オピニオン
特集
無機質な告知・報告を脱し
喜びや感謝が伝わる発信を
も あ る が、ま ず は
オープンな姿勢を示
すことが大事ではな
強みとリスクは
表裏一体の関係
いか。大学は、ソー
ソーシャルメディアの危険性は、炎
シャルメディア上で
上だけではない。ソーシャルメディア
のユーザーの行動を
は、投稿や「いいね!」
、プロフィー
コントロールできな
ルなどの情報を通じて、継続的に個人
いないことに、高校生も社会も気がつ
いことを念頭に置く
情報を収集する。グーグルの検索で
前澤 太郎
いている。どのような教育を行い、
必要がある。
は、利用者の検索履歴、投稿内容、閲
「グローバル社会で取り替えのきかな
活発な書き込みが
覧履歴によって異なる結果を表示する
ある大学では不適切
が、フェイスブックの広告表示も同様
まえざわ・たろう
う教育内容、大学の力を知りたがって
な内容も見受けられ
である。
1967年生まれ。中央工学校建築設計科卒業。建築設計事務所勤務
を経て独立。大学、専門学校、中学・高校等のウェブサイト制作、ソー
シャルメディア設計に従事。技術者、制作者の立場からソーシャルメ
ディアのコンサルティングも実施。
いる。そんな情報は大学案内や公式サ
(株)
リピート代表取締役
いどんな人材を育てているのか」とい
ブログのシェアによって学生の活動を伝える和歌山大学のフェイスブックページ
告ではなく、
「卒業式での喜び」
「交流
ると聞くが、対話を深めることこそが
フェイスブックのアプリを利用すれ
イトからは得にくく、友達やその友達
戦敗戦の悔しさ」
「退官する教員への
ソーシャルメディアの力である。放送
ば、ペ ー ジ に「い い ね!」し た ユ ー
とのつながり、すなわちソーシャルメ
感謝」
「懐かしさ」など、読んだ人の
大学の岡部洋一学長は、ツイッターや
ザーが誰で、その後どのような投稿を
ディアの情報こそが信頼できると考え
共感、共有を呼び起こす投稿が必要
フェイスブックでネガティブなコメン
したかという情報を収集することもで
ている。
だ。文字だけよりも写真、印象を残す
トにも真摯な姿勢で応じ、共感を呼ん
きる。大学が無自覚なまま、相手の了
ソーシャルメディアのユーザーは、
ソーシャルメディアには、距離や肩
短い動画などがより有効だろう。
でいる。
解なく個人情報を集めるメディアとい
極端な言い方をすれば、その大学には
書きを超えた関係を築く力がある。高
大学による一人称の発信だけでな
とは言っても、大学の公式フェイス
えるのだ。高校生を主な対象とするコ
何の興味もない。彼らには、共感を軸
校生がフェイスブック上で大学の学長
く、他大学との連携プログラムをその
ブック等では一定の投稿制限をかけ、
ミュニケーションに活用する以上、特
「来年、絶対、関学にいきます。その
に誰かとつながりたいという欲求があ
や教員の投稿を見て、気軽に「いい
大学の視点から伝えてもらったり、学
個人情報は削除する必要がある。その
に慎重に扱う必要がある。
ためにも、今死ぬ気でがんばります」
るだけだ。友達が何に興味を持ってい
ね!」をして友達になることもできる。
生個人やゼミのブログ、ツイッターと
ための基準として、マニュアルやガイ
この種のアプリを導入している大学
これは、関西学院大学のフェイス
るか知りたいし、その興味を分かち合
そのつながりを通して、大学案内や公
連動させるなど、さまざまな角度から
ドラインが意味を持つ。
はまだわずかだが、ソーシャルメディ
ブックページで、キャンパスの空撮写
いたいと思っている。
式サイトには出ていないリアルな情報
情報を発信したりすることによって、
炎上やトラブルのリスクはゼロには
アの強みとリスクは表裏一体であり、
真に対して書き込まれた高校生のコメ
そんなユーザーに対してなすべき大
を得ることも可能だ。すなわち高校生
大学のリアルな姿を伝えることができ
できず、だからこそ一定のルールとコ
そのことを十分に理解したうえで新し
ントだ。この高校生は、美しいキャン
学の情報発信とは、自学に関連したい
が、学校の進路指導担当者のあずかり
る。和歌山大学のフェイスブックは、
ントロールは必要だ。ソーシャルメ
いメディアとして活用してほしい。
パスに共感し、
「この大学に絶対入り
くつもの話題の「島」をソーシャルメ
知らぬところで大学とつながり、情報
学生が学びの中で感じたことを公式ブ
ディアを利用した情報発信にあたって
ソーシャルなコミュニティーを通し
たい」という思いが強くなったのでは
ディアの世界につくり、ユーザーがそ
を得て「自分にとって共感できるいい
ログに投稿し、それをフェイスブック
は、誰がどのように発信するのか、そ
て情報が流通する今日、大学は真の存
ないか。このコメントはフェイスブッ
れぞれの興味・共感の橋をかけて渡っ
大学」と出合うことができてしまう。
ページでシェアするという形で、これ
の責任と範囲については学内で共有し
在意義を問われている。想像してみて
クやツイッターを通じて友達にシェア
てくるのを待つことだ。うまく島を置
であれば、大学が、高校生や社会と
を実践している。
なくてはいけない。学生の発言内容だ
ほしい。もし、入試がなく、どこでも
(共有)されたはずだ。それによって
くことができれば、それらが橋でつな
の間でソーシャルメディアという接点
共感した気持ちを「いいね!」だけ
けでなく、教員・職員の発言について
希望する大学に入学でき、大学が保証
彼女の友達もこの大学に興味を持った
がって、
「この大学のことをもっと知
を持たないことは、自ら出合いの扉を
でなくコメントとして書き込んでもら
も検討する必要があり、学内での議論
する水準の成績を修めた者だけが卒業
かもしれない。
りたい」という関心を生み出し、大学
閉ざすことにほかならない。
うことにより、大学が発信したメッ
を経たガイドラインの作成が求められ
できる社会だったとしたら…。人々は
このように、共感を呼び起こし、共
の公式サイトにたぐり寄せることがで
セージがソーシャルのネットワークに
る。
本当に学びたいことを学べる大学を選
有されることによって発言が広がる点
きるだろう。
乗りやすくなる。そのためには、緩や
ガイドラインを作ってもリスクをゼ
ぶはずだ。そこでは、入試難易度には
かでオープンなコミュニティーにしな
ロにはできない。トラブルを起こさな
何の意味もない。企業も、大学名で採
進路指導を介さない
ダイレクトな情報収集
多様な情報とのリンクで
大学をリアルに伝える
いといけない。炎上を心配してコメン
いために、また、起きてしまった時に
用するのではなく、真の実力を持つ者
では、大学はソーシャルメディアで
トを書き込めない設定にする大学も多
適切に対処するためには、結局は大学
を採用する。
どんな発信をすればいいのか。
いが、それではソーシャルメディアの
とそこに属する人の誠実な姿勢が問わ
貴学はどんな学生を育てて社会に送
いことだけを発信する使い方がめだ
ソーシャルメディア時代において、
学生の活動紹介、研究室の取り組
能力を半減させてしまう。
れる。それはリアルな社会でも同じは
り出す力があるのか。ソーシャルメ
つ。従来のステークホルダーに対する
大学選びが変わろうとしている。美辞
み、大学の長い歴史の一断面、地域と
自由に書き込みをさせても、大きな
ずだ。誠実な姿勢でソーシャルメディ
ディアでも、その答えにたどり着いて
情報発信と同じ発想では、ソーシャル
麗句を並べた広告や入試難易度という
のかかわり合いなど、公式サイトと同
問題が起きるケースはそう多くない。
アのコミュニティーを生き、自学の真
もらえるような情報を発信すべきなの
指標が、大学の真の「実力」を伝えて
じことを伝えるにも、単なる告知や報
そもそも書き込みが少ないということ
の良さを語りかけるしかない。
だ。
公式サイトと同様の
発信からの脱却を
がソーシャルメディアの特徴だが、そ
の本質をうまく生かした大学の活用例
はまだ少ない。公式ウェブサイトと同
様のイベント告知など、自学の言いた
メディアの可能性を狭めてしまう。
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ソーシャルメディア活用に一歩踏み出す
2012 8-9 月号
2012 8-9 月号
11
ダウンロード

無機質な告知・報告を脱し 喜びや感謝が伝わる発信を