教育原論Ⅱ
平成22年2月10日(水)~12日(金)
1 授業の目的
教育制度論の観点から、とくに中等教育に焦点を当て、その理念・原理、構造、
今日的課題等について基本的理解を得させること、それを通して中等教育に
対する理解や課題意識をもたせること、今後の中等教育のあり方を考えさせる
こと、そして中等教育学校(中学校、高等学校)教員としての認識を深めさせる
ことを目的とする。
(カリキュラム上の位置づけ)
・専門基礎教育科目(KB)
・教職科目の中の「教育の基礎理論に関する科目(教育の理念並びに教育
に関する歴史及び思想)」
2 授業の達成目標
・学校教育制度の理念や原理について基本的に理解すること(中等教育の
理念・思想の理解)
・中等教育の社会的・制度的側面について基本的に理解すること(中等教育
の社会的・制度的理解)
・中等教育学校教員としての問題・課題意識を自覚すること(問題発見)
3 授業の評価
・単位取得のためには、原則として最低2日間の出席を義務づけます。
・受講者数多数により、出席確認のため、毎日午前と午後の2回に分けて
「受講票」を配布しますので、受講票に学部名・学生番号・氏名並びに授
業の感想・意見等を記入し、午前と午後の授業の終わりにその都度提
出してください。
・全授業終了後、レポートを課します。レポートのテーマ、提出期限等につ
いては最終日にお知らせします。
・評価(5段階評価)は、出席状況とレポートの内容とを総合的に考慮して
行います。
4 注意事項
・授業は、9:00に開始します。
・欠席の場合は、必ず欠席届を出すこと
・他人の迷惑になるような行為(私語等)は慎むこと。目に余る場合には、退
出を命じます。
4 授業の概要
○オリエンテーション
○授業の内容
(1)学校教育制度の理念・原理、特色等
1)理念・原理
2)特色
3)学校体系(資料1)
4)学校教育制度の構造
5)教育制度の世界共通的課題
(2)中等教育の意味と機能
(3)日本の中等教育
1)戦前の中等教育(資料2)
2)戦後の中等教育
①新制中学校・高等学校制度の発足とその理念(資料3)
②中学校の問題
③接続と入学者選抜
④分化・多様化と学科・コース制度
⑤教育課程と学力(資料4)
(4)近年の中等教育改革の動向
1)一貫教育:小中一貫と中高一貫
2)高校教育の改革(再編成、等)
3)諸外国の中等教育改革の動向
学校教育制度の理念・原理、特色等
1 理念・原理
・教育を受ける権利の保障―教育の機会均等
社会的正義の実現―性や階層などによる差別の撤廃
・中立性―政治的、宗教的、非営利的
2 特色
・社会的分業組織として制度化―教員免許状
・公教育として制度化
公教育の意味の広がり:義務教育から公共性
・フロント・エンド方式により体系的に制度化
3 学校体系の系譜
(1) 系統性: 教育対象の所属階層や性別などによる縦
断的構造。複線型(分岐型)の学校体系
下構型=「上から下へ」構築。上流(貴族、支配者
層)階層のための学校(備考)
上構型=「下から上へ」構築。庶民・大衆層のため
の学校
(2) 段階性: 教育対象の年齢段階や教育段階などによる
横断的構造。単線型(総合制)の学校体系
大きな流れとしては系統性から段階制へ移行(社会
的正義の実現を目指して)
4 教育制度の世界共通的課題
(1)すべての国民に教育を受ける権利(教育へ
の権利、学習権)を保障する
(2)人間形成
・科学技術の発展に対応できる人間
・男女共同参画社会に対応できる人間
・世界平和と人類の福祉に貢献しうる人間
・地球的課題に対応できる人間
(3)生涯学習体系を構築する
(4)南北問題への対応
(備考) 統一学校運動
中世以来、学校は貴族・支配者層の子女のための学
校と、庶民・大衆層の子女のための学校とが接続関係
のないまったく別個の学校体系をなしていた(複線型学
校体系)。
近代に至り、人間平等思想に基づく教育の機会均等
論や近代国家の国民思想統一の必要性等から、この
両系統を統一して単線型学校体系とする学制改革要
求が欧州を中心に高まった。この運動を統一学校運動
という。
ドイツでは19世紀中ごろに始まり、イギリス・フランス
では第1次大戦後に始まった。
日本では第2次大戦後。
初等中等教育制度の構造
1 小学校
小学校は、義務教育が行われている学校の一種
であり、修業年限(卒業までに教育を受ける年数)
は6年である。卒業後は、中学校や中等教育学校な
どに進学することになる。小学校と同等な課程に特
別支援学校の小学部があり、就学児健診で特別支
援学校が適切と判定された場合などにおいてはそ
れらの学校に就学する。
公立小学校においては、義務教育制度によって、住民
基本台帳に基づいて4月1日に満6歳である人がなかば
自動的に入学(就学)する形をとることがほとんどである。
未熟児や病弱などの理由で就学猶予が許可された場合
は、1年以上経過したのちに就学することとなっている。
なお、日本国籍のない人は年齢が合えば特に問題なく
入学することが可能であるが、学齢超過者は入学するこ
とが困難である。国立・私立小学校においては、入学を
希望する家庭が個別に入学許可を受けて入学すること
になる。
特に公立校は年齢主義によって運営されているため、
在籍者のほとんどが満6歳~12歳である。ただし学校教
育法上は、少なくとも15歳までの在学が想定されており、
明確な上限は定められてはいない。在学者は年齢にか
かわらず「児童」と呼ばれる。
小学校における教育の目的
小学校における教育は、学校教育法(昭和22年法律第
26号)の第29条により、心身の発達に応じて義務教育と
して行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを
目的とし、この目的を実現するために第30条第1項により
、必要な程度において第21条各号に掲げる目標を達成
するように行われるものとされている。
また、30条の第2項では、生涯にわたり学習する基盤
が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させると
ともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思
考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的
に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなけ
ればならない、とされている。
(備考) 学校教育法21条に規定する義務教育として行われる普通
教育の目標
1.学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精
神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的
に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
2.学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重
する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと
3.我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と
文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度
を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて他国を尊重し、
国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
4.家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他
の事項について、基礎的な理解と技能を養うこと。
5.読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する能
力を養うこと。
6.生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な
能力を養うこと。
7.生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科
学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
8.健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運
動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
9.生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術につい
て、基礎的な理解と技能を養うこと。
10.職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及
び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと
2 中学校
中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の
発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施す
ことを目的とする(学校教育法第45条)。教育目標は、46
条により小学校と同様に21条の規定が適用される。
小学校を卒業した者、または特別支援学校の小学部を
修了した者が入学し、修業年限は、3年である。同等学校
に中等教育学校の前期課程、特別支援学校の中学部が
ある。
小学校では、基本的に1人の学級担任の教員がほぼ全
部の教科を担当するが、中学校では、各教科ごとに専門
の教員が存在する。
中学校における成績と日常における学習の様子などが
進学時の調査書(内申書)に反映される。
中学校を卒業した人は高等学校(高校)・中等教育学校
の後期課程・専修学校高等課程(いわゆる高等専修学
校)など後期中等教育を行う学校や、5年制の高等教育機
関である高等専門学校(高専)に入学することが出来る。
通例、これらの各学校による入学者選抜に合格することに
よって各学校から個別に入学が許可される。
なお、中学校を卒業しなかった人のために、文部科学省に
よる中学校卒業程度認定試験(中認)などが存在する。
私立中学校、国立中学校の大部分と、一部の公立中学
校(主に中高一貫校)には、入学試験をはじめとする入学
者選抜がある(中学受験)。
3 高等学校
高等学校は中学校における教育の基礎の上に、心身の
発達に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施す
ことを目的(学校教育法第50条)とし、その名称から高等
教育を行う学校と誤解されることもあるが、そうではなく後
期中等教育段階に相当する学校である。義務教育の対
象から外れるため、進学するかどうかの選択は自由であ
るが、現状では中学卒業からの就職が非常に厳しいこと
もあり、ほとんどの中学生が高校へ進学している。
1998年(平成10年)の学校教育法の改正により、中高一
貫教育を行う6年制の学校である「中等教育学校」が新た
に創設された。
高等学校の教育の目標(学校教育法第51条)
1.義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展
拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体
を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養う
こと
2.社会において果たさなければならない使命の自覚に基
づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教
養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させるこ
と
3.個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い
理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態
度を養うこと。
学科制
高等学校では学科制がとられており、高等学校設置基
準第5条により、学科の種類は次の通り定められている。
1.普通教育を主とする学科(公式名称: 普通科)
2.専門教育を主とする学科 (通俗名称: 専門学科)
3.普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合
的に施す学科 (公式名称: 総合学科)
*学科が細分化されているのは日本の高校の特徴
であり、アメリカ、イギリス、カナダなどの高校は総
合学科が多い。
(備考)
専門学科は、職業教育を主とする学科(職業学科)とそ
れに限らない普通教育をより高度に拡充させた専門教育
を行う学科(普通系専門学科)に分類される。職業学科と
して、農業、工業、商業、水産、家庭、情報、福祉、看護
などに関する各学科がある。職業学科は、その性質上、
各省庁の養成施設としての認可を受け、卒業時に各種の
免許を取得したり、あるいは試験科目の一部が免除にな
る教育課程を編成している学科も少なくない。
普通系専門学科として、理数、体育、音楽、美術、外国
語、国際関係などに関する各学科が設置されている。
中等教育の意味と機能
1 中等教育の意味
学校教育制度上最も遅くれて制度化された。
liberal education(教養教育) からsecondary educationへ
古典的教養
普通教育
大学に進むための予備教育
初等(基礎)教育に
続く第2段階の教育
古典語(ラテン語)中心
現代語重視、職業教
育重視
エリートの養成
中等教育をすべてに
複線型(三分岐)と
単線型(総合制)
(理由)
①産業が発展して良質の労働者が求められるように
なり、エリートの養成だけでは対応できなくなった。
②良質の労働力を身につけて有利な就職の機会を得
るために、より高いレベルの教育が求められるように
なった。
③これまでの教養学校とは別の学校、つまり職業学校
が急増した。これにより、普通教育と職業教育のあり
方が問題にされるようになった。
④教養学校でも、古典語の学習の開始時期をひとつ
の区切りとして、第1段階(前期中等教育)と第2
段階(後期中等)とに分ける必要が生じてきた。
2
中等教育の機能ー接続と分化
接続: 初等教育と高等教育との橋渡し
前期と後期に区分
前期の義務教育化
選抜の時期・方法
分化(多様性): 生徒の個性、能力、適性への対応
青年期のライフステージへの対応
保護
個としての発達(自立)
社会生活のための準備(職業、家庭)
戦前の中等教育制度
普通教育の特権化と「女子教育」・
「実業教育」の分化
1.中等教育制度の模索(明治5年~19年)
「学制」(明治5)下の中等教育
(種類)
下等中学(14~16歳)・上等中学(17~19歳)。
「小学を経たる生徒に普通の学科を教える所」。
*下等中学の教科:国語学、数学、習字、地学、
史学、外国語学、理学、画学、古言学、幾何学、
記簿学、化学、修身学、測量学、奏楽(当分欠く)
(趣旨)
・小学校の卒業者を中学校に進ませるという単一系
統の学校体系を予定。
・下等中学は小学校210校に1校を予定
(備考)
「・・・自今以後一般の人民必ず邑に不学の戸なく、
家に不学の人なからしめん事を期す・・・」
(「学制」(太政官布告)より)
学制の着手順序について
一 厚く力を小学校に用うべきこと
二 速に師表学校を興すべきこと
三 一般の女子男子と等しく教育を被らしむべきこ
と
四 各大学区中漸次中学を設くべきこと
五~九 略
2.中等教育制度の確立(明治19以降)
明治19 中学校令
中学校の目的:「実業に就かんと欲し又は高等の学
校に入らんと欲する者に須要なる教育をなす所」
中学校の種類
尋常中学校:各府県において便宜之を設置するこ
とを得。但し、その地方税の支弁又は補助に係
るものは各府県1か所に限るべし。
修業年限は5年。入学資格は年齢12歳以上の
中学予備の小学校の卒業者
高等中学校:文部大臣の管理に属し、全国に5(東
京、仙台、京都、金澤、熊本)設置
明治23 中学校令改正
尋常中学校は、各府県において1校を設置すべきもの
とす。(1府県1校の原則)
高等女学校の規定新設:尋常中学校の種類として「女
子に須要なる高等普通教育を施す所」
明治27 高等学校令
高等中学校を高等学校に改称
専門学科を教授する所とす。修業年限4年
帝国大学に入学する者のために予科を設けることが
できる。
明治32 中学校令改正
「尋常中学校」を「中学校」と改称。
男子に須要なる高等普通教育をなすをもって目的と
す。
修業年限は5年。
入学資格は年齢12歳以上にして、高等小学校第2
学年修了者。
学科目:修身、国語及び漢文、外国語、歴史、地理、
数学、博物、物理及び化学、法制及び経済、図画、
唱歌、体操
明治32 高等女学校令
普通中等教育機関として中学校、高等女学校という2
つの学校類型に分化
(特質)
・賢母良妻たらしむるの素養をなす。ゆえに、優美高
尚の気風、温良貞淑の資性を涵養するとともに、中
人以上の生活に必須なる学術技芸を知得せしめん
ことを要す。(文部大臣談)
・修業年限:中学校が5年制であるのに対して4年を原
則とした。
・学科目:「漢文」はなく、単に国語とされた。また博物
と物理及び化学は合わせて理科とされた。法制及び
経済という科目はなく、逆に家事、裁縫の両科目が
加えられた。
明治32 実業学校令
・従来各省庁が設置していた実業系の学校が、「実業
学校」として括られ、すべて文部省の管轄に一本化。
・普通教育の系統と実業教育の系統に分化。
(特質)
目的:工業、農業、商業等の実業に従事する者に須
要なる教育をなすこと
種類:工業学校(徒弟学校を含む)、農業学校(蚕業
学校、山林学校等を含む)、商業学校、商船学校及
び実業補習学校
修業年限:各学校とも3年
入学資格:14歳以上で、修業年限4年の高等小学校
卒業者。
学科目(共通):修身、読書、作文、数学、物理、化学、
図画、体操等
(備考)
実業補習学校
・実業補習学校規程(明治26年制定)により制度
化
・諸般の実業に従事せんとする児童に小学校教
育の補習と同時に、簡易なる方法をもってその
職業に要する知識技能を授くる所とす。
・入学者学力の程度は尋常小学校卒業以上。
・修業年限は3年以内
・教科目は修身、読書、習字、算術及び実業に関
する科目
・夜間定時制の学校として普及
戦後の中等教育制度
1 中等教育の改革
1 新制中学校の発足と義務教育年限の延長
(1)新制中学校の発足
「学校教育法」(昭22)により、新たに3年課程の新
制中学校が発足し、小学校6年に続いて義務制とさ
れた。これにより義務教育年限が9年となった。
義務化にともない、進級制度は課程主義から実質
的に年数主義がとられるようになった。
(2)中学校の目的
小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に
応じて中等普通教育を施すこと(学校教育法35条)
*旧制中学校:男子に須要なる高等普通教育
高等女学校:女子に須要なる高等普通教育
中学校の目標
(1)小学校における教育の目標をなお充分に達成し
て、国家及び社会の形成者として必要な資質を
養うこと
(2)社会に必要な職業についての基礎的な知識と
技能、勤労を重んじる態度及び個性に応じて将
来の進路を選択する能力を養うこと
(3)学校内外における社会的活動を促進し、その感
情を正しく導き、公正な判断力を養うこと
中学校の教育課程
必修教科:国語、社会、数学、理科、音楽、図画工作、
体育及び職業
選択教科:外国語、習字、職業及び自由研究
これは、24年に至って改訂され、体育は保健衛生をも
合わせて指導することとし、名称を「保健体育」と改めた。
また職業科は農業、商業、水産、工業、家庭の5つの
分野であったのを、さらに栽培、食品加工、調理等を加
え12分野とし、「職業・家庭」と改めた。
自由研究が特別教育活動に改められた。
(意義)
・「すべての者に中等教育を」の理念=機会均等の
原則の前進
・進路決定時期の延長
・リベラルかジェネラルへ
(問題点)
・なんらの母体や下地をもたずに発足したこと
・校舎・教室の不足(独立校舎をもちえたものは、当
初、全体の15%。青空教室、二部・三部授業の実
施
・教員不足ー多くは国民学校からの転任
・二重の性格:義務教育学校として基礎教育の完成、
高校への進学準備教育
2 新制高等学校の発足
(1)設置
旧制度の中学校、高等女学校、実業学校の諸コース
を吸収統合し、「単一」の学校として発足。中等教育の
単線化
定時制・通信制の課程設置ー勤労青少年の教育機会
(2)目的
中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応
じて、高等普通教育及び専門教育を施すこと。
*旧制高等学校: 男子の高等普通教育を完成するこ
と( 大7 高等学校令)
(3)設置の原則:「新制高校実施の手引き」(文部省、
昭22)より
①将来なるべく多くの新制高校ができて、希望者が
もれなく進学しうるようになることが望ましい。―
小学区制を想定し、選抜試験は原則として行わ
ないという方針。ー実際は昭和27年度で23県
②学校の多い大都市では普通科、職業科を別々に
置いてもよいが、学校の少ない地方では、進学者
の多様な希望をみたすために総合的な学校にな
ることが望ましい。
③高校では必ずしも男女共学でなくてもよいが、教
育を受ける機会は男女同じように与えること
(4)教育課程
選択教科制:共通必修教科(国語、社会、数学、保健
体育)
単位制:85単位以上(内、38単位は共通必修教科)。
年数主義との結び付き。
3 中等教育改革の意義と問題
(1)意義
・中等教育概念の整理統合
戦前の差別的な「中等教育」概念を否定し、
発達段階に即した「中等教育」概念を設定
教育の機会均等の前進
・能力主義から平等主義へ
(2)問題
・中等教育が 「前期」と「後期」とに区分された
結果、「前期」段階である中学校の二重的性格
が生まれた。
・高校3原則のなしくずし化ー平等主義の形骸化
戦後の中等教育制度
2 中等教育の展開
1 中学校について
(1) 生徒の行動問題
①<校内暴力>(公立小・中・高校)
昭和60(1985)
平成19(2007)
発生校数 発生件数
発生校数 発生件数
小
-
ー
1,263
4,700
中 1606
2441
3,799
32,412
高
77
642
2,159
6,430
*この他、学校外で公立小395件、公立中3.237件、公立
高校860件の暴力行為(対教師暴力、生徒間暴力、対人
暴力、器物破損)が発生している。
②<いじめ> (公立小・中・高校)
昭和60(1985)
平成19(2007)
小 12,968 96,457 8,857 48、896
中 7,113 52,891 7,036 43、505
高 1,818 5,718 2,734 8,385
*1校あたり発生・認知件数
小
中
高
昭和60 3.9 5.1 1.3
平成19 2.2 4.1 1.6
**いじめ:当該児童生徒が一定の人間関係のある者か
ら心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な
苦痛を感じているもの。なお、おこった場所は学校の内
外を問わない。昭60は発生件数、平19は認知件数
③<不登校>
平成3
平成20
不登校生徒 不登校生徒数 不登校生徒 不登校生徒数
在籍学校数
在籍学校数
小
ー
12,645人 9,634校
22,652人
中
ー
54,172
9,309
104,153
*不登校:何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的
要因・背景により、児童生徒が30日以上登校しない、ある
いはしたくてもできない状況にあること(病気や経済的な理
由を除く)
*不登校の主なきっかけ(小・中計)
いじめ
2.9%
いじめ以外の友人関係
18.5
学業不振
10.0
親子関係
11.1
中学生に集中する問題行動=反学校的な傾向と
脱学校的な傾向
反学校的:学校から疎外された子どもの反
発―校内暴力、いじめ
脱学校的:学校への適応過剰がもたらした
破綻―不登校、自殺
なぜだろうか?
(2) 中学生を取り巻く社会的環境の問題
学歴社会の圧力
中学校での成績が実質的に最も重要になる
学力が序列の材料化
現役主義の圧力ーやり直しがきかない
親の期待の圧力ー過剰適応→いわゆる「よい子」
反抗期の喪失傾向
学校外では社会的規範からの解放(自由化):服
装、髪形、性についての禁止や統制からの解放
学校では学校文化への適応強要(管理主義):画
一化、均質化ーー社会の流れに逆行
高度情報化の圧力―ケイタイ、インターネット
(3) 中学校(中学生)に見られる傾向
95%からはずれることへの不安・恐怖
公立離れ、私学志向 金持ちが私立への傾向
目的意識の欠如―何のための勉強するのか
フロンティアの喪失:頑張ればなんとかなるという幻想
のやぶれ
我慢できない、いうことを聞かない、合わせることの不
慣れ
学習塾通い
*高校進学率
1955(昭和30) 51.3%
1965(昭和40) 70.7
1975(昭和50) 94.3
1991(平成3)
95.4
2009(平成20) 97.8(通信制課程を含む)
(4) 制度上の位置づけの問題
・義務教育機関としての性格-小学校教育との関
連。基礎教育の完成
・中等教育機関としての性格-高校教育との関連。
青年期の分断
学校教育の問題が中学校にシワヨセがきている。
(理想と現実のズレ)
一貫教育の必要性
(5)教育課程・内容の問題
・知識主義―旧制中学校の伝統継承。知的能力にかたよりす
ぎる
・内容が多すぎる―履修させることが目的となり、分からせるこ
とを目的としていない。全員が分かるとは限らない教育
・教育課程(カリキュラム)の分断―小学校との分断、高校との
分断
・教育内容の形骸化・形式化
学習する知識と子どもの生活との遊離
科学の体系から切り離され、断片化
教育内容に知的関心がもてない
・年数主義の進級制度
(6) 問題解決に向けて
・社会全体として学歴(学校歴)主義を見直す-生涯
学習の観点
・小中一貫教育を考える-9年を通してのカリキュラ
ムの編成。内容の精選(基礎・基本)
・キャリア教育
・入試制度を考えるー落とす入試を見直す。
・ゆとりある生活
2 接続について
(1)接続とは
下級学校と上級学校とをどのようにつなぐか、という
ことについての考え方や方法
接続の時期・方法等の問題
(2)接続の方式
近代学校は直接的な接続関係を基本
フロント・エンド方式:ある学校段階の修了(卒
業)後、直接に接続。現役主義
小学校卒業→中学校入学→中学校卒業→高
校入学→高校卒業→大学入学
(3)接続の原理
資格主義
ある段階の教育の修了の証明:卒業・修了証書
大学入学資格:バカロレア(フランス),アビトゥ
ア(ドイツ)、GCE
試験主義―入学者選抜の原理として登場。日本で
は義務教育後(高校進学時から)
能力試験―高校教育あるいは大学教育を受け
るに足りる能力があるかどうかを見る。
競争試験:振り落としの手段。需要―供給の関
係
選抜の時期をできるだけ先に延ばす
3 試験について
(1)試験の目的
到達度(水準)の確認―到達度測定試験(アチーブ
メントテスト)、進級・卒業試験
適格性の確認―資格・免許試験、昇進・昇格試験、
選考試験
選抜―競争試験
(2)教育における試験の意義:なぜ試験が行われるのか
到達度を確認する手段として
学習への動機づけを高める手段として
教育の水準を平準化する手段として
優秀な人材を選抜する手段として
(3) 試験制度の問題点
1)入学者選抜制度との結びつき
一定の水準に達していても不合格になることがある
中学・高校の授業が、入試科目中心になっている。
高校における必修科目「世界史」の未履修問題。
2)試験と能力評価との結びつきー受験学力による能力
評価になりがち。能力の数値化
試験は、どのような能力を評価するのか
3)公的職業資格制度と受験資格としての学歴との結び
つき
4 高校入学者選抜制度について
(1) 入学者選抜の基本的方針の推移
〇昭和22年「新制高校実施の手引き」
希望者全員受入れの原則。しかし、入学志願者数が
入学定員を超過した場合には、高校が自ら入学試験
を行うことができる、とする県が大方であった。
○昭和23年2月「昭和23年度新制高校入学者選抜に
ついて」
希望者全員受け入れの原則のゆれ
①選抜のため如何なる検査も行わず、中学校よりの報告書に基
づいて選抜する。
②中学校からの報告書には、次の事項を含む。
知能検査の結果、都道府県ごとに入学志願者全体に対して行
う一斉学力検査の結果、教科学習成績、個人的並びに社会的
な性格、態度の発達の記録、職業的見地よりする性格、態度
の発達及び職業的適性の記録、身体の発達記録
(趣旨)
学区制(小学区制)の基盤の上に、学校差をなくし志願者の特定
の学校への集中を避け、なるべく多数の志願者を入学させ、受験
準備の弊害をなくすこと。(手引きの確認)
〇昭和26年通達
都道府県の一斉学力検査を実施することが困難か、
又は実情に即しない場合は、各高校が学力検査を
行ってよいが、都道府県ごとに同一問題で一斉に実
施すべきである。
○昭和38年「公立高校入学者選抜要綱」
入試は高校教育を受けるに足る資質と能力を判定
するもの(適格者主義の原則)
○昭和59年「公立高校の入学者選抜について」
各高校、学科の特色に配慮しつつ、 その教育を受
けるに足る能力・適性等を判定して行う(高校入試の
多様化、個性化)
○平成5年「高等学校の入学者選抜の改善について」
・受験機会の複数化
・学力検査の出題内容の改善ー単なる知識ではなく
思考力や応用力を問う
・調査書・面接の重視
・国・私立高校が、通常の中学校教育の水準をこえ
た問題をだしており、また中高一貫教育を行う国・
私立高校に志願者が集中する傾向にある。
○平成9年「高等学校の入学者選抜の改善について」
学力試験において一定以上の点数を得ていれば、
他
の資料によって選抜を行っていくという方法が
広く進
められていくべきである。
(備考)中教審「21世紀を展望した我が国の教育のあり方について」
(平成9年6月)
<6つの基本方向>
①中学校・高校間のハードルをより低くする。
②選抜方法の多様化、評価尺度の多元化
③中学校以下の教育の改善の方向を尊重した入学者選抜
の改善を行う。
④普通科における取組が重要
⑤改善のための様々な条件整備や関連施策を推進する。
⑥高校教育全体を柔らかなシステムに変えていく
(2) 選抜方式の推移
1)選抜は、原則として行わない。学力検査(アチブメントテス
ト)の結果による選考
2)単独選抜方式(昭和20年代から30年代)
学区制をとらず、各自が志望する高校に志願する。
各高校が志願者に対し自主的に入学試験を実施し、選抜する。
3) 合同(総合)選抜方式(昭和40年代から)
(ねらい)地域内の学校間格差の是正、新設校の育成
(方法)全県一斉試験。同一地区(学区)内の高校(同一課程・学
科)の定員合計に当たる数の合格者をまず決定したのち、
合格者の各学校への振り分けについては、志望や試験の
結果、通学距離などの基準に基づいて決定する。
*合同選抜訴訟
4) 学校群(グループ)総合選抜方式(昭和50年代か
ら)
(ねらい)小・中学校における不適正な区域外就学(越境入学)の
是正:東京都等
(方法)
・同一学区内の高校を2ないし4校ずつまとめ、これを学校群と
し、志願者には学校群を志望させ、特定の学校への志望は
認めない。
・入学候補者の決定および配分等については、学校群単位に
行う。
・学校群間の第二志望は認めない。
・入学候補者の配分については、群内各学校の入学候補者の
成績が均等となるように措置する。
(欠点)群内の高校への機械的な振り分けによる生徒や父母の不
満
6) 複合選抜方式(昭和60年代から)
( ねらい) 同一時期・同一問題方式を是正し、受験機会の複数化
を図る。
3 近年の動向
①選抜尺度の多元化=多様な選抜方法の実施
各学校・学科・コースごとに、あるいは定員の一部ごとに、学
力検査の実施教科や教科ごとの配点を変える
学力検査と調査書の成績の比重の置き方を変える
調査書の中の重視する部分を変える
(趣旨)
ペーパーテストのみによる学力検査のあり方の見直し
全教科の平均的学力重視のあり方の見直し
②不登校生徒の受け入れ
③受験機会の複数化:推薦入学
④単独選抜への回帰
⑤公立と私立の競争激化(公立離れ)
5 高校教育の分化・多様化と弾力化・柔軟化
(1)分化・多様化の背景
高校進学率の上昇―能力・適性・進路の多様性への対応
(要因)
・地位獲得競争―教育投資論
・科学技術の発展→知識・技術の高度化→中卒程度の教育水
準では対応困難
・試験基準の緩和
・家庭の経済力の上昇
・高校教育の画一化・硬直化
生徒の能力・適性・進路の多様性への対応が困難
職種の専門的分化と新しい分野の人材需要への即応が困
難:不本意入学の急増
(2)分化・多様化の原理
1960年代=高度経済成長政策下のマンパワー政策への教育の
組入れ(教育投資論):義務教育後の教育機会の拡充
各種学校の多様化
高専の新設
高校教育の分化
普通科と職業科の分離・独立
職業科の細分化:機械、電気、化学等に関する学科の拡充
普通科内部における分化: 学科・コース指定: 理数科
1990年代以降=生徒の多様化への対応(個性への対応)、社会
の変化(環境問題、産業構造の変化)への対応
量的拡大から質的充実へ=形式的平等から実質的平等へ
偏差値偏重から評価の多元化へ(個性尊重・人間性重視)
新しい学科・コースの新設
(3)分化・多様化の内容
1)学校・学科の多様化
〔趣旨〕学校(学科)選択の拡大、時代の変化に対応する柔軟な
学科制度、高校の個性化
○新しいタイプの高校の設置奨励(中教審、臨教審)
・特定分野の教育:国際高校、情報科学高校
・科目選択の拡大
総合選択制:学科(普通科・専門学科)の枠を越えた選択
制:埼玉県立伊奈学園総合高校、
普通科総合選択制:岡山県立総社南高校
専門学科総合選択制:岡山県立光南高校、埼玉県立越
谷総合技術高校
・学校間の連携:神奈川県立弥栄東・西高校(隣接設置)
普通高校と普通高校、普通高校と職業高校、職業高校と
職業高校
・単位制による教育(単位制高等学校):平成19年度785校
学年による教育課程の区分を設けない定時制および通信制
の課程
複数の時間帯又は特定の時期における授業の実施
過去に在学した高校において修得した単位の加算
定時制の課程との併修:東京都立新宿山吹高校
全日制課程の設置:平成19年度471校(785校のうち)
○総合学科の設置(中教審、高校教育改革推進会議):平成
6年
度から
普通科、専門学科(各職業学科、理数科、英語科、等)と並ぶ
第3の学科として設置。
従来の普通化・職業科という枠にとらわれず、学校が幅広く
総合的に選択科目群を開設し、生徒の個性を生かした主体
的な選択による学習を可能にする
平成19年度319校に設置
○各高校の個性化、特色ある学校づくりの推進(臨教審、中教審)
○設置者の判断による職業教育における新学科の設置(学習指
導要領)
2)教育課程・内容・方法の多様化・弾力化
○単位制の活用=学年の区分によらない教育課程の編成(臨
教審、中教審、高校教育改革推進会議):
これまで過度に学年制に偏った運営がなされており、事実
上、単位制の長所が生かされていない(①学年をこえて履修
できる科目がない、②生徒自身による選択の余地が少ない、
③単位数がわずかに不足しても進級は認められず、翌年、
再度、すべての科目の履修が求められる。
単位制高校、総合学科
○高等学校外における学修成果の単位認定
・学校間(高校間)連携:生徒が他の高校において一部の科
目の単位を修得した場合、校長が教育上有益と認めたとき
は、当該単位を卒業に必要な単位に含めることを可能とす
る制度。
・高大連携:大学・高専・専修学校(高等または専門課程)、社
会教育施設等における学修を高校における科目の履修とみ
なして単位を与えるもの(科目等履修、公開講座の学修)。平
成12年度12校→15年度261校
・体験活動(ボランティア活動など)の単位認定:平成10年度20
校→15年度310校
○技能審査の単位認定
技能審査:職業資格付与のため試験や実践的技能・技術の能
力の検定等を目的とした検定試験
*公的な職業資格:電気主任技術者、自動車整備士、海技師、等
文部省認定技能審査:英語検定試験
全国商業高校協会、全国工業高校校長協会、日本学校農業ク
ラブ連盟、全国高校家庭科教育振興会等において実施する技
術検定
都道府県教育委員会の委託を受けた都道府県産業教育振興会
等が実施する技術検定試験
○キャリア教育
インターンシップ(就業体験)の推進。
平成10年度1048学科→15年度2775学科
職場体験
戦後の中等教育
3 教育課程と学力
1 教育課程とは
(1)教育課程とは
学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を児
童生徒の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合
的に組織した学校の教育計画。
狭義には授業計画であるが広義には、休業日、教員配置等
の計画も含む。
学習指導要領に基づき各学校において編成し、実施する。
(2)現行教育課程(狭義)の枠組み
小学校:教科、道徳、特別活動+総合的な学習の時間
中学校:教科、道徳、特別活動+総合的な学習の時間
高 校 :教科、特別活動+総合的な学習の時間
(3)教育課程の論点
1)共通性と分化(多様化)
国民の共通の教養と個性(能力・適性)への対応との関係
必修科目と選択科目との関係
特色ある学校づくり
2)学校五日制への対応
ゆとりある生活の確保
教育内容のあり方: 内容の精選
3)学力の維持・向上
学力とは
学んだ力としての学力
学ぶ力としての学力:学習意欲、知的好奇心、集中力、
持続力
2 中学校教育課程の変遷
○昭和22年(経験志向)―文部省試案
「社会科」「自由研究」新設(小中学校)、「職業」(設置(中学校)*
*職業:農業、商業、水産、工業、家庭の5分野
総授業時数:1050~1190時間
必修教科:国語、社会、数学、理科、音楽、図画工作、体育、職業
選択教科:外国語、習字、職業及び自由研究
○昭和26年
「自由研究」が「教科外活動」に、「体育」が「保健体育」に、「職
業科」が「職業・家庭科」に変更
総授業時数:1015時間(最低時数)
○昭和33年(知識志向)―文部省告示(以下、同
じ)
「道徳」特設(小中)、「職業・家庭科」が「技術・家庭科」に
「社会科」が「地理」「歴史」「政治経済」の3分野に
教科外活動が特別教育活動に
総授業時数:1120時間(最低時数)
○昭和43年(科学志向。教育内容の現代化)
数学や理科で時代の進展に対応した教育内容の導入
「各教科」「道徳」「特別活動」(特別教育活動の名称変更)の
3領域
総授業時数:1190~1155時間(標準時数として表示)
○昭和52年(人間志向。ゆとりある充実した学校生
活)
授業時数の約1割削減:総授業時数は1050時間に
ゆとりの時間導入
○平成元年(個性化志向。社会の変化に対応できる心豊
かな人間
の育成)
選択教科の履修幅を拡大
習熟度別編成を導入
入学式、卒業式などにおける国旗・国歌の取り扱いの明確化
総授業時数:1050時間
○平成10年(生きる力志向。自ら学び自ら考える力)
「総合的な学習の時間」新設
完全学校週五日制の下、総授業時数を年間70時間削減し、980
時間
必修教科:国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技
術・家庭、外国
選択教科:必修教科のうちから、生徒の特性等を十分考慮して、
それぞれの生徒に適した教科を選択させる。
・選択教科の内容:生徒の特性等に応じた多様な学習活動(課
題学習、補充的な学習、発展的な学習など)が行えるよう各
学校において適切に定める。
・生徒に履修させる選択教科の数:第2学年1以上、第3学年2
以上。
・各選択教科の授業時数:第1学年は年間30単位時間の範囲
内、第2・3学年は年間70単位時間の範囲内
○平成20年(「生きる力」という理念の共有)
(改訂のねらい)
①改正教育基本法等を踏まえた各教科等の教育内容の改善
②「生きる力」という理念の共有
③基礎的・基本的な知識・技能の習得
④思考力・判断力・表現力等の育成
⑤確かな学力*の確立及びそのために必要な授業時数の確保
⑥学習意欲の向上や学習習慣の確立
⑦豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実:望ましい
食習慣、健康的な生活習慣
(主な改訂の内容)
・総標準授業時数:1015~1035時間。授業時数の増加は、つまず
きやすい内容の繰り返し学習や知識・技能を活用する学習(観
察・実験、レポートの作成、論述など)の学習活動の充実が目的。
・教育課程の共通性を高めるため、必修教科の授業時数を増やし、
選択教科の授業時数を減らす。
必修教科:国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技
術・家庭、外国語、道徳、総合的な学習、特別活動(学級活動)
選択教科:各教科を選択科目として設けることができるほか、地
域や学校、生徒の実態を考慮して、特に必要がある場合には、
特に必要な教科を選択教科として設けることができる。その選
択教科の名称、目標、内容などについては、各学校が適切に
定める。また、選択教科の授業時数は、標準的時数の枠外に
設定する。
(備考)
確かな学力:自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的
に判断し行動し、よりよく問題を解決する資質や能力
確かな学力の構成要素:「基礎・基本」を中核とした「思
考力」「判断力」「表現力」「学ぶ意欲」「知識・技能」
「課題発見能力」「問題解決能力」
(平成15年中教審答申「初等中等教育における当面
の教育課程及び指導の充実・改善方策について」)
3 高校教育課程(普通科)の変遷
○昭和22年:経験志向
単位制。卒業単位数85単位
共通必修6教科38単位(全体85単位の45%)=基礎教養
として
科目選択制:47単位
能力・適性に応じ、個性を伸ばすという観点
自由な(主体的な)履修を可能にするという観点
○昭和30年:知識志向
共通課程の細分化=必修教科・科目数の増大
必修科目の単位数増加:10~12教科45~61単位
(35年一部改訂)男子17科目68~74単位、女子18科目70
~76単位(全体の80~89%)
コ-ス制:生徒は学校が定めるいくつかのコ-スのうちいずれ
かを選択。また、各コ-スの必要に応じることができるように、
各教科・科目の単位数に幅をもたせる
○昭和45年:科学志向
現代化
弾力化
必修科目数やその単位数の削減:男子11~12科目、女子
12~13科目47単位-11科目47単位(全体の55%)
高校の序列化、不本意入学、おちこぼれ(現代化の失敗?)
○昭和53年:人間志向
国民として共通に必要とされる基礎的・基本的内容の重視:小
・中・高校の一貫性
卒業単位数の削減:85から 80単位に
必修単位数の削減:男子7科目、女子8科目32単位(全体の
40%)
週当たり標準時間数の削減:34時間を32時間に
勤労にかかわる体験的活動や体力増進のための活動の時
間の確保
総合科目の設置(国語Ⅰ、現代社会、数学Ⅰ、理科Ⅰ)-中学
校教育との関連性
生徒の個性や能力に応じた教育
選択教科・科目の拡大
学習習熟度別学級編成
ゆとりある学校生活
○平成元年:個性志向
①道徳教育の充実
②体育に関する指導の充実
③個性を生かす教育の充実
④社会科の再編成:現代社会、日本史、世界史、地理、倫理、
政治・経済→地理歴史科、公民科
⑤多様な教科・科目の設定(多様化の促進)
普通教育:8教科43科目 9教科60科目
職業科目:158科目 187科目
総合学科や新しいタイプの高校の設置
⑥必修教科・科目の改善
8教科(国語、地歴、公民、数学、理科、保健体育、芸術、
家庭)35単位(全体80単位の44%)
教科「地理歴史科」の中の科目「世界史」
「家庭」:男女共通必修
⑦ホ-ムル-ム活動の授業時数の改善:週当たり1時間以上
⑧単位制の弾力的運用の促進: 単位制高校
○平成10年:生きる力志向
①「総合的な学習の時間」新設
②完全学校週五日制の下、総授業時数を年間70時間削減
③必修教科(普通教育)の見直し→選択必修性
(例)
国語:「国語表現」「国語総合」のうちから1科目4単位
地理歴史:「世界史A」「世界史B」のうちから1科目、「日本史
A」「日本史B」、「地理A」及び「地理B」のうちから1科目
外国語:「オーラル・コミュニケーション」「英語Ⅰ」のうちから
1科目
「情報」(新設):「情報A」「情報B」「情報C」のうちから1科目
④卒業単位数:80単位から74単位以上に
⑤特色ある教育課程の編成―学校設定科目及び学校設定教科
の設置
○平成20年:「生きる力」を育むという理念の継承
①「教育基本法」学校教育法」等の改正に伴う各教科等の教
育内容の改善
②学校五日制の下での土曜日の活用
③卒業単位数:引き続き74単位以上
④週当たり授業時数:引き続き30単位以上を標準とし、これを
超えて授業を行うことが可能
⑤学習の基盤である国語、数学、外国語については共通必修
科目を設定(国語総合、数学Ⅰ、コミュニケーション英語Ⅰ)。
地理歴史、公民、理科については現行どおり選択必修とする
が、理科は科目履修の柔軟性を高める
3 諸外国の教育改革(初等中等教育)の動向
(1)学力・教育水準の向上と教育内容・方法の改善:国レベル
あるいは州レベルの教育課程の基準設定とその定着具
合を見る学力調査の実施―アメリカ「教育スタンダード」、
イギリス「全国共通カリキュラム」、フィンランド「コア・カリ
キュラム」
(2)心の教育の充実:青少年犯罪・非行の増加、ドラッグの蔓延
(3)学校の裁量権の拡大と保護者等の学校経営参加の促進
(4)教員の資質向上
アメリカ:教員免許状更新制度の厳格化及び免許状の専
門分化
イギリス:初任者に対する導入教育の強化
フランス:初等教育教員の資格引き上げ=中等教育教員
との同格化
フィンランド:教員養成期間を6年に統一
(備考)教育水準の低下に警鐘―「若年者雇用に関する大臣
会合」(OECD主催、2000年2月、イギリスで開催)
○イギリス:大人で読み書きができず、新聞を読むこともでき
ない者が700万人を数え、21世紀に予想される知識社
会への移行に大きな影を投げかけている。
○アメリカ:全米200万人の受刑者のうち4人に1人は青少年
であり、いまや刑務所は青少年の職業教育・訓練の最重
要の場の一つとなっている。高校の卒業率は5,6割であり
このような若者たちの能力と才能の浪費を何とかしなけ
ればならない。
○フランス:毎年大学の第1期課程(2年)を修了できず、落第
する者が半数近くに達している。彼らは若年失業者とな
って巷にあふれ、政治的不安要因となっている。
ダウンロード

教育原論Ⅱ