戦略
東京の木
「多摩産材」
の利用拡大
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戦略3
東京の木「多摩産材」の利用拡大
木材の安定的な利用は、森林の循環を支え、多面的機能の持続的な発揮や林業振興の
ほか、木材産業を活性化させ、雇用の創出にもつながることから、公共利用の推進と都
民への積極的なPRを通じて多摩産材の利用拡大を図ります。
その際には、木材の優れた特性や良さをわかりやすく情報発信することが必要ですが、
現状では、木材利用が森林の伐採による自然破壊につながると否定的な意識を持つ都民
もいることから、木材を利用する意義についても積極的なPRを進めます。
東京の木「多摩産材」の利用拡大に向けた基本的な考え方
◎
PR効果の高い公共施設における多摩産材の利用を拡大します。
◎
子供たちが木を身近に感じられるように、小中学校や幼稚園・保育園等での
積極的な多摩産材の利用を図ります。
◎
多摩産材の住宅利用を推進するとともに、木の特性を活かした多様な木材利
用を進め、総合的な民間需要の拡大を図ります。
◎
木の持つ良さや、木材を利用する意義等について積極的なPRを進めます。
◎
既存の製材加工部門も十分に活用しながら、利用者の要望に確実に応えられ
る供給体制の整備と品質向上を図ります。
多摩産材����
森林所有者や素材生産業者、製材業者等で構成される多摩産材
認証協議会が、多摩地域で生育し、適正に管理された森林から生
産される木材の産地を証明します。認証材には、製材所からの出
荷時に認証書類とシールが添付されます。
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48 森づくり推進プラン
森づくり推進プラン
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都立総合芸術高等学校(新宿区)
【心と体の健康を支える木の空間】
木材は、柔らかで温かみのある感触を有するととも
に、快適性を高めるなどの優れた性質を備えています。
特に、学校施設において適所に木材を使用することによ
り、温かみと潤いのある教育環境が期待できます。
【校舎の内装木質化等による心理・情緒・健康面への効果】
・子供たちのストレスを緩和させ、授業での集中力を増す効果があります。
・冬季のインフルエンザによる学級閉鎖率が低く、インフルエンザの蔓延が抑制される
傾向があります。
・木質の床は、歩行時の衝撃を適度に吸収し、転倒時の怪我の低減にもつながります。
出典:「こうやって作る木の学校~木材利用の進め方のポイント、工夫事例~」(文部科学省・農林水産省)
高齢者福祉施設で行われた調査では、木材を多く使用している施設の方が、インフ
ルエンザや転倒による骨折、不眠などの発生率が低いという結果が出ています。
対入居定員比(%)
特別養護老人ホーム入居者を対象とした、
入居者の心身不調の内容
木材使用が多
木材使用が少
インフルエンザ罹患者
16.2
21.4
転倒により骨折等をした入居者
8.0
12.1
不眠を訴えている入居者
2.4
5.3
施設の木材使用度別の心身不調出現率
出典:「福祉施設内装材等効果検討委員
会報告書」(全国社会福祉協議会)
【快適な住環境を提供します】
木材は、コンクリートなどに比べて高い断熱性を有してお
り、木材、ビニールタイル、コンクリートを床材にして、足
の甲の皮膚における温度変化を測定すると、コンクリートが
最も冷え、木材が最も冷えなかったという報告があります。
さらに、木材の香りはストレスをやわらげ、心身をリラッ
クスさせる効果もあります。
【調湿効果】
木材は、空気中の湿度が高いときは水分を吸収し、湿度が
低いときは水分を放出する性質があります。例えば、建物の
内装などに木材を多く使うと、調湿効果で部屋内の湿度の変
動が小さくなります。
森づくり推進プラン 49
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森づくり推進プラン
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取組方針
公共施設は不特定多数の都民が訪れるため、そこで多摩産材を利用することは、多く
の人が目にするほか、実際に木材に触れることができるなどPR効果が非常に高いと言
えます。そこで、都民に木の良さと多摩産材を幅広くPRするため、公共利用の一層の
拡大に取り組みます。
具体的取組
○
都の率先利用
・「東京都公共建築物等における多摩産材利用推進方針」に基づき、都が整備する学校
や住宅、公園などの建設や増改築の際は、内装や什器等に多摩産材を率先して利用し、
都民が多摩産材に接する機会を増やします。
・治山・林道工事では、多摩地域だけでなく、島しょ地域でも積極的に多摩産材を利用
します。
・2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の関連施設の整備において、多
摩産材の利用を検討していきます。
○
区市町村による利用拡大
・区市町村に対し、多摩産材利用事例の紹介などの働きかけや木の特性のPRを積極的
に行い、多摩産材を利用する意義を理解してもらうとともに、区市町村による独自の
木材利用推進方針の策定を促します。
・公園や公民館など、生活に身近な施設での利用拡大を図るため、多摩産材を取り扱っ
ている業者や規格、納期等の多摩産材の調達に関する情報提供により、区市町村の取
組を支援します。
○
子供たちが利用する施設での積極的な多摩産材利用
・子供たちに木を身近に感じてもらうため、小中学校や幼稚園・保育園等において、内
装や什器、遊具などに積極的に多摩産材が利用されるよう、整備主体である民間事業
体の取組を支援します。
・内装を木質化した学校等において、調湿効果など
木の特性について検証や知見の収集を進めるとと
もに、木の良さを積極的にPRし、多摩産材の利
用を促進します。
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50 森づくり推進プラン
森づくり推進プラン
〈多摩産材の遊具〉
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上野恩賜公園内カフェ(台東区)
都立高校図書室(足立区)
市役所ロビー(立川市)
首都大学東京南大沢キャンパス(八王子市)
スポーツ広場クラブハウス棟(新島村)
図書館(神津島村)
都は、治山・林道工事において多摩産材の積極的な利用に取り組んでいます。
浸食を防止する床固工(三宅村)
林道の丸太法面保護工(奥多摩町)
森づくり推進プラン 51
森づくり推進プラン
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取組方針
現在、多摩産材の多くは住宅用の建築資材として利用されているため、民間住宅への
利用を一層進めるとともに、木の特性を活かした多様な製品化などにより、潜在的なニ
ーズの開拓に取り組んでいきます。
また、民間需要の拡大には認知度の向上が必要であることから、より効果的なPR手
法を構築して認知度の向上を図り、需要拡大につなげます。
具体的取組
○
住宅での優先的な多摩産材利用の推進
・大学や建築関係団体等と連携して、都内の設計事務所や工務店向けに、木材利用の知
識を習得する機会の提供を検討し、新築時の柱や梁等の構造材に加え、内装材やリフ
ォーム等で優先的に多摩産材が選択されるよう普及を図ります。
・既存の多摩産材モデルハウスを活用するほか、多摩産材を利用した住宅の設計コンク
ールの開催などを検討し、PRを強化して住宅利用の拡大につなげます。
○
製品開発の推進
・企業や研究機関等の多様な主体との連携により、実用化が期待できる多摩産材を利用
した製品開発を推進し、多様な木材利用につなげます。
・製品化に当たっては、木材の様々な特性や良さをきめ細かくPRするとともに、デザ
イナーなど異業種との連携により、付加価値の向上を図ります。
○
木質バイオマスエネルギーの地産地消
・民間事業体等と連携し、木質バイオマスの普及を図るとともに、未利用材を活用した
地域内における木質バイオマスの熱利用など、エネルギーの地産地消を進めます。
・長期的かつ様々な視点から、木質バイオマスの発電利用を検討していきます。
〈無垢の多摩産材を用いた住宅〉
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52 森づくり推進プラン
森づくり推進プラン
〈レストランの内装とテーブルに利用〉
○
企業と連携したPR
・イベントでの共同ブースの出展など、「企業の森」や「とうきょう森づくり貢献認証
制度」の参加企業等と連携したPRを実施します。
○
様々な機会を活用した多摩産材利用拡大PR
・イベントや広報など、あらゆる機会や媒体を活用した多摩産材利用促進キャンペーン
等を展開します。
・現地見学会や製品展示会など、多摩産材を利用した住宅の建築や、製品を作成してい
る団体の普及啓発活動に対して支援します。
木と暮らしのふれあい展
(江東区:都立木場公園)
とうきょうの森と木のエキシビジョン
(立川市:国営昭和記念公園)
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都は、多摩産材の普及及び利用拡大のため、魅力的な製品開発などの提案を募集し、
効果的な取組に対して支援しています。
〈露出機会の多い場で多摩産材製品をアピール〉
イベントや会見等で使用する演台がスタイリ
ッシュなデザインで制作されました。多くの人の
目に触れることで、多摩産材の認知度向上を図り
ます。
〈木を活かした生活、エコ生活の提案〉
職人の技術を活かした障子、衝立等の建具が
製作されました。暮らしに木を取り入れてもら
い、高品質な木材の需要を目指します。
森づくり推進プラン
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森づくり推進プラン 53
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森林や樹木に由来する木質資源のことで、未利用の間伐材や、枝、葉などの林地残材、
製材所から発生する樹皮や端材など様々なものがあります。
木材の燃焼時に排出される二酸化炭素(CO2)は、木の生長過程で大気中のCO2を
吸収・蓄積したものであり、燃焼しても大気中のCO2は増えず、石油等の化石燃料の
代わりに木材を利用することは、化石燃料に由来するCO2の排出削減につながります。
【木質バイオマス利用事例】
奥多摩町と檜原村では、平成 24 年より町村内の温泉施設の燃料として、灯油の代わ
りに木質バイオマスを利用しています。地域の森林資源の有効利用に加え、灯油の消費
量及びCO2排出量の削減にもつながっています。
〈細片化されたチップ〉
● 奥多摩温泉もえぎの湯
スギ花粉発生源対策の主伐事業で伐採した木材のうち、建築
用材に適さない細い丸太などから製造されたチップを、(公財)
東京都農林水産振興財団から購入し、燃料としています。
〈木材チッパー(破砕機)によりチップ製造〉
〈貯湯タンク(左)と 300kW のチップボイラー〉
● 檜原温泉センター数馬の湯
〈乾燥中の薪〉
村内の森林から搬出された丸太を薪に加工し、約半年間乾燥
させてから燃料としています。薪燃料製造施設の運営は地元シ
ルバー人材センターに委託され、雇用の創出にもつながってい
ます。
〈村内の薪燃料製造施設にて丸太を加工〉
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森づくり推進プラン
〈80kW の薪ボイラーを 2 基設置〉
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取組方針
多摩産材の利用拡大を図るため、乾燥の度合いなど製材品の品質向上に向けた取組を
進めるとともに、製材品のほか、合板などの製品について、納期や量、規格など、利用
者のニーズに応える供給ができる体制を構築します。
具体的取組
○
情報提供窓口の設置
・工務店等の工事事業者などが、多摩産材を円滑に調達できるよう、調達時の利便性や
品質の向上を図るため、多摩産材に関する情報を一元的に管理し、利用者と供給者を
コーディネートする機能を持った情報提供窓口を設置します。
○
新たな供給体制の構築
・供給能力を向上させるため、多摩地域の製材所を活用した地域内連携や、近県の製材
業者や合板業者等との広域的な連携など、新たな供給体制の構築について検討します。
・製品別の追跡調査などにより、製材から流通までのコスト削減を検証します。
○
品質及び供給能力向上への支援
・供給能力や品質の向上に資する製材機械や乾燥施設の導入を支援します。
・産地認証に加えて品質の認証など、多摩産材認証制度の拡充を検討します。
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本協議会は、多摩産材を使用した住まいづくりを通じて、安全で安心できる居住環境
の実現と、持続的な森林資源の構築、循環型社会への寄与を目的に、製材所、工務店、
設計事務所、市町村等を会員とし、都が事務局となって
平成 13 年に設立された任意団体です。
〈都庁舎内での展示〉
【各種PRイベントの開催】
多摩産材を使用した家づくりを促進するため、
各種イベントを開催しています。
【優遇融資制度】
協議会が民間金融機関や西多摩地域の地元自治体と連携し、建て主が多摩産材を住
宅に使用した場合、住宅ローンの金利について標準金利よりも優遇を受けることがで
きます。
森づくり推進プラン 55
森づくり推進プラン
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取組方針
子供のころから木に触れ、木を知る木育活動は、子供たちの発育に良い影響を与える
ほか、保護者や教職員等にも、木の良さなどをPRすることができます。
そのため、森林・林業の役割や木材を利用する意義、木の良さについて、子供たちを
中心として、都民に対して幅広くPRする木育活動を積極的に展開します。
具体的取組
○
子供たちが利用する施設での積極的な多摩産材利用(再掲 P50)
・子供たちに木を身近に感じてもらうため、小中学校や幼稚園・保育園等において、内
装や什器、遊具などに積極的に多摩産材が利用されるよう、整備主体である民間事業
体の取組を支援します。
・内装を木質化した学校等において、調湿効果など木の特性について検証や知見の収集
を進めるとともに、木の良さを積極的にPRし、多摩産材の利用を促進します。
○
小学校等への出前講座
・区市町村や大学等の教育機関、NPOなど多様な主体と連携して、小学校等で出前講
座を開催し、森林・林業の役割や木材の利用意義などについて普及を図ります。
・森林や林業の役割などをわかりやすく学べる、授業で活用できる教材を作成します。
○
木とふれあう機会の提供
・未就学児が身近な遊び等から木の良さを体験するほか、小中学生向けの木工・工作コ
ンクールの実施等を検討し、子供たちが木とふれあう機会を設けます。
○
都市部の子供たちによる森林体験
・森林が身近にない都市部の子供たちが、実際に森林を訪れ、実体験として森林を学べ
るように、安全な森林体験が可能な場所や機会を提供し、子育て世代等に木育活動へ
の積極的な参加を呼びかけます。
多摩産材で内装木質化された小学校(中央区)
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森づくり推進プラン
多摩産材を用いた保育園の遊具(練馬区)
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子供から大人までを対象に、木材や木製品とのふれあいを通じて、木への親しみや木
の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学んでもらうための活動です。
● 未就学児向け施設での多摩産材利用
【東京おもちゃ美術館(新宿区)
】
〈赤ちゃん木育広場〉
〈木のトンネル(廊下)〉 〈おむつ替えコーナー〉
【二俣尾保育園(青梅市)
】
〈ロッカー〉
〈木のぬくもりが感じられる保育室〉
〈トイレの間仕切り〉
● 小学校の総合的な学習の時間
〈出前講座にて森林の役割を解説〉
〈丸太切り体験〉
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森づくり推進プラン
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