チェルノブイリの経験
(ウクライナ出張報告)
平成25年12月14日
小 川
壮
農学生命科学研究科
放射性同位元素施設
ウクライナ出張の概要
日時:平成25年10月23日~28日
訪問先:大統領直轄戦略問題研究所(NISS)
農業放射線学研究所(UIAR)
チェルノブイリ原発
参加者:中西先生、田野井先生、二瓶先生、小川
(松本東大副学長もチェルノブイリ原発視察のみ参加)
ウクライナはどんな国?
面積:約60万平方キロメートル(日本の1.6倍)
人口:約4600万人
首都:キエフ
民族:ウクライナ人が78%、残りはロシア人等
国土:ほぼ平坦で、豊かな農地に恵まれている
文化:キエフ公国として長い歴史を誇り、世界遺産も
多数
※キエフに日本料理の店が200軒以上
→一言でいえば“美しい国”
聖ソフィア大聖堂
ウクライナの現在の原子力依存度は約5割
Wikipediaから引用
大統領直轄戦略問題研究所(NISS)①
• ウクライナの大統領府をサポートする機関であり、実際に研究を行う
というより、政治的な事象を研究する組織。
・「チェルノブイリー福島
の事故以来両国は密接
な関係になっており、福
島の事故の収束のため、
チェルノブイリの経験を
共有したい」。
中央がOleg Nasvit 首席専門官
大統領直轄戦略問題研究所(NISS)②
• 事故後、高いレベルの汚染地域については農地ではなくなったため、作付け
制限は行われていない。
• 農地の除染は試みられたが、本格的には行われなかった。このため、「汚染
された土壌から農作物への放射性物質の移行」、「農作業を行う人の被ばく
低減、農作物を通じた被ばく」に重点が置かれている。
• チェルノブイリ周辺では、土壌の種類や植物の違いで、放射性物質の移行
係数に相当違いがある。
• 事故後汚染された作物(牛乳、肉、穀物等)は、村ごとにおかれた“ラボ”で
チェックが行われていた。また住民が森からとってくるキノコ、イチゴ、さらに
はクリスマスツリーまで規制された。
• 事故時は旧ソ連の体制下にあり、原子力に関する事項は秘密であった。こ
のため、うわさが広まり心理的に住民は苦しかった。1990年以降は情報公開
され、現在では風評被害対策としてchernobly infoといったウェブを通じた情
報提供に力が入れられている。
農業放射線学研究所(UIAR)①
• チェルノブイリ事故後に、農業に対する影響の懸念から設立された
研究所で、現在は国立生命環境科学大学に所属。
中央がValery Kashparov 所長
研究施設の様子
農業放射線学研究所(UIAR)②
• 事故直後は、汚染地域を特定するための活動を行い、それ以降は農作
物・製品等のモニタリングを行い、ウェブで公開している。
• 外部被ばくより、未だに牛乳、肉、キノコの汚染による内部被ばくが問題
となっている。農作物のコントロールは、“ラボ”で行っていた。現在でも
すべての農作物の加工場にラボがあり、コントロールを行っている。イチ
ゴ、キノコ、農家の自家消費の牛乳が問題だが、それ以外はそれほど
汚染されていない。
• 農作物の汚染については、原発から300km離れた地域で問題がある。
土壌の汚染濃度ではなく、土壌の種類が原因(PeatやPeat-bog)。
• 放射性物質の土壌からの移行については、15種類の土壌について研
究を行っている。セシウムは水平にも垂直にも広がらない。ストロンチウ
ムは移動する。
農業放射線学研究所(UIAR)③
• 高度に汚染された地域は農地で無くなったため、作付けが規制され
ている場所はそんなにはない。セシウムのレベルは下がっているが、
農地に戻っているわけではない。規制はしていないが、Peatの土地
の牧草を家畜に使うべきではないと提言してる。
• 汚染のある動物にきれいな飼料を与えると、どれくらいでセシウムが
減るかのモデルを作成している。
• 魚の研究も行っており、セシウムの濃度はKの濃度に依存している
• 人への被ばく防止だけでなく、環境の保護も大切である。森林保護
の取り組みを続けている(森林、樹木の放射性物質の移行について
も多くの知見)。
• フランスのIRSN、IAEA 、EUのコメット・プロジェクト(これには福島大学
も参加)、ノルウェー農業大学とも国際協力を行っている。
農業放射線学研究所(UIAR)④
• 風評被害については、チェルノブイリの場合は農作物の汚染に関してで
はなく、奇形についてであった。旧ソ連時代は、奇形の統計を取っていな
かったので、増えているように見えるだけ。
• 一般市民への働きかけについては、国連の支援による「アイクリーン」プ
ロジェクトが行われた。教師、医師、記者という市民が信頼する人々に対
し、専門家が放射線の影響を丁寧に説明した。またchernobly infoという
ページも作った。これらの努力により、記者も記事を書く前に、我々に確
認するようになった。
ウクライナでも、日本と同じ興味・関心のもと、同じような研究
が行われている。一方で、日本で行われている研究や出荷に関す
る検査等についてはほとんど知られていない。
チェルノブイリ原発視察③
• チェルノブイリ原発に隣接するプリピャチ市を訪問した。
• 同市は事故当時、原発の職員及び家族が約4万9千人住んでいたが、
全員避難したことにより、現在は、廃墟になっている。
• 街中の線量は0.4μSv/h程度であるが、場所によっては(コケがはえ
ているような所)では4~7μSv/hもあった。
チェルノブイリ原発視察④
事務棟
展望台
2
1
3
4
Googleより引用
チェルノブイリ原発視察⑤
• 事故を起こした4号炉から100m程度に位置する展望台で、事故の原
因、状況、それに続く石棺の建設について、説明を受けた。
• また、石棺の老朽化に対処するため、新たなシェルターの建設が進
められている。これには日本も資金援助を行っており、それに対する
感謝の言葉があった。
• 展望台の外では5μSv/h、展望台内では1μSv/h程度の線量であった。
全体を通して①
2011年(事故後25年)を記念して整備されたニカヨモギの星公園
全体を通して②
• ウクライナの方々は、自らがチェルノブイリで苦労したからこそ、福島
の復興のために役立ちたいという思いを強く持っている。
• 特に、今回の出張では、
大統領直轄戦略問題研究所のNasvit首席専門官 他
農業放射線学研究所のKashparov所長 他
在京ウクライナ大使館のKushnarov書記官
に感謝したい。
• ウクライナには放射性物質による汚染からの国土の復興に関し豊
富な知識と経験を有している。今後は、ウクライナとの密接な関係を
築いていくことが重要。
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