観測的宇宙論
第7回: 最初の星
今井 裕
(鹿児島大学大学院理工学研究科物理・宇宙専攻)
今日の内容
• 星形成の素過程
– 前回+「星の進化と宇宙」、「銀河天文学」参照
• 第一世代の星: 超大質量星
– 初期宇宙ガスの性質: 放射冷却の重要性
※ガンマ線バースト: 第10回講義参照
• 古い星を探す:
– 球状星団: 年齢測定、 空間分布の特徴
– 高速度星で測定された元素組成
参考文献: シリーズ現代の天文学
3巻:宇宙論II ―宇宙の進化― 6巻:星間物質と星形成
7巻:恒星
星形成の素過程 (1/3)
• 星間ガスからの重力収縮: 「ジーンズ不安定性」
– ジーンズ質量より重いガス塊のみ収縮
  1 2
P
P0
4
3
2
J  
c
,
c



,
M


 s
s
J
J 0

0
3
G0 
– 等温収縮: 放射冷却がなければ不可能
• 比較的低密度(光学的に薄い): 電波・赤外線輝線放射

• 充分高密度(光学的に厚い): 黒体放射
※「光学的厚み」: 「天体観測実習」等を参照のこと
• 中心部で光学的に非常に厚くなる=断熱的になる
第一コアの形成=原始星誕生
• 中心部温度の上昇: 電離が始まる
第二コアの形成
星形成の素過程 (2/3)
• 星形成における冷却過程の重要性
– 星間ガス収縮⇒重力エネルギー解放
– 解放された重力エネルギー = 放射エネルギー(冷却)の場合
⇒ガス収縮が進む
– 解放された重力エネルギー > 放射エネルギーの場合
⇒ガス塊内部の温度上昇⇒ガス塊内部の圧力上昇
⇒Jeans mass の上昇 ⇒ガス塊収縮の抑制
• 様々な星間ガス冷却機構
– 熱伝導: 粒子間衝突によるエネルギー交換
– 放射冷却: 電磁波によるエネルギー解放
•
•
原子・分子における線スペクトル放射
高密度原子・分子塊及び星間塵(炭素系=graphite, 珪素系=silicate)に
おける熱(黒体)放射
星形成の素過程 (3/3)
• 進化の速度
∝自由落下時間尺度
(第6回講義参照))
• 主系列星への道筋
ヘニエ・トラック(大質量星)
放射平衡
林・トラック(中小質量星)
対流平衡:
物質循環によるエネルギー消費
• 主系列星段階の熱核融合
– CNO cycle (大質量星)
– p-p chain (中小質量星)
15 Msun 6x104yr
9 Msun 1.5x105yr
5 Msun 6x105yr
3 Msun 2.5x106yrs
1.5 Msun 1.8x107yr
1 Msun 5x107yr
1.5 Msun 0.5x108yr
第一世代の星: 超大質量星
• 超大質量星
– 100太陽質量以上
– 106太陽光度以上
– 寿命は105年未満
銀河系中に数個似たもの
(~100Msun)
@銀河系中心星団
初期宇宙のものとは
形成機構が全く異なる
種族III: 現存しない
• 宇宙進化後期により軽い
星々が形成される
(種族II, 種族I)
ⒸNASA
初期宇宙ガスの性質
• 初期宇宙ガス: H, He, Li のみ
• 宇宙の晴れ上がり以降:
宇宙膨張による温度低下+密度低下
暗黒物質集積による大きなガス塊形成
• 可視光線・赤外線領域における原子スペクトル線放射のみ
– 1000 K 以下にはしばらく冷却できない
» 宇宙背景放射の輝度温度が1000 K以下になるまで
» 原子状態ではエネルギー遷移が存在しないから
• ある程度原子ガスが凝縮されると分子ガスを形成
– T>104Kの場合はH2による冷却
– 赤外線・電波領域における分子スペクトル線放射
サブミリ波帯であるHD線スペクトル
宇宙最初の星の再現
(シミュレーション)
0.1 Msunの芯ができれば
1000年以内に
10Msunまで成長
外側には1000Msunの
ガス塊が覆っていて
どんどん降着して
くる
Yoshida, Omukai &
Hernquist (2008)
水素分子が
できれば
冷却・収縮が
加速する
Yoshida,
Omukai &
Hernquist
(2008)
原始銀河雲
ビリアル平衡時の温
度
• 冷却可能領域
tff > tcool
• 超新星爆発によって
破壊される領域:
点線の下
一旦星ができるとガスが
吹っ飛んでしまう
• 宇宙最初期天体は
z~20 頃に形成
ビリアル温度(対数)
• ビリアル温度:
Nishi & Susa (1999)
赤方偏移量
「最初の星」の元素組成は?
• 第3回講義中:「宇宙初期の元素組成を調べる」参考
– 遠方宇宙の星間ガスの組成のみ
– どんな元素組成になった時点で最初の星ができる?
• 古い星を探す
– 種族 I: 銀河円盤内、比較的若い(最近生まれた)星々
– 種族II: 銀河系ハロー、球状星団に分布
• 年齢を推定する
– 銀河系ハロー天体かどうか:
銀河回転と関係なく無秩序な運動を持つ高速度星を見つける
恒星運動(固有運動・視線速度)計測データ+狭帯域フィルタ
– 球状星団の場合
等時曲線から推定する: 恒星進化理論モデルとの比較
球状星団までの距離の計測: 金属量に依存した「距離梯子」
球状星団: near field cosmology
• 銀河系中心を球対称的に取り巻いて分布
– 銀河系円盤ができる以前から存在
– 若い球状星団: 銀河合体/爆発的星形成
(スターバースト)領域で形成される
例: マゼラン雲 30 Dor
• 体積数立方パーセク
• 恒星数十万個
HR図上の等時曲線(isochrone)
• 明るい(=重い)星ほど早く寿命が尽きる =主系列から消え去る
• 転向点 (turnover): 寿命が来た恒星が主系列から離れて行く点
• 宇宙年齢の下限を決める: 現在では恒星進化モデルの検証へ
等時曲線の理論計算
(Bergbucsh 1992)
高速度星で測定された元素組成
 超低金属量星(Z<-5) における異なる元素組成
– 1つの超新星爆発モデルで
説明可能
– 元素組成が異なっても
宇宙初期にできた星である
ことが証明された
Iwamoto et al. (2005)
今後の課題(思いつくままに…)
• 低質量(<1Msun)超低金属量星探査
– HE0107-5240: M*=0.8Msun
– 低質量星(種族II)形成の歴史を探る
– 位置天文衛星GAIAやThirty Meter Telescope に期待
• 種族II星からのメーザー放射探査
– 金属量(特に酸素)が少なくても強力な放射を期待
– 再結合線メーザー放射
– Square Kilometer Array (SKA)に期待
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観測的宇宙論 第2回: 初期宇宙の元素合成