きが、実社会の問
20
40
60
80
自分の個人情報が漏えいする
80.5
自分の個人情報を他人に不正に利用される
題解決にも効果を持つことを示している。
71.3
プライバシーを侵害される
66.6
スパムメールが届く
64.1
自分の個人情報が消せない
ソーシャルメディアを利用しない理由
56.4
自分の個人情報や使用履歴を使っておすすめ情報が届く
53.7
自分の情報が他人に改ざんされる
一方で、ソーシャルメディア未利用者における利
50.8
ネットいじめ・炎上にまきこまれる
相手との関係が悪化する
用しない理由は、
「興味がないから」
(58.8%)が際
(%)
100
48.1
36.2
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
立って多い(図表1-13)
。これ以外では「自分の個
人情報を知られたくないから」
(18.2%)
、
「不特定多
数の人に知られたくないから」
(9.9%)
、
「自分のプ
本章では、情報インフラの整備状況とソーシャル
ロフィールを悪用される可能性があるから」
(7.5%)
メディアの概要について確認した。ポイントは以下
といった、個人情報に関する理由が多い。また、
「迷
の通りである。
惑メールや詐欺メールが来る可能性があるから」
(17.9%)といった利用に関する不安や、
「参加のきっ
・ 1990年代後半から2000年代前半のインターネット
かけがないから」
(15.7%)
、
「使い方が分からないか
回線の高速化や携帯電話キャリアによるサービス
ら」
(14.2%)など、メディアに対する理解が低いた
改善などを背景として、多くの人がインターネッ
め、利用に至っていない人もみられる。
トを利用できる環境が整備された。
図表 1-13 ソーシャルメディアを利用しない理由
(複数回答、上位 10 項目)
0
興味がないから
自分の個人情報を知られたくないから
迷惑メールや詐欺メールが来る可能性があるから
参加のきっかけがないから
時間がないから
使い方が分からないから
メリットがないから
不特定多数の人に知られたくないから
ソーシャルメディアを知らないから
自分のプロフィールを悪用される可能性があるから
10 20
30
40
(%)
50 60 70
58.8
18.2
17.9
15.7
15.1
14.2
12.5
9.9
9.0
7.5
出所:総務省「次世代 ICT 社会の実現がもたらす可能性に関する調査研究」
・ ソーシャルメディアは双方向・リアルタイム型の
情報伝達媒体であり、SNSやブログ、ツイッター
など様々な種類がある。
・ 2人にひとりが利用経験を持ち、若年層の利用率
が高い一方、60代以上の利用率は3割にとどまる。
・ 利用目的は、情報の受発信を中心に、既知、未知
の人とのつながり形成・強化をあげる利用者が多
い。また、利用者は目的に応じてメディアを使い
分けていると考えられる。
・ ソーシャルメディアを通して、利用者は情報の受
利用者も個人情報の漏えいに不安を感じている
個人情報を他人に知られてしまう点は、ソーシャ
ルメディアの利用者も不安に感じている。利用者が
不安に感じていることについては、
「自分の個人情
発信や新たなコミュニケーションの組成、さらに
一部では実社会の問題解決を実現している。
・ 個人情報が広く知られることに対する懸念は利用
者・未利用者ともに強い。
報 が 漏 え い す る 」 が 8 割 を 超 え 最 も 高 い( 図 表
’
12.5
20
第2章 自治体の活用状況
前章では、ソーシャルメディアが若年層を中心と
して、日常的に使われはじめたことを確認した。
水戸、つくば、日立などの9市では、複数のメディ
アを組み合わせた運用を行っている。
自治体においても、住民への効果的な情報発信
このうちツイッターは、震災時の情報発信手段の
ツールとしてソーシャルメディアを導入する動き
確保を目的として導入した自治体が多く、開設時期
が広がりつつある。本章では、県内外の自治体にお
は11年3月以降が大半を占める。
けるソーシャルメディアの活用状況をみる。
図表 2-2 ソーシャルメディアを活用している市町村
(ツイッター、
フェイスブック、
ブログ)
北茨城市
1.県内外自治体の状況
(1)県内
茨城県
ソーシャルメディアのうち、茨城県が運営してい
(2012 年 4 月 1 日現在)
ツイッター
フェイスブック
ブログ
ツイッター&フェイスブック&ブログ
ツイッター&フェイスブック
ツイッター&ブログ
結城市
たものが多い。
ツイッター
2010年9月
ツイッター
2010年10月
ツイッター
ツイッター、フェイスブック
ツイッター、フェイスブック
フェイスブック
ツイッター
フェイスブック
ツイッター、フェイスブック
フェイスブック
2010年12月
2011年4月
2011年6月
2011年6月
2011年7月
2011年8月
2011年10月
2011年11月
フェイスブック
2011年11月
フェイスブック
2011年11月
フェイスブック
2012年3月
城里町
那珂市 東海村
ひたちなか市
水戸市
茨城町
石岡市
大洗町
小美玉市
鉾田市
つくば市土浦市
かすみがうら市
常総市
行方市
坂東市
阿見町
美浦村
鹿嶋市
つくばみらい市
潮来市
牛久市
守谷市
稲敷市
龍ヶ崎市
取手市
神栖市
河内町
利根町
心であり、開設時期は10 ∼ 11年にかけて開始され
開設時期
2009年11月
2010年6月
2010年9月
常陸太田市
五霞町 境町
ジを含む)
。各事例とも、県内外への情報発信が中
メディアの種類
ツイッター
ツイッター
ツイッター
日立市
常陸大宮市
筑西市
下妻市
古河市 八千代町
なっている(図表2-1、同一名称のアカウント・ペー
名 称
ハッスル黄門
茨城県広報広聴課
茨城県医療対策課
茨城県商工労働部
観光物産課
つくばエクスプレス沿線の
まちづくり
霞ヶ浦へようこそ!
うまいもんどころ茨城
茨城空港
茨城県国際課
ひばガールズ
茨城県国際観光推進室
黄門マルシェ
茨城の魅力を伝えたい
子供が育つ街研究会∼つく
ばスタイル∼
つくスタ情報局∼つくばス
タイルの魅力発信!∼
茨城県企業局
高萩市
桜川市 笠間市
る ツ イ ッ タ ー お よ び フ ェ イ ス ブ ッ ク は19事 例 と
図表 2-1 茨城県が運営するソーシャルメディア
(ツイッター、フェイスブック)
大子町
出所:各市町村のホームページより ARC が作成(観光協会を除く)
(2)県外
北関東他県(栃木、群馬)の利用状況はどうか。
まず、栃木県は、宇都宮や小山など9市町でツイッ
ターやブログを導入している。群馬県は、県観光局
でフェイスブックを運用している。また、沼田や大
泉、嬬恋の5市町村でツイッターやフェイスブック
を導入している。
(3)活用状況のまとめ
このように、県内外の自治体ではソーシャルメ
ディアの導入が進みつつある。但し、それぞれの発
※2012年4月12日現在
複数のメディアで運用しているものは、開設時期は開始が早い方を記載
出所:茨城県HP、各ソーシャルメディアのページより作成
信内容をみると、市政情報など、自治体から住民へ
市町村
している自治体は一部にとどまっている。
の一方的な発信が多く、双方向性を生かした運用を
次に市町村の利用状況をみると、18の市町村で
ソーシャルメディアの公式アカウントおよびペー
次節では、ソーシャルメディアをまちづくりに活
ジを運営している(図表2-2)。導入市町村のうち、
用している県内外の3市にヒアリングを実施した。
’
12.5
21
2.自治体ヒアリング
つくば市
企画部情報政策課IT戦略室 ICT利活用推進監 白川 篤氏
住民とのコミュニケーション強化が課題
ツイッターで出来るだけ早く発信し、同時に市民が
つくば市の情報発信媒体は、多くの市町村と同様
寄せる様々な情報もツイッターを通じて積極的に
にホームページと広報紙(月1回発行、業者による
収集しました。このうち、市の公式情報でなくても
各戸配布)が中心でした。ホームページは各種お知
信憑性の高いものは、リツイートなどで情報を共有
らせなどの情報量は豊富で、更新頻度も多いもので
しました。テレビや新聞などのマスメディアが伝え
したが、地域全体への伝達が十分とはいえず、住民
きれない給水などの生活関連情報を、ツイッターで
とのコミュニケーション強化が課題でした。このた
発信し続けた結果、公式アカウントのフォロワー数
め、市民とのコミュニケーションツールのひとつと
は3月11日を期に急増しました。
して、10年11月頃よりツイッターの導入に向けた検
討をはじめました。
「双方向・リアルタイム」の特徴を生かした情報受発信
ツイッターをはじめとするソーシャルメディア
は、
「双方向・リアルタイム」が大きな特徴です。
他の自治体では、フォロー返し(ツイッターでフォ
つくば市公式ツイッター(@tsukubais)の
フォロー・フォロワー数
(人)
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
11年1月
フォロー数
3
5
フォロワー数
7
9
11 12年1月
3
出所:つくば市企画部情報政策課
ローしてくれた相手に対して、自分もフォローする
こと)をしなかったり、ツイートへの返信をしない
つくば市では単にフォローされるだけでなく、市
ケースが多いのですが、つくば市では住民とのコ
からもフォローをすることで、どのような情報を市
ミュニケーションのために、双方向性を持った情報
民が求めているかが分かり、的確で迅速な情報発信
の受発信は欠かせないと考えています。このため、
が出来たのだと思います。
返信すべき発言に対しては丁寧に対応することと
し、11年1月から3ヶ月間の実証実験を行いました。
スピード感を持った情報発信に努める
震災時の成果もあり、11年4月にツイッターを正
東日本大震災が発生、迅速な情報収集・発信に
式に導入することになりました。導入後はツイッ
ツイッターが大きな役割を果たす
ターを広めるための庁内研修を実施しています。初
そうしたなか、3月11日に東日本大震災が発生し
級(個人利用向け)、中級(庁内で使用するための
ました。市民がつくば市の災害情報を入手する手段
ガイドライン等)
、上級(実体験に基づく運用改善
としては、行政への電話問い合わせ、市ホームペー
の方策検討)の3コースがあり、中級以上の研修を
ジ、コミュニティFM(ラジオ)が多かったようで
履修した職員に
「つぶやく」
権利を付与しています。
す。但し、問い合わせ殺到による電話不通、アクセ
自治体では、部署の課長に発言内容の承認を得て
ス過多(3月14日のホームページアクセス数は通常
から情報発信を行うプロセスが一般的ですが、リア
の約10倍に増加)により、これらの手段が思うよう
ルタイム(速報性)の利点を生かすために、発言内
に機能しなかった面もありました。
容については「誹謗中傷はしない」
「役に立つと思
市では施設の被害状況や避難所・給水情報などを
う情報を発信する」を原則として、担当者に任せて
’
12.5
22
います。現在、市では11のアカウントがあり、それ
を持てた事は、双方向性を有するメディアのおかげ
ぞれの部署で保有する情報を積極的に発信してい
といえるでしょう。
るところです。
様々なメディアを情報発信に活用
寄せられる市民の声が励みに
現時点のツイッター利用者は若年層が中心であ
これまで、市政に対する市民からの意見や要望は
り、高齢者の利用促進が課題です。一方で自治会の
ホームページや電話からが中心であり、その多くは
区長(60歳代)やPTAによるアカウント取得の動きも
批判的な内容でした。
みられており、利用者の裾野拡大に期待しています。
ツイッターにおいても、批判的な意見は当然あり
今後はホームページを情報発信の中心に位置付
ます。特に震災後、福島県からの避難者に対する市
け、ツイッターやフェイスブックはホームページに
の対応が悪かった際には苦情が殺到しました。しか
アクセスしてもらうための呼び水のツールとして
し、励ましや感謝の声が寄せられることも多く、震
活 用 し て い く 方 針 で す。 そ し て、You Tubeや
災時はこうしたツイートが励みとなりました。発言
U-Streamといった動画配信についても力を入れて
の多くは若手職員が担当していることもあり、職員
いきたいと思います。もちろん、市の広報紙も全戸
のやる気向上に結び付いていると思います。
配布を継続します。情報発信は多角的な伝達手段が
また、ツイッターを通じて他市町村の自治体、し
必要であることから、ひとつの媒体にこだわること
かも異なる部署の職員とネットワークを築くこと
なく、複数のメディアを活用できる状況を作りたい
が出来ました。さらに企業や市民の方とのつながり
と考えています。
桜川市
市長公室情報政策課 電子自治体推進係長 久見木 憲一氏(所属、肩書は取材当時)
情報伝達の速報性に課題
しめるものを作りたいと思っていました。
桜川市は、05年の市町村合併(岩瀬町、真壁町、
ホームページ上に、市の地域資源を情報発信する
大和村)により誕生しました。合併以前から、各自
デジタルミュージアムを設置したり、地域SNSを導
治体で公式ホームページを運用していましたが、合
入するなど、試行錯誤を繰り返していましたが、費
併を期に、3つのホームページを統一し、運用を開
用や時間の制約があり、なかなか成果をあげられま
始しました。掲載情報は、他の多くの自治体と同様
せんでした。
に、市政・観光情報が中心で、長期間にわたって定
11年に入り、世間ではツイッターが人気を集めて
型的な内容になりがちでした。そのため、一度ホー
いました。個人が瞬時に情報発信できるという特徴
ムページに掲載するとなかなか新しい情報に更新
に魅力を感じる一方で、行政が導入するためには、
するということがなく、内容の充実が図れず、同時
役所内での意思決定やコンプライアンス等様々な
に市の広報紙との違いを見出せないという課題を
問題がありました。そうしたなか、東日本大震災が
感じていました。
発生しました。専用回線の不通や停電によって、
ホームページや防災無線などの外部への情報発信
震災でソーシャルメディアの必要性を実感
手段が使用できなくなりました。
メディアにはエンターテインメント性が必要で
震災の混乱のなか、国内ではソーシャルメディア
あり、市のホームページについても、市民が見て楽
が情報伝達手段として活躍しました。この経験か
’
12.5
23
ら、様々なメディアを利用できることの必要性を感
混雑状況をツイッターやフェイスブックを利用し
じ、12月よりツイッターを導入しました。
てリアルタイム配信しました。観光客に評価され、
メディアにも取り上げられるなど、この取り組みは
リアルタイム性・簡便性が魅力
成功だったと思います。
ツイッターを導入したものの、ホームページの更
新や気象情報を配信するだけではつまらないと感
まちづくりのあらゆる分野で活用可能性を検討
じていました。その折、佐賀県特別顧問である川島
フェイスブックの有用性については、あらゆる分
氏の講義を受ける機会があり、ソーシャルメディア
野で検討していきたいと考えています。例えば市産
の可能性を再認識しました。そしてフェイスブック
品のPRや、災害が発生した際の被災状況の把握な
に出会い、「これはおもしろい」と感じました。リ
どが想定されます。職員は市の全域に居住している
アルタイムでの情報発信と、情報更新の簡便さが大
ので、地域の状況をリアルタイムに発信することが
きな魅力でした。
できます。災害本部では各地の状況を素早く知るこ
2月から開催される真壁のひなまつりに合わ
とができるでしょう。
せ、県内の自治体としては初めてフェイスブックを
そのためには、フェイスブックの利用者を増やし
導入しました(12年1月開始)。ひなまつりは例年
ていくことが必要です。現在、職員の利用促進や、
多くの観光客の来場がありますが、駐車場が非常に
市中でのフェイスブック指導員の育成を進めてい
混雑することが課題となっています。この駐車場の
るところです。
宇都宮市
総合政策部政策審議室 都市ブランド戦略室 篠原 永知氏
都市ブランド戦略で交流・定住人口増を目指す
のが持つイメージが存在し、これを高めることで、
宇都宮市は、市の魅力向上、交流・定住人口の増
都市の魅力や価値、あるいは個別商品の価値が高ま
加などを目的として、08年度に都市ブランド戦略室
り、そうすることで交流・定住人口の増加に結びつ
を開設しました。
くような効果が期待できるもの」を指します。この
08年のリーマンショックにより、地域経済は急激
に悪化しました。多くの自治体で法人税の減収があ
戦略を実行し、都市の魅力を内外に発信するため、
私たちはいくつかのツールを準備しました。
り、宇都宮市も例外ではありませんでした。少子化
による人口減少から、長期的にみて税収が減少する
宇都宮の認知度向上を目的にブログを開設
ことは想定されていましたが、持続可能なまちづく
都市のブランド化を掲げたものの、全国的に知名
りを進めるうえでリーマンショックが大きな契機
度が高い餃子以外の市の魅力については、市民に
になりました。また、民間出身である市長から、
「住
とっても認知度が不足しているという現状があり
みやすくていいところということを、もっとアピー
ました。そこで、宇都宮の認知度向上のための手段
ルしていくべきだ」という言葉があったことも、戦
を検討した結果、当時、社会的に人気を集めていた
略室設立の大きなきっかけでした。
ブログが浮上してきたのです。CMを流すなど、マ
私たちは、まず大手広告代理店にPR戦略の立案
スメディアの力を使えば大きな宣伝効果が期待で
を依頼しました。そこで出てきたのが「都市ブラン
きますが、費用面で問題がありました。ブログは自
ド戦略」でした。都市ブランドとは、「都市そのも
分だけでなく相手の発言内容も分かり、お互いの情
’
12.5
24
報を共有できるという大きな利点がありました。
ブログの名前は、「みんなが話をする場所」の意
味をこめて「宮カフェ」としました。テーマを決め
グ「ミヤリー日記」が1日に2,000アクセスを集め
るなど、ミヤリーのツイッターとあわせて人気のコ
ンテンツになりました。
て情報を寄せ合う「みんなの宇都宮ブログ」
、宇都
宮のベストワンを決める「宇都宮なんでもランキン
グ」など、投票・参加型のコンテンツを中心に、現
在では月間7,000のアクセスがあります。
ブログ・ツイッター>フェイスブック
都市ブランド戦略室では、ブログとツイッター
(宮カフェ、戦略室のツイッター、ミヤリー日記、
ミヤリーのツイッター)を運用しています。なぜこ
ゆるキャラ活用でブログへの訪問を誘導
の2種のメディアかというと、
「情報の拡散」に主
テレビをつけていれば情報が目や耳に入ってく
眼をおいているからです。ツイッターやブログは訪
るCMとは違い、ブログは市民に見てもらえるよう
問 者 が 自 由 に み る こ と が で き る た め、 こ ち ら の
な工夫をする必要がありました。そこで、市制110
「知ってほしい」という目的を達するには、非常に
周年記念マスコットの「ミヤリー」を、流行りのゆ
適したツールです。対してフェイスブックは特定の
るキャラとして特徴づけ、イベントでの様子をツ
参加者の中で議論することは適していますが、情報
イッターで生中継することにしました。
の広がりという点では伝達範囲が狭いメディアで
そのほか、各地のゆるキャラ訪問を実施しまし
た。笠間市のゆるキャラ「笠間のいな吉」を訪問し
す。興味はありますが、活用についてはまだまだ研
究が必要と考えています。
た際には、
「恋人の聖地」に選ばれた笠間市にちな
み、「ミヤリーといな吉のお見合い」を演出したと
市の魅力について発信を強化
ころ、全国紙の取材を受けるなど知名度向上に大き
現在、都市ブランド戦略室は少数で運営されてい
く貢献しました。固定ファンがつき、現在ではブロ
るため、活動がどうしても制限されてしまいます。
また、市の魅力発信という目的においては、広報や
観光などの部署を跨いだ業務になりやすく、さらに
負担が重くなってしまっています。関係各所にうま
く事業の引き渡しをして、都市ブランドの情報発信
に専念をすることが必要だと考えています。
情報の発信においては「誰に」と、「そのために
必要な方法は」を常に考える必要があると考えてい
ます。
「宮カフェ」については、より見やすいホームペー
ジにするべく準備をしているところです。また、ミ
ヤリーには県外のイベントに積極的に参加させる
ことで、宇都宮の認知度向上に幅広く取り組んでい
人気ブログ「ミヤリー日記」
く方針です。
’
12.5
25
第3章 市民活動団体等による活用事例
本章では、市民活動団体等によるソーシャルメディアの地域活性化の活用事例として、おらが湊鐵道応援
団、Co-Create Tsukuba、カミスガプロジェクトの3団体、および企業の事例として、有限会社佐白山のとう
ふ屋にヒアリングを行った。
鉄道×ソーシャルメディアで地域活性化を目指す
おらが湊鐵道応援団(ひたちなか市)
(写真右から)
伊藤 敦之氏、船越 知弘氏、
佐藤 彦三郎団長、渡辺 栄作氏
湊線の存続問題を契機として結成
MAP」を作成し、那珂湊駅構内で配布しています。
ひたちなか海浜鉄道湊線は、ひたちなか市のJR常
さらに、応援団が発行する「乗車証明書」の提示に
磐線勝田駅と海岸部の阿字ケ浦駅を結ぶ14.3kmの鉄
より、提携店舗で特典サービスが受けられる仕組み
道です。多くの地方鉄道と同様に、近年まで利用者
も作りました。
数の減少が続いていました。経営環境の悪化を理由
に、当時の経営会社から08年3月までの廃線を打診
応援団が活用する様々な情報発信手段
されたことが契機となり、存続のための応援団が結
当初、応援団では団報のほかに、ホームページや
成されました。応援団は沿線の23自治会、商工団体
団員個人のブログで情報発信を続けていました。さ
や高等学校などで構成され、現在の会員(団員)は
らに発信手段を広げ、10年5月からツイッターを開
約2,200人です。
「湊線存続とまちづくり委員会」
「広
設し、11年1月にはフェイスブックに「おらが湊鐵
報委員会」
など、5つの委員会が組織化されています。
道応援団ファンページ」の運用を開始しました。
これらのソーシャルメディアでは、海浜鉄道の様
利用促進と地域活性化のために活動
子や応援団の活動、駅猫である「おさむ」の一日な
沿線を拠点に湊線の利用促進運動を主な活動とす
どを写真付きで伝えてきました。特にフェイスブッ
るほか、会員と地域住民の交流を深め、地域の活性
クは伝達できる情報量が多いため、ツールとして使
化と湊線の存続に寄与することを目的としています。
い勝手が良いと思います。また、原則実名登録のた
具体的には、07年4月から広報紙(団報)を月1
め、相手が見えることも大きな利点です。
回のペースで発行するほか、沿線や各駅の清掃や苗
木の植栽などの
マップ・乗車証明書
地域の被害・復旧状況をリアルタイムで発信
緑化活動を行っ
地域をあげての利用促進運動と行政の支援によ
ています。また、
り、湊線は利用者数の減少に歯止めがかかり、07年
那珂湊の観光・
度から増加に転じました。
商店の情報を盛
こうしたなか、11年3月に震災が発生し、ひたち
り込んだ「 みな
なか市は震度6弱の大きな揺れと津波に襲われま
とまちなか漫遊
した。湊線も全線(35 ヶ所)でレールが湾曲し、
’
12.5
26
線路脇のため池が崩壊するなど大きな被害を受け
るところも出てきています。
「那珂湊焼きそばのれん
ました。応援団は、運行不能になった鉄道の被害状
会」は、焼きそばをご当地グルメとして広める活動
況をフェイスブックやツイッターで全国にいち早
を行っている団体ですが、イベントの出店情報などを
く発信しました。その後も、復旧工事の様子や仮復
応援団のページに投稿してもらうことで、応援団が
旧に向けた動き、試運転の様子など、海浜鉄道の復
持つ情報発信力を沿線地域の方々に活用してもらっ
旧への足取りをリアルタイムで発信し続けまし
ています。活性化という観点では、応援団の活動が
た。また、鉄道の代替バスの運行状況や義援金募集
少しずつ地域に広がり始めていると感じています。
のお知らせなども伝えました。
この間、他県在住者からの「茨城の被災状況はど
本格的な活用はこれから
うなっているか?」という問い合わせに応えるた
ソーシャルメディアは有効なツールとはいえ、課
め、ひたちなか市の被災状況についても写真を通じ
題もあります。一般観光客や地元の方々など、普段
てフェイスブックに投稿していました。東北3県に
からの湊線利用者へのソーシャルメディア浸透度
比べ、被災状況が伝わりにくいなかで、地域の詳し
は決して高くありません。また、フェイスブックを
い状況が分かると感謝されました。
活用した地域商店との連携もはじまったばかりで
あり、利用拡大に向けた働きかけを継続する必要が
ソーシャルメディアが関心の高まりに寄与
あります。
5月に行われたイベントには、運休中にも関わら
ひたちなか市は湊線をはじめ、那珂湊おさかな市
ず多くの鉄道ファンが来場しました。ソーシャルメ
場などの観光資源を持ち、多くの観光客が訪れてい
ディアを活用した積極的な情報発信が集客に寄与
ます。しかし、そうした観光客をいかに市内の活性
したと考えています。実際に訪れることはなくて
化に結び付けるかが課題となっています。この課題
も、湊線に対する関心は確実に高まっています。
にソーシャルメディアが役立つかどうかの検討も
フェイスブックのページビュー(アクセスの数)は
含め、本格的な活用はこれからです。
月間23万にも上ります。これだけ多くの人に情報を
届けられるツールは存在しなかっただけに、可能性
の大きさを感じています。
「まち」の活性化が目標
今後も湊線を盛り上げることで、那珂湊のまちを
活性化していきたいと考えています。鉄道とともに
湊線をツールに地域の活性化を目指す
ソーシャルメディアの可能性に着目し、地域の一
部の飲食店・ホテルでは自店や観光の情報を発信す
まちが賑わっていくことが応援団の目的でもあり
ます。そのためのツールの一つとして、ソーシャル
メディアの利用が広がれば良いと考えています。
まちづくりに関心のある人たちが集う場をフェイスブックで実現
Co-Create Tsukuba(つくば市)
代表 伊藤 史紀氏(左)、青山 潤氏
Co-Create Tsukubaとは
Co-Create Tsukubaは、
「世界一住みたい街の実現」
をテーマとし、その地域のまちづくりに取り組む人
して設立されました。約10名の中心メンバーは、各
自で仕事を持っているため、活動は休日を中心に
行っています。
たちや団体を支援するため、11年5月に任意団体と
’
12.5
27
住みたいまちづくりのために市政へ提案を行う
活動の柱の一つとして、つくば市議会への議案提
フェイスブックの利用者拡大を図るため
勉強会を開催
出があります。まちづくりに興味をもつ人同士が地
つくば市内外でまちづくり活動を行っている人
域の改善点について話し合い、そこで最も議論を集
たちの、ソーシャルメディア活用支援についても力
めた議案について、五十嵐氏をはじめとする市議会
を入れています。
議員
(パートナー議員)
を通じ、市議会に提出します。
市への議案提出を目標に活動を開始した際に
これまでに、
「市内への無線LANポイントの設
は、
「200『いいね』を集めた案とする」という基準
置」、
「スマートグリッドの導入」、
「人財輩出都市つ
を置きました。しかし、当時200「いいね」を集め
くば」の3案を提出しました。市内へのLANポイン
られるほど、市内にフェイスブック利用者がいない
ト設置や人財輩出都市つくばについては、有志の市
という実態がありました。このため、まずはフェイ
民による活動を進めているところです。
スブック利用者の拡大が必要でした。
11年7月から、初心者向けソーシャルメディア勉
円滑な運営にフェイスブックが重要な役割
強会を開始しており、これまでに約50回開催しまし
Co-Create Tsukubaの活動は、フェイスブックが
た。初心者向けだけでなく、フェイスブックページ
重要な役割を果たします。フェイスブックで「いい
仕様変更時の勉強会なども行いました。そのほか、
ね!」 をしたり、提案を投稿するために、会議の
市民向けだけでなく、他市町村のまちづくり活動有
ように同じ時間と場所に集まる必要がありませ
志や、ソーシャルメディアの活用を検討している自
ん。このため、関心はあっても、今まで時間的余裕
治体とも、情報交換を兼ねた交流会も行っていま
がなく、市民活動ができなかったという人でも、
す。現在、Co-Createの活動は笠間市、石岡市、福
フェイスブックを活用すれば地域づくりに参画す
島県いわき市などに広がり、これらを束ねる法人も
ることが可能となります。
12年2月に設立されました。
※
活動の柱である提出案の議論も、フェイスブック
のクエスチョン機能※ を使って、「TKB総選挙」を
ソーシャルメディアの普及が
実施し、決定します。TKB総選挙は、フェイスブッ
よりよい地域づくりにつながる
クを利用している人なら誰でも投票をしたり、新た
現在、Co-Create Tsukubaの活動範囲はボランティ
に提案を投稿することができます。Co-Createでは、
アにとどまっています。保育ステーションの設置の
円滑な運営のためにフェイスブックが重要な役割
ように、会費を徴収することである程度対応できる
を果たしています。
ような事業もあります。しかし、私たちが事業を行
様々なソーシャルメディアがあるなかでなぜ
うよりも、事業を行いたい人たちを知恵と工夫で支
フェイスブックなのかといえば、フェイスブックが
援することが、組織のあるべき姿であると考えてい
実名登録を原則とするツールだからです。議論の場
ます。
では、実名の方がより深いコミュニケーションが可
ソーシャルメディアが広く普及し、地域の人たち
能であり、炎上(非難・批判などのコメントが殺到
の交流が生まれやすくなる。そして交流のなかから
すること)するリスクを軽減することもできます。
より良い地域づくりの提案が生まれる。これが私た
ちの考えるまちづくりのプロセスです。交流のため
のツールを使える人を増やしていくことが、地域を
※「いいね!」…投稿された内容が「良い」と思うものを評価し、友人と共有すること
クエスチョン機能…他のユーザーに質問したり、ユーザーからの質問に回答できる機能
’
12.5
28
良くすることができると考え、市議会への提案活動
たいと思います。
とともにフェイスブックの活用支援を続けていき
上菅谷駅前通りを一日商店街に
カミスガプロジェクト(那珂市)
代表 菊池 一俊氏
上菅谷に「カミスガ」という新しい街をつくる
駅前通りでイベントを開催
私が住む那珂市は、南北を那珂川と久慈川に挟ま
11年10月、上菅谷駅前通りを歩行者天国にして、
れ、3つの国道が走り、JR水郡線の駅が9つある
道路の両側にテントや車両を置いて一日商店街を
まちです。このうち、上菅谷駅は水郡線の常陸大子
作るイベント「第1回サスガ★カミスガ」を開催し
行きと常陸太田行きの分岐駅として、かつては周辺
ました。この一日商店街は、市内の商店や、住民か
の商店が賑わっていました。しかし現在、駅から国
らの推薦店に加え、
「自分のお店を持ちたい」と日々
道349号までの駅前通りには商店がほとんどなく、
努力している若者、新規開業を目指す方や経営拡大
寂しさを感じていました。
を考えているお店を、全国から集めました。第1回
この上菅谷に再び賑やかさを取り戻すこと、しか
も単に駅前に商店街を蘇らせるのではなく、
「カミ
は70店舗、25の企画をもって開催され、12,800人の
来場者がありました。
スガ」
という全く新しい街を作りたいと考えました。
きっかけはフェイスブックでの呼びかけ
プロジェクトが動き出すきっかけは、11年5月、
私がインターネット交流サイト「フェイスブック」
上で、上菅谷駅前通りを歩行者天国にしてイベント
を実施したいと発言したことでした。
イベントにより多くの来場者で賑わう上菅谷駅前通り
私はこれまでにも、水戸市で創作雑貨や飲食店を
集めた「みとワン(M-1)★グランプリ」というイ
その後、那珂市内の農・商・工といった分野が連
ベントを開催してきた経緯があり、
「カミスガ」は
携して出店するイベント
「第1回ガヤガヤ★カミスガ」
その後継イベントと言えるかも知れません。
などを開催しました。最近では、4月2日に開催した
フェイスブックでの呼びかけに対して、同じ想い
を持っていた人からコメントが相次ぎ、プロジェク
「第2回サスガ★カミスガ」が22,800人を集客するな
ど、イベントの認知度は確実に上昇しています。
トの賛同者はすぐに100人を超えました。フェイス
ブックは実名参加なので、冷やかしの意見などはほ
とんどありませんでした。
様々な問題を多様な仲間が解決
イベントを成功させるうえで、欠かせないのが人
現在のメンバーは約240人まで増えています。那
の力です。みとワンの開催実績があったため、出店
珂市内だけでなく、首都圏の人も参加してくれてお
者のネットワークはありましたが、上菅谷では初め
り、一般市民のほか商店、行政の職員、デザイナー
ての試みのため、様々な問題が生じました。
など様々な人が関わっています。
特に駅前通りを歩行者天国にすることは大変な
労力が必要でした。市や警察に許可申請をしました
’
12.5
29
が、実績が無いため前に進みませんでした。しか
ディアという特徴を生かし、スピード感を持った相
し、市長の知人や警察の協力団体の身内がプロジェ
互コミュニケーションを図ることができていま
クトのメンバーだったこともあり、人脈を最大限に
す。プロジェクトにとって、フェイスブックはオ
活用することで許可を得ることができました。
フィスの役割を果たしています。
また、市内事業者への説明も気を配る必要があり
ました。イベントでは地元商店の出店も積極的に呼
他のまちづくり活動をサポート
びかけましたが、当初、商工団体会員の反応は冷や
このプロジェクトはイベントを行うことだけが
やかな意見が大半でした。しかし、プロジェクトの
目的ではありません。イベントを通じて上菅谷に人
狙いを粘り強く説明したことや、地元のメンバーか
の流れを作り、通りに商店が出店する。それがさら
らの働きかけもあり、最終的には地元から多くの出
に人を呼び、新たな出店に結び付く。カミスガを
店がありました。イベントが成功したこともあり、
「チャレンジできる街」として、市民主導で、市民
現在は行政や商工団体からも積極的なサポートを
好みの、市民が欲しい街を市民で作ることがプロ
受けることができています。
ジェクトの目指す姿です。
また、他のまちづくり活動に助言や提案すること
フェイスブックでスピード感を持った
で協働できる団体になりたいと考えています。周り
コミュニケーションを実現
から信頼を得るためにも、イベント開催は最低10年
1回のイベントに参画するメンバーは50 ∼ 60人
間継続したいと考えています。東京の下北沢が「シ
です。居住地や職業もバラバラのため、打ち合わせ
モキタ」と呼ばれるように、カミスガも親しまれ、
や会議は主にフェイスブック上(メンバー専用の
人が行き交うまちとなるよう、今後も仲間とともに
ページ)で行います。実際に顔を合わせるのはイベ
プロジェクトを進めていきたいと思います。
ントあたり2回程度です。実名主義・双方向性のメ
企業によるソーシャルメディア活用
有限会社佐白山のとうふ屋 代表取締役 河原井 信之氏(笠間市)
水のおいしさを活かして豆腐店を開業
なりました。
当社は、豆腐を通じて地域の方々との交流を
来店されるお客様は水戸、土浦ナンバーの車
目的として、私の父親が65歳で設立しました。
が多く、笠間のほか、水戸など近隣市町村に住
豆腐づくりは全くの素人でしたが、佐白山から
む地元客と観光客が中心です。店売りのほか、
自宅の井戸に辿りついた水が非常においしかっ
インターネット販売も行っていますが、店舗販
たことからヒントを得て、豆腐屋を開業しまし
売が売上の9割以上を占めています。
た。当初は私の父と母の二人で製造と販売を手
掛けていましたが、開業後から多くのお客様に
交流を目的にツイッターを開始
恵まれ、多忙を極めていました。当時私は別の
ツイッターを始めたのは10年9月です。お客
企業に勤めていましたが、そうした姿を見て手
様をはじめ、多くの人と交流したいと考えたこ
伝うようになり、最終的には家業を継ぐことに
とが開始のきっかけです。つぶやく内容は、豆
’
12.5
30
腐や笠間の話題が中心ですが、日々の出来事も
企業の宣伝目的では共感は得られない
情報発信しています。豆腐に使う大豆の事な
企業がツイッターを活用することで、企業や
ど、お客様が知らない情報などは関心が高いよ
商品の知名度が上昇する可能性があります。有
うです。また、豆腐の新しい食べ方などを提案
益な情報や共感できる内容であれば、企業の規
すると、
「美味しかったよ」「今度試してみます」
模に関係なく、情報が多くの人々に行きわたる
といった反応があり、顔を見たことがない方々
こともあるでしょう。また、
「のぶへの挑戦状」
であっても、豆腐や地域の話題で交流できるこ
でキャラメル味の豆腐を作った時、ツイッター
とに不思議な感覚を覚えます。
で反響があり売上に寄与したことがありまし
た。但し全体としてみれば、業績に与える効果
7万人を超えるフォロワー数
は限定的です。
ツイッターをはじめて約1年半が経過し、自
他社の事例をみても、企業がツイッターを活
分のアカウントをフォローしてくれているフォ
用することで、大幅な売上増加に直接結び付く
ロワーの数は約7万1千人(3月31日現在)に
ことは少なく、ソーシャルメディアに過大な期待
達しました。積極的につぶやくことで、フォロ
を持つべきではありません。企業が自社の商品
ワー数は時間の経過とともに増加しました。ツ
の宣伝ばかり発信しても、情報の受け手から共
イッターの飲食・グルメ部門で上位にランキン
感を得ることは難しいのではないでしょうか。
グされたことも、フォロワー数が拡大した要因
のひとつです。
今後、ツイッターやフェイスブックなどの
ソーシャルメディアは、当たり前のコミュニ
つぶやく上で心掛けていることは、つぶやき
ケーションツールになっていくでしょう。当店
を見た人が共感できる内容の発信です。物事に
も、豆腐や地域の情報についてつぶやき続けて
否定的な態度を取ったり、誤解を招く表現は極
いきたいと思います。
力避けるようにしています。
「こんな豆腐、あったらいいな」の声に応える
「豆腐職人のぶへの挑戦状」
当店では、お客様の「○○が入った豆腐があっ
たらおいしそう」「こんな豆腐があったら面白
い」という声に応えるため、月に1度「豆腐職
人のぶへの挑戦状」という企画を実施していま
す。4年以上継続しており、
「にんにく味のざ
る豆腐」などお客様の評価が高かった豆腐は、
実際に商品化しています。この企画により、豆
腐づくりの技術力向上はもちろんのこと、未知
の豆腐を店頭で食べてもらうことで反応が分か
り、お客様と良い交流が図れています。
「のぶへの挑戦状」を経て商品化された豆腐も店頭に並ぶ
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第4章 ソーシャルメディアを活用したまちづくりに向けて
前章まで、自治体や市民活動団体等による、ソー
「第2段階」に移るためには、受け手が真に必要と
シャルメディアを活用したまちづくり・地域活性化
している情報をリアルタイムで提供したり、共感を
の取り組みについてみてきた。これらをもとに、活
得られる内容を発信する工夫が必要となる。
用の現状と今後の方向性について考える。
受 信 者 の 反 応 が 発 信 者 に 届 け ら れ る「 第 3 段
階」、および受信者の声を受けて発信者がアクショ
情報発信が交流に結び付くステップ
ンを起こす「第4段階」にステップアップするため
本調査を踏まえ、ソーシャルメディアにおける情
には、「双方向コミュニケーション」が鍵となる。
報発信が、受け手との交流に結び付くまでの4段階
まずはメディアの種類を問わず、受信サイドの声が
のステップを作成した(図表4-1)。各段階について
発信者に届く仕組みづくりが求められる。そして交
は情報伝達の状況を基に以下のように定義した。
流が活発化するためには、寄せられた声に対して適
第1段階(発信)
:ある主体から情報が発信される。
切に返信するなど具体的な対応が必要となる。
単一方向からの発信であり、対象に情報が充分に届
いていない(届いているかは把握しない)状態。
自治体によるソーシャルメディアの活用状況
この情報伝達のステップを自治体にあてはめて
第2段階(伝達):発信された情報が、伝えるべき
対象に到達している状態。
みよう。震災を機に自治体によるソーシャルメディ
第3段階(反応)
:伝達された情報を受けて、受信者
アの導入が進み、お知らせやイベント・観光情報を
の反応(意見・感想などの声)が発信者に届く状態。
発信している。しかし、内容がホームページの焼き
第4段階(交流):対象者からの反応を受けて、発
直しに過ぎないものも散見され、住民にとって必要
信者が何らかの行動(アクション)を起こす状態。
な情報が伝達されていない可能性もある。活用目的
発信においては、メディアの媒体に関わらず、情
はそれぞれだがまちづくりへの活用という点で
報が正しく受け手に伝達される第2段階への到達が
は、本調査をみる限り、自治体によるソーシャルメ
重要となる。さらに、情報の受発信者相互に交流が
ディアの取り組みは試行段階にある。
こうしたなか、取材した3つの自治体はそれぞれ
生まれる第4段階に向かうことが、まちづくりや地
域活性化を進展させると考えられる。
先進的な取り組みを行っている。桜川市は真壁のひ
なまつり期間中、ツイッターやフェイスブックで駐
ステップアップに求められる対応
車場の混雑状況を知らせ、つくば市は市役所窓口の
では、各段階から次の段階にステップアップする
混雑状況を随時ツイッターで発信するなど、住民に
ためには何が必要か。単なる情報発信から脱却し、
とって有益な情報をリアルタイムで発信してい
図表4-1 ソーシャルメディアによる情報発信が受け手との交流に結び付くまでのステップ(4段階)
ステップ
第 1 段階(発信)
第 2 段階(伝達)
第 3 段階(反応)
第 4 段階(交流)
<自治体の
活用可能性>
情報伝達の状況
ある主体から情報が発信される(単一方向からの発信)
情報が伝えるべき対象に到達
対象からの反応が発信者に届く
対象からの反応を受けて、ある主体が具体的なアクション(行動)
を起こす
住民ニーズの
把握、住民に
よるまちづくり
参画意識醸成
取材先の現在位置
自治体
市民活動団体等
−
−
桜川市・宇都宮市
つくば市
佐白山のとうふ屋
カミスガプロジェクト
Co-Create Tsukuba
おらが湊鐵道応援団
※市民活動団体等はすべて第4段階に位置する
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る。また、宇都宮市のブログでは、住民がまちの魅
力などをコメントすることが可能であり、地域の声
を聞く仕組みが作られている。
ポイントは利用者の拡大
利用者の拡大は自治体、市民団体共通の課題であ
る。例えばツイッターの本県ユーザー数は約3万人
さらに、つくば市ではツイッター上で必要に応じ
(プロフィールに地域情報が掲載されたユーザーの
て返信を行っている。このやりとりはオープンに
み)と、県人口の1%に過ぎない。より有効なツー
なっているため、第三者も情報を共有することが可
ルとして機能するためには利用者の増加が必要だ
能となり、交流の促進に役立っている。
ろう。こうした課題に対し、Co-Create Tsukubaや
もちろん、「第4段階」の対応を間違えれば住民
桜川市はフェイスブック講座を実施して普及に努
の行政に対する信頼感が低下する可能性もある。こ
めている。今後は利用率が低い高齢者層へのアプ
のリスクを恐れて双方向のコミュニケーションに
ローチが普及への鍵となる。
踏み切れない自治体も多いと思われる。
しかし、住民との交流が活発化することで、住民
ソーシャルメディアで様々な主体とつながる
ニーズの掘り起こしが可能になるだけでなく、住民
ソーシャルメディアはオープンなコミュニケー
側のまちづくりへの参画意識も高まることが期待
ションツールとして、人と人との交流を促進させる
できる。住民との協働を進めたい自治体にとって、
機能を持つ。まちづくり・地域活性化など同じ目的
協働意識の醸成が図られる可能性を持つソーシャ
に向かって活動している人たちにとっては、交流す
ルメディアの活用意義は高いと考えられる。
ることが、それぞれが抱える課題を解決するための
助けとなるだろう。単一の組織では解決が難しい課
市民活動団体等による活用状況
題も、別の主体が加わることで解決に結び付くこと
一方、今回取材した市民団体・企業は、自らの活
は、カミスガプロジェクトの取り組みが証明してい
動にソーシャルメディアを上手に取り入れてい
る。企業も含め、多様な活動主体がソーシャルメ
た。佐白山のとうふ屋では、豆腐や地域に関する情
ディアを介してつながることで、地域で生じる様々
報など、受け手が必要とする情報を丁寧に発信し、
な課題を解決できる可能性がある。
共感が活発な交流を生んでいる。
ソーシャルメディアの登場は、コミュニケーショ
ンのあり方を変えた。フェイスブックのページに書
使えるものは何でも活用するという積極性、
背景に危機感
き込みをすれば、閲覧者がすべての情報を共有でき
ソーシャルメディアは利用によるデメリットも併せ
ることから、会議のためにメンバー全員が同じ時間
持つ。名前や性別、出身地などの情報がオープンに
と場所に集まる必要がなくなり、スピード感を持っ
なることで、個人情報が本人の意に反して利用される
た活動が可能となった。時間と空間を超えてつなが
可能性は否定できない。それでも、今回取材した方々
りを持てることは、このメディアの大きな利点であ
からは、デメリットはデメリットとして認識しつつ
る。まちづくりや地域活性化に興味はありながら、
も、
「使えるものは何でも活用する」という積極性を
参加に至らなかった人でも、参画の可能性が高まっ
強く感じた。その背景にあるのはコミュニケーション
た。カミスガプロジェクトやCo-Create Tsukubaは
不足がまちづくりを停滞させるという危機感である。
活動を共にする仲間をフェイスブックで募り、活動
震災を機に、人々に「つながり」「絆」の意識が
を通じて新たなつながりの組成を実現している。
強まった今こそ、現状を打破する好機と捉え、地域
をあげた活性化の取り組みが進むことを期待した
い。
(奥沢・菅野)
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ソーシャルメディアを活用したまちづくりの可能性 ∼自治体、地域住民の