第7回DECIGOワークショップ 2009.4.23
超小型衛星の位置天文への応用:
Nano-JASMINE計画
○初鳥陽一、郷田直輝、小林行泰、矢野太平(国
立天文台)、山田良透、丹羽佳人(京都大学)、
中須賀真一、酒匂信匡(東京大学)、JASMINE
ワーキンググループ
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位置天文学について(1/2)
位置天文学
天体までの距離(年周視差)や
天球上での位置・横断速度(固有運動)を測定する
年周視差法
小さい視差角
星までの距離を直接測る方法と
して最も信頼のおける方法
(三角測量)
地球の公転を利用して、
年周視差を測定する
地球
大きい視差角
太陽
位置天文学について(2/2)
天体までの距離がわかると・・・
天体の地図→分布・構造がわかる
星団や銀河系内の星などの分布、銀河系の構造
みかけの量(相対量)を真の量(絶対量)に変換できる
星の明るさは、明るい星でも遠くにあれば暗く見え、
暗い星でも近くにあれば明るく見える。
天体までの距離決定は、天文学の基本情報
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スペースアストロメトリ
精度のよい距離測定は非常に重要
19世紀までの地上からの観測は
大気の揺らぎの影響
重力による観測装置の変形の影響
を受ける
宇宙からの観測が非常に有効
ヒッパルコス衛星は、可視光で
精度1ミリ秒角という高精度
カタログを作成
(ヒッパルコスカタログ)
※ヒッパルコスより前のFK5(1988)は
30ミリ秒角の精度
ヒッパルコス衛星
(ESA, 1989-1993, 質量:1400kg)
精度: 1 ミリ秒角
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ヒッパルコスカタログの領域
ヒッパルコスでの距離測
定誤差が10%以内の領域
(330光年)
330光年以内は,天の川銀河全体に比べたらごく近傍の領域でしかない
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これからの位置天文
天の川銀河
ヒッパルコスでの距離測
定誤差が10%以内の領域
(330光年)
10μ秒角で測定した際の
距離測定誤差が10%以内の
領域(3万3千光年)
VERA(電波)GAIA・SIM(可視光)JASMINE(赤外線)がμ秒角へ挑戦
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JASMINE計画
JASMINE - 赤外線位置天文観測衛星計画
Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration
10μ秒角精度での観測
ヒッパルコスの精度より100倍精度向上
天の川銀河の中心付近のバルジを赤外線で観測する
可視光→天の川に多く存在するダストによって吸収
され、星の明るさが暗くなる
赤外線→ダストによる吸収の影響が少ない
天の川銀河の力学構造や銀河の形成・進化など様々な
サイエンスが計画されている。
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JASMINE計画シリーズ
Nano-JASMINE 2010年打ち上げ予定
口径5cm、日本初の位置天文衛星(世界で2番目)
衛星開発や運用プロセスを経験
精度:数ミリ秒角(ヒッパルコスと同等)
小型-JASMINE 2015年打ち上げ目標
口径30cm、精度:10μ秒角、小型科学衛星シリーズでの実現を検討中
科学的・技術的に中型JASMINEにつなぐ。バルジの一部を観測
中型-JASMINE 2020年代打ち上げ目標
口径80cm、精度:10μ秒角、バルジのほぼ全域をサーベイする
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Nano-JASMINE計画
JASMINE計画における最初の衛星
次世代スペースアストロメトリ(JASMINE)のための
技術的蓄積(開発・軌道上実験)
宇宙開発の一連の作業を経験。学生・若手研究者に
とっても貴重な経験。
日本初のスペースアストロメトリ観測経験
世界でも二番目
ヒッパルコスと同程度の精度で観測
ヒッパルコスミッション終了から15年が経過し、カ
タログ上の座標情報は劣化しつつある。
そのため、ヒッパルコスと同程度の観測でも固有運
動の補正ができる。
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Nano-JASMINEの科学目標
Nano-JASMINE Cat. (2011?) + HIPPARCOS Cat. (1997)
HIPPARCOSカタログの検証(プレアデス星団の距離など)
ヒッパルコスカタログでの距離は他の観測結果より近くに
あると計算されている。
HIPPARCOSカタログの更新・固有運動情報の高精度化
GAIA
JASMINE
NanoHipparcos JASMINE
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Nano-JASMINEの概要
衛星の仕様
衛星外形
50×50×50cm
質量
約25kg
打ち上げ
2010(予定)
ミッション期間 2年
観測等級
z<8mag
観測波長
z-band(λ~900nm)
Nano-JASMINEの想像図
開発体制
ミッション部(望遠鏡など)→国立天文台&京都大学
バス部(無線器、姿勢制御、電源など)→東京大学&東京海洋大学
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Nano-JASMINEの特徴
近年発展している小型衛星技術を用いることで、
ヒッパルコスと同様の精度ながら質量は数十分の一
1.
口径5cm(f=167cm)の小型望遠鏡
2.
ビーム混合鏡による2視野同時観測
ヒッパルコスと同じ観測手法
3.
近赤外で量子効率の高い完全空乏型CCD
ヒッパルコスでは光電管が用いられていた
4.
TDIと呼ばれる特殊な長時間露光モードの実装
5.
効率のよいデータ取得のための星像切り出し手法
6.
高精度な星像中心位置決定アルゴリズム
位置決定精度目標:数ミリ秒角(z=7.5mag)
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観測方式
ビーム混合鏡による二方向同時観測
1方向のみの観測
2方向同時観測
天球
celestial
globe
Star’s星の分布:均一
distribution: even
角速度:不均一
Angular
velocity: uneven
天球
celestial globe
データ
observation
天球
celestial
globe
Star’s
distribution: uneven
星の分布:不均一
Angular
velocity: even
角速度:均一
星の分布:均一
Star’s
distribution: even
角速度:不均一
Angular
velocity: uneven
observation
データ
天球
celestial globe
データ
observation
indistinguishable
区別できない
Star’s
distribution: uneven
星の分布:不均一
Angular
velocity: even
角速度:均一
データ
observation
区別できる
distinguishable
二方向同時観測することによって、衛星の運動と星の分布の縮退が解ける
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TDI(Time Delay and Integration)
観測方向
観測方向
Nano-JASMINEは大円にそって星の観測
を行う。
衛星は軌道周期にあわせてスピン
衛星のスピンにより、星はCCD上を動
いて見える
地球
CCDの電荷転送速度を、星がCCD上で
動く速度に一致させると、星が視野か
ら見えなくなるまでの時間露光できる
8.8秒の露光を予定
TDIの技術により、衛星のスピンを
止めることなく効率よく星を観測で
きる。
衛星のスピンによる星の動き
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衛星の機能と担当
ミッション部
バス部
国立天文台
東京大学工学部中須賀研
1. 望遠鏡
2. CCD
3. TDI(CCDの駆動ボード)
1.
2.
3.
4.
5.
京都大学
東京海洋大学
1. ミッションデータ処理
2. 星像切り出し
1. 衛星の位置・速度決定
(GPS)
電源
通信
衛星の姿勢制御
熱・構造
データ処理
多くの協力によりプロジェクトが進行中
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開発状況
望遠鏡開発状況
■主鏡有効径
φ5cm
■焦点距離
167cm
■リッチークレチアンタイプ
(非球面鏡2枚、平面鏡3枚)
■ビーム混合鏡による2視野同時観測
(混合鏡相対角:99.5 deg)
■全アルミ合金製(表面は金蒸着)
■視野
Nano-JASMINE光学系
0.5×0.5 deg
ビーム混合鏡
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開発状況
Beam-combiner
17 cm
M1
12 cm
望遠鏡外観
(12cmX12cmX17cm, 1.7kg)
光学素子の表面粗さ計測結果
(粗さ5-8nm、損失1%以下)
小型・軽量・熱変形の影響の低減を目指した全アルミ合金製望遠鏡
表面には金を蒸着させている
リッチークレチエンタイプの望遠鏡にビーム混合鏡と呼ばれる特殊な
鏡を搭載する(主鏡5cm、合成焦点距離167cm)
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望遠鏡の性能測定
干渉計による性能評価
望遠鏡の波面誤差
望遠鏡全体でλ/14を達成
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CCDとTDIの開発
近赤外線(波長0.8-1.0μm)で
高感度なCCD
浜松フォト二クスとの共同開発
(Kamata et al. 2006)
CCDによる撮像結果
データ量を減らすために、軌道上で星
像の周辺(5×9ピクセル)のみを抽出、
地上へダウンリンクする
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衛星バス部の開発
姿勢制御用リアクションホイール
データ処理コンピュータと電源回路
衛星搭載無線機
衛星搭載アンテナ
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望遠鏡周辺構造の熱解析
ビーム混合鏡の相対角変動は星像位置決定精度に影響
相対角度は1ミリ秒角以内に保たれなければならない
要求
CCDの使用温度 : 170K~220K
(CCDのダークノイズ)
混合鏡の相対角度変動 : 1ミリ秒角
周辺構造
数値解析による検証
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熱解析結果
数値解析結果
放射冷却による受動制御
- 内部の光学系は 220Kまで冷却可能
- 相対角度の変動は1ミリ秒角以内に抑えられる
混合鏡の角度変動
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熱構造モデルを用いた試験
衛星熱構造モデル(中央下)
真空チャンバーにとりつける治具
が付けられている。
熱真空試験の様子
(チャンバーを閉める直前の様子)
国立天文台の先端技術センターにある大型真空チャンバーを用いた
熱真空試験を実施し、熱設計の妥当性を検証した
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電気統合試験
天文台・京大担当
Nano-JASMINE電気機器の全体像
バス系
ミッション系の電気機器
-ミッション系のコンピュータ
-CCD
-TDIボード
東大担当
バス系の電気機器
-バス系のコンピュータ
-無線機
-姿勢制御用機器
-各種センサ
-電源
電気機器の統合試験により
データ通信・電源のインターフェイス
確認,機器の消費電力の実測を行った
CCD
(箱の中)
TDIボード
バス系の機器
各種センサ
電源
コンピュータ
無線機
姿勢制御
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振動試験
振動試験前
振動試験
(東大工学部)
衛星はロケット打ち上げ時に大きな振動を受ける
振動試験後
望遠鏡の波面誤差をレーザー干渉計により測定
光学性能への影響は小さい
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放射線試験
Co60を用いたトータルドーズ試験
(γ線)
20krad照射
(軌道上で2年間運用として多目の量)
蒸着鏡面の反射率低下:0%
フィルターの透過率低下:2-3%
(許容レベル)
都立産技研Co60γ線照射室
放射線による性能劣化はほとんどない
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データ解析における国際協力
Nano-JASMINEは
ESAで開発中のGAIAと同じ観測手法を取り入れている。
Nano-JASMINEはGAIAより先に打
ち上げられるため、観測データ
をGAIAチームの解析ソフトで解
析することは、彼らのデータ解
析手法のチェックにもなる。
ESAからはNano-GAIAとしての役割
も期待されている。
GAIA:可視光で全天サーベイ
2011年ごろ打ち上げ予定
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打ち上げについて
Cyclone-4ロケットにより、ブラジル
から打ち上げる協力計画を記した
MOU(覚書)に調印
東京大学
国立天文台
アルカンタラ・サイクロン・スペース社
(ブラジルとウクライナの合弁会社)
ユジノエ社(所在:ウクライナ)
ロケット:Cyclone-4(サイクロン-4)
射場:アルカンタラ発射場(ブラジル)
打ち上げ:2010年
現在は契約に向けた準備中
Cyclone-4ロケットのイメージ図
© SDO Yuzhnoye
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まとめと今後の予定
Nano-JASMINE計画
超小型衛星技術による天文科学観測
次世代スペースアストロメトリ(JASMINE)のた
めの技術的蓄積(開発・軌道上実験)
日本初のスペースアストロメトリ観測
ヒッパルコス級のアストロメトリデータの取得
今後の予定
現在はEM(Engineering Model)の統合試験中
2010年にブラジルから打ち上げ予定
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今後もJASMINEをよろしくお願いいたします。
ダウンロード

Nano-JASMINE