ミクロ経済学
(9)時間を通じた選択と金利
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2013年6月10日
異なる時点における選択

皆さんは,お母さんからお小遣いを前借りしたり,
友人にお金を貸したり,DVDレンタルを借りる

真央はアルバイトで5,000円を得た

明日は何もしない.明日のために今日得たこの所得
の一部を取っておくだろう

明日4,000円の買い物をする予定

今日の買い物を諦めなければならない
5,000-4,000=1,000

今日使えるのは1,000円だけ
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貯蓄
今得たお金を将来のために取っておく行為を貯蓄
という.英語で saving と言います
 貯蓄をすれば現在の消費は減る
 しかし,将来の消費は増える


つまり,現在の消費と将来の消費はトレードオフ
の関係にある

ブラックサンダーとうまい棒の選択で機会集合を
学んだ

予算制約線や時間制約線と同様にトレードオフを
図解できる
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3
明日の消費(円)
5000 C
4000
4000円貯蓄して
今日1000円消費
B
点 A から点
C に移動した
時
-1は今日の1円を増や
すには明日の1円を犠牲
にしなければならない
傾き=
5000-0
0-5000
=-1
A
1000
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所得を今日
すべて使う
今日の消費(円)
5000
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明日の消費(円)
点 B は今日と明日の消費
5000 C
4000
これは一種の
タンス預金です
B
貯蓄=4000=5000-1000
点 A は今日と明日の所得
点 A の消費は明日の消費は0
明日の
消費
A
1000
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今日の消費(円)
5000
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来年の消費(円)
1,00,000 C
800,000
今年と来年でも同様に考えられる
真央は今年100万円の所得を得た(点A)
しかし,来年は充電期間で所得0円
B
点 B の消費は今
年20万円,来年80
万円使う
点 A の消費は
所得を今年す
べて使う
A 今年の消費(円)
1,000,000
200,000
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貯蓄に利子が付く場合

現在と将来の間の選択にも予算制約線や機会集合
を考えることができる

ゆうちょ銀行や普通の銀行の口座

預けたお金は元々のお金,元本(がんぽん)という

元本に対して銀行は利子あるいは利息を支払う

最初に預けたお金は保障されるので元本と利子の
合計(元利合計)は増える
1. 100万円預けて利子が100円→1,000,100
2. 100万円預けて利子が2万円→1,020,000

有利さをどう測る?元本一円当たりの利子で測る
2013/6/10
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利子率
貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利子
利子率=
×100
元本
1. 100/1,000,000 × 100=0.01 (%)
2. 20,000/1,000,000 × 100=2 (%)
 預金者は利子率(金利)が高い方が有利
 金利は変動する
 現在(2013年)は低金利で0.03%
 1990年頃は7%だった

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複利

複利~前の期の元利合計に利子が付く

例:1万を年利3%の複利で預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 2年目:元本 10,000
利子 10,300×0.03=309
元利合計 10,300+309=10,609
 複利は利子が利子を生みだすお得な預金法
2013/6/10
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単利

単利~最初に預けた元本に毎期利子が付く

例:単利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
一年目は
複利と同じ
 2年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,300+300=10,600
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複利の
10,609 より
低い
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複利/2
利子率を英語で interest rateという
 利子率をrと略す
 元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 元利合計を r で表現してみよう
10,300=10,000+300=10,000+10,000×0.03
=10,000 × (1+0.03)= 10,000 × (1+r)
 便利な公式
元利合計=元本× (1+r)

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今年の所得100万円で利子率r

今年の所得100万円,来年の所得0円

利子率 r で貯蓄する.r は小数点表示

3%ならば r=0.03. パーセント表示は r × 100 %

今年所得をすべて貯蓄すれば来年は
100×(1+r)万円
の所得を得る

予算線はどう変わるだろうか?
2013/6/10
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来年の消費(万円) 今年と来年の所得と貯蓄
100(1+r) C
100
今年の所得を
すべて貯蓄(C)
B
点 A から
点 C に移
動した時
100(1+r)-0
傾き=
0-100
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
A
今年の消費(万円)
100
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利子がある場合の異なる時点の消費

予算線の傾きは –(1+r)になる

今年の所得をすべて消費は変わらない(A)

所得をすべて貯蓄の時に来年の消費(C)は
100(1+r)

利子率 r が上がれば消費可能な領域は増える

今年の消費と来年の消費のトレードオフは
1+r

現在消費を1円増やすには 1+r 円の来年消費を
減らさなければならない
2013/6/10
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利子がある場合の異時点間の消費
利子率の上昇により今年の消費に比べ来年の
消費は有利になる
 もっと貯蓄しよう.利子率上昇→貯蓄増加


ここまでの理解では今は低金利なので現在の
消費の方が有利
利子率は現在と将来の消費
のトレードオフを示す
貯蓄(savings)曲線は右上がりになる
 価格を利子率 r とする.貯蓄曲線を S とする

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資本市場の供給
利子率 r
S
貯蓄曲線 S
貯蓄曲線は資金の供給曲線
に等しい
r
資金量
S
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貯金と借入

真央が貯金をした際に銀行は真央が将来貯金を
引き出すときにお金を与えなければならない

今銀行に金が入り,後で出て行く

お金を借りる人は今お金が手に入り,そして後
で返済する.つまり後でお金が出ていく

貯蓄を受け入れる側はお金を借りている

将来の返済義務が生じることは借入を意味
2013/6/10
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借入

レンタルDVDを借りると最初にレンタル料金
を支払う.見終わったら返却する

レンタル料金が借金の利子(利息)
 来年所得を得るが今年は無一文.しかし,利
息5万円でお金が借りられる.今年100万円借
りたら返済額は?
105万円

100 + 5=105 (万円)

返済額=借入金+利子(利息)

今年100万円使うには来年105万円支払う必要
2013/6/10
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今年の所得0で来年100万円の所得

借入の有利さをどう測る?利子率即ち利息です
利子
借入利子率=
× 100
借入金額
借入金額100万円で利息5万円の借入利子率は
5/100 × 100 = 5 (%)
 利息=借入金額×借入利子率(小数点表示)
 100万円を利子率15%で借り入れたときの利
息はいくら?
 100×0.15=15 (万円)

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今年の所得0で来年100万円の所得/2

利率 rで100万円借りたときの返済額

返済額=借入金+利子(利息)
=100+100×r=100(1+r)
 今年全く無所得で来年100万円の所得を得る.借
り入れ利子率は預け入れ利子率と同じrとする

今年消費をするには借り入れをする

借入金額と利息の合計を来年支払う必要がある

来年全く消費しなければ今年いくら借りられる
 つまり,来年の所得を全て借金の返済に充てる
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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来年100万円の所得で最大限借りられる金額
100
万円
1+r
今年は 100/(1+r) 万円借り入れた
 来年の返済額は
100
×(1+r) =100 万円
1+r

となる.100万円は来年の所得に等しい
 借金によって予算制約線はどう変わるか?
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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来年の消費(万円)
Dの消費を
した時の借
金返済額
100
今年の負債と来年の所得
真央の所得
パターン
B点:来年の所得をすべて消費
E点:最大限の今年の消費
B
借入の
予算制約線
D
100-0
傾き=
0-100/(1+r)
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
今年の消費(万円)
E
100
1+r
2013/6/10
ミクロ経済学 9
100
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借金をした場合のトレードオフ

借金をした場合の予算制約線の傾きは –(1+r)

借金をして今年1円消費を増加させるには借金を
返すために来年の消費を 1+r 円減らす必要

借り入れ利子率が高くなるほど借金は不利

貯金も借金も利子率が関係.一種の価格の役割

預け入れと借り入れ利子率は通常異なる

貯蓄・借入の異時点間消費で利子率は機会費用の
役割.借入をする投資は利子率が上昇すると減る
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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資本市場の需要
利子率
r
I
投資曲線は資金の需要曲線に
等しい
r
投資曲線 I
資金量
I
2013/6/10
ミクロ経済学 9
24
資本市場の均衡
利子率 r
I
r*
他の事情は一定の場合の分析
貯蓄曲線 S と投資曲線 I
の交点で利子率が決定
貯蓄曲線 S
=資金供給曲線
均衡利子率は市場で決まる
I*=S*
2013/6/10
S
ミクロ経済学 9
投資曲線 I
=資金需要曲線
資金量
25
利子率はお金のレンタル価格

1プラス利子率は資金のレンタル価格

貯蓄者は今年の1円を貯蓄することによって,
来年の元利合計1+r円を要求する

借り手は今年の1円を増やすには借金と利息の
合計1+r円を将来支払う必要
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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借金で苦しむ人とデブ
借金で苦しんでいる人と肥満な人共通点
 どちらも現在たくさん消費している
 借金苦は現在の所得以上に消費

肥満人は体型維持の消費カロリー以上に食物
を摂取している
 どちらも我慢強さに問題
 低所得者層ほど肥満率が高い
 高所得者層ほど自分の健康に留意している

デブほど借金に苦しむらしいがどうすべきか―池田新介 プレジデント 2009年1.12号
米国の肥満率悪化 貧困層急増が影響か NPO調査
デブの帝国
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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今期の所得よりも支出したかったら
1.
新たに借金をする
2.
現在の貯蓄残高から引き出す

貯蓄と貯蓄残高(資産← 豚の貯金箱の中身)

借入と負債残高

ストックとフローの違いに注意

一定期間内の変化や起こったものの大きさ
をフローという

一時点に存在するものの大きさをストック
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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ストックとフロー
• お風呂に水を入れる,栓を抜いて排出
• 現在の浴槽のお湯の量がストック
• 流入と流出がフロー
フロー
水
ストック
フロー
2013/6/10
ミクロ経済学 9
29
ストックとフローから見た貯蓄と借金

昨年末貯金残高が100万円あった

今年は10万円新たに貯金した

今年の末には貯金残高はいくら? 110万円

貯蓄した=貯蓄残高が増える

昨年末ローン残高が50万円あった

今年新たに10万円銀行から借りた

今年末の借入残高はいくら?

借入する=借入残高が増える
2013/6/10
ミクロ経済学 9
60万円
30
ストックとフロー

貯蓄残高=ストック

貯蓄する=フロー

貯蓄残高から引き出す=フロー

負債残高=ストック

新たな借金や返済=フロー

今年の生産や所得 = フロー

消費や投資=フロー
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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資産から負債を差し引いた純資産

お母さんにお小遣いを前借り同時に友人に昼食代を
貸している

両親は家のローンが残っているが,もしものために
貯蓄がある

貯蓄をしているし同時に借入もしている
純資産=資産(貯蓄残高)-負債(借入残高)

どれだけ純資産があるかどうかが重要
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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貯蓄
今期の所得のうち消費しなかった残りの金額を
貯蓄という
 100万円の資産,今年10万円貯金
 前期末の貯蓄残高(資産)は今期の貯蓄分だけ増
えて今期末の貯蓄残高になる
100+10=110
 前期末の資産+今期の貯蓄=今期末の資産
 資産が増えれば貯蓄したことになる
 今期の貯蓄が負ならば資産を取り崩した
 ブタの貯金箱を割ってお金を使う

2013/6/10
ミクロ経済学 9
33
借入

あとで返す約束で他人からの金銭を自分で 使う
ことを借入という

50万円の借金,今年さらに10万円借りる

前期の借入残高(負債)は今期の借入分だけ増えて
今期の借入残高になる
50+10=60

前期の負債+今期の借入=今期の負債

今期の借入が負ならば借金を返済したこと

貯蓄と借入を行っている.貯蓄するか借金の返済
にまわすかも重要な意志決定
2013/6/10
ミクロ経済学 9
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2012年末,家計の金融資産・負債残高 : 出所 日本銀行
資金循環統計
億円
18,000,000
16,000,000
15,467,085
日本の家計の金融資産・負債
資産は1547兆円
資産
負債は353兆円
純資産は1193兆円
14,000,000
12,000,000
10,000,000
負債
8,000,000
6,000,000
3,533,571
4,000,000
2,000,000
0
2013/6/10
1
ミクロ経済学 9
35
億円
2012年末,非金融法人企業の金融資産・負債残高 : 出所 日
本銀行 資金循環統計
14,000,000
12,000,000
日本の企業の金融資産・負債
資産は841兆円
11,866,476
負債は1186兆円
純負債は346兆円
10,000,000
8,406,449
8,000,000
資産
負債
6,000,000
4,000,000
2,000,000
2013/6/10
0
ミクロ経済学 9
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家計は貯蓄主体

住宅ローンや自動車ローンがあるが預貯金を中
心に貯蓄が積み上がり資産が負債を上回る

1193兆円の金融純資産を持つ

誰かの貯蓄は誰かの借金

企業は借金主体である

346兆円の金融純負債を有す

家計の純資産-企業の純負債=
1193-346=847 (兆円) この差額はどこへ?
2013/6/10
ミクロ経済学 9
37
ダウンロード

第9回目 - 跡見学園