台日異文化比較研究
ローカリティの生成Ⅱ
導入
討論①

著者は第三章において、どのように「文化単
位」が成立すると述べていたか、整理して答
えてください。
課題論文
課題論文

岡村圭子(2003)「グローバリゼーション
とローカリゼーションの相補性」『グローバ
ル社会の異文化論―記号の流れと文化単位』
世界思想社
「グローバリゼーションとローカリゼーショ
ンの相補性」論構成
問題提起
ローカルなものの成立とその凝集性の高まり
が、どのようにグローバリゼーションと結び
付いているか
 グローバリゼーションが「ローカルなもの」
をいかに再編成しているか

1
遠心力と求心力の社会現象
情報技術とグローバリゼーション
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情報技術のグローバリゼーションが世界の一元化・均質化を招く
という警戒(P・ヴィリリオ、など)
↑
「極端な見解」(p.119)
理由「近年のインターネット社会は、ある種の楽観主義的な「地
球ネットワーク・ロマンティシズム」を生んだ」(p.119)が、
「そういったロマンチストの理想が「かえってローカルな文化の
破壊とアメリカ的な価値観のおしつけ」を招くことによって、そ
の反動や反発は民族紛争などの「ローカルな動き」を引き起こす
こともある」(p.119)から。
例「情報通信技術のデジタル化は、越境性を世界的規模で一方的
に促進することはなく、それは資本のグローバル化とともに「コ
ンテンツのローカル化」を引き起こしている」(p.119)
経済とグローバリゼーション
 「グローバリゼーションを肯定的(ないし中立
的)に捉える立場に比べ、批判的に捉える傾向
は、経済の分野でのグローバリゼーション論に
おいて強い。そこでは、グローバリゼーション
が文化帝国主義やアメリカナイゼーションと同
義に扱われており、とくにそういった文脈での
反グローバリゼーション運動は、全世界のアメ
リカ化を危惧する立場のひとびとによって進め
られている。」(p.120-1)
《反グローバリゼーションの立場》
「グローバルな資本主義から排除され、そのシ
ステムのもとに貧困を強いられるひとびとがい
る」(p.121)
 P・ブルデュー→「世界市場の一元化が多国籍
企業や機関投資家などの支配層によってつくり
だされたにもかかわらず「グローバル化をあた
かも必然的で普遍的なことだとする言説が、学
問的装いをまとって蔓延している」[…]とし、
グローバル化とその推進力となっているネオリ
ベラリズムを批判する」(p.121-2)

↑
 「経済的な側面を重視したアプローチにおい
ては、グローバリゼーションがネオリベラリ
ズムと同義に扱われている」(p.122)
 「グローバリゼーションそのものが否定され
ているわけではない」(p.122)

《経済的グローバリゼーションと国民国家》
「経済的グローバリゼーションは、国民国家の
ある種の要素(財務省のような国際銀行機能と
結びついた要素)を強化する」(p.123)
 「経済システムのグローバル化は、国家の公的
な統治機能を希薄にするどころか、それをトラ
ンスナショナルな民間の領域に再配置する。こ
の分析はつぎのことを示唆している。すなわち、
「ローカルなもの」として国民国家を考えたと
き、それを強化するのは、まぎれもなく経済の
グローバリゼーションなのである。」
(p.123)

近代社会とグローバリゼーション
 《グローバリゼーションとローカリゼーショ
ンの相補性・同時性の議論》
■A・ギデンズ

「A・ギデンズは、グローバリゼーションを近代化の
帰結(consequence)と位置づけ、近代化が徹底され
た社会がグローバル社会であるとしている[…]。ギ
デンズは、前近代社会にはみられなかった特性であ
る「脱‐埋め込み」という概念を用いて、ローカルな
ことがらからグローバルなことがらが出現してくる
過程を説明する[…]。すなわち、さまざまなローカ
ルな文脈に埋め込まれた活動が(グローバルに)解
き放たれていくことは、近代の社会生活の特性であ
る「時間と空間の分離」であり、それによって、局
所的な地域を越えた暦や時刻表示が可能になるとい
う。」(p.124)
■R・ロバートソン

「R・ロバートソンは、グローバリゼーションと近代
との関わりにおいて論じているが、それを(とくに
西欧の)近代性の直接的な帰結、あるいは広義の啓
蒙主義が突出した成果として見るだけでは不十分だ
と主張する[…]。そもそも、「近代化」は、多くの
論者が思っているよりもはるかに主観的で、その形
態には文化的多様性がある。そのような理解のもと、
ロバートソンはグローバリゼーションをつぎのよう
に説明する。すなわち、諸社会、個々の自我、諸社
会の間の国際関係、人間、これら四つの構成要素の
相互作用が増大し、あらゆるローカルなものが「単
一の場所としての世界」のなかに引き上げられるこ
とである[…]。」(p.124-5)
文化のグローバリゼーション
 《反グローバリゼーションの立場》
 「グローバリゼーションが個々の文化を「グローバ
ル文化」に統一し、その結果、個々の文化やローカ
リティを破壊し分裂に至らしめるという指摘があ
る。」(p.127)←P・ブルデューなど。
 「文化のローカリゼーションは、グローバリゼー
ションの反動によって結果的に引き起こされるとし
た見解もまた、グローバリゼーションが一時的にで
も個々の文化を破壊しているという認識が前提と
なっている。」(p.128)
《文化のグローバリゼーションとローカリゼー
ションの同時性と相補性》:著者の立場
 「グローバリゼーションは、一時的にであれ、
文化的差異を希薄にしたり、解消したりするの
ではなく、個々の文化単位(あるいは「弱小
な」文化単位だけ)を破壊するのでもない。
「グロカーリゼーション(glocalization)」とい
う用語が示すように、グローバリゼーションと
ローカリゼーションは不可分な関係であり、そ
して互いに依存しあった関係でもあるのだ。」
(p.130)

「グローバリゼーションは文化の均質
化をもたらすのではなく、さまざまな
文化(文化単位)を生みだす。」
(p.131)
2
記号の流れとしてのグローバリゼーション
記号と文化単位
 問題提起「いかにして文化のグローバリゼー
ションとローカリゼーションが同時的ないし
は相補的になるのだろうか」(p.131)
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■グローバリゼーション/ローカリゼーション
=記号の流れ
「グローバリゼーションを「記号が外部へと向かう
遠心的ベクトル」として、またローカリゼーション
を「記号が内部へ向かう(戻る)求心的ベクトル」
とする。たとえば、局所的に用いられていた記号が
さまざまなメディアによって外部へ運ばれるベクト
ルがグローバリゼーションであり、一方、記号が再
びローカル内部に戻り内部への凝集性を強化するベ
クトルがローカリゼーションである。」(p.132)
※記号=「他の記号との分節化によって「意味の
へだたり」を示している」
グローバリゼーション

遠心的ベクトル
ローカリゼーション
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求心的ベクトル
文化単位の成立、そして維持
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「T・モーリス=スズキは、グローバリゼーションとローカリゼーションとが相
反するベクトルでありながらも双方が同時に起こることに着目する論者のひと
りで、グローバル化は、世界を単一化することよりもむしろ、諸文化の差異の
再‐組織化を導くと指摘する[Morris-Suzuki1998]。すなわち、グローバルな
フォーマットによってローカルなものの再‐組織化がなされると分析したのであ
る。なんらかの共通の制度的枠組み(global format)を用いることによって、局
地的な内容(local context)は比較され、多様性のなかで対象化されることが容
易になるからである。
「グローバルな『文化的文法』が拡がることに関して興味深いのは、それによって統一
性(uniformity)ではなく、むしろ差異の再編成が、あるいは差異の多様性(diersity)へ
の改変(recasting)がもたらされているということである」[Morris-Suzuki1999a]。
たとえば、あらゆる国家は、国旗という(グローバルに通用する)制度的な枠
組みにのっとってこそ、それぞれの国々の多様性を、また他国との差異性を保
持できるのである。すなわち、差異(difference)が多様性(diversity)へと
フォーマット化されることによって、いいかえれば、えたいのしれない差異が
比較可能な差異になることによって、それぞれ異‐文化関係として位置づけられ
るのである。」(p.134)
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↓
「では、そこで成立した「ローカルなもの」はいかにして維持さ
れるのか。」
「いかにして「異文化関係」として成立した文化単位が(たんに
成立したというだけでなく)求心力的なベクトルを持ち、文化的
凝集性を維持するのかを説明しなければならない。」(p.135)
↓
「「ローカルなもの」をひとつの単位として規定し維持するのは、
記号の付与と、その記号が外部へと流れる遠心力的ベクトル、つ
まりグローバリゼーションによって他の〈ローカルなもの〉と比
較され続けるプロセスである。」(p.136)
↓
グローバリゼーションとローカリゼーションとは同時に起こって
いる!
3

異文化間の比較可能性――境界の創出
■グローバリゼーションとフォーマット化の事例
 マクドナルド化(McDonaldization)
 フォーマット番販(テレビ番組のコンセプトや
制作ノウハウの輸出入)
 音楽の録音・再生(MD、CD)


「文化のグローバリゼーションは、生活世界を均質化し
ひとつの文化に統一してしまうのではなく、さまざまな
文化単位を生みだしてゆくと考えられる。すなわち、グ
ローバリゼーションがローカル文化を破壊するように、
外部に向かうベクトルが一方的に作用し文化的凝集性を
拡散させてしまうというわけではない。むしろそういっ
た外部へのベクトルこそが、結果的に他との差異化を導
出し、その差異化のプロセスが内部へのベクトルを強化
する。」(p.140)
「グローバリゼーションは、境界を「超える」といより
はむしろ、さまざまな文化的境界を創出していることが
わかる。地理的な境界や国籍などの諸制度によって引か
れた目に見える(可視的な)境界であれ、民族、エスニ
シティなどの目に見えない(不可視的な)境界であれ、
境界をつくり出していく力がグローバリゼーションには
ある。」(p.141)
4
比較可能性と文化相対主義
■本論文における「比較」と文化相対主義に
おける「比較」との違い
 文化相対主義=「一九三〇年代ヨーロッパに
おいて主流であった発展段階的(西欧文化中
心主義的)な文化研究への批判を背景とし、
アメリカ人類学から生まれた方法論」
(p.142)

文化相対主義の特徴(BY青木保)
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
「西欧文化中心主義に対する対抗的な概念として
文化の多様性を主張する」
「文化はどれほど小規模の単位のものであっても、
自律していて独自の価値を有している」
「人間の行動や事物の価値は、それの属する文化
的コンテキストに即して理解され、評価されるべ
きである」
「人間の社会に対する平等的アプローチ」
「文化と文化のあいだに格差はなく、人種や民族
のあいだにも能力や価値の差はない」
「文化と人間の価値判断に絶対的基準は存在しな
い」
「何よりも文化・他者に対して寛容であること」
文化相対主義批判
「独裁主義や異民族排斥に対してさえも民主
主義同様に相対的に扱わなければならないの
か」(「道徳=価値判断の相対性の主張」へ
の批判)
 「知識の相対性の主張」への批判
 西欧文明への逆差別への批判

■文化相対主義における「比較」
「文化相対主義の文脈のなかでなされる「比
較」は、その基底に「西欧(欧米)社会対未開
社会」という二項対立図式が敷かれ、異文化関
係において比較される主体が固定的に捉えられ
ている」(p.143)
 「文化相対主義における「文化」はおもに、民
族・エスニシティ、人種を指している」
(p.144)
 「文化相対主義の観点は、異文化間の比較が
「可能である」ことを前提に出発したもの」
(p.148)

■本論文における「比較」

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「本論の議論では比較をする主体と比較をされる対
象は、その立場が入れ替わることもあり、それゆえ
西欧を起源としないフォーマット化も可能と考えら
れている」(p.143)
「あらゆる文化単位のフォーマット化を論点とする
立場においては、比較する属性を人種やエスニシ
ティに限定しない」(p.144)
「本論で提起された比較可能性では、フォーマット
化によって異文化が比較「可能になる」プロセスに
関心が向けられ、そのなかから、異‐文化、そして自‐
文化を見据えてきた」(p.148)

※「批判の対象となるべき点は、比較によっ
て優劣をつけてきたことであり、比較そのも
のではないはずだ。」(p.147)
5
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

グローバリゼーション研究と異文化論
「「グローバル化される(する)ということ」と「青い
球体」とが、あまりに強く結びつけられており、その結
果、議論をかなり限定せざるを得ない」
↓
「グローバリゼーションは、ある状態を表しているので
はなく、グローバルへ向かうプロセスだと思ったほうが
わかりやすい。つまり、グローバリゼーションにおける
主役(主語)はglobeではなく、他の「なにか」なのだ。
「地球(globe)が地球的になる/なった(globalized)状
態」というのはおかしな表現であって、地球はこれ以上
「地球」になれない。それよりも「(なにかが)地球規
模化するプロセス」として、グローバリゼーションを捉
えるのが自然ではないだろうか。」(p.151)
来週の課題
グローバル・フォーマットが「ローカルなも
の」を生みだす、という現象の事例を調査し
てきてください。
 (例)マクドナルドと世界各地のローカル・
メニュー
 ※pptを使いたい場合は、来週の授業までに
mailで送ってください。

ダウンロード

文化のグローバリゼーション