エネルギー
■ 仕事の原理
• (力)×(長さ) の重要性
▶ 滑車の原理
(ロープを引っ張る力)×(ロープを引っ張った長さ)
=(重力)×(持ち上がった長さ)
• (力)×(変位の 力の方向の成分) を仕事という。
⃗ , 変位を ⃗
▶ 力を F
x と書くと仕事 W は内積を使って書ける。
⃗ ·⃗
W =F
x.
変位の方向に働く力のみが仕事に関与することを表している。
▶ 力が一定ではなく位置によって変わるなら、仕事は微小変位に対す
る仕事の総和として表さなければならない。位置 A から位置 B ま
で動かす時
∫ B
⃗ · d⃗
W =
F
x
A
· 「仕事」は専門用語であり、専門用語は定義にしたがって使わな
ければならない。機械の魔術師ポンセレ (J..Poncelet) の造語。
▶ 仕事を測る単位は kg m2 s−2.
仕事の単位には kg m2 s−2 = J で定義される固有の名前があり、
ジュールと呼ばれる。
• L. カルノー (S. カルノーの父、フランス革命のオルグ) の原理
(運動エネルギーの変化) = 仕事.
ここで
2.
質量
×
(
速度
)
運動エネルギー = 1
2
変化は (後) − (前).
▶ 運動方程式を積分すると仕事の原理が導かれる。
運動方程式: m
md(
dx
dx
dt
= F,
) = F dt,
dt
dx
両辺に
d( dx
dt )
dt
をかけて、md(
dx dx
dx
)
= F dt ,
dt dt
dt
= v と置くと、mvdv = F dx,
dt
1
d( mv 2) = F dx,
2
∫ B
∫ B
1
d( mv 2) =
F dx,
2
A
A
∫ B
1
1
F dx
( mv 2)B − ( mv 2)A =
2
2
A
▶ 2 次元運動への拡張

mvxdvx = Fxdx
mv dv = F dy,
y y
y

d( 1 mv 2 ) = Fxdx
x
2
d( 1 mv 2 ) = Fy dx,
y
2
1
2 + v 2 )) = F dx + F dy
d( m(vx
x
y
y
2
∫ B
∫ B
1
1
2 − mv 2 =
⃗ · d⃗
mvB
Fxdx + Fy dy =
F
x
A
2
2
A
A
• 仕事の原理は運動方程式だけから導かれることに注意しよう。
慣性の法則も、作用・反作用の法則も使っていない。
■ ポテンシャル・エネルギー
• 保存力: 力が特別の性質を持つ時、
∫ B
∫ B
⃗ · d⃗
F
x=−
dU = −(UB − UA)
A
A
と書ける。こう書ける力を保存力といい、U をポテンシャル・エネル
ギーと呼ぶ。
∫ B
⃗ · d⃗
▶ 拘束力 (面の抗力など) の場合
F
x = 0.
A
力の方向と変位の方向が垂直だから。
拘束力はエネルギーに関与しない: ダランベールの原理
▶ 重力は保存力で、U は位置エネルギーと呼ばれる。U = mgh.
▶ ばねの力は保存力で、U は弾性エネルギーと呼ばれる。U = 12 kx2.
▶ 摩擦力の場合、U は見つからない。もしあれば、割れた皿が元に
戻るようなことが導かれる。
摩擦力は速度に依存している。
もし, 一定速度で動く座標系に移ると、力が変わってしまう。つま
り、慣性の法則がなりたたない。
力学の原理 (慣性の法則) を破った問題設定をしているから、力学
の原理を置き換える原理を見つけなければ、摩擦力を理解したこ
とにならない。
▶ 逆に言うと、力学の原理 (慣性の法則、作用・反作用の法則) が成
り立っている問題なら、力は保存力になり、力学的エネルギーの保
存則が成りたつ。
どこで力学の原理を破るような問題設定になっているかを理解す
ることが、物理学理解の早道である。
▶ 力が位置だけの関数の場合。
微積分学の基本定理:
∫
∫
F (x)dx = dV ,
∫
高校の積分は微分の逆算法で
dV = V + 定数
dV
dx
= F となる V を求めること
ただし、
ポテンシャル U と不定積分 V は逆符号であることに注意。
ポテンシャルは力 F と釣り合う力がする仕事として定義されてい
る。
バネの力が保存力になるのは当然。
∫ B
∫
⃗ = dV とは、一般には、書けない。
⃗ · dx
しかし、
F
A
∫
∫
もし Fxdx + Fy dy =
dV と書けたとしよう。
接線の式 df (x) = f ′(x)dx に対応する接平面の式は
dV (x, y) =
∂V
∂x
dx +
∂V
∂y
dy .
∂V
Fx = ∂V
,
F
=
y
∂x
∂y である V が見つかるはず。
∂Fx
∂Fy
このためには
=
でなければならない。
∂y
∂x
この式を可積分条件という。
ここで
∂f
∂x
は y を定数と思って f を x で微分した微分係数を表す。
■ エネルギー保存則
• 保存力に対して
(運動エネルギー) + (ポテンシャル・エネルギー) = 一定
これを力学的エネルギーの保存則という。
• 現代物理学ではエネルギーの保存則は物理の基本原理であると考え
られている。
物理学者は、
『もし実験でエネルギー保存則が成り立っていなければ、何かを考え
落としている』
と考えた。この戦略は常に成功し、次々と新しいポテンシャル・エネ
ルギー (熱エネルギー、化学エネルギー、電気エネルギー、. . . ) が
見つかった。
■ 考え方の歴史
• 「エネルギー」 (at work) という言葉はアリストテレスの言葉で古
代ギリシャからある。
「仕事」(Work) の概念を作ったのはアルキメデスやその後継のアレ
キサンドリアの人たちである。
「力」(Force, 運動の原因)の概念よりはるかに古い。
• ニュートン (1643–1727) の考え:
物質は質量を持った「点」の集まりで、質点と質点の間に作用反作用
の法則の成立する「遠隔力」が働く。
この考えは受け入れられなかったが、ニュートンは「我、仮説を作ら
ず」で押し切った。
当時の常識は「自然は真空を嫌う」で、定説はデカルトの渦動論で
あった。
• 地球の形状論争:
1736-1746 に地球形状が実測され、ニュートンの数学が正しく、
それまで定説であったデカルトの計算が間違っていたことが示された。
• 物質は質点の集まり。
ダランベールが剛体は質点の集まりで、質点間に形を変えない拘束力
が働いていると考え、
拘束力は仕事をしないことを使って、剛体の運動方程式を導いた後、
質点の集まりの考えは常識になった。
• エネルギー概念の重要性は、フランス革命の頃(産業革命の頃)、機
械を使う必要性から気づかれた。
力が運動の原因と考える必要性がなくなり、ポテンシャル・エネルギー
の方が基本的な概念だと考えられるようになった。
• ポテンシャル・エネルギーはどこにある? 「場」の考え。
ファラディとマクスウェルがポテンシャル・エネルギーを空間全体に
広がったエネルギー、運動量をもった物理的実体と考えることができ
ることを示した。(電磁気学の成立)
• 現在の物理学では保存則は運動方程式より重要であると考えられて
いる。
ニュートンの力学とはガリレオ対称性の帰結を調べる学問である。
ガリレオ対称性とは: 一定速度で動く座標系に移っても、
▶ 同じ法則が成立する。
▶ 時間は変わらない。
ポテンシャル・エネルギーが粒子間の同時刻の相対位置の関数である
のは、ガリレオ対称性の帰結である。
作用・反作用の法則もガリレオ対称性の帰結である。
■ 非保存力の取扱い
• 仕事の原理は保存力であろうと、非保存力であろうと成立する。
▶ 仕事の原理は運動方程式だけから導かれる。慣性の法則も、作用・
反作用の法則も関係ない。
▶ 保存力のする仕事はポテンシャルで書けるが、非保存力は書けない。
• ∆(運動エネルギー+ポテンシャルエネルギ) = 非保存力のする仕事
ここで ∆ は変化を表す。つまり ∆(何か)は
(何かの後の値) − (何かの始めの値)
• 非保存力のする仕事は負である。エネルギーがどこかへ消え去って
いる。
▶ どこへ消え去ったのか追求する必要がある。
動摩擦力の場合は熱に変わっている。熱はエントロピーと呼ばれる
ポテンシャルで表される。
■ パワー
• 単位時間あたりに行う仕事量をパワーとか仕事率という。
• 単位は kg m2 s−3 = W でワットと呼ばれる。
• 昔はエネルギーの単位としてカロリーが用いられていた。1 cal =
4.2 J である。
• 人間の基礎代謝量はおおよそ 1500 cal/ day = 73 W である。人間
1 人ほぼ 100 ワットと覚えておけばよい。
• 昔はパワーの単位として馬力が用いられていた。1 馬力 (1 ps) はほ
ぼ 750 W である。英国、フランスで値は少し異なる。
• 太陽から来るエネルギー、太陽定数。1.4 × 103 W/ m2.
■ 仕事の原理 まとめ
• 質点 m に働くすべての力を考慮すると
∫ B
1
1
2 − mv 2 =
⃗1 + F
⃗2 + · · · + F
⃗n) · d⃗
mvB
(F
x
A
2
2
A
• F⃗1 が保存力なら
1
∫ B
A
⃗1d⃗
F
x = −(UB − UA) と書けるので
∫ B
1
2 + U ) − ( mv 2 + U ) =
⃗2 + · · · + F
⃗n) · d⃗
(F
x
( mvB
B
A
A
2
2
A
重力の U は位置エネルギー, バネの U は弾性エネルギー。
⃗2 が変位 d⃗
• F
x に垂直なら
∫ B
A
⃗2 · d⃗
F
x=0
面の抗力や糸の張力のような拘束力はこの性質を持つ。
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仕事とエネルギ、時間的な不変性と保存則