うつ病 と がん
世界精神医学会 “Depression and Cancer”
(Kissane D, Maj M, Sartorius N, eds. – Chichester: Wiley, 2010)
から抜粋
がん患者のうつ病(抑うつ)に関する疫学
• 長年にわたり多くのグループががん患者の抑うつについて調査してきた
が、その頻度は調査によりさまざまである (大うつ病3-38% ; 抑うつ関連
疾患1.5-52%)。
• がん種と抑うつには強い関連があり、抑うつの頻度は、脳腫瘍 (4193%)、膵がん(-50%)、頭頸頸部がん (-42%)、乳がん (4.5-37%)、婦
人科がん (23%)、肺がん (11%)と報告されている。
参考文献 Massie MJ et al. The prevalence of depression in people with cancer. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
がん患者の抑うつに関する疫学研究の方法学的問題
• 抑うつの頻度は研究によって幅広く異なる (抑うつの定義の違い、自記式の質問
紙を用いるか面接法を用いるか、がん種、がん治療の種類の違いによる)。
• がん患者における抑うつの評価は困難である。なぜなら抑うつは通常の悲しみ
からうつ病まで連続して認められるものであるからである。
• がん患者のうつ病を診断することは難しい。なぜならDSM-IVの診断基準には、
がん治療の副作用で認められる症状が含まれているからである (食欲不振、体
重減少、睡眠障害、倦怠感、気力低下、集中力困難、精神運動の制止)。
参考文献 Passik SD, Lowery AE. Recognition and screening of depression in people
with cancer. In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds).
Chichester: Wiley, 2010.
抑うつと意気喪失(demoralization)
がん患者の抑うつは、意気喪失(demoralization)と区別することが重要
である。うつ病においては全般的な喜びの喪失があるが、意気喪失におい
ては意気喪失の気分を紛らわすことができれば今を楽しむことができる。
意気喪失においては、どうすればよいのか分からず動けなくなり、自分で
はどうすることもできず無力だと感じる。一方、うつ病患者においては、何
かをやろうとする意欲や何かに打ち込む気持ちが持てず、適切な道筋やと
るべき行動が分かっていてもそれをすることができない。
参考文献 Massie MJ et al. The prevalence of depression in people with cancer. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
がん患者における抑うつ診断のバリア
• 腫瘍科では身体治療や治療に伴う副作用や痛みなどの諸症状のマネー
ジメントに重きをおかれがちである。気分や感情の問題は見過ごされたり
、がん患者であれば当然の症状としてみなされてしまう.
• 患者は気分や感情の問題のことを身体科の医師に相談したがらない。気
分や感情の問題を訴えることで、身体科の医師ががん治療を中断してし
まわないか不安感を抱き、患者自身もうつ病に対するネガティブな印象を
持っているのである。
参考文献 Passik SD, Lowery AE. Recognition and screening of depression in people
with cancer. In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds).
Chichester: Wiley, 2010.
がん患者における抑うつスクリーニングツールの有効性
評価尺度
項目数
研究数
症例数
がん患者への使用
可能性
信頼性
妥当性
評価
Distress
Thermometer
PHQ-9
1
15
4,088
検証済み
中
中
まあまあ
9
2
390
未検証
高
-
不明
BSI-18
18
4
10,749
検証済み
高
高
良
CES-D
20
4
1,002
検証済み
高
高
優
EPDS
10
4
470
高
中
良
HADS
14
41
10,203
緩和ケアにて検証
済み
検証済み
高
中
良
ZSDS
20
6
1,459
検証済み
高
中
不良
BDI
21
4
398
検証済み
高
高
優
GHQ-28
28
2
170
検証済み
高
高
優
Vodermaier et al. (J. Natl. Cancer Inst. 2009;101:1464-1488) のメタ解析データによる
PHQ-9, Patient Health Questionnaire-9; BSI-18, Brief Symptom Inventory-18; CES-D, Center for Epidemiological
Studies - Depression Scale; EPDS, Edinburgh Postnatal Depression Scale; HADS, Hospital Anxiety and
Depression Scale; ZSDS, Zung Self-Rating Depression Scale; BDI, Beck Depression Inventory; GHQ-28, General
Health Questionnaire-28.
参考文献 Passik SD, Lowery AE. Recognition and screening of depression in people with cancer.
In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
がんに対する情緒反応に関連する要因
がんに対する情緒反応を決定する要因として次の3つがある:
a) 病気に対する考え (例:挑戦と考えるか恐怖と考えるか)
b) コントロール感 (いくらかあるかまったくないか)
c) 今後の見通し (良いか悪いか).
参考文献 Clarke DM. Psychological adaptation, demoralization and depression in
people with cancer. In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds).
Chichester: Wiley, 2010.
がんに対する適応パターン
病気に対
する考え
コントロール感
今後の見通し
闘志
挑戦
いくらかコント
ロールできる
良い
逃避または
否認
ごく軽度の
脅威
不適切なコント
ロール感
良い
運命論的
あきらめ
軽度の
脅威
コントロール
不可能
不明
-平静に受容
悲観
大きな脅威
または失望
コントロール
不可能
どうしようもなく悪い
不安
大きな脅威
不明確な
コントロール感
不確定
Moorey and Grey (Psychological therapy for patients with cancer: a new approach. Washington:
American Psychiatric Press, 1989)から引用.
参考文献 Clarke DM. Psychological adaptation, demoralization and depression in people with
cancer. In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
がん患者のサイトカインと神経・行動学的症状
• 炎症性サイトカイン(TNF-alpha、IL-1およびIL-6を含む) は、大うつ病
と重複する兆候を示すsickness behaviour症候群(炎症などの免疫
反応が生じた際の食欲不振、倦怠感などの様々な行動変化)を引き起
こす。
• この症候群には、興味・喜びの消失、認知機能障害、不安/易刺激性、
精神運動緩慢、倦怠感、食欲不振、睡眠の変調、疼痛感覚の増加が含
まれる。
• 抑うつを伴うがん患者では炎症性サイトカイン濃度が上昇しており、そ
の程度はsickness behaviour症候群の症状と相関する。
参考文献 Musselman DL et al. Biology of depression and cytokines in cancer. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley,
2010.
抑うつはがん患者の生存に影響する
• 乳がん患者を5年間観察した研究によると、抑うつが重症の女性は生存
の可能性が有意に低かった(Watson et al., 1999)。
• 地域住民1万人以上を8年間観察した調査によると、抑うつのない患者
と比較し て 、 抑うつ を 伴うがん 患者の死 亡リスクは 有意に 高 かった
(Onitilo et al., 2006)。
• 治療アドヒアランスの悪さが、がん患者の生存と抑うつとの関連を仲介し
ており、抑うつを伴うがん患者では、より治療アドヒアランスが悪かった
(DiMatteo et al., 2000)。
参考文献 DiMatteo RM, Haskard-Zolnierek KB. Impact of depression on treatment
adherence and survival from cancer. In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M,
Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
抑うつが抗がん治療へのアドヒアランスに影響する経路
• がんの診断及び治療に関する情報を統合できない
• セルフケアへの動機が低下する;計画を立てることが困難となる
• 健康に関する否定的な信念があり、治療について悲観的である
• 健康を増進する行動を避ける
• 社会的に孤立し引きこもっている
• 地域社会資源の利用が減る
• 治療の副作用に耐えることがより困難となる
参考文献 DiMatteo RM, Haskard-Zolnierek KB. Impact of depression on treatment
adherence and survival from cancer. In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M,
Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
がん患者において、うつ病は自殺の危険性を高める
• がん患者は一般人 口の約2倍以上自殺しやすい (Rockett et al.,
2007)。
• うつ病は自殺者の半数以上に認められ、うつ病を患う患者は25倍自殺
の危険が高い (Breitbart et al., 2006)。
• がん患者の自殺の危険要因として、他者の負担になっていると感じるこ
と、自立性の低下、自分の死をコントロールしたいという願い、身体症
状、希望の無さ、実存的な懸念、社会的支援の欠如、将来への恐怖が挙
げられる (Hudson et al., 2006)。
参考文献 Breitbart W et al. Suicide and desire for hastened death in people with cancer.
In: Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley,
2010.
がん患者の自殺を評価する際のガイドライン- I
自分自身の反応に注意する
懸念を聞くことにオープンな姿勢でいる
寄与する要因を評価する
•
•
•
•
自分自身の反応が患者との話し合いにどのように影響するか知る
自分自身の態度や反応をモニターする
患者に対して肯定的な配慮を示す
スーパービジョンを受ける
•
•
•
•
•
•
•
•
情緒的な懸念について優しく尋ねる
言語および非言語的な苦痛の合図に注意する
気持ちを表現するように励ます
積極的に傾聴し、話を遮らない
患者の言葉で、希死念慮について話し合う
患者が悲しみ、沈黙し、涙する余地を与える
言語及び非言語的に共感を示す
病気に対する反応の多様性を認める
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
精神科既往歴
自殺企図歴
アルコール、物質乱用の既往歴
社会的支援の不足
負担になっているという気持ち
家族内の葛藤
更なる援助の必要性
抑うつ、不安
実存的な懸念、生きる意味や尊厳の消失、
認知機能障害
身体症状、特に疼痛
National Breast Cancer Centre and National Cancer Control Initiative Clinical Practice Guidelines (2003)および
Hudson et al. (Palliat. Med. 2006;200:703-710)を元に改変。
参考文献 Breitbart W et al. Suicide and desire for hastened death in people with cancer. In: Depression and
Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010。
がん患者の自殺を評価する際のガイドライン- II
特異的な問題への反応
•
•
•
•
患者や家族が抱いている恐怖や懸念を認める
修正可能な寄与因子に取り組む
介入を推奨する
より複雑な問題を扱うための計画を作成する
話し合いの結論を出す
•
•
•
•
•
重要なポイントを要約しレビューする
患者がどのように認識しているかを明確にする
質問の機会を提供する
他の人と話し合うことを促進するよう援助する
適切な紹介先を提供する
話し合いの後にすること
• カルテに話し合いの内容を記述する
• 治療チームの他のメンバーに伝達する
National Breast Cancer Centre and National Cancer Control Initiative Clinical Practice Guidelines (2003)および
Hudson et al. (Palliat. Med. 2006;200:703-710)を元に改変。
参考文献 Breitbart W et al. Suicide and desire for hastened death in people with cancer. In: Depression and
Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010。
がん患者に対する認知療法 - I
認知のかたより
事実にもとづいた対応(認知再構成)
破局視: “がんは間違いなく再発するだろう。絶望的な状 “主治医は予後が良いと言ってくれた。治せるがんで幸いだった。”
況だ。もうあきらめよう。”
拡大視: “この腰痛は、がんの再発だ。どうしよう。。。”
“庭いじりをしたせいだ。明日には腰痛はなくなっていることだろう。
来週まで続くようなら主治医に相談してみよう”
白黒思考: “がんが治らないならば、何をしたって意味が “がんが完治しないからといって、治療を受ければ何年かは命を延
ない”
ばせるだろう”
選択的注目: “抗がん剤の副作用でつらい思いをするの “抗がん剤は、がんの再発リスクをかなり減らしてくれるだろう。副
が心配だ”
作用があっても治療を受ける価値がある”
悲観主義、将来の先読み: “間違いなく、髪の毛が抜け
て、恋人に別れられてしまうだろう”
“医療用かつらのことを教えてもらった。新しいファッションを夫と楽
しもう。”
参考文献 Kissane DW et al. Psychotherapy for depression in cancer and palliative care. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
がん患者に対する認知療法 - II
認知のかたより
事実にもとづいた対応(認知再構成)
‘べき’思考: “なんでも、がんになる前と同じようにでき
ないといけない”, “もっとうまく対応すべきなのに”
“抗がん剤は軽度の貧血を生じ、だるさを起こすものだ。運動する
ことは筋力低下を予防する上で役立つが、頑張りすぎず、軽
い運動にとどめておくのが良い。”
レッテル貼り: “鎮痛薬に頼らないとならないなんて、私
はみじめで意気地なしだ”
“放射線療法は強い炎症を起こすので、処方された鎮痛薬を使う
のは理にかなったことだ。薬を使って、このつらい時期を乗り越え
よう”
個人化: “がんになって当然だ。自分のせいだ”
“がんは細胞の突然変異で起きるものだ。誰がかかってもおかしく
ないし。ストレスでがんになるというのは迷信だ。”
根拠のない決め付け: “気分がすぐに良くならないので
あれば、がんもよくならないに違いない”
“抗うつ薬が聞いてくるには何日かかかる。それまで辛抱が必要
だ。”
感情的推論: “なんだか調子が悪いので、この化学療
法中は仕事をちゃんとできていないに違いない”
“やっとの思いで仕事をしているのだけれど、周りの人が同じよう
にみているとは限らない。同僚は温かい目で接してくれている”
参考文献 Kissane DW et al. Psychotherapy for depression in cancer and palliative care. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
進行がん患者の抑うつへのCALM therapy
(Managing Cancer and Living Meaningfully) - I
モジュール
目標
治療者の役割
結果
症状マネージメントと医療従
事者とのコミュニケーション
医療従事者と協働しながら、
症状の体験を探り、治療と疾
病管理に患者が主体的にか
かわるよう支援する。
患者に対してバランスのとれ
た見方をし、患者とケア提供
者の間をつなぐ代弁者として
機能する。
症状緩和治療へのアドヒアラ
ンスの向上、チームワークの
向上、ケアの協働性の向上、
ケア目標の合意の明確化
自己と近親者との関係性の
変化
進行がんによってひきおこさ
れた、あらゆる自己感覚のダ
メージや、社会や近しい人間
関係の変化に対処する。
夫婦単位または家族単位で、
関係性のあり方について尋
ね、関係性のバランスの崩れ
を修復することを支援し、今
後予想される困難や課題に
取り組める準備を整える
ケアの目標に関してより良い
理解と合意を得られるように
する; 夫婦/家族間のコミュニ
ケーション・一体感・相互支援
を向上する
参考文献: Kissane DW et al. Psychotherapy for depression in cancer and palliative care. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
進行がん患者の抑うつへのCALM therapy - II
モジュール
目標
苦痛と進行性の疾患を目の
スピリチュアリティー、または、 前にした、スピリチュアル面
人生の意味と目的について の信念や、人生の意味と目
的を探る
治療者の役割
結果
ともすると自分がコントロール
可能な範囲を超えていると感
じられる状況に対する適応的
な対策として、人生の意味を
見出すための支援をすること
ができる
人生における優先事項と目
標の価値を認めたり、再評価
できるようになる;人生の終
末期という体験に対する積極
的なかかわりを増す
将来、希望、死について考え 予期不安/恐怖について尋ね、 死に関連するさまざまな不安 ケアに関して目標を共有でき
る
るようになる; 生きることと死
人生を終え死の準備をするこ が正常なものであるとする;
とに関してグループでディス 今後起こりうることと、今後の ぬことに関する課題のバラン
カッションする場を提供する 計画についてオープンにコ
スがとれるようになる
ミュニケーションできるよう支
援する
参考文献: Kissane DW et al. Psychotherapy for depression in cancer and palliative care. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
自殺念慮のある患者への介入
自殺念慮が深刻と思われる場合
自殺念慮が差し迫ってはおらず、医学的に安定して
いる場合
入院患者の場合
• 常時観察し、さらに詳細なアセスメントを行う
• 銃器や毒物などの危険な物品を部屋や自宅から除去する
• 自殺行動のリスクがあることを家族に伝える
• 気持ちがいっぱいいっぱいになった時には、医師に連絡し、自殺したい
気持ちにもとづいて行動を起こしてしまうのではなくて、その時の気持ち
について話してもらうよう、約束をしてもらう
• 自傷行為に使えるような手段がないよう、病室を調べる
• 自殺念慮がある間は常時観察下におく
• 精神科入院の必要が必要(任意入院 または 医療保護/措置入院)
自殺念慮が深刻であるが、それが身体的状況や薬
• 精神科入院に向けた支援をする。自殺の危機に対する評価・判断と措
物によって急激に引き起こされたのではない場合
置について記載する。
以下より引用: Holland et al. (eds). Quick reference for oncology clinicians. Charlottsville: IPOS Press, 2006.
参考文献: Breitbart W et al. Suicide and desire for hastened death in people with cancer. In: Depression and
Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
抗うつ薬とがん患者における使用 - I
分類
作用
三環系抗うつ薬
セロトニンとノルアドレナリン
(例 アミトリプチリン、イミプラ の再取り込み阻害
ミン、desipramine、クロミプ
ラミン)
抗コリン
選択的セロトニン再取り込み
阻害薬(fluoxetine, フルボキ
サミン, パロキセチン, サート
ラリン, citalopram,
escitalopram)
副作用
(有害な可能性のあるもの)
鎮痛作用
便秘、口渇、尿閉、記憶障害、
眠気
抗ノルアドレナリンα1
起立性低血圧、めまい、反
射性頻脈、低血圧
性機能障害 (5-HT2A)
がん患者への使用
抗コリン作用のリスク
のため、通常は使われ
ない。必要な際には慎
重に使用すること。
睡眠改善
抗ヒスタミン
セロトニン再取り込み阻害
副作用
(有益な可能性のあるもの)
鎮静作用が強いもの (例
消化器症状 (嘔気、嘔吐、下 citalopram) もある
痢) (5HT3)
通常よく用いられる。
例外は、フルボキサミ
ン (肝CYP代謝酵素と
高率に相互作用)、パ
ロキセチン(タモキシ
フェンの作用を減弱す
る報告あり)
参考文献 Grassi L et al. Pharmacotherapy of depression in people with cancer. In: Depression and Cancer.
Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
2011年2月現在、日本で市販されている薬剤をカタカナで、
市販されていない薬剤をアルファベットで記載した。
抗うつ薬とがん患者における使用 - II
分類
選択的ノルアドレナリン再取
り込み阻害薬
(例 reboxetine)
作用
ノルアドレナリン再取り込み
阻害
副作用
(有害な可能性のあるもの)
血圧低下、めまい
副作用
(有益な可能性のあるもの)
がん患者への使用
意欲と認知機能の改善
ルーチンには使われな
い
口渇・尿閉の可能性
軽度の抗コリン作用
選択的セロトニン・ノルアドレ セロトニンとノルアドレナリン
ナリン再取り込み阻害薬 (例 再取り込み阻害
venlafaxine, desvenlafaxine,
デュロキセチン, ミルナシプラ
ン)
高血圧の可能性
鎮痛効果
使用頻度が相対的に
多い
選択的ドパミン・ノルアドレナ
リン再取り込み阻害薬 (例
bupropion)
不安
注意と集中力の向上
精神運動性興奮
倦怠感軽減の可能性
進行がん患者や倦怠
感を有する患者に若干
データあり。けいれん
のリスクをチェックする
こと
ドパミンとノルアドレナリン再
取り込み阻害
参考文献 Grassi L et al. Pharmacotherapy of depression in people with cancer. In: Depression and Cancer.
Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
2011年2月現在、日本で市販されている薬剤をカタカナで、
市販されていない薬剤をアルファベットで記載した。
がん患者における抗うつ薬とその使用 - III
分類
作用
ノルアドレナリン作動性・得的 セロトニンとノルアドレナリン
セロトニン作動性抗うつ薬 ( の活動を増強する
例:ミルタザピン)
抗ヒスタミン作用を有する
セロトニン拮抗・再取り込み
阻害薬 (トラゾドン,
Nefazodone)
副作用
(有害な可能性のあるもの)
食欲増進・体重増加
眠気 (不眠の患者には有益)
がん患者への使用
使用頻度が高い。
白血球減少症(稀)の
可能性に注意する
眠気
セロトニンの活動を増強
精神刺激薬 (dextroドパミンの活動を増強
amphetamine, メチルフェニ
デート,dexmethylphenidate,
モダフィニル)
副作用
(有益な可能性のあるもの)
睡眠に作用
疼痛への有効性の報告あり
落ち着かなさ、焦燥、不眠、 即効性
悪夢、精神病症状、食思不 鎮痛効果
振、不整脈、頻脈、高血圧、
耐性、依存性、けいれん
かつてよく使われた。
Nefazodoneは肝毒性
の可能性あり
終末期患者に特に使
われる
参考文献 Grassi L et al. Pharmacotherapy of depression in people with cancer. In: Depression and Cancer.
Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
2011年2月現在、日本で市販されている薬剤をカタカナで、
市販されていない薬剤をアルファベットで記載した。
がん患者に抗うつ薬を使用する際のガイドライン
• 低用量から開始して、時間をかけて増量し、個別に適切な反応を得られるようにする (低用量から開始
することで、特に身体状況の悪い患者において、無用な初期副作用を避けることができる)。
• 早期脱落を避けるために、抗うつ薬開始から効果発現までに時間がかかることと、起こりうる副作用に
ついて、十分に患者に説明し、安心を与えること。これは、患者が他の薬剤を服用しているときには特
に重要である。
• うつ病の再燃や、寛解後の再発を避けるために、4-6ヶ月は抗うつ薬投与を続けること。
• 患者の身体変化やがん関連の併用薬を定期的にモニタリングすること (例:ステロイド、制吐薬、抗生
物質、抗エストロゲン薬、抗がん剤)。
• 抗うつ薬中止の際は、離脱症状のリスクを減らすために、2-3週間かけて50%ずつ漸減する。抗うつ
薬の離脱症状は、患者にとって苦痛であり、がん関連症状や、うつ病の再発と誤診されることがある。
• がん治療場面においては、十分な患者教育と安心の提供がきわめて重要である。
参考文献 Grassi L et al. Pharmacotherapy of depression in people with cancer. In:
Depression and Cancer. Kissane D, Maj M, Sartorius N (eds). Chichester: Wiley, 2010.
謝辞
この要約は、身体疾患を有する人におけるうつ病の有病率と予後との関連ついての
普及啓発を目的とした、世界精神医学会(WPA)の教育プログラムである。 このプ
ログラムに支援くださったLugli財団、イタリア生物学的精神医学会、Eli-Lilly、
Bristol-Myers Squibbに謝意を表する。 また、本要約の作成に支援いただいた
Dr. Andrea Fiorillo(イタリア、ナポリ)に感謝する。
日本語版翻訳者:藤澤大介、横尾実乃里(以上、国立がん研究センター東病院)、
稲垣正俊(国立精神・神経医療研究センター)
ダウンロード

Kissane D, Maj M, Sartorius N, eds. – Chichester: Wiley, 2010