1
第
章
地球のエネルギー事情
・地球が保有する熱
・地球のエネルギー資源
・化石燃料の保有する熱エネルギー ・再生可能エネルギーと熱エネルギー
・原子力と熱エネルギー
・地球のエネルギーバランス
1.1
地球が保有する熱
1
地球が保有する熱
地球が放出するエネルギーの内訳
私たち人間が社会を作り生活を営んでいくには、多くのエネルギーが必要で
ある。そして、私たちがエネルギーを使えば必ず廃熱が生じ、これらは最終的
に海洋や大気など地球の環境下に排出される。そしてこれらの熱は、放射熱と
して地球の地表面や海表面から宇宙空間へ放出される。
地球が全体として放出している熱量を正確に見積ることは難しいが、その内
訳を大まかに知ることは、私たちの身の回りに活用できるエネルギーがどのく
らいあるのかを推測するのに役立つ。
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地球が放出しているエネルギーの大まかな内訳は次のようになる。
①太陽から受け取るエネルギーの一部
②惑星や衛星間の引力により受け取るエネルギーの一部
③地熱など、地球内部の放射性同位元素の崩壊によって生じる地熱エネル
ギーの一部
④主として人間の生産活動により、地球に固定化しているエネルギーの一部
これらのエネルギーは地球の全表面から均等に放出されているわけではなく、
たとえば、大陸部と海洋部で大きく異なっている。また、緯度によっても大き
く異なっている。そして、異なる地域間では、大気や海流が熱輸送に寄与して
おり、宇宙に放射されていく熱エネルギーの他に、大気や水を介して他の地域
に熱エネルギーが輸送され放出される。この輸送される熱量は緯度によっても
異なり、また季節により変動している。
地球のエネルギー収支
地球のエネルギー収支の見積りに関する調査は古く、1950 年の頃からいく
つかの報告がなされている。図 1-1-1 は、旧ソビエトの物理学者 Mikhail I.
第1章 地球のエネルギー事情
50
年間熱エネルギー流束、kcal/cm2 年
40
30
大気による熱輸送
海流による
熱輸送
20
10
0
−10
−20
−30
水分交換に
よる熱放出
純放射量
水分交換による熱放出:
水蒸気の凝縮による熱獲得
と蒸発による熱損失との差
−40
−50
60°
20°
40°
北半球
0°
20°
40°
南半球
60°
図 1-1-1 地球|大気システムの熱収支
年間熱エネルギー流束、kcal/cm2 年
100
70
凝縮による熱獲得量
60
40
鉛直方向の乱流熱交換量
20
0
大気による熱輸送
−20
−40
大気の純放射量
−60
−80
60°
40°
20°
北半球
0°
20°
40°
南半球
60°
図 1-1-2 大気の熱収支
7
1.1
地球が保有する熱
Budyko(1920-2001)がまとめた「地球表層全体の熱放射成分の緯度による特
性」を示したものである。この図を見ると、赤道から 10°~ 15°の緯度には、
純放射量(注1)が大きくなっており、緯度の増加とともに次第に減少している。
また、水分交換による熱量(潜熱による吸熱量と凝縮による放熱量の差)は、
赤道を中心とした熱帯領域で大きくなっている。つまり、熱エネルギーの発源
地は赤道近辺であり、ここから、大気移流や海流によってより高い緯度へと熱
エネルギーが輸送されているのである。そして、大気移流による熱輸送と海流
による熱輸送では平均して大気移流の方が大きくなっている。
図 1-1-2 には大気の熱収支成分の緯度分布を示している。大気の純放射量は、
地球表層全体の熱放射量と地表面における熱放射量の差により求められ、全域
で負となる。これは、地表面の純放射量が地球表層全体の純熱放射よりも常に
大きいためである。
一方、南北両半球は互いの間で熱エネルギーが交換されており、北半球から
大気移流や海流の働きより南半球へ熱エネルギーが輸送され、南半球からは水
8
交換により北半球へ熱を輸送していることが示されている。
このように、地球全体の熱のバランスは、大きな熱エネルギーが大気や水に
より輸送されて、別の緯度で放出して保たれている。そして、これらの熱エネ
ルギーは膨大であり、回収して私たちが利用できるエネルギーに変換すること
は非常に有用なことである。しかしそれには高い技術が必要であり、なかなか
容易ではないのが実情である。最近では、後章で述べる多くの技術により、こ
れらが利用できるようになってきており、今後に期待されている。
図 1-1-3 に年間全天日射量を示す。
(注1)純放射量とは、地表面において太陽エネルギーの吸収量と長波有効放射量との差をいい、地表
面における水の蒸発熱エネルギー、地表面と気温の温度差によって地表面から大気へ移動する熱エネ
ルギー、地中へ伝導する熱エネルギーによって消費される。
図 1-1-3 年間全天日射量(kcal/cm2 年)の地理的分布 1
kcal
w
= 0.754 2
cm ・年
m2
第1章 地球のエネルギー事情
9
1.2
地球のエネルギー資源
2
地球のエネルギー資源
地球のエネルギー資源の種類
エネルギー資源を大別すると、図 1-2-1、図 1-2-2 に示すように自然エネ
ルギーと化石燃料と核エネルギーに分類することができる。自然エネルギーは
主に太陽に起因するエネルギーと地球に起因するエネルギー、惑星や衛星間の
引力に起因するエネルギーに分けることができる。太陽はいつか超新星になり
寿命がくるとされるが、これはまだはるか遠い未来のことなので、永遠不滅と
考えて差し支えない。地球内部の放射性崩壊や惑星間引力も同様に考えること
ができるだろう。そうすると自然エネルギーは、基本的に枯渇の心配がないエ
10
ネルギーといえる。
私たちが自然エネルギーの一部を取り出して利用するには、必ず環境負荷が
かかるので、これをできる限り小さくして自然と調和されるようにしなければ
ならない。化石燃料は、石炭(図 1-2-3)
、石油、天然ガス(図 1-2-4)など
に代表されるエネルギー資源で、地球 45 億年にわたる歴史の中で作られた貴
重な資源である。石炭は、古代原生林が変化して生成された燃料で、大もとを
たどれば、原生林を育んだ太陽エネルギーにたどり着く資源でもある。核エネ
ルギーは、核分裂反応あるは核融合反応の際に放出される膨大なエネルギー資
源である。核エネルギーを得るためには、ウランやリチウムの中の放射性元素
が必要である。これらは、化石燃料と同じで地球の長い歴史の中で作られて蓄
積された貴重な資源である。
再生可能エネルギーとはなにか
再生可能エネルギーとは、自然エネルギーを人類が科学技術により取り出し
て利用できる形態に再生産する循環型のエネルギーである。たとえば、高低差
の落差を利用して水力発電をした場合、発電に使われたあとの水はやがて河口
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地球のエネルギー事情