気象研究所技術報告第紹号 2005
第7章 降雪翼内の鉛直積分雲水量寧
7.璽はじめに
こ こ
で
冬季日本海沿岸で降る雪やあられは,降雪雲内で
τ23一一1R((男,,23−T23)/(乳,、23−Tわ.))
(7.2.3)
τ23一一ln((男,,3r乃ま)/(71,、3ま一Tb.))
(7.2.4)
起こっている降雪機構からの出力である.2章の地上
降雪粒子の統計からは,気候学的に東北地方から北陸
地方の日本海沿岸であられ降水が卓越していることが
示された.また,3章の降雪粒子の諸特性では,個々
C。v瓢0。194,Clv=22、685,C2v=一15。04(7.2.5)
の降雪雲の通過に伴ってr㎞g率の大きな降雪粒子
(あられが主体)が降雪の前半に,また血血g率の
Coズーα014,C昆=一〇312,C2L=0.783,(7.2.6)
大きな降雪粒子(雪片や雪結晶が主体)が降雪の後半
に降るという降雪現象の変化が示された.以上の結果
℃,、23−273.45,7},,3ビ278.04,Tわ。皿2.73,(7。2。7)
は,冬季日本海沿岸の降雪機構における過冷却水滴の
重要性を示唆するものである.
これらの降雪雲内の過冷却水滴に関する基礎的デ
である. (7.2.5)式の水蒸気鉛直積分量を求める係
ータを得るため,降雪雲の実態把握を目的とした総合
数は,1990年5月∼11月に茨城県つくば市の気象研
観測においてマイクロ波放射計による鉛直積分雲水量
の観測を実施した.この章では,降雪雲の通過に伴う
鉛直積分雲水量の変化とその統計的特徴を報告する.
7.2観測方法
7.2.璽マイク鶴波放射計の概要
降雪雲内の鉛直積分雲水量を観測するため,
Rad韮ome位cs社製のマイクロ波放射計WVR−1000を用
いた.第7.2.王図に,観測の様子を示す。水滴が付着
して観測が妨げられることを避けるため,マイクロ波
放射計の窓と呼ばれる部分へ強風を送る送風機を設置
している,
マイクロ波放射計による鉛直積分雲水量観測の原
第7.2.1図 マイクロ波放射計による積分雲水量観測の様
子.マイクロ波放射計は三脚の上にあり,送風機から
の強風がマイクロ波放射計の窓の部分に吹き出してい
理は,次の通りである.大気から放射されている微弱
る.1991年11月9目,秋田大学教育学部屋上で撮影
な電磁波のうち,水蒸気量に敏感に変動する23.8GRz
した.
の輝度温度(T23,K〉と雲水量により敏感に変化する
3L4GHz(T31,K)の輝度温度とを測定することによ
観測期問
水鉛直積分量(LIQ,cm)を推定する次式が知られて
いる(Westw&重er鍛dG虚&ud,19801Weietal.,1989)。
翅P篇Cov+C〆23+C2vτ31
(7.2.D
五19隣COがCILτ23+C2Lτ3玉
(7.2。2)
* 水野 量:物理気象研究部(現 気象大学校)
一109一
観測地
占’
って,大気中の水蒸気鉛直積分量(VAP,cm〉と雲
第7.2.1表 マイクロ波放射計測観測の観測期間・地点一
覧.
霧、、
1991年11月9日∼
秋田県秋田市秋田大学教育
1992年1月19β
学部
玉992年1月30日∼2月玉0日
山形県酒田市飛鳥
1992年2月玉2日∼2月20日
山形県飽海郡余目町
1993年1月31日∼2月8日
山形県酒田市落野目
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の き ぐめ
究所構内で連続観測を行い,ラジオゾンデによる高層
気象観測との比較から求められている. (7.2.6)式
の雲水鉛直積分量を求める係数については,米国で統
撃ノ声認・ ・!
なお,観測は,約2分間隔で連続して実施されて
\1r ノ
・頭繍璽%
計的に得られている値をそのまま用いている.
,
薯 5 0
総合観測の一部として実施された.その観測期間・地
馬
15
点は第7.2.1表の通りである.
O
︵o、し 驚Oρ餌Oほ○α氏 OZ一Σ︷α
地上降雪観測と同様に降雪雲の実態把握を目的とした
O O
マイクロ波放射計による鉛直積分雲水量の観測は,
@㌔
︵£、ε∈︶>ト﹃のZ田卜X一 .α刷Q田α儀
7.2.2観測期闇と観測地点
4 3 2 − 0
いる.
r/
14 馨3 しST
2 FεB 199馨
︵ε∈︶〇一⊃Oコー︵蕪り︶ぼ○儀︿>
ここでは,降雪雲の通過に伴う積分雲水量の変化
を1991年2月2日午後の事例について示し,また,
鉛直積分雲水量の大きさと継続時間についての統計的
特徴を報告する。
2 書 0
7.3結果
τ0815日閣A
,晒Ol ,
鱈瑠燦、細撰糖
15 魯轟 畢3し$τ
7.3.嘱降雪璽の通過に伴う積分雲水量の変化
2 Fε8 199董
1991年2月2目臼中,北西季節風の吹き出しに伴
第7.3.1図 二つの降雪雲の通過に伴う降雪粒子(上段超
う筋状雲が日本海海上で卓越する気象条件下で,山形
接写写真)と各気象要素の時間変化.!992年2月2
β,出形県酒田市飛島での観測による.降水強度(申
県酒田市の沖合にある飛島観測点を降雪雲が次々と通
段棒グラフ〉,薮嬬ng率(中段⑭印),積分雲水量(下
段折れ線グラフ),積分水蒸気量(下段◇印)の時問
変化.下段上の横軸目盛りは,降雪雲の移動速度で換
算した距離を表している.
過した.ここでは,2月2日13時∼15時に通過した
二つの降雪雲の通過に伴う降雪粒子と積分雲水量の時
間変化を解析する.
3.3km,_250C
子(上段),降水強度と1血癒ng率(中段),積分雲
水量と積分水蒸気量(下段)の時問変化である.13
C 噛
第7,3.1図は,二つの降雪雲の通過に伴う降雪粒
WlN花R瞬O鰻SOON SNOW CLOUD
騒 UQUIDWA粧R
繍
、/
P
嚢
5
時王5分∼B時30分にあられ粒子が卓越した降雪現
壱
讐 、
12m
懸、
象があり,ri賊ng率は90%以上である.また,!4時
令∠薩
ーク時には,雪片に混じってあられ粒子が降っており,
令酬
△n〈〈
全
血血g率は50%前後である.しかし,降水強度のピ
側
嗣、
S \
R▽ 邸
礁
△甑\、
k 怠
30分から15時00分に雪片主体の降雪現象があり,
憂雨
曾
翻
PR9αR“mmlb COしDAIR(ム丁鷲2・C)
1緬葺g率も70∼80%と高くなっている.
鮨20C τεMR−O。C ∼2・C
∼70ツ・ 繕U聡一90% ∼5G%.
レーダエコーから見ると,最初の降雪現象は直径5
第7.3.2図 降雪雲の通過に伴う雲水量と降雪現象の変化
を示す模式図.
㎞以下の小さな降雪雲エコーのほぼ中央部分が観測
点を通過してもたらされている.二番目の降雪現象は,
直径約⑳㎞のエコーが飛島の南を通り,エコーの北
の!3時00分から増大して,13時30分まで降雪時に
縁部分が観測点上空を通過することによって起こって
も一定量の雲水量が観測されている.二番目の降雪現
いる.
象については,降雪の始まる約15分前の14時i5分
積分雲水量は,最初の降雪現象が始まる約15分前
∼王4時30分に積分雲水量が大きくなっている.この
一110一
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第7・3・1表 北西季節風が卓越した代表的な雲頂温度の目
(秋田).
AKIτA RADAR
■ (1mm/h・!∫臼一”..,
弘♪△1
一〇.6 13.1▼NW 3.5 −24
あられを伴う
12月29日 雪,あられを伴う
聴﹃己≡監札 ’”㌫:﹄沖...⋮−・
腫野liil
∼8⋮’一への・ゼ▼,、暉靴
12月12日 雪一時曇り
り ひ
O.5 6.2N 2.0 −16
12月26日 曇り時々雪
﹁h鞠ヤ︸﹁﹂唯㌔㌔門冒,㌔.蓋い=
。C ms雪l m珊 OC
1991年
ロ ㌦■.㌧﹄.!3・じr’,ーβ
、■曙’、,噂、■”
.響■ゴ
月 日 天気(6−18時) 日平均気温 日最大風速 日降水量 雲頂温度
■1−4
1.4 19.3▽N冊 2.0 −30
50 100km 頭1.一_
ド
一!
21JST29 pEC, 21JST 12 DEC 21JST 26 DEC
資料;秋田地方気象台における地上気象観測原簿,高層気象観測資料,
1991
雲頂温度は,状態曲線から求めた.
第7.3.3図 北西季節風時の代表的な雲頂温度の目におけ
るレーダエコー状態曲線から推定される雲頂温度は左
から一30℃,一24℃,一16℃である.レーダエコーは高
とき大きな雲水量の継続時間は,最初のものよりも短
度約2㎞のものであり,秋田レーダ観測による.
い.しかし,両方の降雪現象とも積分雲水量は,地上
向の前方部分に雲水量が存在することを示している.
このことは,3章の降雪雲通過時の降雪粒子や血血g
率の変化から推定されていたが,マイクロ波放射計観
測によって確認されたと言える.第7.3.2図に,降雪
雲の通過に伴う雲水量,降雪現象の変化の模式図を示
29 DEC l991
2 冒 O
降雪雲の時問変化が小さい場合には,降雪雲の進行方
AKITA
EE︶エ↑く﹂匡田くタ050コ
の降雪現象よりも時問的に先行している.すなわち,
T!。P=一30’C
0 3 6 9 12 15 18 21 24
した.
AKITA
期間実施された秋田市における観測について,積分雲
水量の統計的特徴を調べる.マイクロ波放射計観測か
ら得られる積分雲水量のデータは,約2分問隔の積分
EE︶工一くユ 匡UトくタO一⊃Oコ
ここでは,第7.2.1表で約2カ月という最も長い
雲水量の数値である.そこで,積分雲水量の統計的特
雲頂温度によってどのように変化するかに着目して調
べた.
第7.3.1表には,秋田において北西季節風が卓越
した代表的な雲頂温度の目が示されている.これらの
日における地上の目平均気温はO℃付近で大きく違わ
ないから,雲頂温度が低い目ほど降雪雲の背が高いこ
とになる.第7.3.3図は,これらの目におけるレーダ
エコーを示している.雲頂温度が低い日ほど降雪雲の
水平スケールが大きいことが,第7.3.3図から分かる.
第7.3.4図は,これらの目における積分雲水量の
一111一
2 1 0
水平スケールを表すことになる.これらの頻度分布が,
AKlTA
EE︶工トくユ仁U↑くタ050コ
考慮することによって,風向に沿った方向の雲水域の
Tt。P−24。C
0369書215182124
徴として,積分雲水量の頻度分布と雲水継続時間の頻
度分布を選んだ.なお,雲水継続時間は,移動速度を
2 , 0
7、3.2積分雲水量の統計的特徴
12 DEC 讐991
26 DEC I991
Tt。P=一16●C
TIME(JST)
03691215182124
第7.3.4図 北西季節風時の代表的な雲頂温度の目におけ
る積分雲水量の変化.状態曲線から推定される雲頂温
度は,』上から一30℃,一24℃,一16℃である.積分雲水
量は,秋田市の秋田大学教育学部で観測された.
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変化である.積分雲水量が降雪雲の通過に伴って大き
このことは,つぎのように理解される.すなわち,対
め凝結する水の量が大きくなる.このため,雲頂温度
が低いほど積分雲水量は大きくなる.
第7.3.5図は,北西季節風時の代表的な雲頂温度
㌦\\
D
八
の日における積分雲水量の頻度分布を示している.積
26DEC一一→
⇔
1
分雲水量の頻度は,1目当たりの回数で表されている.
第7.3.5図から,大きな積分雲水量を示す回数は指数
dt>4min
惚/∼聾
結し始め,上昇する高度が高いほど温度が低くなるた
SNOW CLOUDS《AK愚TA,1991》
印\
流によって上昇中の気塊を考えると,雲底高度から凝
5
0 0 5
従って降雪雲の背が高いほど大きいという傾向がある.
1
かし,積分雲水量の大きさは,雲頂温度が低い目ほど,
︵▽澄−︶ωOつO﹂O﹂O匡四〇ΣコZ
く変化していることが,どの目についても言える.し
100
ADIABATIC VALUE
0 1’ 2 3 4
目QUID WATER PATH(mm》
関数的に減少していること,及び雲頂温度は低く降雪
第7.3.5図 北西季節風時の代表的な雲頂温度の目におけ
雲の背が高い北西季節風目ほど積分雲水量の頻度が大
る積分雲水量の頻度分布状態曲線から推定される雲
頂.温度は,一16℃(12月26目)と一24℃(12月12
日)である.縦軸の頻度は,横軸の積分雲水量以上と
なる1目当たりの回数で示されている.雲水量の継続
時間が4分を越えるものについて調べている.矢印の
範囲は,それぞれの目におけるゾンデ観測から推定さ
きい,という傾向が分かる.また,積分雲水量は,そ
れぞれの目におけるゾンデ観測から推定される断熱上
昇時の積分雲水量よりも小さな値である.この理由は,
雲水量は空気の断熱上昇によって生成されるが,雲の
れる断熱上昇時の積分雲水量の範囲を示す.
周囲の乾燥空気との混合と降雪粒子の成長に消費され
100 SNOW CLOUDS(AKITA,1991)
るためと考えられる.
ている.第7.3.6図から,雲水継続時問が長くなるほ
どその頻度は指数関数的に減少している.大部分の雲
水継続時問は,5分未満である.したがって,10ms『1
の移動速度を仮定すると,風向に沿った方向の雲水域
の水平スケールは3㎞未満の場合が大部分である.
また,雲頂温度が高く背が低い降雪雲の場合には,雲
5
0 0 5
水量が横軸の値以上となる1目当たりの回数で示され
1
である.縦軸には,積分雲水量がO.2㎜を越える雲
︵丁澄−︶ωOコ〇一〇﹂O匡四ロ=コZ
第7.3.6図は,雲水継続時問についての頻度分布
LWP>0.2mm
▲ 12DEC
\ ! ●c
\、
水域の水平スケールがより小さくなる傾向がある.
1
7.4結び
CLOUD WDTH(min》
冬季目本海沿岸の降雪機構においては,過冷却水滴
第7.3.6図 北西季節風時の代表的な雲頂温度の目におけ
る雲水継続時間の頻度分布.状態曲線から推定される
が重要な役割を果たしている.これらの降雪雲内の過
冷却水滴に関する基礎的データを得るため,降雪雲の
実態把握を目的とした総合観測においてマイクロ波放
雲頂温度は,一16℃(12月26目)と一24℃(12月12
目)である.縦軸の頻度は,横軸の雲水継続時間以上
となる1目当たりの回数で示されている.積分雲水量
が0.2㎜を越えるものについて調べている.
射計による鉛直積分雲水量の観測を実施した.得られ
たデータを用いて,降雪雲の通過に伴う積分雲水量の
変化と統計的特徴を調べた.その結果,次のことが示
された.
雪現象よりも時間的に先行して増大する.降雪
雲の進行方向の前方部分に,雲水量が存在する
と推定される.
(1) 降雪雲の通過に伴う積分雲水量は,地上の降
一112一
(2)積分雲水量の頻度は雲水量の増加とともに指
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数関数的に減少し,大部分の雲水量は断熱上昇
参考文献
値よりも小さい.また,雲水継続時間の頻度分
Wei,C.,H.G Leighton and R R Rogers,1989:A
布,継続時間の増加とともに指数関数的に減少
comparison ofseveral radiometric methods of(1educing
し,大部分の雲水継続時間は5分未満である.
path一血tegrated cloud liquid waterヱ。4〃nos.Ocεαnκ
降雪雲の雲頂温度が低く背が高くなると,積分
7セoh。,6,1001−1012.
雲水量の頻度と雲水継続時問の頻度は増加する
Westwater,E.R and F.0.Guiraud,1980:Ground−based
傾向がある.
血crowave radiometric retrieval of precipitation water
vapor 血.廿1e presence of clou(1s wi仕L hqui(l content.
Rα4io Soi.15 947−g57。
) ,
一113一
ダウンロード

降雪雲の鉛直積分雲水量