盛岡市木材利用推進方針
も
り
「市産材を使って森林を守ろう」
盛岡市新庄字貝田
貝田市有林
スギ
平成 19 年 2 月
盛
岡
市
88 年生
盛岡市木材利用推進方針目次
第Ⅰ 推進方針策定の趣旨及び森林・林業の現状と課題
1
推進方針策定の趣旨 ___________________________________________________1
2
盛岡市の森林・林業を取り巻く現状と課題 _______________________________1
(1)森林の持つ公益的機能の低下
(2)木材産業の停滞
(3)山村地域の活力の低下
第Ⅱ 木材利用の有効性
第Ⅲ 庁内における市産材利用の推進
1 市営建設工事等における木材利用の基本方針 ____________________________2
2 市産材の利用推進 ____________________________________________________2
3 庁内における市産材利用のための情報共有 ______________________________3
第Ⅳ 市産材利用の普及啓発の推進
1 木材利用の普及啓発 __________________________________________________3
2 市産材利用の働きかけ ________________________________________________3
3 市産材の供給側・利用側との連携 ______________________________________3
(1)供給側と利用側との情報共有及び連携
(2)消費者側への情報提供
4 市産材利用の推進のための支援 ________________________________________3
第Ⅴ 市産材利用の推進体制等
1 庁内の推進体制 ______________________________________________________4
2 民間における市産材利用推進の働きかけ ________________________________4
参考資料
Ⅰ 盛岡市の森林資源 _____________________________________________________5
1 森林面積
2 盛岡市の森林資源の利用実態(素材流通量)
Ⅱ 木材利用の有効性と環境への効果 _______________________________________5
1 木材利用の有効性
(1)快適性
(2)物理的性能
(3)情緒性
2 木材の地域環境保全に対する効果
盛岡市木材利用推進方針
も
り
-市産材を使って森林を守ろう-
第Ⅰ 推進方針策定の趣旨及び森林・林業の現状と課題
1 推進方針策定の趣旨
本市は,市域の 7 割以上を森林が占め,緑豊かな環境にある。しかし,木材価格の長期にわたる低
迷などから,森林・林業を取り巻く環境は厳しく,森林所有者の林業経営意欲が低下し,管理放棄さ
れた森林が増加してきている。市では,これまで間伐など森林の整備に対して様々な支援を行ってき
たが,手入れが停滞している状況となっている。このままでは,林業・木材産業が衰退し,森林の持
つ洪水防止・土砂流出防止等の公益的機能の低下など,安全で快適な市民生活が脅かされるおそれが
ある。このような現状を改善するためには,木材の利用推進を図ることにより,森林資源の循環を促
進していく必要がある。
特に,市域内の森林から生産される材(以下「市産材」という。
)の利用拡大を図ることは,本市の
林業・木材産業の活性化と森林の公益的機能の維持増進に有効であることから,市では「盛岡市木材
利用推進方針」を策定し,この推進方針の下に,市が率先して市産材の利用を図るとともに,市民に
も広く利用を推進していくことを目的とする。
2 盛岡市の森林・林業を取り巻く現状と課題
(1)森林の持つ公益的機能の低下
岩手県林業技術センターによれば,本市の森林の公益的機能の評価額は,年額で約 1,325 億円と試
算(平成 14 年度)されており,市の一般会計予算額を上回る額となっている。特に,このうち表面侵
食防止,水質浄化,土砂崩壊防止の機能に対する評価額が高く,土壌の保全や飲料水の安定的かつ安
全な供給に大きな役割を果たしている。
盛岡市では,戦後,拡大造林が進んだことにより,現在では森林の約半分が人工林となっているが,
この人工林の手入れの遅れが目立ち,
間伐必要面積に対する実施率はここ数年で 50%台から 30%台に
低下するなど,40 年以上もの間,洪水などの大きな気象災害がなかった盛岡市において,今後,災害
の発生の確率が高くなることも予想される。
また,地球規模で見ると,二酸化炭素濃度が上昇し,温暖化が進行している。森林は二酸化炭素の
吸収源として重要視されており,
京都議定書においても日本の二酸化炭素削減率 6%のうち 3.9%が森
林吸収に委ねられている。
このような森林の持つ公益的機能の低下を防止するためには,間伐等の森林の手入れが不可欠であ
り,木材利用を推進し,森林の利用と保全の両立を図っていく必要がある。
(2)木材産業の停滞
長引く不況と国産材需要の停滞により,本市の製材所が激減しており,それに関連する木材産業や
森林整備の担い手である森林組合も経営が厳しい状況となっている。そのため,有効利用が可能な森
林資源(参考資料のⅠの 2 を参照)が存在するにもかかわらず,木材生産が停滞し,資源としての活用
が不十分な状況にある。
現状では,市産材の流通量は少ないため,一般材と比べてやや入手困難であるが,本市の林業を含
む産業振興や環境の面から考えると,市産材利用をさらに推進することが必要である。
1
(3)山村地域の活力の低下
山村地域では,過疎化や高齢化等により林業の担い手の減少や林業収支の悪化による林業への意欲
が低下し,森林の手入れが困難になるなど地域の活力が低下しているため,山村地域の活力を取り戻
す抜本的な対策が急務となっている。したがって,市産材の需要拡大により,林業・山村の振興に取
り組む必要がある。
第Ⅱ 木材利用の有効性
木材は調湿性や断熱性など様々な優れた性質を有し,特に精神面を含めた健康面への効果が実証さ
れており,教育施設や一般住宅の建築資材として,木材を利用することは有効である。
(参考資料のⅡ
を参照)
また,木材は育った地域の環境や気象条件などに馴染むと言われており,市産材を市域で利用して
いくことで,木材の良さが一層発揮される。さらに,輸送にかかるエネルギー消費が少なくて済み,
環境に負荷を与えないという点においても,市産材の利用が環境の保全にも資するものである。
第Ⅲ 庁内における市産材利用の推進
内装の木質化等を含めた市営建設工事等への市産材使用は,
「地域の木を使うことの良さ」を理解す
るうえで先導的役割を果たし,PR 効果も高く利用推進に大きく寄与するものであることから,今後,
市における木材利用の推進にあたっては,市自らが率先して市産材を利用することが必要である。し
たがって,市営建設工事等においては「市産材利用」を基本とする。
1 市営建設工事等における木材利用の基本方針
(1)構造の木造化
公共施設の建設においては,
「可能な限り木造建築とし,非木造については内装に木材を使用す
ること」を基本とする。
(2)土木工事における木材の利用
土木工事においては,
「可能な限り木材を使用すること」を基本とする。
(3)木質バイオマス燃料の利用
暖房施設は,チップボイラー,ペレットストーブ等の導入を推進し,木質バイオマス燃料の利
用に努める。
(4)木材製品の利用
使用する備品や消耗品は,木材製品の利用に努める。
(5)環境物品の利用推進
グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)に基づき,木材・木材
製品の購入を推進する。
2 市産材の利用推進
市営建設工事等に使用する木材は「市産材」を基本とし,次により利用推進を図る。
(1)市営建設工事等の発注に際しては,仕様書に「市産材利用」の努力規定を明記するとともに,
岩手県産材産地証明書等の提出を求めるものとする。
(2)市営建設工事等で確実に市産材を利用する必要がある場合は,市有林材の利用や市産材の調達
2
により原材料として支給することも検討する。
3 庁内における市産材利用のための情報の共有
木造建築物に関する建築基準法その他の法令の基準や,土木工事における木材利用の基準につい
ての情報を共有する。また,使用する市産材についての製材品や丸太等の仕様や価格等の情報の共
有を図る。
第Ⅳ 市産材利用の普及啓発の推進
1 木材利用の普及啓発
木材利用について,広く市民の理解を得るため,市は森林・林業関係団体と協働して次の方法に
より普及啓発を推進する。
(1)広報活動による啓発
木材利用啓発ポスターの掲示やパンフレットの配布及び各種メディアの活用
(2)教材の提供,見学会,イベント等の開催による啓発
小・中学生への森林に関する教材の提供や,市の木造公共施設を展示施設としての活用,木
材を利用した工事の見学会,植樹祭等で啓発活動を推進
(3)環境物品の利用推進
グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)に基づき,木材・木材
製品の購入を推進
2 市産材利用の働きかけ
木材利用の大半を占めるのは建築分野であり,木造家屋においては構造材はもとより,内装・外
装材への市産材利用を,
非木造家屋においては内装への市産材利用を,民間と協働して働きかける。
また,建築分野以外の用途についても,消費者の木材志向に沿った家具,ストリートファニチャ
ー,ガーデニング製品その他の木材製品の利用を働きかける。
3 市産材の供給側・利用側との連携
市産材の需要拡大の推進にあたっては,利用する側のニーズに的確に対応した供給体制を確立す
る必要があることから,利用する側と供給する側との情報交換や連携の強化を図る。
(1)供給側と利用側との情報共有及び連携
市産材の品質向上を供給する側に呼びかけていくとともに,利用する側に市産材の利用が地域
の環境保全や林業振興に貢献することへの理解を得ながら,供給側と利用側のネットワーク化を
働きかけ,互いに市産材の情報を共有し連携を図る。
(2)消費者側への情報提供
施主が市産材を使用した住宅建設を希望しても,木材の利用者側である設計者や工務店等にお
ける市産材の情報が乏しいため,その利用が難しい状況となっている。このため,施主や利用者
側に品質説明を含めた市産材情報の提供ができる仕組みの整備に努める。
4 市産材利用推進のための支援
市産材の利用を推進するためには,林業・木材産業関係者の努力に加え,業界関係者だけでは難
しい問題の解決に向け,市は市産材利用推進の支援を行う。
3
支援の内容
(1) 市産材を利用した住宅建設への支援
(2) 間伐作業や間伐材搬出の経費への支援
(3) 市産材証明を行うことへの支援
(4) 関係団体等が実施する市産材利用の普及宣伝の取り組みへの支援
第Ⅴ 市産材利用の推進体制等
庁内においては,本方針に基づいて,市営建設工事等において市産材利用を推進する。市民に向
けては,林業・木材関係者や設計・施工関係者と協働して市産材利用を働きかける。
1 庁内の推進体制
庁内関係課で組織する盛岡市木材利用推進会議は市産材利用推進のため,次の役割を行う。
(1) 庁内における市産材利用の実行計画の策定及び実施
(2) 庁内における市産材利用状況の把握
(3) その他庁内における市産材利用の推進に関する事項
木材利用推進方針に添って,各関係課所管事業の市営建設工事等の計画時点においては,木造建
築や木質材料の採用について積極的に検討するとともに市産材の利用に努める。また,関係各課で
市産材の利用状況について検証を行うものとする。
2 民間における市産材利用推進の働きかけ
木材の供給側の素材生産者団体を中心に,市産材の安定的な供給ができる体制づくりを市との協
働で行う。また,市内および近隣市町村の各種木材生産加工施設に市産材製品の供給体制の整備の
促進について協力を求める。
住宅の設計・施工関係者には市産材情報を提供し,住宅等に市産材を使用するよう依頼する。
市民に向けては市産材の供給側の素材生産者団体等と協働して,市産材を利用することへの意義
を普及し,市産材利用推進を働きかける。
4
参考資料
Ⅰ 盛岡市の森林資源
本市においては,戦後造林された人工林が成熟過程に移行しつつあり,その公益的機能を高度に発
揮していくため,間伐をはじめとする森林整備と適正な伐採による森林資源の循環の促進が必要であ
ることから,市産材利用の推進が極めて重要である。
1 森林面積
盛岡市の森林資源構成表:民有林
1~35 年生
36~50 年生
51 年生以上
計
人工林
8,905ha
10,504ha
3,688ha
23,097ha
割合
38.5%
45.5%
16.0%
100.0%
天然林
5,885ha
8,113ha
9,111ha
23,109ha
割合
25.5%
35.1%
39.4%
100.0%
14,790ha
18,617ha
12,799ha
46,206ha
32.0%
40.3%
27.7%
100.0%
計
割合
※木材として利用可能な 36 年生以上の人工林は 61.5%に達している。
データ:17 年度樹立北上川上流地域森林計画:面積には伐採跡地を含まず
2 盛岡市の森林資源の利用実態(素材流通量)
盛岡市の森林の素材流通量:民有林
成長量
素材流通量
※循環利用が望ましい人工林の素材流
通量は,成長量の 80%から 95%くらい
人工林
91,988 ㎥/年
24,277 ㎥/年
が適正とされているが,現状において
天然林
43,087 ㎥/年
22,355 ㎥/年
は 26%余りにとどまっている。間伐さ
計
135,075 ㎥/年
46,632 ㎥/年
れずに手入れが遅れている森林の公益
的機能の低下が危惧される。
データ:17 年度樹立北上川上流地域森林計画,素材流通量:平成 16 年県調査
Ⅱ 木材利用の有効性と環境への効果
1 木材利用の有効性
木材は,調湿性,断熱性,柔軟性,木の香りなど,
「快適性」,
「物理的性能」
,
「情緒性」をバラン
スよく備えた優れた建築資材である。学校,保育園においても生徒や園児への精神面を含めた健康
面への効果が実証されている。
(1)快適性 木材は,人に心地よい感覚を与える素材であり,日常生活に快適性をもたらす。
調湿機能
湿度が高くなると湿気を吸収し,湿度が低くなると放湿して,周囲の湿度を自動的に
調節する。
5
ダニ等抑
フィトンチッド(精油)が含まれており,アレルギーの原因となるダニの繁殖を抑制
制機能
するという研究結果がある。
衝撃吸収
多孔性材料であり,コンクリートや大理石,プラスチック等に比べて衝撃吸収力が大
機能
きいため,転倒などのけがに対して相対的に安全である。
騒音吸収
音を程良く吸収するため,昔から楽器等に使用されてきたほか,現在,高速道路の防
機能
音壁に使用する取組が行われている。
紫外線吸
目に有害な紫外線を吸収し,赤外線を反射するため,目が疲れず,暖かい雰囲気を与
収機能
える。
(2)物理的性能 木材は,総合的にみて優れた物理的特性を持っている。
断熱性能
木材は熱伝導率が,鋼材の 1/450,コンクリートの 1/13,ガラスの 1/8 であり,
結露が少ない窓枠や調理器具の柄や取っ手,サウナ風呂の内装等に使われている。
強度性能
スギ材を同じ重さの鉄と比較した場合,圧縮の強さは約 2 倍,引張の強さは約 4 倍も
あることから,逆に言えば,同じ圧縮の強さを支えるために,木材は半分ほどの軽さ
でよいことになる。
耐火性能
表面が炭化すると内部までは燃焼しにくいため,一定以上の断面を持つ木材は火災に
も耐える。また,鉄,アルミニウム,木材を同条件で加熱した場合,鉄,アルミニウ
ムは 3 分から 5 分で強度が著しく低下し,変形するが,木材は 15 分たっても約 60%
の強度を維持する。
耐久性能
雨水への配慮,防腐処理等設計・施工面での適切な措置やメンテナンスなどを行えば,
木造建築物の耐用年数は非木造建築物に比べても遜色はない。現に,築後 100 年以上
経った木造住宅がたくさん残っていることや 1,300 年前に建てられた法隆寺の柱は,
今なお芳香を失わずに生き続けている。
(3)情緒性 木材は,人の生理面や心理面に良い影響を与え情緒の安定をもたらす。
刺激
色,感触,香りなど,どれを取っても刺激が少なく人にやさしい。
フィトン
フィトンチッドは,血圧の低下,脈拍の乱れやストレスホルモンの減少等に効果があ
チッド
るとされ,ストレスの多い現代社会において,木材と接することは情緒的安定を確保
するうえで効果がある。また,外材に比べて,我が国の木材がフィトンチッドを多く
含んでいるという研究成果がある。
2 木材の地域環境保全に対する効果
森林での炭素の固定能力は,林齢(林の年齢)によって差がある。若い森林や手入れ(間伐)がさ
れた森林が多いほど年当たりの吸収量が多く,老齢の森林になれば二酸化炭素の吸収量が低下する。
したがって,炭素の固定能力を維持するため,適切な伐採及び植栽により持続可能な森林経営を図る
とともに,森林で固定された炭素をより長く貯蔵するため,生産された木材を有効に利用して,都市
部に木造建築物を増やす必要がある。それはまさに市街地に「第二の森林」を創造することになる。
6
また,木材は森林から永続的に産出される再生産可能な生物資源であり,製材品等の加工に要する
エネルギーや二酸化炭素の発生が非木材の原材料(鉄筋やコンクリート製品など)と比較して格段に
少なく,パルプ,木炭等としても利用することが可能であり,燃焼,廃棄に当たっても有害物質を出
さないなど,環境にやさしいエコ・マテリアル(環境調和型資材)である。
Ⅱのデータは「岩手県木材利用推進方針」より
本方針は「公共建築物等における木材の利用促進に関する法律」(平成 22 年 10 月 1 日施行)第 9 条に
基づく盛岡市の方針とする。(平成 24 年 2 月 29 日付け)
7
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