つくばのほうき 制作
ほうき制作では、使用する道具も制作した。作業に欠
かす事の出来ない製作台と、茎を縦に裂く殻裂き、ほ
うきの成形時に使うはさみ、残った実を取り除く未剥
ぎ、切り出し小刀など。種蒔きから収穫は、身体のみ
使用した。制作においてもわずかな道具しか使わない。
鋏(はさみ)
酒井氏の道具。穂先を鋤く鋸を再利用した未剥ぎと、穂を縦に裂く殻裂き。
切り出し小刀
基本的な3つ玉のほうきを全員で制作。
作業台の柱の下にあるロープでほうき草を締め付ける。
自ら自然の染料で染めた糸。
複雑な蛤型のほうきを制作
それを緩めながら、柱の上に巻いた細い糸や針金を巻き付ける。
学内での展示
それぞれのかたちのほうき
筆者が制作したほうき
つくばのほうき 発表
TOKYO DESIGNERS WEEK2013 東京都明治神宮外苑絵画館前 2011.10.26-11.4 参加学生:9 名
第1回 ASIA AWARD 学校作品展に出展した。日本および世界各国より 54 校、65 チーム、作品総数 229 作品から8組が入選。「つくばのほうき」も選出され、
最終プレゼンをおこなった。合板(3 × 6,4 × 8)をクランプで固定する方法で会場設営した。
企画:宮原克人
会場設計・制作:塩満俊彦、成田敬
ほうき制作:磯野開、清水夏穂、武田萌恵子、千田円、中村友貴、福島梓、福田藍、宮田岳、渡辺瑠花
染めた糸で編む
藁細工と併用
物の持ち手
蛤型のほうきに毛皮
科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2011-2013
「農閑工芸の研究 - 地域資源を活用した教育プログラムの構築 -」
つくばのほうき まとめ
ほうきは惰性が強い
惰性とは、
作り方が昔とそれほど変わらないこと。
また、
変える必要もなく今も昔の姿であること。集めて束ね
ればほうきができる。買わずともその辺にある草木や
竹でとりあえずのほうきは作れる。その、とりあえず
作れることでほうきは残ってきた。地域の植生による
素材と地域に住む人による作り方。ほうきには小さな
社会で回る需要がある。小さな社会で回るものには固
有の文化が宿る。日本はもとより、ほとんどの国や地
方にその地域のほうきがある。ほうきの美しさは、土
地や人という固有性を持ったローカルな場所から現れ
た普遍的な美しさといっても良い。
クラフト領域の学生が通常扱う木材のように、製材さ
れ乾燥し用意された物を造形するのではない面白さが
があった。特に刈り取りを体験できた事は、その後の
ほうき作りにまで大きな影響を受けた。刈り取りや脱
穀のときに味わったみずみずしい感触は、その後の制
作時においても手の中の記憶として残った。そして、
その感覚によって、素材を扱う力加減、締め付ける強
さ等を決定することができた。
農閑工芸の定義として、「それほど専門的な機械や道
具を使わない物作り」ということををあげている。
もちろん専門的な技術や知識は必要とされるが、近く
種蒔きから、ほうき作りまで
つくば市で酒井豊四郎氏がされている仕事を体験する
事ができた。もちろん、酒井氏の持つ素晴らしい技術
を体験して、自然素材の特性に沿って作り出すことの
重要性と教育効果の高さを実感した。
の一端を習ったにすぎない。ほうき作りには、経験に
裏打ちされた大変な知識と技術が必要である。しかし、
その辺にある草木を束ねれば、とりあえずほうきにな
る、というのも事実ではある。農閑工芸は、農閑期の
仕事であることから、特別な設備や機械を必要としな
い。そのため、一定の技術を習得する事でものを作り
出す事ができる。ほうきの制作も同様にそれほど専門
的な道具や設備を必要としない。木材は、根元から枝
を伸ばし大きくなって行く。ほうき作りは、反対に枝
を集めてくくりながら大きな木ができるように作って
行く。ほうき作りの基本形は存在するが、酒井氏の持
つ技術は臨機応変である。学生が考えて作りたいそれ
ぞれの形に対し無理なく有機的に仕上げる方法を示す。
素材を良く知る事は大切、とは良く言われるがまさに
その通り。
にある身近な資源を有効に使い、自然素材の特性に
沿って作り出すということ。種から育てたほうき作り
最後に
大量生産、大量消費が一つの文化ともなっている現在
では、直す事や洗う事さえできない製品も多い。それ
らは、我々を一定の豊かな暮らしに導いた。また、こ
れからもそうある。一方で、我々は作る喜びや直す喜
びを手放し過ぎたと思う。人が行ってきた仕事は機械
が行い、作業に関わる時間から開放され、それぞれの
時間を過ごすことが可能になった。しかし、仕事の中
には作る喜びが含まれる。機械はそこまで味わっては
くれない。これまで、それらの喜びを手放し過ぎた様
に思う。ただ、昔の不便な暮らしに戻る事はできない。
「農閑工芸」における物作りのあり方を教育の現場で
再構築したい。ほうき作りはその可能性を示してくれ
た。
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PDF つくばのほうき