P-054
軌道上におけるCALETのエネルギー較正手法の開発
赤池陽水1, 寺澤敏夫1, 鳥居祥二2,3, 笠原克昌2, 小澤俊介3, 浅岡陽一2, 仁井田多絵3, 田村忠久4, 清水雄輝5, 他CALETチーム
東大宇宙線研1, 早大理工研2, 早大先進理工3, 神奈川大工4, JAXA/SEUCE5
CALorimetric Electron Telescope (CALET) は、国際宇宙ステーションに搭載予定の高エネルギー宇宙線観測装置であり、1 GeVから20 TeVの電子、4 GeVから10 TeVのガンマ線、数10 GeV
から1000 TeVの陽子、原子核成分について、長期間の直接観測を実施する。CALETの主検出器は、高エネルギーの電子成分に最適化した30放射長の物質量を持つ解像型のカロリメータ
で、高いエネルギー分解能と強力な粒子識別性能を有する。CALETが軌道上でこの高い観測性能を発揮、維持するためには、定期的なエネルギー較正の実施が不可欠であり、軌道上に
おける装置の健全性確認、及び詳細なエネルギー較正は、陽子やヘリウムの最小電離損失粒子による1粒子通過相当の信号応答を用いる。これまでに加速器ビーム実験で、ミューオン
の最小電離損失粒子を利用したエネルギー較正手法の有効性を実証しており、同様の手法により装置較正を実施する。本発表では、この加速器ビーム実験におけるエネルギー較正手法
について紹介すると共に、地磁気や大気による2次粒子の影響を考慮したシミュレーション計算を基に、軌道上における最小電離損失粒子のイベント取得方法、イベント取得レート、及び最
小電離損失粒子のイベント選別方法について報告する。
最小電離粒子による検出器較正
CALET: CALorimetric Electron Telescope
国際宇宙ステーション「きぼう」に搭載
2015年打ち上げ予定
観測期間:2年(5年目標)
観測目的
30放射長の物質量をもつ解像型のカロリメータ
高エネルギー分解能
- ~2% (>100 GeV)
強力な粒子識別性能
- 陽子除去性能 ~105 @ TeV
観測対象
宇宙線近傍加速源の同定
TeV領域における電子エネルギースペクトル
暗黒物質の探索
電子・ガンマ線の100 GeV-10 TeV領域におけるスペクトルの”異常”
電子(1 GeV – 20 TeV)及び陽子・原子核(数10 GeV – 1000 TeV)の
精密なエネルギースペクトル、超重核のフラックス(cutoff-rigidity以上)
二次核/一次核(B/C)比のエネルギー依存性
低エネルギー(<10GeV)電子フラックスの長・短期変動
7 keV – 20 MeV領域でのX線・ガンマ線のバースト現象
宇宙線の起源と加速機構の解明
宇宙線銀河内伝播過程の解明
太陽磁気圏の研究
ガンマ線バーストの研究
電離損失のエネルギー依存性
■ CALET検出器
検出器の特徴
検出器の特徴
⇒ TeV領域の高精度な電子・ガンマ線観測が可能
各検出器からの信号は、最小電
離損失粒子(Minimum Ionizing
Particle: MIP)によるシグナルを
基準として絶対値を較正する
最小電離損失とは、相対論的速
度を持つ荷電粒子の電離損失
によるエネルギー損失量である
(厳密にはその最小値)
エネルギー分解能と検出器較正誤差の関係
←性能要求
←較正誤差なし
電子のエネルギースペクトルと
CALETの観測予測
暗黒物質(ニュートラリーノ)の対消滅に
由来するラインガンマ線の観測予測例
⇒性能要求(<3%)を満たすためには誤差10%以内の較正精度が必要
加速器ビーム実験における検出器較正と観測性能検証
CERN-SPS加速器で電子・陽子の照射実験を実施
● ビーム種類
Si detector
(Trk.+SIA)
Trig.
Scin.
CHD
+IMC
IMCの粒子数分布(電子100 GeV)
TASCの粒子数分布
電子100GeV
電子
陽子400GeV
陽子
TASC
・ ミューオン:150, 180 GeV/c
・ 電子 : 10 ~ 290 GeV/c
・ 陽子 : 30 ~ 400 GeV/c
Exp.
Exp.
Sim
Sim
ビームエネルギーと観測エネルギーの相関
■ ミューオンによるエネルギー較正
- ミューオンの最小電離損失粒子を利用して、検出器の各ADC値を粒子数に換算
- ADC分布は、Landau関数にGauss関数を畳み込んだ関数でフィッティングし、
Landau関数成分の最頻値を1粒子通過相当のエネルギー損失として定義
- シミュレーション(EPICS)で得られるエネルギー損失も同様に粒子数に換算し、
実験データで得られているGauss成分をシミュレーションデータに組み入れて
電子・陽子のシャワー粒子と比較・検証
ミューオン150 GeVのADC分布
SciFi
PWO
線型性からの誤差±0.5%
ミューオン信号を基に粒子数換算で、以下を確認
・200 GeVまでの線型性を±0.5%で保持
・MCが電子・陽子のシャワー粒子の観測応答を再現
高緯度における検出頻度
ISS軌道上における検出器較正のシミュレーション
軌道上における検出器較正のシミュレーション
■ 宇宙線を利用した検出器較正
- 宇宙線中の陽子やヘリウムの最小電離損失粒子を利用
して 検出器較正を実施
- 検出器較正に必要なデータ収集時間と較正精度を見積も
るため、ISS(高度400 km)における宇宙線の検出頻度を
シミュレーション計算を利用して推定
- 検出器較正に適したイベントの選別手法を開発
●軌道上における宇宙線フラックスの推定
①銀河宇宙線:AMS-01 (J. Alearaz et al. 2000)
p:
17.1 10 .
He: 2.52 10 .
②太陽変調:Force-Field近似( 0.6GV)
% & ' ( )(
% /&
'*+, ( -( .
陽子
●検出器シミュレーション
ヘリウム
1.4 x 103 eve. / 周期
●全トリガーイベント
●IMCで引いた飛跡が完全に
検出器を通過するイベント
●検出器下部までエネルギー損失を示す
(途中で止まらない)イベント
●最小電離損失粒子
●最小電離損失粒子の選別
トリガーされるデータ中には、シャワー粒子を含むため、オフライン解析で
検出器較正に適したイベント(最小電離損失粒子: MIP)を選別
①IMCで飛跡を再構成し、検出器を完全に通過するイベントを選別
②TASCの総粒子数を基に、イベントを選別(陽子: 23MIP)
TASCの総粒子数分布(陽子)
③各12層における1MIP相当のエネルギー損失
分布を用いたlikelihoodでイベントを選別
・MIP粒子の選別効率: 80%
・ピーク領域(0.5-2MIP)の選別
イベント中のMIP粒子:90%
第15回宇宙科学シンポジウム
1.2 x 102 eve. / 周期
軌道上におけるイベント収集時間と較正精度の関係
ISS1周期相当の統計量で、
TASC最下層のPWOを2~3%
の精度で較正可能
イベント選別後の最下層の
PWO1本の粒子数分布(平均)
Likelihood分布(陽子)
ヘリウム
陽子
検出器中の宇宙線の相互作用を計算し、
最小電離損失や粒子シャワーによる
検出器個々の信号応答を再現
・シミュレーション:EPICS
・ハドロン相互作用モデル:DPMJET-III
01 2
③地磁気の遮蔽効果・大気による2次粒子
シミュレーション:ATMNC3
・大気モデル:US-standard
・磁場モデル:IGRF2010
各緯度ごとのエネルギースペクトル
ISS軌道1周期分(約90分)の観測時間に対する
PWO1本の最小電離損失粒子の粒子数分布
エネルギー分解能の系統誤差
を2%以下に抑えることが可能
まとめ
・CALETでは、軌道上で収集する陽子やヘリウムを利用して、
検出器のエネルギー較正を行う
・エネルギー分解能の要求性能(<3%)を満たす較正精度
(~数%) を1周期の統計量で達成可能である
・陽子・ヘリウムによるエネルギー較正を用いた効率的な
運用計画を作成中である
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