量子乱流
〜Another Da Vinci Code〜
坪田 誠
大阪市大院理
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ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ žÇ½Ç…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
Review article
• M. Tsubota, J. Phys. Soc. Jpn.77 (2008) 111006
• Progress in Low Temperature Physics Vol.16, eds.
W. P. Halperin and M. Tsubota, Elsevier, 2008
• 坪田誠/西森拓、量子渦のダイナミクス/砂丘と風
紋の動力学, 培風館(2008)
Another Da Vinci Code
Leonard Da Vinci
(1452-1519)
乱流は渦に注
目しなさい。
ダ・ヴィンチは水の流れ(乱流)を観
察し、それが大小様々な渦から成る
ことを見い出した。
とんぼの背後の乱流
http://www.nagare.or.jp/mm/2004/gallery/iida/dragonfly.html
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êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉN É`ÉÉÇ ¾å©ÇÈÇ…ÇÕïKóvÇ ­Ç•
ÅB
確かに乱流は渦からなるように見える。しかし、これらの渦は
不安定で、その同定も容易でない。
乱流研究の意義
乱流は、理学・工学を通じて、自然界の大問題である。
Feynman 「乱流は古典物理学の最終問題の一つで
ある」
Another Da Vinci Codeが、問題解決のカギ
になるかも知れない。
しかし、普通の乱流では、Another Da Vinci Codeが適用でき
るかどうか、よくわからない。
Another Da Vinci Code は、量子乱流の中でこそ、実
現している事が、近年わかってきた。
量子流体力学の舞台
〜 ボース・アインシュタイン凝縮 (BEC)
理想気体
高
温
量子力学の本質
子と波動の二重性
粒
気体分子は、「粒子」とし
て振る舞う。
熱的ド・ブロイ波長が伸び、気体分子は、
「波動」として振る舞う。古典統計から量
子統計に移行。
低
温
Ψ
各分子の波が重なりあい、系全体に
およぶ巨大な波が形成される。 Ψ :
巨視的波動関数
ボース・アインシュタイン凝縮
循環の量子化
巨視的波動関数
   expi
単連結領域
多重連結領域



C
超流動速度場 vs  m 

vs  dl  0, rotvs  0
h
  C vs  dl  C   dl  n (n: 整数)
m
m

超流体が排除された渦芯と量子化された循環を持つ渦

量子渦(Quantized vortex)
ボース凝縮(超流動)中では全ての回転的流れ( rot v  0 )は、
非粘性超流体の渦である量子渦(位相欠陥)によって担われる。
(i) 循環が量子化され、保存量となる。
v
s
 ds   n
n = 0,1,2, 
 h/m
n≧2 の渦は不安定。
全ての渦は厳密に同じ循環を持つ。
(ii) 渦度の粘性拡散による、減衰機構が働かない。
渦は安定である。
(iii) 渦芯が非常に細い。
コヒーレンス長のオーダー
このような量子渦が作る乱流を量子乱流と言う。
〜Å
ρ s (r)
rot v s
r
普通の乱流(古典乱流)vs. 量子乱流
古典乱流
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ǙDZÇÃÉsÉN É`ÉÉÇ ¾å©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ ­Ç•
ÅB
Another Da Vinci Codeは、量
子乱流で実現する。
・渦は生まれては消える不安定な
量子乱流
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渦芯の
運動
・量子渦は安定な位相欠陥。
存在。明確に定義できない。
・量子渦の循環は全て同一で保
量子乱流の方が古典乱流より簡単である。
・循環の異なる渦が混在している。
循環が保存しない。
存する。
量子渦の運動を記述する二つの方法
渦糸モデル (Schwarz)
ビオ・サヴァール則
 s  r  d s
v s r   
3
4
sr
r
s
量子渦はビオ・サヴァール則によりその回りに超流動流れ場を作り、そ
れに乗って動く。有限温度では、相互摩擦を取り入れる。
巨視的波動関数に対するGross-Pitaevskii方程式
(r)  n0 (r)ei(r )
(r,t)  2 2
2
i
 
 Vext (r)  g (r,t) (r,t)
t
 2m

今日の話の内容
0.
1.
2.
3.
4.
序論
原子気体 BEC の量子渦: 量子渦格子形成
超流動ヘリウムの量子渦:量子乱流
原子気体 BEC の量子乱流
振動物体が作る量子乱流遷移
1. 原子気体BECの量子渦:量子渦格子形成
原子気体ボース凝縮の実現(1995)
87Rb, 7Li, 23Na
レーザー冷却(ドップラー冷却)
原子の共鳴周波数より低い周波数のレーザー光を原子気体に当てる
レーザー光で原子の運動を止める。
→ レーザー光に対向し運動する原子は、吸収して減速
6本の対向ビームの交点に、減速原子が溜まる。
磁気光学トラップ 磁気トラップ
冷却原子を捕獲
減速した原子集団を捕獲する。
蒸発冷却
磁場によってスピン偏極した原子気体に、エネルギーの高い
原子スピンだけを反転させるようなrf磁場を照射
速い原子を捨てる。
→ エネルギーの高い原子はトラップから放逐される
BEC
T〜 100 nK
T〜 100μK
etc.
ボース凝縮の観測
捕獲ポテンシャルを切る。
→ 気体は自由落下しつつ、膨張する。
→ 原子の位置を観測して、原子の初期速度分布を決定する。
M I Tの観測
2001年の
ノーベル物
理学賞!
原子気体ボース凝縮系の大きな特徴
理論
(十分低温では)希薄ボース気体のモデルと,平均場近似理論
(Gross-Pataevskii方程式)が,定量的に非常に有効である。
(r,t)  2 2
2
i
 
 Vext (r)  g (r,t) (r,t)
t
 2m

実験
凝縮体を直接,制御し可視化することができる。
原子間相互作用をフェッシュバッハ共鳴により,変調できる。
普通の流体(古典流体)をバケツに入れ、バケツを回転さ
せると何が起こるか?
流体は、バケツと同じ回転角
速度で剛体回転を行う。
バケツ内に1本の渦ができたこ
とを意味する。バケツの回転
角速度が何であっても、それ
に対応した1本の渦ができる。
量子流体ではそうならない。原子気体ボー
ス凝縮を用いた実験が行われた。
原子気体BECにおける量子渦の観測
ENS K.W. Madison et al., PRL 84, 806 (2000)
JILA
P. Engels et al.,
PRL 87, 210403
(2001)
MIT J.R. Abo-Shaeer et al.,
Science 292, 476 (2001)
Oxford
E. Hodby et al.,
PRL 88, 010405
(2002)
トラップされた BEC にどのように回転を与えるか?
K. W. Madison et al., Phys.Rev Lett 84, 806 (2000)
軸対称トラッピングポテンシャル
5mm
Vext (R)  Vtrap(R)  Ustir (R)
z
100mm
非軸対称ポテンシャル
y
x
“cigar-shape”
回転振動数
W

光学スプーン
20mm
かき混ぜるレーザー
m 2
Ustir (R)   (x X 2  yY 2 )
2
 x  y
回転座標系: R

16mm


渦格子形成のダイナミクスの直接観測
K.W.Madison et.al. PRL 86 , 4443 (2001)
回転ポテンシャルを加えた後のBECのスナップショット
 =W
2
2
2
2
R x  Ry
R x  Ry
Rx
Ry
1. 凝縮体はだ円形に変形し
減衰振動をする。
2. 凝縮体の表面が不安定
になる。
3. その表面から渦が侵入す
る。
4. 凝縮体は軸対称を回復し、
渦は格子を組む。
回転系のGross-Pitaevskii 方程式
2

2
2
i

   Vtrap  g  
t
2m
凝縮体波動関数
(r,t)

4 2 as
原子間相互作用 g 
m
as
Vtrap
s-波散乱長
調和ポテン
シャル
回転系


2 
2


   (Vtrap  U stir )  g    WLz 
 i
t
2m
2
m 2
Ustir (R)   (x X 2  yY 2 )
2
2次元
近似

Ω
Ω
現象論的散逸項を含むGross-Pitaevskii 方程式

  2 2
2
i
 
  (Vtrap  Ustir )  g   m  WLz 
t  2m


(i   )
t
  0.03 : dimensionless parameter
S.Choi, et.al. PRA 57, 4057 (1998)
I.Aranson, et.al. PRB 54, 13072 (1996)

凝縮成分と非凝縮成分の相互作用
E.Zaremba, T. Nikuni, and A. Griffin, J. Low Temp. Phys. 116, 277 (1999)
C.W. Gardiner, J.R. Anglin, and T.I.A. Fudge, J. Phys. B 35, 1555 (2002)
M. Kobayashi and M. Tsubota, Phys. Rev. Lett. 97, 145301 (2006)
1本の量子渦の構造

2
2m
2
   Vtrap  g    m
2
一本の渦を持つ状態
(r)  n0 (r)e
i(r )
渦
n0
0.02
0.015


0.01
0.005
速度場

0
0
2
4
r
6
渦芯= ヒーリング長

2m gn0
8
10
渦格子形成のダイナミクス (1)
M. Tsubota, K. Kasamatsu, M. Ueda, Phys. Rev. A65, 023603(2002)
K. Kasamatsu, M. Tsubota, M. Ueda, Phys. Rev. A67, 033610(2003)
凝縮体密度
n の時間発展
0
実 験
W  0.7 
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ÅB
渦格子形成のダイナミクス (2)
凝縮体密度 n 0の時間発展
t=0
67ms
340ms
390ms
410ms
700ms
渦格子形成のダイナミクス (3)
位相 の 時間発展
QuickTimeý Dz Y UV420É RÅ[ÉfÉbÉN êLí£ÉvÉçÉ OÉâÉÄ Ç™Ç±Çà ÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDž ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
渦格子形成のダイナミクス (4)
位相  の 時間発展
t=0
67ms
340ms
幽霊渦
実渦に成長
390ms
410ms
700ms
渦格子形成のシナリオ
捕獲ポテンシャルを回すと、
1. 凝縮体は4重極振動を行う。
凝縮体の中
Ghost Vortex(凝縮体密度を伴わない位相だけの渦)
凝縮体の外
が凝縮体の外に現れ、境界まで来る。
2. 凝縮体の境界が不安定になり表面波が励起される。
GVが境界でせめぎ合う。
3. 表面波窪みが渦芯となって、凝縮体内に侵入する
→ 角運動量の上昇
一部のGVはReal vortexとなって凝縮体内に侵入し、他は外にはじかれる。
4. Real vortexは散逸のあるvortex dynamicsに従い、渦格子を形成する。凝縮体
は円対称を回復。
はじかれたGVは凝縮体の外を徘徊する。
密度と位相の同時表示
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ÅB
2. 超流動ヘリウムの量子渦:量子乱流
超流動ヘリウムの研究史
液体 4He は2.17K (λ 温度) でボース凝縮を起こし、超流動となる。
その様々な挙動は、二流体モデルにより記述される。
二流体モデル
系は、非粘性の超流体と、粘性を持つ常流体
の二流体からなる。
  s  n
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BMP êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
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ÅB
j   sv s   n v n
密度 速度場
超流体  s T 
v s r 
常流体 n T
v n r 

温度
粘性 エントロピー
0
n T
0
sn T 
温度 (K)
超流動は、速く流れると壊れる(粘性が発生する)。
(i) vs < v c
(some critical velocity)
t 
vs
vs
二流体間に相互作用はなく、超流体は減衰せずに流れる。
(ii) v s > v
vs
c
vs =0
量子渦のタングルが成長する。渦タングルを介して二流体は相互作
用し(相互摩擦)、超流体は減衰する。
1955 Feynman は、これが量子渦タングルによる「超流動乱流」である
と提案した。
Progress in Low Temperature Physics
Vol.I (1955), p.17
1955, 1957 Hall and Vinen は「超流動乱流」を観測した。
量子渦タングルと常流体に働く「相互摩擦」が、散逸を引き起こす。
その後、非常に多くの実験研究が、超流動4Heの熱カウンター流に対
して行われた.
Vortex tangle
Heater
Normal flow
Super flow
1980’s K. W. Schwarz Phys.Rev.B38, 2398(1988)
量子渦糸の三次元ダイナミクスの直接数値計算を行い、温度差△T
を定量的に説明することに成功した。
熱カウンター流における量子渦タングル
K. W. Schwarz, Phys. Rev. B38, 2398(1988)
6本の渦輪が渦タングル(量子乱流)に発
展する様子
量子渦タングル
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ÅB
流れによる励起と相互摩擦による
散逸が拮抗した、量子渦タングル
の統計的定常状態が実現。
⇨典型的実験結果と一致
Feynman以来の、
超流動乱流=量子渦タングル
vs
vn
という描像が確立した。
ほとんどの超流動乱流の研究は、熱カウンター流に限定され
ていた。
⇨ 古典乱流との対応が無い。
Feynmanが上図を示したとき、古典乱流(特にカスケード過
程)を念頭に置いていたはず!
超流動乱流と古典乱流は
どういう関係があるのか?
量子乱流および量子渦は、約50年前に超流動ヘリウムに
おいて発見された。
ところが、1990年代後半から、量子乱流の研究は再び盛ん
になってきた。
最大の観点
量子乱流は、古典乱流よりも簡単な、乱流の雛形を与え
ることが期待できる。
⇨ 500年もの謎であった乱流にブレイクスルーが起こる
かも知れない。
乱流で統計則を考える意味
乱流研究の目標
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ÅB
予測と制御
時間的・空間的に変動する場を、予測することはできない。
統計量(場の相関関数など)は、再現性のある普遍法則を
示すことが期待される。
乱流の統計則 (1941, Kolmogorov)
一様等方乱流のエネルギースペクトル
1
E
2
v
2
dr 
 E(k)dk
E(k) :エネルギースペクトル
k のスケールの eddy(渦運動)がもつ
エネルギー
エネルギー保有領域
k〜k0=1/ℓ0 付近でエネルギーが注入され
る。
慣性領域

粘性は効かない。非線形相互作用により、
エネルギーは高波長領域へ輸送される。
コルモゴロフ則(K41)が成立。
E(k)=Cε2/3 k--5/3
エネルギー散逸領域
コルモゴロフ波数 k〜kK=(ε/ν3)1/4
付近で粘性が効き、エネルギーは熱に
変換される。
木田、柳瀬「乱流力学」(朝倉書店、1999)
ε: 単位時間単位質量当たりの注入エネルギー(エネルギー保有領域)
=慣性領域のエネルギー輸送率
=エネルギー散逸領域のエネルギー散逸率
慣性領域は、大きなスケールの渦が小さな渦に分裂するRichardson
cascadeにより成り立っていると信じられている。
←大スケールでεでエネルギーが注入される。
←大スケールから小スケールへεでエネル
ギーが移動
←小スケールでεでエネルギーが除去される。
3 5 3
波数 k のエネルギー: E(k)  C 2 コルモゴロフ・スペクトル
k
速度場の2体相関のフーリエ変換
量子乱流のエネルギースペクトル
常流体が存在しない状況で、量子乱流のエネルギースペクトルを調べ
た研究は、3つある。
Decaying Kolmogorov turbulence in a model of superflow
C. Nore, M. Abid and M.E.Brachet, Phys.Fluids 9, 2644 (1997)
Gross-Pitaevskii (GP) モデル
Energy Spectrum of Superfluid Turbulence with No Normal-Fluid
Component
T. Araki, MT and S.K.Nemirovskii, Phys.Rev.Lett.89, 145301(2002)
渦糸モデル
Kolmogorov Spectrum of Superfluid Turbulence: Numerical Analysis of
the Gross-Pitaevskii Equation with a Small-Scale Dissipation
M.Kobayashi and MT, Phys. Rev. Lett. 94, 065302 (2005), J. Phys. Soc. Jpn.74, 3248 (2005).
修正 GPモデル
Kolmogorov spectrum of quantum turbulence
M. Kobayashi and M. Tsubota, Phys. Rev. Lett. 94, 065302 (2005), J.
Phys. Soc. Jpn. 74, 3248 (2005)
1. 高速フーリエ変換を用いるために、波数空間でGP方程式
を解いた。
2. 量子乱流の統計的定常状態を作った。そのために、
2-1 短波長フォノンを消すために、短波長のみで作用する
散逸項を導入した。
2-2 ランダムポテンシャルを動かして、大スケールでエネル
ギーを注入した。
実空間の GP 方程式

2
2
i r,t     m  g r,t  r,t 
t


フーリエ空間の GP 方程式

i k,t   k 2  m k,t 
t
g
 2  k1 ,t  * k2 ,t  k  k1  k2 ,t 
V k1 ,k 2
2  1 g 
2
渦芯を与えるヒーリング長
GP 方程式を高精度で解くために、立方体中で周期境界条件を用
いて擬スペクトル法を用いる。
小スケールの散逸をどうやって導入するか?
小スケールの散逸を入れた GP 方程式

{i   (k)} k,t   k 2  m k,t 
t
g
 2  k1 ,t  * k2 ,t  k  k1  k2 ,t 
V k1 ,k 2
2
  1 g  :渦芯を与えるヒーリング長
2
 (k )   0  k  2 /  
ξ 以下の小スケールのみで働く散逸項を入れた。
ξ以下のスケールでは量子渦の運動は無く、音波しかない。
この散逸項は、後にGP-BdG連立方程式の解析により正当化される。
M. Kobayashi and M. Tsubota, Phy. Rev. Lett. 97, 145301 (2006)
大スケールのエネルギー注入をどう行うか?
以下の時空相関を満たすように、ランダムポテンシャルを動
かす:
2
2

x  x  t  t  
2
V(x,t)V(x , t )  V0 exp

2
2 
2T0 

 2X 0

このX0が、エネルギーが注入さ
れるエネルギー保有領域を決
める。
X0
ξ
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量子乱流の定常状態を得る(1)
各エネルギー成分の時間発展
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量子渦(芯)
中央面での位相
動くランダムポテンシャル
量子乱流の定常状態を得る(2)
各エネルギー成分の時間発展
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量子乱流定常状態のエネルギースペクトル
エネルギースペクトルはコルモゴロフ則(K41)を示す。
量子乱流が、古典乱流の
最も重要な統計則をを示
す事がわかった。
M. Kobayashi and M. T., J.
Phys. Soc. Jpn. 74, 3248
(2005)
量子渦のRichardson cascade
2π / X0
2π / ξ
3. 原子気体BECの量子乱流
量子渦が作る協力現象
回転下の渦
格子 渦タングル(量子乱流)
渦格子
渦タングル
超流動ヘリウム
原子気体BEC
None
M. Kobayashi and M. Tsubota, Phys.Rev.A76, 045603(2007)
捕獲原子気体BECで乱流を作れるか?
(1)流れを系に加えることができない。
(2)有限系である。十分な慣性領域がとれるか?
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ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉÇ ¾å©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
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M. Kobayashi and M. T., J.
Phys. Soc. Jpn. 74, 3248
(2005)
コヒーレンス長はシステムサイズに比べて十分に小さくはなかったが,
慣性領域はありコルモゴロフ則が成立した。
原子気体BECでどうやって量子乱流を作るか?
〜 2軸歳差運動〜
z
1. BECを弱い楕円ポテ
ンシャルに入れる。
m 2
U x 
1 1 1 2 x 2  1 1 1 2 y 2  1 2 z 2 

2

x

y
2. 系をまずx軸周りに,次
いでz軸周りに回す。
Wt  Wx , WzsinWx t, Wz cosWx t
このアイデアは既に古典乱流で用いられていた.
S. Goto, N. Ishii, S. Kida, and M. Nishioka, Phys. Fluids 19, 061705 (2007)
1軸周りの
回転
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ÉVÉlÉpÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­ Ç•
ÅB
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ê Lí£ÉvÉçÉOÉâ ÉÄ
Ç ™Ç ±Ç ÃÉs ÉN É`ÉÉÇ ¾å©Ç ÈÇ žÇ ½Ç …Ç ÕïKóvÇ ­Ç •
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2軸周りの
回転
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ÉVÉlÉpÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­ Ç•
ÅB
この2回転は、その和の1回転で表されるか? No!
歳差運動
回転軸そのものが他の軸の周りを回る。
Ωx
Precessing motion of a gyroscope
Ωz
回転軸と歳差軸が垂直な場合を扱う。この時、2つの
回転は非可換となり、その和では表現されない。
Two precessions (ωx×ωz)
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ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ žÇ½Ç…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
QuickTimeý Dz
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ÅB
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ÅB
Condensate density
Quantized vortices
Three precessions (ωy× ωx×
ωz)
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ÅB
Condensate density
Quantized vortices
Energy spectra for two cases
2 / 3 5 / 3
Kolmogorov law: E k  C k
Two precessions
Three precessions

Three precessions produce more isotropic QT, whose η is closer to 5/3.
M. Kobayashi and MT, Phys. Rev. A76, 045603 (2007)
原子気体BECの量子乱流から何を得られるか?
• 回転振動数や相互作用パラメータを変えて、乱流遷移
を制御できる。
• 量子渦を可視化できる。それにより、実空間のリ
チャードソン・カスケードと、波数空間のカスケード
(コルモゴロフ則)の関係を調べることができる。
• 捕獲ポテンシャルや回転振動数を変えて、2次元乱流
から3次元乱流への遷移を見ることができる。
渦格子融解から量子乱流への遷移を制御
Ωz
渦タングル(量子乱流)
ωx×ω
z
渦格子
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ÅB
0
?
渦格子
Ωx
原子気体BECの量子乱流から何を得られるか?
• 回転振動数や相互作用パラメータを変えて、乱流遷移を
制御できる。
• 量子渦を可視化できる。それにより、実空間のリチャードソ
ン・カスケードと、波数空間のカスケード(コルモゴロフ則)の
関係を調べることができる。
• 捕獲ポテンシャルや回転振動数を変えて、2次元乱流から
3次元乱流への遷移を見ることができる。
z
z
z
y
z
y
x y
y
x
x
x
制御可能な乱流を手に入れることができる。




4. 振動物体が作る量子乱流遷移
超流動ヘリウム中のvibrating wire
1.6 mm
wire の直径: 3μm
超流動ヘリウム中のvibrating wire
B
1.6 mm
wire の直径: 3μm
Io exp(iωt)
超流動ヘリウム中のvibrating wire
Wireに加える力 Fと振動速度 v を観
測する。
B
1.6 mm
wire の直径: 3μm
Io exp(iωt)
velocity (mm/s)
200
up
down
100
50 mm/s
0
0
0.05
0.1
drive force (nN)
0.15
H.Yano, N. Hashimoto, et al, Phys. Rev. B 75, 012502 (2007).
力 F を増すと、最初wireの
速度 v は増すが、ある臨界
値以上で振れなくなる。
→もともとwireに付着して
いた量子渦が乱流に遷移
した!
交流流れ場中で残余渦が乱流に発展する様子
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ǙDZÇÃÉsÉN É`ÉÉÇ ¾å©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ ­Ç•
ÅB
R. Hänninen, M. Tsubota, W.F. Vinen, Phys. Rev. B 75, 064502 (2007)
様々な振動物体を用いて、同様の挙動が観測された。
Microsphere
Grid
Wire
42 mm/s
60 mm/s
velocity (mm/s)
200 μm
200
up
down
100
0
J. Jager, B. Shuderer, W.
Schoepe, Phys. Rev. Lett.
74, 566 (1995).
H.A. Nichol, L. Skrbek, P.C.
Hendry, P.V.E. McClintock,
Phys. Rev. Lett. 92, 244501
(2004).
0
500.05
mm/s
0.1
drive force (nN)
0.15
H.Yano, N. Hashimoto, et
al, Phys. Rev. B 75,
012502 (2007).
乱流遷移臨界速度の振動数依存性
400
Vc (mm/s)
Vc  
100
 :循環量子

10
10

  (mm/s)
100
大阪市大グループは、種渦がからまっていないwireを得た。
Response of a vibrating wire at 30 mK
VW(A) は1 m/s を超えても乱流
に成らない。
種渦が無い。
VW(B) は乱流になる。
N. Hashimoto, R. Goto, H. Yano, K. Obara, O. Ishikawa, T. Hata, PRB76, 020504(2007)
R. Goto, S. Fujiyama, H. Yano, Y. Nago, N. Hashimoto, K. Obara, O. Ishikawa, M. Tsubota, T.
Hata, PRL100, 045301 (2008)
渦輪照射による乱流遷移 (1)
R. Goto, S. Fujiyama, H. Yano, Y. Nago, N. Hashimoto, K. Obara, O. Ishikawa,
M. Tsubota, T. Hata, Phys. Rev. Lett. 100, 045301(2008)
30 mK
A
Aのみを振ると,
B
A
B
A は決して乱流を起こさない。
渦輪照射による乱流遷移 (2)
A
Bのみを振ると、
B
A
B
B は乱流を引き起こす。
渦輪照射による乱流遷移 (3)
A
A and B 両方を振る
と
B
A はBから渦を受け
取ったときのみ乱流に
なる。
A
B
どちらも乱流を引き起こす。
振動球に量子渦輪を照射する。
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V= 137 mm/s
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V= 50 mm/s
Parameters for the sphere
Radius 3μm
Frequency 1590 Hz
量子乱流定常状態と渦糸密度
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Parameters for the sphere
Radius 3μm
Frequency 1590 Hz
Velocity 137 mm/s
Vortex line length for
different velocities
(1)30mm/s, (2)50mm/s,
(3)70mm/s, (4)90mm/s, (5)
without a sphere
どうやって乱流遷移を特徴づけるか
1
2
FD  CD  AU
2
抗力
S. Fujiyama and M. Tsubota, PRB79, 094513(2009)
CD: 抵抗係数
ρ: 流体密度
A: 流れに垂直な物体の断面積
U: 流速
低速:
CD U 1
Stokes’ drag force
CD  O1
高速:

L. Skrbek and W. F. Vinen, in Progress in
Low Temperature Physics, Vol. 16, p.193
抗力と抵抗係数
The dotted line ∝ U2
S. Fujiyama and M. Tsubota, PRB79, 094513(2009)
1
FD  CD  AU 2
2
The turbulent state gives CD  O1 !
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ÅB
今後の量子乱流研究の展開
乱流遷移を”相転移”としてとらえたい
乱流 → 秩序相
• コルモゴロフ則(波数空間の自己相似則)
• 量子渦の長さ分布(実空間の自己相似則)
• 抵抗係数 CD〜O(1)
etc.
量子乱流の秩序変数をどうとらえるか?
量子乱流の全ての物理は、量子渦の運動に帰着される(要素還元的)
→ Another
Da Vinci Code の完成!
まとめ
16世紀
量子流体力学と量子乱流に関する
最新の研究について紹介した。
量子乱流は、Another Da Vinci Code
を実現し、500年もの間自然の大き
な謎であった乱流の理解にブレイク
スルーを生むかも知れない。
Review article
21世紀
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ÅB
• M. Tsubota, J. Phys. Soc. Jpn.77 (2008) 111006
• Progress in Low Temperature Physics Vol.16, eds.
W. P. Halperin and M. Tsubota, Elsevier, 2008
QuickTi meý Dz
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量子乱流が