情報経済システム論:第6回
担当教員 黒田敏史
2015/11/18
情報経済システム論
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多面的市場の理論
• 多面的市場とは
– 多面的市場とは、プラットフォームに所属するユーザグ
ループの間に相互作用が存在し、それぞれのユーザ
グループに対して適切な料金を設定することで、ユー
ザを引きつけようとする市場のこと
• ユーザグループが二つの時を特に両面市場と呼ぶ
– 多面的市場の例
• クレジットカード・電子マネー等の決済サービス
– 利用可能店舗とカード保有者
• 新聞・雑誌・テレビ等のメディア
– 広告主と購読者・視聴者
• ゲーム・OS等のソフトウェアプラットフォーム
– ソフトメーカとプレイヤー
• ショッピングモール
– 小売店と来客
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多面的市場の理論
• 多面的市場の特徴
– 1単位の取引において、複数のユーザグループそれぞ
れの支払う料金の合計が一定であっても、その負担比
率が変わる事で、取引量が変化する
• 合計水準が変化しない場合は、両面への財をまとめたパッケ
ージを一つの財として扱い、両面の合計料金を問題にする単
一財市場として取り扱うことができる
– ユーザグループ間の料金水準には、それぞれのグル
ープに対してサービスを提供するための費用と価格弾
力性のみならず、ネットワーク効果にも依存する
• コストが割高な側が料金が、コストが割安な側の料金よりも
低いときがある
• 価格弾力性が高い側の料金が、価格弾力性の低い側の料
金が高いときがある
• 対となるグループを引きつける力の強い側の料金を低くする
傾向がある
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多面的市場の理論
• 従量料金と加入料金
– 加入数に関するモデル
• プラットフォームの加入料金と、加入するユーザ数について
の議論
– 特定ハード向けの開発機材の価格と、ハードの価格
– 決済システム構築導入費用とカード加入料金
– 利用量に関するモデル
• プラットフォームにて相互作用が生じる回数や、1階の取引
毎に生じる料金についての議論
– ソフト1本の製造コストと販売価格
– クレジットカードの決済代行手数料
– 加入数モデルの方が従量料金モデルに比べて、グル
ープ間外部性の影響が強くなる
• 加入行動モデルでは対となるグループの人数が増加しても
支払額が増加しないが、従量料金モデルでは、対となるグル
ープの人数が増加すると、支払額も増加するため
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多面的市場の理論
• Armstrong (2006):プラットフォーム加入モデル
– 独占の場合
• グループ1の人数 n1 、グループ1の支払う料金 p1
• グループ2の人数 n2 、グループ2の支払う料金 p2
– 消費者の効用
• グループ1のユーザの効用 u1  1n2  p1
• グループ2のユーザの効用 u2   2 n1  p2
– 企業の利潤
•   n1 ( p1  f1 )  n2 ( p2  f 2 )
p1
グループ1( n1 )
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独占企業
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p2
グループ2( n2 )
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多面的市場の理論
• 独占の場合:モデルを解くための準備
– 包落線定理
• 効用がuの時に、グループiに所属するユーザ数の最大
値を ni  1 (ui ) とおく
• φはuを所与としたときの最大値だから、 i '(ui )  0
• グループiのユーザの余剰の合計は vi  ni ui
• 従って、vi / ui  i (ui )  i '(ui )ui  i (ui )
– 利潤の式の価格を消費者の効用に置き換える
•  1 (12 (u2 )  u1  f1 )  2 (21 (u1 )  u2  f2 )
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多面的市場の理論
• 独占の場合:ベンチマークモデル
– 比較のため、社会余剰を最大にする料金を求める
w    v1  v2
 1 (12 (u2 )  u1  f1 )  2 ( 21 (u1 )  u2  f 2 )  1u1  2u2
– uについて微分して、最大化の1階条件より、
u1  (1  2 )n2  f1 ); u2  (1  2 )n1  f2
– 効用を価格に書き直して、
p1  f1  2n2 ; p2  f 2  1n1
• 財1の価格は限界費用と一致する水準よりも、財1の利
用者数が変化することで財2の利用者が受ける外部性
の分 2 n2 だけ価格を引き下げることが最適である
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多面的市場の理論
• 独占の場合:独占企業の利潤最大化行動
– 企業利潤を効用 u1 , u2 で微分し、最大化の1階条
件から、均衡における効用を求める

0
u1
  '1[12 (u2 )  u1  f1 ]  1 (u1 )(1)  2 ( 2 '1 (u1 ))  0
 u1  (1   2 )2 (u2 )  f1  1 /  '1
– 効用を価格に置き換えて、
1 (u1 )
2 (u2 )
p1  f1   2 n2 
; p2  f 2  1n1 
1 '(u1 )
2 '(u2 )
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多面的市場の理論
• 独占の場合:価格の解釈
– ラーナー指数に書き直すと、
p1  f1 1  2
p2  f 2 1 1
  n2 ;
  n1
p1
1 p1
p2
2 p2
• つまり、多面的市場における財1の価格費用マージンは
、財1の値下げ(加入者増)によって財2の効用を増加さ
せ、その分価格を上昇させられる効果の分だけ低くする
事が企業利潤を最大化する
– 機会費用の形式で書き直すと、
p1  ( f1   2 n2 ) 1 p2  ( f 2  1n1 ) 1
 ;

p1
1
p2
2
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多面的市場の理論
• 独占の場合:片方のグループのみに財を供給する場合
– グループ1に財を売る企業の利潤(2も同様)
1  1 (12 (u2 )  u1  f1 )
– 利潤最大化の1階条件より、
1
 0   '1[12  u1  f1 ]  1 (1)  0
u1
 u1  12  f1  1 /  '1
– 2も同様にしてから、価格に置き換えて、
1 (u1 )
2 (u2 )
; p2  f 2 
– p1  f1 
1 '(u1 )
2 '(u2 )
• 外部性が内部化されないため、外部性がない場合の独占利潤最
大化と同じ価格を付けることになる
• 従って、多面的市場ではグループ1とグループ2に財を売る2企業
が合併すると、パレート改善となる
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多面的市場の理論
• 多面的市場における2企業の競争
– ホテリングモデルをベースに、外部性を考える
i
i i
i
u


n

p
• 企業iから財1を購入するユーザの効用 1
1 2
1
i
i i
i
• 企業iから財2を購入するユーザの効用 u2  2 n1  p2
– 消費者は長さ1の直線上に一様分布
– 消費者は自分の所在地からそれぞれの企業から
財を運ぶ費用 t1 , t2 を支払う
• 企業は効用に差をつけることで、その差を移動費用を
支払って割に合う利用者を引きつけることができる
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多面的市場の理論
• 多面的市場における2企業の競争
u1i
企業i
i
2
u
n1j
n1i
グループ1
i
2
j
2
n
n
グループ2
u1j
企業j
u2j
– グループ1の消費者で、企業iから財を購入するの
は、企業iから財を買った方が余剰の大きい人数
• 均衡において、分かれ目の人(iから購入する右端の人
)はどちらから購入しても効用が等しいから、
u1i  t1n1i  u1j  t1n1j
• これに n1i  1  n1j を代入して解けば
n1i  1 / 2   u1i  u1j  / 2t1 を得る
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多面的市場の理論
• 多面的市場における2企業の競争
– 効用を価格に置き換えて、
1 1 (2n2i  1)  ( p1i  p1j ) i 1  2 (2n1i  1)  ( p2i  p2j )
n1i 
2

2t1
; n2 
2

2t2
– 4つのnについて連立方程式を解くと、
j
i
j
i
j
i
j
i

(
p

p
)

t
(
p

p
)

(
p

p
)

t
(
p

p
1
1
i
i
1
2
2
2
1
1
2
1
1
1
2
2)
n1  
; n2  
2
t1t2  1 2
2
t1t2  1 2
i
i
i
i
i
i
i


p

f
n

p

f
n




– 企業iの利潤
1
1
1
2
2
2
– 単純化のため、企業iとjの費用が等しい場合を考
えると、均衡における価格は等しくなる
– このとき、利潤最大化の1階条件より、
2
1
p1  f1  t1  (1  p情報経済システム論
( 2  p1  f113)
2  f 2 ); p2  f 2  t2 
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t2
t1
多面的市場の理論
• 多面的市場における2企業の競争
– 財1の価格 p1  f1  t1 
• 第一項は限界費用
• 第二項は市場支配力
2
t2
(1  p2  f 2 ) の意味
– 移動かかる費用の分だけ価格を上乗せることができる
• 第三項前半は価格を引き下げることによって得られるグルー
プ2の顧客数
• 第三項後半は追加的なグループ2の顧客から得られる利潤
– 財1、財2の連立方程式を解いて、均衡を得ると、
t1  t2  1   2
p1  f1  t1   2 ; p2  f 2  t2  1 ;  
2
• 外部性が無いとき(α=0)よりも利潤・価格が下がるのは、外
部性から得られる利潤があるため、企業はより積極的に顧
客を獲得しようとする(競争が激しくなる)から
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多面的市場の理論
• Doganoglu and Wright (2006):マルチホーミングと
互換性
– ユーザのマルチホーミングと互換性は、どちらもユー
ザの享受するネットワーク効果を拡大する働きを持つ
– しかし、マルチホーミングは以下の2点により、互換性
の不完全な代替にしかならない
• ユーザが複数のプラットフォームに加入するため、プラットフ
ォーム加入のコストが重複する
• マルチホーミングするユーザは価格に反応しなくなるため、
全体としての価格弾力性は低下し、競争が緩和される
– ただし、ユーザがどちらにも加入しないという選択肢があるときに
は、弾力性は上がる
– 依然として互換性の社会的誘因が私的誘因よりも大き
いが、マルチホームするユーザの分だけ私的誘因と社
会的誘因の差は低下するため、過小互換性が生じる
可能性は低下する
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多面的市場の実証研究
• Clements and Ohashi (2005)
– 米国のゲーム機市場を題材に、補完財、世代間互換
性がネットワーク間競争に与える影響について分析
– 推定結果
• ハードのインストールベースと、ソフトウェアのタイトル数は正
の相関
• ハードウェアの価格弾力性は、市場投入の初期には高く、後
半になれば低くなる
• ハード需要のソフト数弾力性は、普及の初期には低く、後に
なれば高くなる
• ソフト数1%の増加に相当するハード価格の低下は、投入初
期には低く、ピークを迎えた後ハードの引退に伴って低下し
てゆく。全機種・全期間の平均では2.3%、最大は2.8%
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多面的市場の実証研究
• 池田・砂田 (2009):日本のデータ
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多面的市場の実証研究
• Rysman (2003)
– 米国における電話帳の競争を分析
• 電話帳のビジネスモデル
– 電話帳を購入する消費者からの収入
– 電話帳に広告を掲載する広告主からの収入
• 競争のメリットと、独占によるネットワーク効果のどちらが支
配的か検証
– 推定結果
• 消費者は、広告の増加より効用を得る
• 広告主は、電話帳購入者の増加により広告の利益が増加
• 電話帳会社はネットワーク効果を内部化することで、社会厚
生を増加させている
• 独占によるネットワーク効果の拡大の効果を、競争による価
格低下の効果が上回るため、競争が進めば進むだけ社会厚
生は改善される
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多面的市場の実証研究
• Lee (2009)
– 米国におけるゲーム機の競争を分析
• ゲーム機の競争において、ハードの普及とソフトの本数の間
に生じるネットワーク効果を推定
• この際、ゲーム機を購入するユーザは今後のソフトウェアの
本数の見込みを考え、ソフトを提供する企業は今後のハード
の売れ行きを見込む、動学的な側面を明示化している
– 推定結果
• ゲーム機の普及とソフトの本数の間には正のネットワーク効
果が存在する
• 特定ハードへのソフトの独占提供に関する契約は、普及数で
劣るゲーム機がキラーソフトを呼び込むことを可能としている
• 独占契約を禁止することは、既存のゲームハードに対し有利
に働き、ゲーム機の新規参入を困難にする
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多面的市場の実証研究
• Kaiser and Wright (2006)
– ドイツの雑誌市場における1972-2003年のデータを
Armstrong (2006)のモデルに適応して分析
• 消費者は2企業の雑誌のどちらか一冊を読むと仮定
– 雑誌を講読するの効用は、記事のページ数、広告のページ数、価格によ
って定まる(Armstrong(2006)のuをページ数にしている)
• 広告主も2企業の雑誌のどちらかに広告を掲載すると仮定
– 広告を掲載する利益は、雑誌の購読者数と、広告料によって決まる
– 推定結果
• 読者の効用は、記事・広告の増加によって増加し、記事よりも広告
の方が効用の増加率が大きい
• 広告主の利益は、読者数の増加によって増加し、広告料によって
低下する
• 講読市場よりも広告市場の方が差別されており、価格費用マージ
ンが大きい
• 講読市場からの利益は負(-2,100,830 Euros)であり、広告市場から
の収入によって賄われている(3,715,350Euros)
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多面的市場の実証研究
• Ida and Kuroda (2009)
– 携帯電話とブロードバンドの間に生じる間接ネットワー
ク効果を分析
• 消費者は、携帯電話とブロードバンドをそれぞれ1社選択す
る
• 企業はNTT・KDDI・ソフトバンクの3社
• 同一の企業のブロードバンドと、携帯電話を利用するとネット
ワーク効果が得られる(FMCサービス)
– 推定結果
• FMC効果による値引
– NTTとソフトバンクは、ブロードバンドのシェアが大きいため、携帯
よりもブロードバンドのマージンを高く設定する
– KDDIは、ブロードバンドのシェアが低いため、携帯のマージンを
高めに、ブロードバンドのマージンを低めに設定する
• FMC効果が強くなれば、それぞれの市場における値引き幅
が大きくなる
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ダウンロード

第6講 ネットワーク効果の理論2(両面市場の理論)